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「政凍経冷」の警鐘

2006年01月16日(月)
早稲田大学アジア太平洋研究センター特別研究員 文彬
年末年始にかけて経済界の景気回復に対する自信はより鮮明になってきている。産経新聞が昨年12月上旬に主要企業123社を対象に実施したアンケートによると、96.7%の企業が景気回復を確信しているという。また、年明けの企業トップインタビューでも楽観的な声が圧倒的に多く、世間騒がせの村上世彰氏も今年の日経平均株価は2万円になってもおかしくないとの見通しを示した。

尤も不安もある。その中には中国と関係する点が二つあると指摘されている。中国経済の腰折れと「政冷経熱」である。中国経済が腰折れするかしないかは知る由もないが、「政冷経熱」はこれからの日中経済関係、ひいては日本経済に影を落としかねない。いや、既にその影響が出ていると認識すべきであろう。伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎氏は新春恒例の経済界のパーティーで「政冷経熱と言われていたが、いまは『政凍経冷』だ」と危機感を露にした。

先日、大手商社の現地スタッフとして20年以上も国際入札の現場に立ち会ってきた友人のS氏からこんなことを聞いた。今、日本勢は完全に欧米勢に負けている。技術でも、価格の問題でもない。中国のプロジェクト担当者がほとんど心理的に日本勢を排除しているからいくら努力しても無駄だと言う。中国高速鉄道、原発など大型プロジェクトにおける日本企業の落札連敗の衝撃はそのまま企業の収益に響くものに違いない。

一方、中国側も得をしたわけではない。鳥インフルエンザがきっかけで始まった日系企業の第三国へのシフトは年々加速している。リスク分散のためにもインドやベトナムへの投資を考え直さなければならない、と筆者も日本企業の経営者から幾度となく聞いている。投資対収益からから見ても企業の長期戦略から見ても本来は中国がベストセレクトだったにもかかわらず、である。

小泉首相の総理として最初の靖国神社参拝は2001年8月13日だった。それ以来、日中両国トップの相手に対する強硬姿勢は年々エスカレートしている。それぞれ政治家としてのお家事情があることは察するが、もう少し胸襟を開き大局を見据えた長期的な視野でこのあるべからざる「コールドウォー」を早く終わらせてもらいたい。

 文さんにメール mailto:bun008@hotmail.com

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