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一斉に始まったデビットカード機能

2000年03月27日(月)
繋船舎 関 悦子



3月6日から、全国でほぼ一斉に、キャッシュカードがデビットカードとして使えるようになりました。

「デビットカード(Jデビット)」は、私達が普段使っている金融機関のキャッシュカードを、金融機関のATMではないところ、例えばデパートやコンビニや交通機関、ふつうのお店などで使えるというものです。キャッシュカードを端末機にのせて(または差し込んで)、いつもの4桁の数字の暗唱番号を打つと、買い物の代金が自分の口座からお店の口座にお金が入るというしくみになっています。

お客である私達は、そこでお金に触れずに支払うことになります。

ただし、東京三菱銀行、東海銀行、いくつかの信用金庫、いくつかの信託銀行は現段階でデビットカードのシステムを実施しないそうです。

これで、お財布に持ち合わせがなくても、口座に有る残高の範囲であれば、支払いを済ませられます。近くにATMがないときでも、あわてなくてすみます。また、金融機関によって違いますが、休日や夜遅くなど、ATMの動いていない場合でも、使えることになります。

そして、少ない金額の場合でも使えるため、小銭をジャラジャラさせることもなくなります。これが浸透すると、お店側はおつり銭の心配がいらなくなりますし、現金を数え間違ったり、盗まれたりすることがなくなります。

 デビットカードのリスク

逆にどういう危険が起こりうるのでしょうか。

キャッシュカードは、これまでは監視カメラがあるなどごく決まった場所で使っていた訳ですが、端末機を用意するお店や場所がふえると、どこでだれがどんなカードを使ったかが解りにくくなります。不正に使用されても突き止めにくくなります。

もし総合口座ですと、普通預金の口座にお金がなくなっても、定期預金の90%まで普通預金の方に回して使えるようになっていますから、不正使用されたときは定期預金まで使われる可能性があります。

また、このカードは偽造が簡単に出来るとテレビなどでのレポートを見たことがあります。秋葉原などの専門店街では、そんな機械が売られているそうで、多少その道に詳しい人の手にかかれば、とても簡単にできるのだそうです。

いまのキャッシュカードは見える、見えないの違いはあっても、磁気テープにデーターを記録してあり、72文字だったか、22文字だったかの情報が入れられるそうです。これは約30年前にできた古くからあるシステムです。

私達はこれを暗唱番号によって、他人に使われないよう守られています。しかし、暗唱番号は4桁だけの、数字だけです。本人かどうかを確認するのは、この4桁の番号だけです。

クレジットカードも、現在はキャッシュカードと仕組みは同じですが、不正使用がわかると、決まった期間内に手続きをすれば、保護される保険がついています。また、引き落とされる前に、使用明細が届き、間違いないかどうかを事前に、自分で確かめることができます。

しかしキャッシュカードでは、不正に使われても、保険を付けて、私達を保護してくれるところはほとんどないようです。金融機関によってはつけているところもあるかもしれません。その場合も、300万円以上は保護してくれないというケースを耳にしたことがあります。

それじゃあ、それ以上のときはどうするというのでしょう。「ご自分で払って頂きます」というのがその回答です。よーく確かめなければいけませんね。

使いかたがわからないからといって、お店の人に代わりに番号を打ってもらったり、また、だれかに見られてしまいそうな所での番号の入力は、しないように気をつけなければなりません。自己責任と危機管理の自覚が必要になるのです。

 私の対処法

窓口に、届け出た印鑑と通帳と身分証明をもってでかけました。「私はデビットカードの機能を使いたくないので、その機能を停止するための手続きをしたい」といいます。
理由をきかれることもあります。
所定の用紙に記入、捺印し提出。
窓口担当者が自分の判など押します。
「自分の控えがほしい。コピーでもかまわない」というと、応じてくれました。
「いつから停止が実施されるか」を確認。

危ない期間があるときは一時的に引き出して、安全な口座に移したり、被害にあってもあきらめのつく程度の金額にしておく、など..。 ほかに、デビットカードの取引規定をもらって、今後のためによくわかっておくとよいでしょう。停止手続きをしない場合こそ、必要ですね。

郵便局は「ぱるる」という口座だと機能停止ができませんでした。
方法はないかきいたところ、口座番号は変えずに、普通預金口座にする手続きをとれば、これまでのキャッシュカードとして使える。ただし、「ぱるる」では口座からの送金ができたが、普通預金口座の場合はできない、とのこと。

理由をきかれたときには、つぎのように答えました。
「今の磁気テープによるカードでは、セキュリティー(安全性)に問題があると思う。偽造事件も多いときいている。不正に使用されたときに保護されないのであれば、自分ではそのリスクを負ってまで、利用しようとは思わない。そのリスクは負いたくないから、機能を停止したい。」

 抗議したいこと

まずキャッシュカード利用者すべてに新サービス開始を告知すべきです。同時にデビットカードの取り扱い規定を届けるべきです。また万が一の被害にあったときのための保険をつけるべきでしょう。デビットカードにはなんらかの保護が必要です。

なんの通知もなしに、使用方法も、利点も、起こりうる危険と対策の説明も、なにもないままに、知らないうちにほとんどの全国民を巻き込んでおいて、もしものときは被害の保証もしない。金融機関は税金をたっぷり使って身を守っておいてです。

なぜ、こんなに準備期間もなしに、大事なことをしてしまうのでしょう。
「インターネットでの取引との関係は」
「犯罪が起こったときの法律は」
「相応に罰せらるのでしょうか。警察の対応は」
「保護、保証は」「責任は誰が」
大量に不正が行われたら、どうなるのでしょう。

重大な問題がおこったときに、誰かが辞職して片付けられるのでは困ります。

私がデビットカードの実施を知ったのは、2月上旬の朝日新聞の記事です。銀行などの店頭でもそのような告知は目に入りませんでした。

デビット機能停止を相談に行っても、窓口での対応はテキパキとは行かず、とくに初めのころは、うろたえて偉い人が出てきたり、どこに聞いたらわかるのだろうかと内部で相談し、本部とやらに電話で問い合わせる場面にも遭遇しました。

私はたまたま、仕事がその方面に近い分野の職場なので疑問に思ったわけですが、普通の人、たとえば私の親、姉妹なら、たぶんあまり心にとめることではなかっただしょうし、興味があっても便利さだけに目がいったでしょう。

余談ですが、私が郵便局で上記の手続きをしてきた折りには、すでに1年近くも前から、自分のカードがデビットカードになってしまっていたことを知りました。(被害にはあっていません)

 デビットカードは悪者か?

いいえ、きっと便利でいずれ普及して行くことでしょう。なにが問題なのか?磁気による30年前のセキュリティーシステムだから危険が多いと心配されるのです。

今、「ICカード」という、キャッシュカードと見かけはほとんど同じですが、カードの中に、とても小さなコンピューターが入っているようなものができています。この情報量は磁気テープとは比べ物にならないもので、それを利用してもっと偽造されにくいシステムをつくり、本当に本人であるかどうかの確認がもっと高度にできるようになどと、日夜、研究が進められ、一部では使われはじめています。

世界的な基準をどのようにするかという取り組みが専門家たちによって進められています。ここ数年のうちにはもっと身近になってくるらしいです。法律の面が整備され、間違いも極めて少なく分かりやすく安全性の高いシステムができれば、話しは違うと思います。

悪知恵はどんどん発達しますから、守る側といつもイタチゴッコ。安全性に絶対ということはないといわれています。でも、すこしでも危険が減らせるようにしなければなりませんし、おおよそ安全といえなければ、普及させるのは納得がゆきません。

それにしても、どこまで便利になれば気がすむのでしょうとも思います。


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