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Mikiko Talks on Malaysia 
 マレーシア国民大学外国学部講師 伴 美喜子
2000.02.21
 
熱帯のフルーツたち(1)
 「あなたが一番好きな日本のくだものは何ですか」と聞かれたら、私は迷わず「イチゴです!」と答えるだろう。

 寒い冬が終わって、春になると店先に出回った、あの目に鮮やかな愛すべき小さなくだものたち。

 家計にゆとりがある時は、母が粒の大きい一番高いイチゴを買ってきて、家でショートケーキを作ってくれたっけ。雪のような滑らかな生クリームに行儀よく並んだ小さなハートたち!ワイワイ言って、姉弟3人で奪い合うようにして食べたことだった。

 ちょっと予算を切りつめて、という時は不揃いの小さな粒のイチゴしか買えなかったが、傷んだ部分を削って、残ったものを小鉢に分け、フォークでつぶして、砂糖と牛乳をたっぷりかけて食べるのもまた味わいがあった。ピンク色に染まった甘い牛乳も美味しかったが、時々舌にぷつんぷつんとあたる果肉の酸味もよかった。

 ああ、それは昔のイチゴ。幼い頃の思い出の中の幻のイチゴ・・・。

 今日は、私のマレーシア生活に彩りを添えてくれている熱帯のフルーツたちについて、オムニバスでご紹介したい。いつかきっと、とても懐かしく思うことがあるだろう。

 *ドリアン−くだものの王様

 マレーシアで初対面の人と四方山話をしていて、必ずと言っていいほど話題になるのはこのドリアン。「ドリアンを食べたことがありますか」「ドリアンは好きですか」

 ちょうど日本人が外国人に向かって「刺し身を食べたことがありますか」「刺し身は食べられますか」と聞く、あの感覚に似ている。

 ドリアンは「durian」と書く。「duri」はマレー語で「とげ」の意。大小はあるが、大きいのはフットボールぐらいあり、外側は素手で触ったら怪我をしてしまいそうな硬いとげで覆われている。外見は「グロテスク」と言ってもいい。へたのところを握って、なたのようなナイフで割ると、中はいくつかの部屋に分かれており、それぞれの部屋に数個、ふやけたバナナのような房が並んでいる。

 ねっとりとしたそのクリーム色の果実は柔らかいチーズのよう。中から大きな種が出てくるまでしゃぶっていると、手はべとべとになってしまい、美味しいのに当たると、知らず知らず指までしゃぶっていることがある。はっきり言って行儀はいいとは言えない。

 ドリアンはとても強い匂いを放つので、レストランでは食べられないし、ホテルや飛行機などへの持ち込みも禁止されている。 何と言ってもドリアンはカンポン(田舎)で村人たちといっしょに食べるのが一番である。

 ドリアンの季節になると、カンポンからお誘いがかかる。果樹園や裏庭に落ちたドリアンを家の前に集め、これぞと思うものから順々に割っていく。みんなしゃがんで「これは、イマイチ」、「うむ、これはイケル!」などと味比べ。お酒を嗜まぬモスレムだが、その姿はまるで、日本酒やワインに酔いしれる非イスラーム教徒に似ている。

 虜になる人と拒絶反応をおこす人と、真二つに分かれるドリアンの評価であるが、一度はお試しあれ、このマレーシア人ご自慢のくだものの王者を!

 *マンゴスチン−くだものの女王

 ドリアンと同じ頃出まわるマンゴスチンはくだもの女王と言われ、誰からも愛されるフルーツだ。やはり外見は醜い。みかんほどの大きさだが、乾ききった黒ずんだ皮で覆われている。

 だが、両手で握って割ると、黒い皮の内側は赤紫色に変わり、中から大小さまざまな房の形をした、純白の瑞々しい果実が果汁とともに飛び出してくる。美しさと気品を持った女王様のよう。口にほおばると、甘酸っぱい、さわやかな味が口に広がる。

 「Hitam Manis(黒いけど可愛い、優しい)」 このマンゴスチンを表現した言葉は、マレー人の心にもあてはまる。マンゴスチンはマレー語で「Manggis」と言う。香りの失せた冷凍輸入マンゴスチンではなく、沿道などで、紐で数珠つなぎににして売っているマンギスを是非どうぞ!

 *ランブータン−木になるイチゴ

 ランブータンはピンポンボールほどの大きさのフルーツで、赤い毛で覆われている(熟れていない時の毛の色は緑色)。枝を束ねて売っている。よく蟻や虫もいっしょについて来る。ランブータンは「rambutan」と書く。「rambut」はマレー語で髪、毛と言う意味。ドリアンと同じ名の付け方だ。

 爪で上手に皮を割ると、中は半透明の白い果実、甘くてジュシーな実をかじっていると、大きなナッツに歯があたる。これは種であるから食べられない。

「ランブータン」と題するモハマッド・アファンディ・ハッサン氏のマレー俳句をご紹介しよう。

     熟れたランブータン盆の上
     赤が白に早変わり
     毛虫がぴょんと飛び出した。

 木になっているランブータンは、遠くから見るとまるでイチゴのようで愛らしい。よく絵画の題材にもなる、南国を代表するのフルーツのひとつだ。仲間にマタ・クチン(猫の目)、ランサット、ドゥクなどがある。

 *スターフルーツ−ヘルシー&ロマンティック

 半透明の黄色いフルーツ。輪切りにすると星の形をしているのでこの名がついた。ちょっと青臭くて野菜のような味だが、ビタミンCたっぷり。洒落た店でスターフルーツ・ジュースを注文すると、グラスにも「星」がとまっていて、いかにも熱帯の飲み物と言う感じがする。

 さっぱりしていて、脂っこいマレーシアの料理によく合う。マレー語では「belimbing」という。南国の夜空の下で、スターフルーツ・ジュースを片手に恋いの語らいはいかが? (つづく)


 前回のコラム「小さな国の大きな包容力−旅人が感じたマレーシア
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