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アメリカ西海岸の制服と会社のMisshion

1998年10月27日(火)
Silicon Valley 八木 博


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 ●米国西海岸で制服と会社が好きという論理
 シリコンバレー周辺は、通勤にもカジュアルな服装が多く、スーツ姿の人達は、セールスパーソンや、銀行員など、限られた職種でしか見られないように思います。しかし、スーパーや宅配便あるいは、ホテル、ハンバーガーショップのような、お客と直接接する小売では、制服が目立ちます。この事は、スーツ姿が少ないことと重ねあわせると、私にはやや不思議な気がします。本来、私服が好きな国民なはずですが、制服をどのように位置づけて生活しているのかを見てみたいと思います。

 制服は、会社の規則ですから、その会社に入ったら、当然そのルールに従わないといけません。ですから、社員はその会社の制服を着ることになるわけです。もちろん、制服が無いと、スーパーやホテルでは、従業員に声を掛けるのは、難しくなると言う大きな問題を抱えることになるのですが。それにしても、制服を着ている人達が、その事をどう思っているのかとても興味が湧きました。私は、先ほどのお店で働いている人達に、制服は好きかとたずねてみました。彼(彼女)らは、一様に“I love it!”と反応しました。

 それじゃ、どうしてと聞くと、私はこの会社が好きだからだ、と答えるのです。あまりに、模範解答ばかりだったので、私は更に聞きました。それは、もしかしてマニュアルに書いてあるんじゃないのか?と追い討ちを掛けましたが、彼ら、彼女らは口を揃えて、そうじゃありません、私の考えですと答えてきました。この答えからすると、米国に人達は、決して制服は嫌いではないと、私は結論を出しました。

 ここから先は、私の考えですが、制服と会社が好きと言うのは、個人が納得して仕事をする上での、選択の結果だと思います。ややこしい言い方なのですが、自分が好きで選んだ会社、そして、その会社の“しつけ”あるいは“教育”の結果が、先ほどの認識を持つに至った背景だと思います。日本でも、まず人を育てよ、と言う言葉がありますし、それがすべての基本であると言う認識もとても強いと思います。ですから従業員の人達は、会社の価値観と、自分の価値観を折り合いをつけて仕事をしていると言うことになると思います。もし、そうでないとすると、自分は“自分の意思に反した生活をしているぞ”と言うことになって、もっと、自分に合った仕事を探すようになると思います。

 ●従業員にMissionを提示する会社
 では、それに対して、会社はどのように対応するのでしょうか。それは、Missionを提示して、そして個人個人の組織への参加を呼びかけます。これは組織立った活動で行われることも多く、企業の大切な教育の一つになります。このMissionは、企業が何のために存在し、どのように社会に貢献するかをまとめているものです。ですから、従業員にとっては会社に勤める理由の一つが、このMissionに示されているわけですし、経営者にとっては、このMissionにあった行動をとるように、動くわけです。

 更に突き詰めて行きますと、Missionがあるので、レイオフや、リストラをやりやすい、と言う点も見逃せません。何故なら、Missionこそ会社存在の原点であり、それを、従業員、株主、経営者が納得したから、会社が成り立っているのです。そして、現在ウォルマートというスーパーが従業員82万人という、とんでもない雇用を生み出していることは、これらの企業のもつ文化が、広い影響力を持つことを示していると思います。企業文化が市民文化に深く関わるということになるわけです。

 制服と言う観点から、会社のMissionと言うところに行ってしまいましたが、シリコンバレーだけでなく、日ごろ制服など着たことも無い人達も、展示会や、新製品発表会などでは社名の入ったジャンパーなどを着て、説明します。そんな時は、私がこの会社の代表だと言うような顔をしています。どうやら、制服にはほかの人に見せると言う要素も多く、それが誇らしげに出来ることは、すなわち自分がHappyであることの一つの表われになっているように思います。

 制服とは、少し違いますがロゴ入りのT-シャツは良く配られますし、Appleなどの様に、人気商品になって、良い値段で売られるものもあります。ですから、お客さんから見てもらうと言う立場に立ったとき、企業に関係する人達は、それを、積極的に使おうとしているように思えます。西海岸では企業だけでなく、学校にも制服を採り入れようと言う動きも、だんだん盛んになっていると言う話もあります。こちらはまだ、それほど大きな動きにはなっていませんが、日本が私服の方向に進んでいることを考えてみると、その反対方向に進んででいるように見えます。それらをあわせて考えると、本当に多様性を許し、使い分ける国だな、と思ってしまいます。(Lafayette Dr. Digital Weekly 第58号)

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