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草の根が広げる選挙の公開討論会

1999年02月20日(土)
萬晩報主宰 伴 武澄



 選挙を市民の手に取り戻すため候補者を集めた「公開討論会」を開催するネットワークが全国規模で広がっている。1996年2月の京都市長選を皮切りに市長選では17カ所、知事選6カ所、衆院選2カ所、98年参院選23カ所、計48カ所で開かれているから驚きだ。

 それぞれ政党色はなく、呼び掛け人は地域に住む会社員であったり、企業経営者、主婦などさまざま。特に学生のがんばりが目立つ。多くは数百人規模だが、長崎知事選では1900人、八代市長選でも1200人の参加があるなど日を追って注目度を高めている。

 公開討論会の特筆すべき点は候補者全員を説得して壇上に立たせ、政見を発表するだけでなく聴衆からの質問にも答える機会をもたらしたことである。

 旧来の選挙では、候補者それぞれが個人演説会と名打って支持者を「動員」し、忠誠度を試すような会合を小まめに開くことが中心で、一般の市民が参加し、しかも候補者全員の考えをまとめて聞くチャンスはなかった。1973年までは「立会演説会」で各候補が順番に政見を開陳する場があったが「誹謗中傷の場になる」と同年の公職選挙法改正に廃止された。

 ネットワークの中心は東京都赤坂に本拠を置く「地球市民会議」。代表幹事の小田全宏さんは東大法学部を卒業後、松下政経塾入りし、1995年に環境問題や教育、政治経済への提言を行う同会議を設立した。15人の幹事のうちほとんどがそれぞれの地域で公開討論を実現させた人たちで、4人が学生である。

 小田さんが1998年2月、エポック船橋主催の講演会で「公開討論会のススメ」を語っている。

「知的レベルの高い人ほど投票率が低いのは先進国では日本だけ。9割が義理人情で投票している。義理人情が悪いとは思わないが、せめて半分の議員は政策で選ばなければならない」
「アメリカの議員には毎日100通以上の手紙が来る。ほとんどが議会発言に対する賛否の意見だ。日本の議員への手紙のすべてが陳情だ。この現実をみなさんどう思いますか」
 公開討論会の開催では、まだ現職候補が新人候補と対等の場で議論するのを嫌って参加を見合わせたりするケースも少なくないが、長崎知事選でマスコミが大々的に取材するようになってから、風向きの変わってきている。

 彼らの活動はThink Japanの大塚寿昭先生からのメールで知った。以下、ネットワークの一人林聡志さんからのメール内容を紹介する。

 ◆愛媛県のメディアを独占した公開討論会
 今までに全国各地で中立公平な市民の主催による公開討論会が開催されています。例えば、12月10日松山市で開催した「知事候補と語ろう」公開討論会では、現職知事を含めて4人の候補者の生の声を聞きに、県民800人が参集し、その様子はマスコミに取り上げられ大盛況でした。午後7時から2時間にわたる議論を愛媛CATVを完全生中継、県内各地のケーブルテレビ局向けに中継録画ビデオを配信しました。

 地元の愛媛新聞は翌日朝刊1面の他に3面、さらに8、9面では見開きで討論会の模様を掲載した。そもそも地元民放4社の合同開催で、ラジオも含めて数日間、公開討論会の議論は愛媛県のメディアに流れ続けた。「スッ凄い」です。愛媛新聞社・県知事選特報を見て下さい。

 ◆お祭りのようで本当に面白いんです
 このように、現在全国各地で公開討論会が広まりつつあります。市民が主催し、中立公平に行われる公開討論会は、私達有権者にとっても、候補者の生の声が聞けるだけでなく、参加していただいた候補者にも喜んでもらえています。また、過去の例をみても投票率が平均して約10ポイントアップしているなど有権者の関心を促すものでもあり、社会的にも意義あるものです。

 また、この活動をしていていると、お祭りのようで本当に面白いんです。これはあなたの町でもできることです。これまで公開討論会を開催してきた方のほとんどは、学生、主婦、会社員、JCなど、ごく普通の市民が数名で実現したものです。あなたもほんの少し勇気を出して、自分達の街で公開討論会を開いてみませんか。公開討論会をしたいという方を募集しています。一緒にやりませんか。

 この公開討論会を行う条件は、政治的に中立であることが必要です。また、あくまで公開討論会を実現させることが目的ですので、公開討論会終了後は”公開討論会を実施する会”は解散します。決して圧力団体にならない様、細心の注意をはらわなければなりません。

 ◆日本の政治を大きく変えるキッカケに
 神奈川では知事選挙の他に市長選や県会議員選挙で公開討論会の実施を予定しています。注目の都知事選のほか、都内各地で準備されています。そのほかにも、全国各地で予定しています。

 マスコミもおおいに注目しています。現在、神奈川県と東京都知事選の公開討論会の動きをニュースステーションがドキュメントとして追っ掛けています。(3月24日ごろ放送予定)

 さらには、日本電算機(株)の石井孝利社長(東京インターネット創設者)の好意によりこの公開討論会のインターネットライブ中継の実験が可能になりました。これは全国ではじめてのことです。もちろん、その後もホームページでみることができます。もしかしたら、日本の政治を大きく変えるキッカケになるかも知れません。これからも注目してください。

◆これまで開催された各地の公開討論会
市長選(17) 京都市、名古屋市、藤沢市、船橋市、鎌倉市、神戸市、市川市、八代市、津市、浦安市、福岡市、逗子市、近江八幡市、和歌山市、岡山市、広島市、小野市
知事選(6) 宮城県、長崎県、滋賀県、香川県、沖縄県、愛媛県
衆院選(2) 埼玉11区、宮城6区補選
参院選(23) 北海道、宮城県、山形県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、長野県、福井県、静岡県、滋賀県、京都府、兵庫県、島根県、岡山県、広島県、福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、宮崎県、鹿児島県

◆関連リンク集
リンカーンフォーラム http://www.r-u.com
名古屋市長選公開討論会 http://www.user.aimcom.co.jp/~matswra/city/index.html
市川市長選公開討論会 http://www.shutoken-shiminkaigi.org/chiba/ichikawa.html
長崎県知事選合同個人演説会 http://member.nifty.ne.jp/uranaka/koukai.html
産經新聞(98参院選) http://www.sankei.co.jp/databox/paper/9805/12/paper/today/national/na1/
愛媛新聞(県知事選特報) http://www.ehime-np.co.jp/99chijisen/taiwa.html

◆問い合せについて  お手数ですが、以下のアドレスに<cc>でお問い合わせください。
林 聡志<s-h@mail.t3.rim.or.jp>
内田 豊<uchiday@ann.hi-ho.ne.jp>
リンカーン・フォーラム事務局<webmaster@r-u.com>

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