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平和の仕事(4)−アフリカとバルカン、特にコソボについて

 3月20日、高知市内のラ・ヴィータで開いた「平和の仕事」と題した「ふるさと講演会」のまとめです。

1999年08月04日
 元中国公使 伴 正一


ご意見
 まずアフリカです。アフリカは今戦国時代の様相を帯びています。難民は出るわ、内戦は続くわ、アフリカで作った多国籍軍が同士討ちを始めわ、平和の仕事では主役であるはずのアメリカも、アフリカには匙を投げている格好なのであります。

 ところがバルカン半島の話になると俄然アメリカはシャンとして来るんですね。そこで今が危機一髪というところのコソボ問題のお話をしておきましょう。

 アメリカがミロシェビッチ(ユーゴ大統領)にNATO軍のコソボ受け入れを迫っているところですが、それはどういうことかというと話はかなり込み入っているんです。

 ユーゴではミロシェヴィッチのセルビア民族主義運動が裏目に出、連邦内の共和国が相次いで離反、独立し、残るのはセルビアとモンテネグロの二つの共和国だけになっています。

 コソボはそのセルビア共和国の中の特殊な州でして、二百万の人口のうち実に九割がアルバニア系の住民なのです。そんなところからチトー大統領の存命中は、自治州は自治州でも連邦構成員として共和国に準じた地位を与えられていました。その自治権をミロシェセヴィッチは、セルビア民族主義運動の手始めに取り上げた。そのコソボ住民が、悪名高いエスニック・クレンジングによる追い立ての対象になっているのが、いま現在のコソボ問題なのです。

 そのコソボ問題を解決する為にNATOがぐっと前に出て来た。NATOというのはヨーロッパ、アメリカ、カナダなどの軍事同盟ですよね。

 NATOの仲介で和平合意はあと一息というところまで来たのですが、それが絵にかいた餅にならないための保障に、NATO軍がコソボ州に進駐するという条項があって、ミロシェビッチがどうしても呑まない。アメリカの国務長官が今朝のニュースでも言ってましたが、ミロシェビッチが折れなければNATOの軍事行動(空爆)は避けられないようです。日本憲法では禁じられている「武力による威嚇」に間違いないのですが、バルカンの平和を守れるか守れないかは、ミロシェビッチがこの威嚇に屈するかどうかにかかっているわけです。

 こう言うとアメリカをふくむNATOサイドがゴリ押しをしているように見えるのですが、そういうことをされても仕方のない"前科"が実はミロシェビッチ側にあるのです。

 というのは、彼には、今様ヒットラーと言うあだ名がついているくらいで、1990年代におけるバルカン半島戦火の火の元は、いつも彼の推し進めた大セルビア主義民族運動に外ならなかったからです。ボスニアヘルツェゴビナで繰り広げられたエスニック・クレンジングの地獄絵巻には、ヒットラーによるユダヤ人狩り立てを思い出させるものがありました。死者の数も難民の数も百万単位でしたよね。  前大戦は、かの有名なミュンヘン会議がヒットラーに甘く出たことによって、もう引き返すことのできない道を滑り降りることになった。これは私より上の方はご存じでしょう。

 その時ヒットラーは、これが最後の領土的要求だと言って、チェコのズデーテン地方併合への了承を求めたのですが、若しこの時英仏が重大決心の下にこれを退けとったら、ヒットラーの膨張主義は多分ここでとまっていただろうといわれています。

 ミロシェビッチ。これからよく出て来る名前ですから覚えていてください。アメリカはアフリカでは匙を投げてるけれども、バルカン半島ではNATOの大黒柱として、それこそ一歩も引かぬ強硬姿勢でミロシェヴィッチとは向かい合っているのです。

今考えてみると、本当はアメリカがボスニアヘルツェゴビナ戦乱の前、クロアチア問題の時点で、今と同じようにミロシェビッチに強く出とったら、あのバルカンの流血と生命の喪失は無くて済んだ。あの時にアメリカが「出たらやるぞ」ということをはっきり言わんもんだから、ミロシェビッチは大丈夫と踏んで出て来た。そして戦火が燃え広がって行ったわけです。

 そこらへんの具合を振り返ってみますと、今度はアメリカも気を抜かずによくやっているのではないでしょうか。

 悪者役は悪く言われるに決まっている。だからそう呼ばれるんではありますが、大役を果たさなければならない国になったら、いい子でばかりはいられない。悪者役に回ることによって大役を果たすということも珍しいことではありません。日本もそういうことをそろそろ考えはじめたらどうでしょう。アメリカをけなしてはいい子になっている常連たちには、適当なところでお引取りを願いたいものです。

  特に日本は先々アメリカに、敵の基地を叩いてくれとか、ソウルに閉じ込められてる日本人を助けてくれとか、頼みごとが出て来る可能性が充分にあるのですから、今アメリカが折角イラクなどに対して悪者役を引き受け、強い態度に出ているとき、対岸の火事みたいな軽い気持ちでケチをつけてはいけないと思うのです。

 その点では今度の小渕内閣、ボソッとしておる割にぱっとやりましたね。 あの時アメリカのイラク攻撃にいち早く支持を打ち出したのは日本ですよ。

 いつもなら日本はですね、ドイツはどうしてる、フランスはどうしてると探りを入れ、流れに外れる心配がなくなったところで決定する。だからいつもビリケツの方になってしまうんです。

 小渕内閣は今度、きょろきょろしないでケロッと支持を声明しましたね。大した度胸ですよ。大石内蔵之助には昼行灯というアダ名があったそうですが、小渕という人にはそういうところがあるのかも知れませんね。(続く)



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