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国会議員の劣化現象―「ケータイ・パチリ」

2007年10月03日(水)
萬晩報通信員 成田 好三
 国会議員にとって、命の次に大事なものは何だろう。背広の左襟につける議員バッジだろうか。激戦の選挙を潜り抜けてようやく手にした権威と権力の象徴である。これを身に着けていれば、国会内はフリーパスになる。

 しかし、今どきの国会議員にとっては、議員バッジより大事なものがある。権威と権力の象徴といった情緒的なものではない。もっと実利的なものである。今どきの国会議員は、これがなくては一日たりとも生きていけない。命の次に大事なものと言っていいほどのツールである。

 もってまわった言い方をしたが、それがケータイ(携帯電話)である。人事など政界の重要情報のほとんどは、このツールを通して流通している。70歳を過ぎた老政治家でさえ、ケータイを使いこなせないようでは、政界を生き延びていくことはできない。

 筆者は、国会議員にとって最重要なツールとなったケータイに目くじらを立てているわけではない。便利な道具は、使いこなせなくては損である。そればかりではない。情報過疎は、政界ばかりではなく、他のあらゆる分野においても、致命的な結果を招く原因になる。

 しかしである。あの場面での国会議員の皆さんの、「ケータイ・パチリ」には目を覆いたくなった。安倍晋三前首相の突然の辞任表明に伴って行われた、9月23日午後の自民党総裁選である。劣勢とされた麻生太郎氏が予想外の得票を得たが、絶対本命候補とされていた福田康夫氏の当選が決まった直後である。

 その時、自民党の国会議員で埋め尽くされた会場の前列中央付近から、数多くのストロボがたかれたのである。報道カメラマンのストロボではない。会場から多数の国会議員がケータイを開いて、壇上に上がった福田氏に向けて、ケータイ・カメラのシャッターを切っていたのである。会場には各都道府県連幹部もいたが、地方の県連幹部がこんな位置にいるはずがない。

 ケータイで撮った福田氏の写真を。彼ら、自民党の国会議員はどう使うのだろうか。秘書や事務所職員、支持者、家族らに見せびらかすのだろうか。それとも、議員本人のブログにでも、議員撮影とクレジットを入れて載せるのだろうか。

 いや、そんな詮索はどうでもいい。彼らの行為は、自民党総裁が決定する場面にいる、しかも決定の当事者の行為とはとても思えない。韓流スターを追っかけるおばさんたちが、成田や羽田の空港でケータイ・カメラを若いスターに向ける姿と、何ら変わりがない。

 自民党の国会議員が、自民党総裁に当選したばかりの人物に向けて、ケータイ・カメラのシャッターを切る場面は、NHK・TVによって、全国に生中継された。この場面こそ、昨今の国会議員の劣化現象を表す、象徴的な場面と言えるだろう。

 この場面に関しては、もう1つ不思議なことがある。こういった映像に極めて目ざとい民報TVのワイドショー(最近は情報番組と称している)が、この場面を取り上げないことである。通常なら、何度も同じ映像を繰り返して、「刷り込み」行為を平然と行う彼らだが、この映像に限っては放送を自粛している。TVメディアもまた、表向きとは裏腹に、腰が引けている。(2007年9月28日記)

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