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主要国首脳会議(サミット)を京都で

2007年03月28日(水)
Nakano Associates シンクタンカー 中野 有
 来年の主要国首脳会議(サミット)は、日本で開催される。誘致合戦に伴う日本の報道、とりわけ京都府の山田知事の「関西誘致は厳しい状況になっている」とのコメントに接し、コラムを発信したくなった。筆者が京都出身だから京都や関西サミットの誘致に期待するという、そんな小さな問題でなく、世界のため に日本が、そして京都が今日ほど地球世界に明確なメッセージを伝える機会がないと考えるからである。

 先日、アル・ゴア元副大統領がキャピタルヒルの上院と下院の公聴会で地球環境問題についての証言を行なった。ゴア氏がオスカー賞を受賞した事、ノーベル平和賞への有力候補、そして次期大統領への期待感からキャピタルヒルは、大変な熱気に包まれた。ゴア氏は、公聴会にて「キョウト」という今や地球環境問 題のキーワードを何回も発したのである。ブッシュ大統領も頻繁に使う「キョウト」という響きは今や、歴史文化の京都のみならず、地球環境問題の「キョウト」という世界が共有するインパクトのある響きになっている。

 1975年にフランスのジスカール・デスタン大統領の音頭でパリ郊外のランブリエ城にて最初のG7サミットが開催された。毎年、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの順で西側主要国の首脳が、経済問題のみならずグローバルな問題を討議している。1998年よりロシアが入りG8サミットとなった。

 今年のドイツのサミットに続き、来年の34回目のサミットは、日本で開催される。日本では東京で3回、沖縄で1回開催されている。来年のサミットに向け、サミットの経済効果などの期待から日本各地で誘致合戦が激しくなっている。現在、関西、横浜、新潟、瀬戸内海、北海道が有力候補地として挙げられている。治安の問題などを考慮すると北海道の洞爺湖サミットが有力との報道もなされている。

 このような最近の報道に接し、筆者は、如何に京都でサミットを開催することが重要であるかを問うてみたく思う。

 1.地球環境問題の京都

 今年のドイツでのサミットの主要議題は、気候変動対策、すなわち地球環境問題である。まるで、来年に向けた京都サミットへのメッセージである。前述したようにブッシュ大統領もゴア元副大統領も地球環境問題のメッカとして京都を捉えている。

 2.京都が持つ文化のソフトパワー

 G8サミットで日本は唯一のアジアの代表国である。中国は、上海協力機構などを通じ、経済面のみならず外交、安全保障の面でも米国に並ぶ主要国になりつつある。ゴールドマンサックスやドイツ銀行によるとBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の経済力は数年後には、西側に並び、約 20年後にはBRICsの経済力は、西側の倍になるとの信じられない予測がなされている。韓国は、国連事務総長の地位を確保し、国連の多国間外交の舞台で力を発揮している。

 相対的に西側の経済、外交、軍事パワーが弱くなり、中国、ロシア、インドの旧共産国、社会主義国の勢力が増強される中、日本の非軍事、すなわち文化のソフトパワーが重要な役割を担うと考えられる。日本はG8の唯一のアジアの代表としてアジアの意思を地球世界に伝達すべきであり、その適役が京都であ ると考察する。

 第1回のパリのランブイエ城で開催されたサミットでは、首脳たちが暖炉を囲み議論を行なった。京都の祇園や先斗町で舞妓さんを入れ、世界の首脳が京都盆地のしなやかなソフトパワーが醸し出される雰囲気の中で、地球環境問題のみならず国際テロ、核兵器等の問題が議論されることで日本の 外交力が発揮できると考えられる。

 3.日本をアピールする

 先日、ワシントンのウッドロー・ウィルソンセンターにて冷戦の終焉に関しレーガン、ゴルバチョフ、中国の視点でのシンポジウムが開催された。米国はソビエトに勝利し、冷戦が終わったが、日本は百年以上前にロシアのバルティック艦隊を破っているのである。その後、日本を中心とする大東亜共栄圏の構築 に動いたが、2度の原爆の洗礼を受け、平和国家になった。冷戦中は米ソの双方で5万発の核兵器が製造されたが、広島と長崎の悲惨な経験が生かされ奇跡的に核戦争が回避されてきた。終戦直前に米国が原爆の標的委員会を設立し、数回の会合を経て最終的に京都への原爆投下が決定された。しかし、京都を良く知るグレー大使やスティムソン陸軍長官が、トルーマン大統領 に進言し、京都は原爆投下から免れたという歴史的経緯がある。

 京都を救った人物 ヘンリー・スティムソン
 http://www.yorozubp.com/0603/060313.htm 

 広島と長崎は原爆の犠牲になり申し訳ないのだが、原爆投下から救われた京都は、京都の持つ平和のソフトパワーを世界に発信する使命を有しているように考えられる。

 中国の経済、外交、安全保障のパワーを通じたアジア、そして世界の中心的存在、そして韓国の国連外交の成果を鑑みると、日本のソフトパワーを十分に発揮できる可能性が高い京都は、来年のG8サミットの開催地として最も相応しいと考察される。横浜、新潟、北海道、瀬戸内とそれぞれ魅力的な候補地が挙 がっているが、今ほど日本が国益のみならず地球益のために貢献するに京都がG8サミット開催に相応しいと思われることはないと考察する。

 なかの たもつ (ワシントンと京都を拠点とするシンクタンカー、専門は北東アジア研究、国連職員、米国立イースト・ウエスト・センター、ブルッキングス研究所などに勤務)
 中野有 web site http://mews.halfmoon.jp/nakano/
 中野さんにメール nakanoassociate@yahoo.co.jp

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