魁け討論 春夏秋冬



つれづれなるままに

2000年8月3日
 元中国公使 伴 正一

ご意見
   
   ―やってみたくなった文化大革命― 
 21世紀に向け、世界全体のために世界(共同体)の在るべき姿を構想する。そんな志が鬱勃として起るこれからの日本でありたいものだ。

 阿片戦争の衝撃を受けてこの方、日本の歩みには躍動的なものがあった。西洋と非西洋の間に在って演じた役割も大きかった。

 今でも、批判も多いが待望もされているのが我々の日本である。

 翻って世界の現状を見るのに、数多の難問の中でも打開のメドの立たない点で最たるものが、次々に勃発する戦火を消し止める実力装置。それが果たして作れるかどうかの問題である。

 この分野の議論で、内容の空しさを美辞麗句の飾り付けで繕(つくろ)うかのように、やたら抽象名詞が折り重なっているのも頷(うなず)ける話だ。

 しかし 世界共同体存立の背筋になる思想分野だ。内容固めの努力に、もっと真剣味が必要なのではないか。

 よきにつけ悪しきにつけ我々が辿って来た歴史的な足取りに照らすと、このことに日本人はもっと敏感であって欲しい。

 また平和実現についての思想内容はやがて世界の通念になるようでないと、あとの設計図が意味をなさなくなるのだから、思想固めに当たっては、その手法の上でも画期的な発想転換が計られていいのではないか。

 旧制高校と大学教育が長年に亘って育ててきた、観念論中心の活字文化を槍玉に挙げ、日本人には拒絶反応を起こさせ易い抽象名詞づくめの論法に「待った」をかける運動を有志で始めてみたいと思っているところである。

 昔ながらの譬え話や日常生活の知恵をふんだんに駆使した平易な物の言い方に高い文化価値を認め、それを教養の重要な柱に据えようというわけだ。

 文化という言葉の意味を根っこから問い直す一種の文化大革命として、意外な拡がりを見せると面白いと思うのである。

                 ―海光る南国土佐の住まいにて―                               

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