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十六夜の名月に思う日中首脳会談

2006年10月07日(土)
萬晩報主宰 伴 武澄
 今夜は台風一過の東の空に十六夜の月が上がった。昨夜の東京は風と雨の夜となり、仲秋の名月を拝むことができなかった。十六夜とはいえ、名月を拝むことが出来ることはありがたいことである。

 京都に住むガールフレンドに思わず携帯電話して「東の空をみてごらん。十六夜の月がきれいだよ。どこで月見しているのさ」と聞いた。返事は「いま雨が降り出したの。昨日の夜、10時ごろ空が晴れて仲秋を見れたのよ」ということだった。そうか、西日本では台風の影響がなかったのだと羨ましかった。

 関西に何回か住んで仕事をしたことがあるが、仲秋が近づくと関西のマスコミは一斉にその日の天気を気にし出すのである。人々は新聞やテレビ・ラジオを通じて、今年もまた仲秋がやって来るのだということを実感して、今年はどこで“だれと”中秋の名月を愛でようかと考えるのだ。これは関東にはない日本の風雅であろうと思った。ビジネス一辺倒の東京では味わえない会話が今も関西にはあるのだということを忘れてはならない。

 明日は安倍首相が中国の胡錦濤総書記と会談する。名月を愛でる風習は東洋の美徳であろう。日本はアマテラスという太陽神を崇める国家ではあるが、実は心は名月にあるのだ。この心は中国も韓国も一緒であろうと思う。ちなみに月読尊(ツクヨミノミコト)はアアテラスの妹なのだ。

 中国で仲秋を祭る時、忘れられないのが月餅である。私事であるが、昨年、高知工科大学に勤める姉が昨年、中国に出張して中国の月餅をたくさん買ってきて中国人留学生にお土産にしたそうだ。中国人留学生の喜んだこと、ひとかどではなかったそうだ。

 かつて名月をはさんで日中が同じ感傷にふけった史実がある。奈良時代、遣唐使として唐に渡った阿倍仲麻呂が故国の名月をしのんでうたった和歌「天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出でし月かも」を思い出す。

 昨夜の北京の天気は知らない。でも明日の夜、安倍首相が「一昨日の名月は愛でましたか。いや東京は大雨でして残念しましたが、十六夜は美しい月でした」なんて話し掛けたら一気に盛り上がるのだろうと思う。

 さらに新宿・中村屋の月餅の由来について「孫文と関わりが深いのです」とでも語れば、日中は再び新しい友好関係を築けるはずだ。

 東京の新しい家の庭には植えたばかりのホトトギスと紫式部のむらさきの花が咲き誇っている。

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