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衆院を制圧した自民党の先に見えるもの

2005年09月14日(水)
萬晩報主宰 伴 武澄
 与党の自民・公明で327議席。総選挙の結果はだれもが驚くものだったに違いない。小泉自民党に風が吹いたことは確かだが、小選挙区制というものは争点次第でどちらかに大きくなびくのだということを知らされた。自民党執行部は決してこの結果を喜んでいるはずはない。ポスト小泉の選挙で逆のことが起きても不思議はないということに不安を抱いているはずだ。

 今回の総選挙の争点は「郵政民営化」だった。何と言っても衆院を解散した小泉さんが「国会で否決された民営化法案の是非を国民に問いたい」と論戦を挑んでいるのに、岡田さんは「争点は年金と子育てだ」と言った。この時点ですでにボタンの掛け違いがあった。

 小泉さんは春先から熱を帯びていた国会での郵政民営化の論戦を“場外”である選挙という場に持ち込んだ。これについての議論はあるものの、選挙が戦いである以上、同じ“土俵”で闘わざるを得ない。だのに違う土俵を書いて「戦場はここだ」と言っても勝負にならない。有権者から「岡田さんは論戦を避けた」という印象を受けても仕方ない。取り巻きを含めて岡田民主党の敗因はずべてそこにある。そう思う。

 小泉さんの勝因は何度も言うが、自民党の一番ダーティーな部分を切ったことだ。まだ完全に切ったとは言い切れないが、少なくとも政党としての既得権益の相当部分を断ち切ったことは確かだ。これからの仕事は最後の砦である官僚の既得権益をどう切り崩すかだ。

 既得権益という立場では、これまで官僚と自民党は二人三脚的だった。持ちつ持たれつの関係にあった。予算と情報を共有することによってお互いがお互いを必要としていた。官僚はいつだって自民党の族議員に配慮して予算を編成、その余慶としてちゃっかり天下りポストをつくるするなど自らの退職後の収入源を確保してきた。

 これまで以上に予算を含めて首相官邸が行政の指導権を握ることになる。後ろ盾を失った官僚はこれからどう行動するのか。ポスト総選挙の見せ場は見ものである。

 実は小泉さんの役割は「自民党をぶっ壊す」ことにあったのだと思う。この人にぶっ壊した後のことを期待してはいけない。明治維新もそうだったが、幕府をぶっ壊す役割と明治政府をつくる役割は自ずと違っていたのである。同じ人に両方の役割と求めてはならない。新しいシステムを生み出すエネルギー以上に古いものをぶっ壊すことほど難しいものはないのである。

 当選議員の一覧をみていて感じたことだが、自民党も民主党も当選3回までの議員がほぼ3分の2に近くなっている。いつの間にか、衆院議員のメンツが入れ替わっているのである。不安がないわけではないが、選挙を面白くしている一つの要因なのだろうと思う。
 きっともう一回総選挙をすれば日本でも40歳台の総理が誕生する素地が生まれるかもしれない。そう期待したい。自らの老後を考えない世代が政治をリードしなければ日本は生まれ変われない。

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