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成長促す全米シンクタンク他流試合の旅

2003年05月16日(金)
ブルッキングス研究所客員研究員 中野 有


 ブルッキングス研究所の北東アジア政策研究センターのチームの一員として、コロンビア大学、フォード財団、スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー、アジア財団、ランド研究所、南カリフォルニア大学等を訪問した。

 平たく言えば、円卓のディベート形式の道場破りか他流試合のようなものであった。構想は、多くの人に聞いてもらい、それを肥やしとしてさらに成長していくものだと確信した。率直に想いを語り、コメントが建設的であっても攻撃されたものであっても、学ぶことが無限大である。ある専門家のコメントに少し味付けして、次のセミナーで、さらに内容を充実させた構想を語る。アメリカ大陸を東から西へ横断しながら、これぞアメリカのシンクタンクの醍醐味だと感じた。

 日本で多くのセミナーやフォーラムの開催に関わったことがある。ものすごい量の雑用に追われ、本質的な成果はあまり得ることができなかった苦い思い出が無数にある。数週間も前に作成した原稿を棒読みする日本での講演者を見て、会議に出るよりインターネットで読んだほうがよっぽど効率的だと思われることが常にあった。日本で国際会議を行った場合、通訳から参加者の出迎え宿泊の手配、はたまたビザの準備まで雑用だらけである。会議の当日に予定通り参加者と聴衆が集まった時点で、安堵してしまい、それ以上の気力が沸いてこなかったことが思い出される。何のために高い予算を血税から工面し、会議を行うのか、もう一度、会議の成果を問い直してみる必要がある。

 今回のブルッキングスの遠征では、一日に2時間のセミナーを2−3回、5日間連続でこなすのである。そうなれば準備をしている時間もないので、自ずとじっくり熟成された構想を原稿なしで語ることになる。構想は、会合を重ねるほど着実に成長していく。構想が練られることにより、自信がつきさらにチャレンジ的な発想が芽生える。聞いている人に感動を与える構想とは、このように成り立つのだと思われる。

 明治維新にもきっと、このような場があったと思われる。開国か攘夷か。そんな危急を要する情勢において構想と実現のための青写真を描いた竜馬をはじめとする志士たちは、人物に次から次とめぐり合い、構想に磨きをかけたのだろう。ブルッキングス研究所の遠征では、うきうきする開放感があった。会議に出席し、発表することにより新鮮な発想を呼び起こすという喜びである。

 満足感とは、「起承転結」の中でもとりわけ「結」に到達したときに得られるように思われる。ある尊敬する経済学の先生から、「中野君の話は、起から結にすっと飛んでしまうので消化不良になる」と指摘されたことがある。分析力が足りないと指摘されたのであるが、名誉なことだと思っている。何故なら日本の議論は、起承転で終わってしまい結論、すなわち、何をすれば乗数効果が得られるのかという、発展の原動力を享受することが稀なのである。日本の会議やディベートでは、攻撃や受身的な説明や分析に終わってしまう場合が多いように思われる。途中経過なんてどうでもよい。とりあえず明確な構想が生み出さればよいのである。

 構想は柔軟性に富み実利的でなければいけない。ブルッキングス研究所の遠征では、日本と対極的な会議のあり方と、凝り固まった保守的な構想でなく、進歩的、建設的な討論のあり方を学ぶことができた。

 萬晩報は偉大であると思った。コロンビア大学では、萬晩報を通じて知り合った、大西先生と他流試合を行うことができ、また、萬晩報の読者であるランド研究所の人ともメールのやり取りができた。また、ワシントンでも萬晩報の読者がたくさんおられることを知った。インターネットを通じた他流試合にも望みたく思う。

 中野さんにメールは mailto:TNAKANO@BROOKINGS.EDU

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