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シリコンバレーはI・Cで持つという実感

2000年07月04日(火)
Silicon Valley 八木 博

 シリコンバレーは、IC(インド人と中国人)で持つといわれて久しいけれど、確かに、インド人の人々が、最近多く目に付くようになった気がする。以前の職場にも、インド人も中国人もどちらもいたけれど、勉強家だし、能力は高いと思った。そして、自国の歴史に詳しく、両者とも自国は大国であるという自負心は強かったように思う。ちょうど高校の卒業式の時期に、地元のSan Jose Mercury Newsが、優秀な卒業生を紹介している面を見ると、これが、圧倒的にアジア系が多い。アジア人は実に教育熱心だと言うのが良くわかる。

 〇中国人、インド人ともに個人主義

 シリコンバレーの、Dog Yearと言われる、風潮を作ったのは、中国人の気質からくる部分が多くあると、私は信じている。彼らの、判断の早さ、そして行動力は米国社会の中でも大きな影響力を持っていると思う。特に、大家族的に、長老を中心とした絆が強い割に、政府などを当てにせず、自分でどんどんと進んで行くところなど、米国人の個人主義と、良く似ていることを感じる。せっかちのせいかどうかわからないけれども、並んでいる列への割り込みなど、多いような気がする。

 インド人はというと、私の会った人々はプライドが高く、個人主義であり、とても計算が速かった。(計算と言えば、アラブ人もとても暗算が速かったのを記憶しているが)確かに、歴史的に見るとゼロを発見した民族であり、シリコンバレーでも、ソフトウェア、回路開発など大きな戦力になっている。

 INTELのMuseumに行くと、30年以上前からのメンバーに、インド人が参加していることがわかる。階級性のためかどうかは知らないこれど、プライドの高い人が多くいた気がする。チームワークはというと、あまり群れずに、わりと個人主義的な動きが多かったように思う。

 両者とも、罰せられないことであれば、あまりルールにはこだわらない。だから、彼らが横断歩道を渡るときには、自己責任(事故責任かも)で赤信号を無視して渡ることが多い。そうやって振り返ると歩行者が赤信号に完全にしたがっているのは、日本が一番徹底しているように思う。このあいだ、東京駅前の横断歩道で、赤信号を無視して歩き始めた人に、同調して歩き始めた人を目撃したけれど、他人の動きに合わせる国民性は、日本の特質かもしれない。

 例年の通り、シリコンバレーの長者番付を見てみると、これは圧倒的に米国人の塊になっている。所得金額上位10位の中にYahooの社員がなんと4人も入っているが、これが顔と名前を見る限り米国人である。昨年のドットコム株価での、オプション行使で得た金額がけた違いに多かったため(40-100億円のオプション行使)とはいえ、実力と所得の仕組みが、多少ねじれている観がある。すなわち、優秀な人間を使う人間が、高い給料を得ているということになるかもしれない。

 〇個性の伸ばし合いこそ、活力の原点

 7/1号の東洋経済に、ラグビーの平尾監督の話が出ていた。日本人は、野球型の監督指導、監督の意を汲んだ動きをするタイプのスポーツは好きで得意だけれど、自分で考えて、自分で判断するタイプのスポーツは得意でないと書いていた。結論としてはこれからのスポーツは、後者の事がわかる選手を育てないといけない、と書いていた。これは、若くして全日本レベルの監督になった人の発言として、とても深い意味を持っていると思う。

 米国のやり方すべてが良いわけではないけれど、プロバスケットボールチームのコーチなど、一人一人がとんでもない技術を持った人たちに、各選手の能力を最大限発揮させた上、チームとしての力をまとめ上げるわけであるから、そのコーチ能力も相当優れていることを、示しているように思う。こうして見ると、個人主義を、いかに組織化し、戦力化するかと言うことが、根底に流れていることがわかる。シリコンバレーのICが今後、自分たちのリーダーシップをどのように取って行くのか、大きな注目点ではある。(週刊シリコンバレー情報 Vol.094)


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