TopPage
 Yorozubampo Since 1998
サイト内
ご意見 無料配信


ウガンダより、日本を考える

2007年10月17日(水)
Uganda Moyo通信員 伴 正海
 初の執筆作業となります。本HP主催人伴武澄が長男、正海と申します。現在、横浜市立大学医学部医学科5年次を休学中、東アフリカ内陸の地ウガンダにて医療系NGO研修中の身(19年8月末−20年2月末予定)であります。かねてよりこの萬晩報において何か一筆、と思っておりましたが、こういうものは書こうとして何かが浮かぶものではなくふとした時に頭をよぎるものでありました。若輩ながら、参加させていただきます。

 現在いるのはウガンダ北部に位置するモヨ県。隣国スーダン南部と接し、約2−3万人のスーダン難民を抱えている。所属N GOはAfrican Development and Emeregency Organization(ADEO)。本部をケニアに置き、ケニア、ウガンダ、スーダン、シエラレオネ、ソマリア(事務所開設予定)の5カ国に展開し、HIV問題などにあったている。

 その中でもここウガンダでは難民を対象に保健医療衛生を扱っているため、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)から支援を受けて活動している。

 まず、日本でおそらく多くの人が持っているであろうイメージの「難民」はここにはいない。仮設テントのようなところで人がひしめき合っているというメディアが好むような映像はここにはない。あるのは、現地民と何も変わらずに生活し民で、現地スタッフでさえ難民か国民かの区別も出来ないという状況である。

 ウガンダの医療制度はかなり整っている。各県に大きな中核病院を持ち、地域にはいくつものヘルスセンター(H/C)を備えている。そのH/Cはレベル1から4まであり、数字が上がるにつれて規模も施せる治療もレベルアップしていくというものだ。

 地域医療の中心を担っているはレベル2、3だが、そこに医師はいない。医師未満看護師以上という感じのクリニカルオフィサー、看護師、看護助手、助産師、そしてコミュニティーヘルスワーカー(CHW)と呼ばれる人々によって運営されている。このCHWは民間人から募集されており、モヨでは国民でも難民でもなれる。そして薄給ながらちゃんとした給与をもらっているのだ。

 このような状況を目の当たりにして気付かされたことは、途上国では人手は足りているのではなかろうかということ。特に専門的な知識や技術を必要としない限り、医療行為であってもここには人材があるのだ。先進国の人間がここに来てやれることなどほとんどと言っていいくらいない。彼らは自分たちでかなりのことをやれるのだ。

 ここに先進国の人々が「途上国のために働く」と言って入り込んだらどのようなことになるだろうか。彼らの雇用機会を妨害するのだ。そればかりか、先進国の人間は現地語が話せない、現地の生活様式を知らないというディスアドバンテージを持つ。結果、「ありがた迷惑」という言葉がぴったりの状況が出来上がってしまうのだ。

 彼らはこれまで何百年という長い年月をかけて今ここにある生活リズムを作り上げてきたのだ。そこに先進国が「あれやれ、これやれ、それやれ」と言ったところで先進国のように変えられるはずがない。

 しかも彼らは何も焦ってなどいないのだ。彼らは自分たちの住みなれたこの環境や人々、生活をとても楽しんでいるように思われるのだ。医師などを含む知的層の集まったスタッフでも、悲観的にはなっていない。ゆっくり、何十年かして徐々に良くなればいいんだと言う。

 戦後、順調に成長を遂げてきた日本とは異なり、この大陸では今現在においても紛争が絶えない。今も数十キロ先にある隣国スーダンでは紛争秒読み段階に近付いてきている。ウガンダではムセベニ政権になり国も落ち着き、北部のLRA(神の抵抗軍)との和平も進んでいる。まさにこれからだ。

 これから徐々に教育レベルも上がり、国を支える中堅層が育ち、彼らが今の腐敗しかかっている政府を変えていくのだ。英語を意のままに使える彼らは我々日本人よりも世界で働くには有利でもある。

 ここの人々はいつも快く挨拶してくれる。そして話をしてくれる。
 ある人が言った。

「日本は戦争で何もかも失ってから僅かの間にとてつもなく成長した。脅威を覚えるよ。でも、尊敬するよ。」

 ここウガンダでは道行く車がほぼ日本車という車事情である。トラックもなにもかも。だから日本という国を多少は知っているのだ。そしてある程度の知識層になるとそこに歴史という知識も絡んでくる。その知識層たちが明日のウガンダを担っていると言っても過言ではなかろう。

 その彼らが日本という国の経済発展などをいくつかのアジアのように手本にしようとしてくれたら、と願ってしまった。その時は、どうぞ手を貸しましょう。お金だけではなく、ヒトの交流や技術もお教えしましょう。

 この話はウガンダのほんの一地域しか経験していない筆者の思うところではあるが、他の国や地域でも似たようなことになっているのではないだろうか。

 伴正海にメールはumi0625@yorozubp.com
 Yahooブログ ナイル川のほとりの伴

TopPage

(C) 1998-2007 HAB Research & Brothers and/or its suppliers.
All rights reserved.