国際社会の中で ―小国マレーシアはいかに貢献するか
2001年10月25日(木)
   米英によるアフガン攻撃は10月19日からいよいよ地上作戦に入り、アフガン国内の反タリバン勢力「北部同盟」の動きも目立ってきた。他方、「タリバン後」の新政治体制・治安維持問題をめぐって、国連や関係諸国の間で活発且つ真摯な話し合いが行われており、各国各様の努力に期待が高まっている。

 「アフガンに『冬将軍』忍び寄る」、「ラマダーン(断食月)までに攻撃終結を」などの文字が心の琴線に触れる。「冬」、「ラマダーン」 ―自然の声、偉大な神(とモスレムたちは日々唱える)の声に、救いを求める思いである。

 先日、日本の友人に「マレーシアはアメリカの武力行使に反対しているそうだし、クアラルンプールではデモもあったそうね。・・・マレーシアは反米なの?」と聞かれた。

 どうも、アメリカ側につかなければ「アメリカの敵」、アフガンに対する武力行使に反対すれば「反米」という短絡した見方があるようだ。

 マレーシアは確かにアフガン攻撃に反対しているが、決して「反米」ではない。むしろ、馬米関係は一時よりよくなっていると言える。

 10月20日、21日の両日、上海でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議が開催された。華やかな中国屏風の前で、ブッシュ大統領が乗り出してマハティール首相と握手する写真が中国紙の一面を独占した。他の新聞の写真もマハティール首相が「語り」、ブッシュ大統領が「聞く」という瞬間を捉えていた。

 「アメリカは小国マレーシアのいうことに耳を傾け始めている!順調な経済発展、国家建設を進めている穏健なイスラーム国家、マレーシアに注目し始めている!」マレーシアの政府、国民はそう感じているようだ。

 歯に衣着せぬ西洋先進国批判を続けてきたマハティール首相はこれまで西側(特にメディア)から異端視されてきた。むしろ、1998年に解任されたアンワル元副首相の方に人気が集まっていた。経済・政治危機の最中、IMFの支援拒否、通貨取引規制、人権、法の独立、報道の自由等々の問題でマハティール政権は西側メディアに批判され続けてきたのだ。

 そのクライマックスは1998年11月クアラルンプールで開催されたAPEC首脳会議での一幕である。ゴア米副大統領が歓迎夕食会の席で、公然と反対派への支持を表明するが如く、「Reformasi」(改革)のスローガンを掲げて街頭デモを行なったアンワル元副首相の支持者たちを「勇気ある人々」と賞賛したのである。

 マハティール首相や国民はこの内政干渉と見られる「屈辱」にじっと耐えなければならなかった(もっとも、アンワル支持者たちは外国からの応援を歓迎したかもしれない)。

 ブッシュ政権となってアメリカとの関係が好転したことは、マレーシアにとって喜ばしいことである。今、アメリカとの関係を抜きにして自国の安全保障、政治、経済、文化を考えられ国があるだろうか。マレーシアもその例にもれない。貿易も投資もアメリカが第一位を占めている。国益から考えてもアメリカとの関係は最も重要であろう。

 今回で9回目を迎えるAPECは「これまでの会議の中でも最も満足のいくものだった」とマハティール首相は語った。その理由として、「貧しい国々、発展途上の国々の経済に対する理解、配慮が見られたから」としている。

 電話、書面による対話のフォロー・アップとしての馬米首脳会談も、互いに意見、立場の相違を認めつつも、理解と信頼を深めることが出来たとの評価だ。

 テロ事件に関しては次のようなやりとりがあった。

1.マハティール首相は反テロ作戦に協力を表明するとともに、「マレーシアがなせアフガンへの武力行使を支持できないか(why we are unable to support)」を説明した。これに対しブッシュ大統領は「マレーシアにはイスラーム諸国の間で果たす役割がある」と述べた。

2.同首相はモスレムたちの怒り(anger)と不満(frustration)の感情についても注意を促したところ、同大統領は理解を示した。

3.同首相は「テロが起きる原因を突き止め、問題を解決する必要がある」と述べ、最重要課題としてパレスチナ問題を挙げた。また、共産主義テロとの戦いで、中国系の人々の不満を取り除く努力をしたマレーシアの経験を紹介した。

4.同首相はマレーシアの「隣人を繁栄させよ(prosper thy neighbour)」という政策を紹介し、インドネシア事情などについても意見交換をした。

 会談は双方にとって満足のいくものだったようである。

 マレーシアは小国ながらも、超大国アメリカに影響力を持つ国となり得るか。西欧先進諸国とイスラーム世界のかけ橋となり得るか。新たな世界秩序づくりに貢献できる国となり得るか ―世界的な危機の中にあって、マレーシアはより大きな理想、使命に挑戦していると信じたい。

 来月5日にはブルネイでASEAN首脳会議が、19日にはロンドンでマレーシアを含む英連邦内10カ国によるテロ対策会議が開催される。

   

トップページへ     筆者へのメールは bmikiko@tm.net.my


@MIkiko Ban. All rights reserved.