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非マスコミの力・・・萬晩報

2007年04月04日(水)
Nakano Associates シンクタンカー 中野 有
 ワシントンのシンクタンクが開催するセミナーやシンポジウムに朝から晩まで、出席している。何がそうさせるのか自分でも理解に苦しむ時がある。国際フリーター、NGI(非政府個人)である筆者の力なんて一滴の水に等しく水泡に帰するのはよく分かっている。

 でも、白洲次郎氏の次の言葉は今も生きているように思われてならない。「アメリカの生産能力をほんとに知っている人が、日本の中枢に一人おったら−1人じゃ弱いだろうけれど、3人おったら、戦争は起こらなかったよ。みんな知らないんだ」。

 中国、ロシアを中心とする上海協力機構の拡張がG7や半世紀を迎えたEUに大きな影響を与え、確実に21世紀の新国際秩序の構築が始まっている。今ほど、日本の地球世界における役割を明確に考察する必要性がある時は、ないと思われる。

 ワシントンで学んだメディアとは、真実と噂と嘘の3つしか伝えないということである。しかし、情勢の変化により、真実が嘘や噂に化け、噂や嘘が真実に限りなく近づくこともあるように思われてならない。例えば、ブッシュ政権から次のShe or Heの大統領になるプロセスにおいて、真実、噂、嘘が程よく調合され化学のように化けることがあるように思う。

 メディアに大きな影響力を与えているのがシンクタンクである。シンクタンクには、世の中を動かす意思が明確にある。アメリカのメディアにも意思があるように思う。その点、日本のメディアの目的は、シェアを増やすことか、真実を伝えることか、世の中を動かし安定と発展に寄与することか・・・

 約10年前に共同通信の伴武澄さんがデスクになられ、書きたいことも書けなくなった時に、「かぼちゃ」という大阪の小料理やさんのカウンターの席で口こみでスタートしたのが萬晩報である。その萬晩報が、先日、500万のアクセツを越えた。萬晩報はもはやメディアの公器である。との伴さんの想いは、真実か噂か嘘か知る由もないが、非マスコミのパワーが地下から湧き出ているということを信じたい。

 萬晩報にぼくがコラムを描きはじめて9年。約120本のコラムを描かせてもらった。最も嬉しい反応をたまたまインターネット上で見つけた。小久保厚郎さんの非マスコミの力を読み、萬晩報をはじめとするインターネットのコラムがシンクタンク機能を果しているのではないかという思いを強く持つことができた。現場の空気から直覚することができる真実をタイムリーに伝えることにより大手メディアの死角を埋めることが出来るように思う。
 http://www.randdmanagement.com/index.htm

 非マスコミの力…  2007年3月3日、イランのMahmoud Ahmadinejad 大統領と、サウジアラビアのAbdullah 国王がリヤドで会談を行なった。
 空港まで、国王が出迎えるシーンの写真が配信された。最高権力者ではない政治家を迎える姿勢としては異例の扱いだ。
 イラン戦争を避けようとの動きがようやく始まったようだ。(1)

 さて、それでは、日本のマスコミはどんな報道姿勢か見てみようと、Google ニュースで“イラン”を眺めてみた。一番上位は「スケープゴート・イラン空爆の可能性」(2)[萬晩報]
 主要なマスコミ以外の報道も取り上げる仕組みになっているとは知らなかった。

 ちなみに、関連記事は48 件. 以下のような記事.
 ・ 「イラン・サウジが域内緊張緩和へ協力、米圧力けん制で」 [読売新聞]
 ・ 「対イスラエルで軟化 イラン大統領がサウジ国王に表明」 [朝日新聞]
 ・ 「宗派抗争の拡散阻止で一致・イラン大統領とサウジ国王」 [日本経済新聞]

 このニュース、ワシントン在住 中野有 氏の2007年3月5日付の論評。
 “ニューヨークタイムズ、2月26日の読者投稿欄のイラン国連代表部の広報担当官の意見が目に留まった。”というもの。“ワシントンのシンクタンクの議論から、イランへの攻撃を回避する勢力はどこに存在しているかと考えさせられる。”との主旨。その通りだ。

 米国、イスラエル、イランの、どの国も、戦争に踏み込めばえらいことになるのは自明。しかし、いつでも戦争に踏み切れる準備を着々と進めているのが実態。戦争に向かっているとの報道が増えて当たり前だろう。しかも、いずれの国にも、戦争期待勢力が存在するのだから。

・米国、イスラエルは、イランの核の動きは容認できない。国内世論は、イラン許すまじ調だ。
・イランでは、強硬姿勢の現政権の人気は急落中。経済不調だからだろう。しかし、言論統制で抑え込む政治ではないから、大国ペルシアとしてのアイデンティティを求める流れには逆らえまい。欧米の主張に妥協で応えるのは極めて難しい。

 直接戦乱に係わらない国も、自国の利益を考えると、戦乱阻止に動くとは思えない。

 ■ロシアにとっては、イランでの緊張は、エネルギー価格高騰での収益増を意味する。中東が安定してしまうと、天然ガスの国際カルテルの道も閉ざされかねないし、原油価格が50ドル以下になり、経済繁栄も終わりを告げるかも知れない。
 ■中国は、中東問題でゴタゴタが続くうちに、アジ/アフリカ地域での影響力を強化して、資源確保を図りたかろう。
・日本は、イランの原油依存度が大きいから、本来なら戦争回避に動くべき立場にあるが、日米軍事同盟維持が最優先課題なので、だんまりをきめこむ。
 ■アラブ民族国家は、イランの大国化を抑えたい。しかも、フセイン処刑が、イランと繋がっていると言われるシーア派イラク政権による報復であることが広く知られてしまった。それだけではない。ヒズボラやハマスがイランの支援を受けている。サウジアラビアにとって、イランの脅威は現実問題なのである。

 ・・・こんな状況を踏まえて議論ができる場が増えればよいのだが。

 政治に絡む話は、検索をかけると、文字通り五万とかかってくる。しかし、ほとんどは中傷誹謗を書き連ねた文章で埋まっている。専制国家並みの、議論許さず型をお好みの人がいかに多いかよくわかる。
 もっとも、表だった意見表明を避け、ともかく上手く立ち回るだけの人達も多いから、それよりはましとの話もあるが。

 こんな話をすると、質が高い小さなメディアが活躍していうように聞こえるかもしれぬが、期待しない方がよい。
 中野有 氏のような人がそこらじゅうにいる訳がないからだ。

 例えば、ロシアで、なにがおこっているか、見るとよい。ここではメディアが権力に握られているため、LiveJournaブログ“ZheZhe”が報道機関を兼ねている。そのお蔭で、極右勢力の影響力が強まっているのだ。(4)
 ブログが流行るということは、質の悪いメディアが増えることでもある。

 なかの たもつ (ワシントンと京都を拠点とするシンクタンカー、専門は北東アジア研究、国連職員、米国立イースト・ウエスト・センター、ブルッキングス研究所などに勤務)
 中野有 web site http://mews.halfmoon.jp/nakano/
 中野さんにメール nakanoassociate@yahoo.co.jp


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