魁け討論 春夏秋冬



平和の仕事(1)−北朝鮮は鶏か

 3月20日、高知市内のラ・ヴィータで開いた「平和の仕事」と題した「ふるさと講演会」のまとめです。

1999年08月04日
 元中国公使 伴 正一


ご意見
皆さん今日は。今日は寒くて雨が降るし、どれくらい来て戴けるかと心配しておりましたけど、これだけ来て戴けたら大変な盛会でございまして、どうも有り難うございました。それでは早速、話に入ります。
 ●北朝鮮は鶏か
さっき植野が申しました朱建栄の発言を導入部門にしてお話したいと思うんですが、三月十二日の毎日新聞、お手許のコピーに朱建栄と横文字で大きな字があります。その二段下に「中国のある軍の幹部が『鶏を殺すのに牛刀は要らぬ』と言っています」というくだりがありますね。

 北朝鮮の事ですけれども、北朝鮮を相手にしてアメリカと日本がこんな大騒ぎをするのは、ちょっと騒ぎ過ぎではないか。鶏を殺すのには小さい刀がある。牛刀を用いる必要はない、という言い方ですので、ここから入ってみたいと思います。

北朝鮮は鶏かということです。鶏ならいくらバタバタしてもこちらは悠々と構えとればいいわけで、相手にすることはないんです。けれどもこの間はミサイルがほんとに飛んで来て、日本列島を通過してしまいましたよね。これがもし敦賀の原発の近くにでも間違って落ちていたら、神戸大震災の十倍位の人が死んだかも知れません。そんな数の日本人が殺されて、相手は鶏だなど、呑気なことは言っておれない。北朝鮮が核開発をするとなれば、矢っ張り国は小さいかも知れないが、サソリか毒蛇みたいな感じで、小さいからと言ってそう悠長に構えてはおれません。

そこでですねえ、北朝鮮がやりそうなこと、北朝鮮になら起こるかも知れんなあ、というようなことを考えてみましょう。結構ありますよ。

 小人数の隠密部隊を上陸させて人をさらって行くなんてことも、現に新潟県あたりであったわけですから、これからも無いとは言えない。数の上ではどうあれ、身の毛がよだつ話です。

二つ目。北朝鮮が三八度線を越え、怒涛の進撃をして来たらどういうことになりますか。北朝鮮の兵力は日本の自衛隊の5倍、百万ですよ。

 韓国には、いわゆる在留邦人のほかに、いつも大体一万何千人規模の日本人観光客がいるようですから、合計すると三万内外になります。

 それだけの日本人が北朝鮮軍の占領地区に取り残されることだってないとは言えない。そうなったら神戸の震災どころの話ではなくなります。

それともう一つは、さっきのミサイルです。

 北朝鮮という国が比較的常識的な国であれば、こちらの対応もそれほど神経質にならんでいいのかもしれませんが、どうもこの数年、特に金日成が死んだ後の北朝鮮は異様です。

 人間社会でこんなことあるんかなあと思うような光景がニユースに出てきますねえ。 片っ方では飢え死にする人もいるのに、兵力百万。ミサイルの引き金を引くのは多分、ジャンバーみたいなのを着たあの異様な人でしょうから、余計に不気味ですね。あの人なら何かの弾みで引きがねに手をかけないとも限らない。 今では日本人も八割九割が、ひょっとして暴発するかも知れない、くらいの見方になってきたようですね。

 それでは暴発ということが実際に起こったとして、その時、日本は何ができるかなんですが、、文芸春秋の今月号に田原総一朗司会で「第二次朝鮮戦争勃発す」というセンセーショナルな討論が載っていました。今日お見えになっている浅井さんの甥になられる中谷元さんも主役の一人で大いに論じておられます。

 ところが今の日本の安保論議というヤツは、ガイドライン論議がそのいい見本なんですが、何といっても分りにくい。私みたいに海軍出身で外交官を30年も務めた人間でも、さっきの文芸春秋の記事は一回読んだだけではすんなり頭に入らない。今日来る前に読み直して来たようなわけなんです。

その中で、非常に注目すべきことの一つは、朝鮮半島にいる約三万の日本人を確実に助ける道はないという結論になっていることです。

 中谷元さんに別のところで聴くと、アメリカとのガイドライン協議で日本人の救出を頼んでみたけれど断られたそうですな。それはそうでしょう。アメリカだってアメリカ人を先ず助けなきゃいかん。そんな緊急の時によその国の何万人もの人を助ける約束なんかしていて、助け切らなかったら大事ですからね。

 そうすると朝鮮半島にいる3万内外の日本人の運命は北朝鮮の思うままではありませんか。その文芸春秋、今日でも帰りに本屋に寄って、買ってお読み下さい。

もう一つ、ミサイルをぶっ放して来たとき、さあ、どうする。デポドンが日本の領土に落ちた時は?二発目が来るかも知れんとなったら?

 二発目が来るのを防ぐためにはミサイルの発射基地を"間、髪を容れず"叩かなければならん。

 ところが日本にはその能力がないそうなんですよ。

 日本の飛行機は、日本が侵略行動に出れないように、長距離飛べないようにわざわざ作ってあるんだそうです。軍艦も同じ思想に基づいてこんな場合の攻撃用装備を持ってないのだそうです。

 結局、アメリカへお願いするしかないというのが、自民党、自由党、民主党の若手の代議士が集まっての結論です。

 えらいことですわな。どちらが鶏か分ったものではありません。(続く)



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