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否決後、瞬時に主導権を取り戻した小泉首相

2005年08月11日(木)
萬晩報主宰 伴 武澄
 8日午後1時からの参院本会議で郵政民営化法案はみごとに否決された。日本の構造改革はまた一から出直しなのだろうかと陰鬱な気分にさせられた。しかし小泉純一郎首相はどうやら違うモードにあったようだ。自民党の青木幹夫参院会長のうつろな表情とは裏腹に小泉首相は意気軒高で反転の行動も素早かった。

 直ちに臨時閣議を召集し、解散に反対した島村農相を罷免し、解散署名を集めた。さらに9月4日公示、11日投開票の総選挙スケジュールを決定すると同時に、衆院で郵政民営化法案に反対した37人の造反組の公認はないことを内外に宣言し、電光石火のごとく総選挙の方針を決めていった。

 山本一太参院議員が心配していた解散総選挙における3つの懸念などはいまのところ杞憂におわっているといっていい。自民党の執行部や閣僚たちが否決後のショックで放心状態にある間に小泉首相のペースで総選挙の方針を決めてしまった感がある。

 さらに夜の記者会見では、今回の解散総選挙の意義について、あらためて小泉改革路線の是非を国民に問うという国民投票的意味合いを強調し、自公で過半数を取らなければ下野すると自ら退路も断った。返す刀で本来、郵政民営化に賛成すべき民主党が大安を出すどころか法案反対を貫いたことを批判、小泉自民党こそが真の改革政党であることを印象づけてしまった。

 一連の動きを振り返ると、小泉首相は本当は参院での否決を望んでいて、衆院解散をてこに自民党から抵抗勢力を駆逐する口実にしたかったのではないかと勘繰りたくなるほどの手際良さだった。

 小泉首相は8日の参院本会議で敗れたはずなのに、一日が終わってみるとこの日の勝者は小泉首相になっていた。小泉首相は敗者から、あっという間に攻勢に転じ、抵抗勢力も岡田民主党もなすすべがなかった。だれもがそんな印象を得たのではないかと思う。

 少なくとも小泉自民党の選挙公約である郵政民営化に反旗を翻したのだから、抵抗勢力はそれなりの覚悟と戦略を持っていなければならなかった。小泉自民党に政策面で堂々と渡り合えるだけの準備が必要だった。解散総選挙が終わったら、再び自民党の合流できるだろうなどという卑屈なまねだけはしてほしくない。少なくとも一時は、小泉首相の「覇道」てい手法に対して「王道」などとほざいた勢力なのだから自らの王道ぶりを示してもらいたいものだ。

 民主党内にも少なからず郵政民営化論者がいるはずだ。これを抑えて改革の着手を遅らせる勢力となってはならない。本来ならば、民主党こそが改革の旗手だったはずだ。構造改革の必要性を知りながら手をこまねいていた自民党に対して大同団結したのが民主党ではなかったか。

 言葉だけの総花的改革論はもはやだれも聞きたくない。改革には反対があり、痛みが伴うことを国民は覚悟している。「政治空白」「景気の後退」などだれも気にしていない。マスコミ各社の直近の世論調査を読むと、小泉ブーム再来の兆しがある。民主党にお願いしたい。自民党だけには投票したくないと思っていた筆者のような人たちを転向させるようなことだけはしてほしくない。



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