バジュ・クロンに魅せられて
2002年03月10日(日)
「伴さんのバジュ・クロン姿 ―暑いマレーシアの空の下で涼しげにバジュを身につけた伴さんの姿が懐かしく思い出されます」 ― 今は帰国してしまった若い日本人の友人からの手紙

「貴方はいつもバジュ・クロンを着ているけど、マレー人と結婚していらっしゃるの?」 ― コンドミニアムのエレベータの中で見知らぬ人からかけられた言葉

「まぁ、きれい! 一体どこでいつもそんな素敵な布をみつけてくるの?」 ― よく会う中国系の友人の言葉

「いつもバジュ・クロンを着てくださるのね。だから、あなたが好き!私たちの文化を尊重して下さっている証拠ですものね」 ― マレー系の親友の告白

 私のマレーシアでの生活はバジュ・クロン抜きでは考えられない。赴任して1、2年たった頃、ハリラヤ・オープンハウスにお愛嬌で着て行ったのが始まりで、その後病み付きになり、今日に至っている。この8、9年普通の洋服というものを着たことがない。洋服は「西洋」の服だと思っている。日本に一時帰国する時もバジュ・クロンで通している。

 マレーシアを愛しているからバジュ・クロンを着る、いや、バジュ・クロンが大好きだからマレーシアで暮らしている…どちらだろうか。自分自身でもわからない。

 バジュ・クロンはマレーの民族衣装で、マレー人女性の大半が日常的に着ている服のことである。バジュ(baju)は「服」、クロン(kurung)は「籠」とか「檻」という意味で、知って驚いた。ムスリムの女性らしく、「体を閉じ込める」ということなのだろうか。名の通り胸も手も脚もすっぽり隠した服である。

 皆が総称として使っているバジュ・クロンは大きく分けて3種類ある。

(1) バジュ・クロン
サリーのように裾にプリーツの入ったロングスカートに膝まであるずん胴のワンピース。上着は丸首で、頭から被れるよう前が少し開いている。

(2) バジュ・クバヤ
上着が前開きで体の線に沿った、ちょっとセクシーな服。マレーシア航空やシンガポール航空のスチュワデスが着ているのは「クバヤ・ペンデッ」と呼ばれ、短い上着が体にピッタリと張り付き、サロンの裾も割れていて、歩くと美しい脚がチラッチラッと見える!他方「クバヤ・ラブ」は上着が長く、「クバヤ・ペンデッ」よりゆったりとしている。

(3) バジュ・クバロン
バジュ・クロンとバジュ・クバヤ・ラブのミックス。前開きロングスカートの上に、前開きの長い上着。ゆったりとしているが、どこか着物に似たイメージである。

 私は専らバジュ・クバロンを愛用しているが、時にはバジュ・クロンも着る。クバヤは体型に自信がないので、遠慮している。素材は化学繊維や絹で、4メートルの布はバジュ・クロン用に始めからカットされている。絹の場合は裾模様などをデザインしたバティックが多い。緻密なデザインのインドネシア・バティックとは違い、マレーシアのバティックは明るく伸びやかな図柄が多い。

 サレンダン(肩からかける長い布)やクロンサン(前を留める3つのブローチ)をつけると正装となる。

 私はなぜ、バジュ・クバロンを着るのだろうか、と自問自答してみた。

(1) 安心感・・・体全身を覆うので、スタイルに自信のない者に安心感を与え、劣等感から解放される。

(2) ラク・・・体を締め付けることがなく(ウエストはゴム)、着ていて楽である。

(3) 優雅・・・絹の場合、通風性があり涼しく、冷房が効いたところでは反対に暖かい。肌触りが柔らかく、歩くと纏った布が風に揺れ優雅な気分になる。

(4) 東洋的・・・長い袖、前合わせ、裾回しなど、着物に通じるものがあり「東洋の衣」を纏っている自負と楽しさがある。

 一時バテック・デザイナー、ユソフさんの作品に夢中になったことがある。クランタン州のコタバルの工房まで訪ねて行って、500リンギット(普通は100リンギット前後からある)もする布を数着分買ったこともあった。南国の植物をモチーフにした絵画のような彼の作品に身を包んで夜な夜なパーティーに出かけた時期もあったが、それは遠い昔の話になってしまった。

 いつかまたお金が出来たら、もう一度彼の美しい絹のバティックで、バジュ・クバロンを新調してみたい。ユソフさんは今アブドゥラ副首相夫妻のお抱えバティック・デザイナーである。
(2001年12月28日記)

                           


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