HAB Research & Brothers


続 悲しむべき東洋民族間の憎しみ

1999年08月28日(火)
 文 彬



 小稿「悲しむべき東洋民族間の憎しみ」が掲載されて以来、多くの方々から貴重なメールを戴いた。筆者だけしか読めないのが大変勿体無いと思われる程のご意見ばかりなので、ここで一部を公開させて頂く(事前にその旨を夫々の方に通知した)。また、メールを公開することによりご迷惑を掛けることのないように実名を伏せた。

 考えてみれば、たどたどしい日本語の文章にも拘わらず小稿が皆様の関心を引き寄せたのは、筆者が提起した問題は皆様も良く考えている問題だからだと思う。グローバリゼーションが進む中、特に最近のインターネットの目覚ましい普及により、普通の人でも簡単に外国人と外国文化に接する機会が増えた。又、これに伴って人々は今まで以上に外国の歴史、外国と自国との歴史を考えるようになってきた。とりわけ、中、日、韓三ヶ国の関係について考えなければならないのは、もはや政治家や研究者だけではない。

 「日本に対する感情はなぜほかの国々で特視されているのでしょうか。また、日本の国はなぜドイツのように公にそれらの国々に誤らないのでしょうか。」

 【3】、「『昔の日本人』と『今の日本人』が違うことを、なぜ理解してもらえないのでしょうか。」

 【4】と日本人は考えるし、韓国人や中国人も冷静に思索するようになっている。少なくとも筆者の意見は、中国人の中でも決して孤立した意見ではないと言えよう。

 中、日、韓が欧米諸国以上に特別の感情的葛藤にかられているのは、西洋の国々は中国から、遠い国であると共に、東洋民族でないことが上げられる。「敗戦から50年も経ているのに、何故日本が何時までも、恨まれるのかは、東洋民族同士の「近親憎悪」にもあるのではないか。要するに遠い国の、異人種の犯罪等など、50年も立てば、忘れてしまっても不思議はないと思う。」

 【9】。そもそも、国と国の関係は隣人関係と似たところが多い。距離的に、或いは文化的に近いほど、感情的な摩擦が多い。テレビで見た欧米人のパフォーマンスが格好良い。しかし、同じパフォーマンスをしたのが隣国の人なら、なんとなくわざとらしく、ぎこちないと感じたことはないだろうか。

 中、日、韓三ヶ国の間には感情的な問題は多い。感情的な問題を感情的に議論しても感情が高ぶるばかりで問題の解決にはならない。良い隣人同士の秘訣は摩擦が起こらないのではなく、摩擦があっても、素直に自分の非を認める。また、一歩譲って相手の立場を考えることにある。「中国人で、当時日本兵の残虐行為を知っている人なら、50年たっても忘れないのが普通だと思う。」【9】というような相手への理解でしこりが解ける。

 中国の諺「煉瓦を投じて玉を引き寄せる」の通り、筆者の幼稚な文章にこれだけの貴重なご意見を戴いたことは本当にありがたい。ただ、やや物足りないと感じているのは、小稿は日本語で書いた関係もあるだろうか、メールを下さった方全員は日本人である。同胞の中国人をはじめ、その他の国々の方のご意見も是非聞きたいと思う。

 上海の日本人駐在員と思われる方から強烈で、且つ感情的なご意見も寄せていただいた。余程何か不愉快なことがあったとしか考えられないが、「I have dream.」志向の読者には向かないと思うので省かせて頂いた。


【1】文さんの桜の文章はとても意表をつくものでした。日本人の心だと思っていた桜がこのような一面をもっているとは・・・。東洋民族間の友情と憎しみについて深く思いをはせました。(M.Bさん マレーシア)
【2】文章を拝見し、深く感銘を受けました。物事は様々な角度から考えて見る必要があると痛感しました。国の歴史を超えた、一人の人間として素直になって、日、韓、華の問題を見つめたいと思います。(H.Hさん 米国、サンディエゴ)
【3】日本に対する感情はなぜほかの国々で特視されているのでしょうか。また、日本の国はなぜドイツのように公にそれらの国々に誤らないのでしょうか。(J.Tさん CA 92630USA)
【4】主題の貴見拝読させて頂きました。日本人に対して冷静な判断をされている文章に触れ嬉しく思います。

私は、シンガポール・インドネシア、そして現在は香港と海外勤務を続けているサラリーマンです。過去の出来事(太平洋戦争)で嫌な思いをしたこともありますが、それより現地の友人を持てたことが喜びです。

かねがね感じているのですが「なぜ今の日本人が嫌わなければいけないのか」ということです。過去の日本人が行った蛮行、非道な行為は非難されて当然です。しかし、それは過去の日本人が行ったことで「今の日本人」「私」がやったのではありません。アジアの人たちは、なぜそこを理解してくれないのでしょうか。自分なりに分析してみました。

第一に、行政トップにいる人の考え方の違いです。日本人も戦争でひどい目に遭いました。原爆やシベリア拘留などです。日本のいいところは(敢えてそう言わせてください)、アメリカ人や旧ソ連人を憎むのではなく、戦争を憎むように教育方針を持ったことです。戦争を仕掛けて敗れた国としては、そう進めざるを得ないでしょうが。

一方、日本を憎むアジア諸国は、いまだに戦争よりも日本を憎むような教育を行っています。戦後50年以上経っています。この時間が長いか短いかは国民感情によって違うでしょうが、「昔の日本人」と「今の日本人」が違うことを、なぜ理解してもらえないのでしょうか。

閣僚が靖国神社へ参拝することに対し、アジア諸国はとても否定的です。戦犯者が奉られているのは別問題として、靖国神社に奉られているのは母国のために命を落した方々です。戦争崇拝ではなく、母国のために亡くなられた方々の冥福を祈ることが、問題なのでしょうか。

第二に、天皇問題です。実際に戦争を指導したのは大本営本部で天皇ではありません。しかし、当時の国民は「天皇のために」戦争に駆り出されました。その天皇は、国民に対していまだに謝っていません。むしろ行政は、象徴天皇をより推進しています。

日本の習慣では、部下が行った犯罪などに対して、「管理不行き届き」ということで上司が責任を取ります。たとえプライベートなことでもです。この習慣がいいか悪いかは、問題ではありません。とにかく日本人の習慣なのですから。これに従うなら、天皇は当時の日本の最高責任者として、何らかの責を負うべきだと考えます。

憲法で天皇は日本の象徴ということになっています。つまり「戦争時の最高責任者で、戦後何の責任も取らず、国民に謝りもしない天皇」が日本(人)の象徴なのです。

第三に、補償問題です。日本政府の主張は「補償問題は解決済み」で一貫しています。私はそれを信じたいと考えています。今日本に補償を求めている人たちは「国と国の問題は解決済みかもれ知れないが、国と個人の問題は未解決」という主旨のようです。「国と国の問題は解決済み」なのですから、今訴えを起こしている方々は自分の国に訴えるべきではないでしょうか。

一方、行政に携わっている人の訴えもあるようです。彼らは「XX問題は含まれていない」とか「あれは旧XX、前XXが合意したことで、国民の合意ではない。間違っている」というような論調です。補償問題の解決は、ある面で「国と国との駆け引き」。

今ごろになって補償問題を取り上げるなんて、国民の人気取りという印象を拭うことが出来ません。

この項、私自身が「合意書」を読んだわけではないので、間違っているかもしれません。個人の意見としてお考え下さい。

日本人の人種差別、これも問題です。東洋の中で、日本人が優れているなんてことはありません。勤勉?いえいえ、中国人やタイ人の方が日本人以上に勤勉です。繊細?いえいえ、日本人に中国の緻密な芸術作品を作るような繊細さはありません。 なのに、自惚れた日本人は「東洋人の中で、日本人が一番優れている」なんて思い込んでいます。恥ずかしいことです。

残念なことに、この思想がいまだに会社に残っていることです。現地従業員の中にも、会社に忠誠心を持つ優秀な人材が沢山います。ところが「現地人任せにしたら、ロクなことにならない」のぼせた日本人は、現地人の前で平気な顔をしてそんなことを言います。情けない話しです。個人の力なんて知れてます。しかし「今の日本人」を理解してもらうべく、行動していこうと考えています。(H.Sさん 在香港)


【5】[「恨屋及烏」(人を憎めばその人の住家の屋根にいる烏をも憎む=この訳は適切ではないが、名訳が浮かべない)は人間の感情......] ここをもし、慣用句的なもので表現をするのなら、「坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い」といったところでしょうか。既にお気付きだろうとは思いますが、念のため、メール致しました。 東アジアの隣人同士が真に信頼に基づいた近所付き合いが出来ていない状態は、もちろんのこと、日本人の中での外国人差別が根強く残っているのは悲しい限りだと思います。私は25歳ですが、我々若い世代を含め、地道にこの困難な問題を解決して行きたいと思っています。(K.Aさん)
【6】「悲しむべき東洋民族間の憎しみ」を読ませていただきました。全くその通りだと思います。マスコミ・ジャーナリストは、本当に報道の姿勢やその目的や使命というものを考えなければならないと思います。特に韓日間の問題に関しては、慎重にならなければなりません。まだまだ残る戦後処理の問題。国を動かせる術はないのでしょうか?国民の責任。国の責任。歯がゆいです。(I.Hさん 大阪)
【7】萬晩報 で、貴方の書かれた記事を読ませていただきました。一人の日本人として、感想を書かせていただきます。私はいわゆる戦後生まれですので、戦争中の不幸な出来事には直接関与しては居りませんが。でも、自分はそのとき生まれていなかったからといって、「知らない」とも言えないですよね。

倪萍さんの「私は桜が嫌い」という文章を読んで、考えてしまいました。我々一般の日本人の感覚では、50年も前のことはすでに「歴史」に属することであり、その行為の責任については、もし謝罪をする必要があるとするならば、政府が公人として行えばいいのではないかと言う気持ちがあるろうに思います。

でも、韓国や中国の方たちで、自分が直接その体験をされた方たちにとっては、「自分の体験した過去の人生経験」なんですよね。そこのところがわかっていない日本人が多いと思います。かくいう私も、さきの中国首相の日本における発言には、若干の抵抗を感じた一人なのですが・・・。

一人一人の心の中には、何年たっても過去の出来事は「歴史」にはならずに残っているという事で、ただ、それは被害を加えたほうよりも、被害を受けられた方のほうがより強く残るという事なのでしょうか。

私も心情的には倪萍さんの言われることはよく判ります。でも、「時が癒す」という事もあると思うのですが。それを、政府やマスコミが意図的に「過去を忘れない」として行うのはどんなものでしょうか・・・。

最近の韓国については、金大中大統領の方針によってかなりよい方向になっているようで、非常に我々一般の日本国民にとってはうれしいです。大統領自身に日本人の友人が多かったことも、このような成果に結びついたと思いますが、一般の韓国の方たちにとっては、やや釈然としないものが残るのではないかとも思っています。が、むしろ心配なのは中国の方かもしれませんね。

中国首相があのような発言を繰り返したという事は、その国民の中に、(我々が思っている以上に)根強い「過去へのこだわり」があるということなのでしょうか。

中国残留孤児のかたがたに与えた、中国の国民の人道的人間愛を見て、今まで中国の方のほうが韓国の方に比べて「過去へこだわり」が少ないように思っていた日本人も多いと思います。

でも、我々日本人は、理性と感情は別という「当たり前」のことを、見落としているのかもしれませんね。特に日本人は「過去にとらわれない」というか、「過ぎたことはすぐに忘れて、未来にばかり顔を向けたがる」傾向があるようですし・・・。やはり、これからの草の根の信頼醸成のプロセスが大切なのだと思います。(M.Hさん)


【8】すばらしいエッセイだと思いました。しかし、一つ疑問があります。お名前から察して、中国人の方ですか? 本文中にもそのような表記があったと思いますが。おかしな質問かもしれませんが、もし中国人の方なら、こう言た立場を取られる事で他の中国人の方に責められたりすることはないんですか?私は日本人ですが、この文章を読んでひどく感動しました。これは私が日本人だからなんでしょうか?(H.Kさん)
【9】「私は花が好き、但し桜は嫌い」。中国人で、当時日本兵の残虐行為を知っている人なら、50年たっても忘れないのが普通だと思う。私は67才の日本人の男子であるが、やはり春の桜の花は好きだが、、桜に碇に代表される、軍国主義を思い出す。朝鮮半島・中国・東南アジアを苦しめたあの侵略戦争である。

桜は日本を代表する花であることは事実である。国旗国歌法案が話題になっているときに、高名な評論家が、国旗を桜にし、国歌は箏曲の桜を取り入れたものが良いと、インターネットで流していた。私は反対意見を入れたが、日本人の我々でも、桜にたいしての考えが、かなり異なるのも事実である。

当時ヨーロッパの強国も中国を侵略したが、中国人は恨んでいないとおっしゃいますが、これらの国々は中国から、遠い国であると共に、東洋民族でないことが上げられる、犯罪行為が、日本の方が残虐であったのが、原因のひとつではないかと思う。

敗戦から50年も経ているのに、何故日本が何時までも、恨まれるのかは、東洋民族同士の「近親憎悪」にもあるのではないか。要するに遠い国の、異人種の犯罪等など、50年も立てば、忘れてしまっても不思議はないと思う。なんと言っても、敗戦の時に「終戦」等とごまかしていないで、ハッキリと世界に降参して、相応の謝罪をしなかったから、いつまでも尾をひくのではないか。


【10】憲法で天皇は日本の象徴ということになっています。つまり「戦争時の最高責任者で、戦後何の責任も取らず、国民に謝りもしない天皇」が日本(人)の象徴なのです。(H.Sさん 香港)
 文さんへメールはbun@searchina.ne.jp
 中国情報局のホームページはhttp://searchina.ne.jp/

 トップへ 前のレポート


© 1998-99 HAB Research & Brothers and/or its suppliers. All rights reserved.