民主主義: 2008年4月アーカイブ

 否定できない国家が権力機構という公理

 「天は人の上に人を作らず」といったのは福沢諭吉である。

 いまの日本人にはすらすら読んで何の抵抗もないだろうが、少し格好をつけすぎてはいないだろうか。聞こえはいいが読み方によっては、リーダーシップ、さらには国家権力の存在そのものを否定するように受けとられる。

 そのことばに耳慣れている普通の日本人にはけっこう、この言葉の暗示にかかっているフシがあるから恐ろしい。

 デモクラシーを民主主義と訳したことも、同じような暗示を与えた。民が主(あるじ)だというなら、主の上に権力があったらおかしい。同じような暗示の危険が「主権在民」ということばにも潜んでいる。

 そんな言葉の遊戯とかかわりなく、どんなデモクラシーの国にも国家権力は厳然としてある。国民が選んだ大統領や首相の権力は強大で、立憲君主制下の君主にひけを取らない。権力の行使を分掌する役人の数だって、王制でなくなっただけで半分に減るものではない。

 税務署はどっちの場合だってこわい存在であることに変わりはない。
 それはそうだろう。もともと国家というものは権力機構だからこそ国家なのだ。だからデモクラシー思想もまた、当然のことながら国の統治に権力の不可欠なことを公理として認め、それを基軸に思想が展開されている。

 だが恐ろしいのは、この肝腎かなめののところで、さきほど言ったような暗示にかかってデモクラシーを無政府主義だと錯覚してしまうことである。この暗示 から抜けきらないでいると、デモクラシーそのものが別のものに見え、無政府主義思想特有の観念論が割り込んできて建設的なディベートが"電波障害"を受け る。

 (続く=伴 正一『魁け討論 春夏秋冬』1998年09月01日付コラムから転載)
 自民党は衆院山口2区補欠選挙で民主党候補に敗れたが、福田首相は28日、公明党の大田代表と会談し、ガソリ ン税の暫定税率維持を盛り込んだ税制改正法案を30日に再議決することで合意し、道路特定財源を来年度から一般財源化する法案を年内に取りまとめ成立させ ることも確認した。

 10年間のガソリン税収を道路特定財源に充てる道路整備費財源特例法改正法案の衆院再議決の予定日も12日に控えている。自公首脳の合意と矛盾する法律を成立させるというのだ。

 自民党の古賀誠氏は「堂々と粛々と再可決する」と選挙結果などどこ吹く風。
 なぜか民主党は腰が引けている。27日のサンデープロジェクトに出席した鳩山幹事長はほとんどガソリン税問題 に言及しなかった。問責決議案が万能とないえないが、その行方も定まらない。メディアも福田政権に対して"好意的"論調を崩していない。国民だけがはしご を外されたように1日からのガソリン再値上げの打撃を食らうことになる。

 なにかおかしくはないか。

 昨夜の敗北後の福田首相と伊吹幹事長とのやりとりが、この政権の不真面目さを象徴している。

 福田「なかなかうまくいかないようですな」
 伊吹「福田さんのせいではないから気にしないでよいです」

 普通の感覚なら選挙の審判を受けた直後に、ガソリン税値上げの再決議などできないはず。国民が自民党に衆院の3分の2の議席を与えたのは、郵貯民営化を断行しようとした小泉さんに対する信任ではないのか。

 衆院の再決議は、昨年11月インド洋に自衛隊艦船を派遣する「テロ対策特別措置法」が失効して、「新テロ特措法」が成立したとき以来である。そのときは日本の国際信義という大義名分があった。

 日本は憲法上、二院制をとっている。参院で否決されるたびに何でも衆院で再議決するのなら、参院はいらない。廃止すればいい。衆院での再議決はそれぐら い重みがあるはず。ガソリン税は国内問題である。軽々に再議決できる問題ではないと思うのに、福田政権は二度も三度も挑戦しようとしている。
2008年04月01日(火)
萬晩報通信員 成田 好三
 内閣総理大臣の記者会見、少なくとも重要事項に関する緊急記者会見は、NHKが万難を排してでも地上波で生中継する。それが、総務省の監督下にある特殊法人であり、国会に予算承認権を握られているNHKと、政府・首相官邸との不文律の了解事項だった。

 しかし、この不文律の了解事項がついに、NHKによってほごにされる時が来た。3月31日午後6時から始まった、福田康夫首相のガソリン税の暫定税率失効の関するお詫びの記者会見である。

 筆者はたまたま自宅にいて、午後6時からのNHKニュースを見ていた。番組の冒頭で、アナウンサーは首相の会見が6時から始まったと伝えたが、それだけ である。後は、ガソリン税の暫定税率の時間切れ失効に関する国会の動きと、街のガソリンスタンドが困惑する状況を伝えていた。

 NHKは最初10分間の全国枠でもその後の関東枠でも、首相会見を中継しないばかりか、会見の中身にも触れなかった。

 一方、チャンネルを民放に回してみると、面白い現象を確認できた。他の民放各局のニュースは、首相会見をまったく無視していたのに対して、自民党が毛嫌いするテレビ朝日だけが、生中継のテロップ入りで首相会見を流していた。しかし、それも数十秒間だけだった。

 福田首相は27日午後4時の会見以来、それまでのメディアなど相手にせずの態度を一変させ、やたらとインタビューに応じたり、テレビ出演したりしてい た。その圧巻が、30日午後5時から1時間枠で放送された、NHKの「総理に聞く」である。恐らく官邸サイドが指名した、最も「安全パイ」である解説委 員、山本孝氏を相手に、福田首相はあれこれとガソリン税に関する見解を語っていたが、新味のある内容ではなかった。

 とても全部を聞く気にはなれない。前半の30分は我慢して聞いていたが、家人の圧力もあって、後半の30分は、日本テレビの「笑点」にチャンネルを切り替えてしまった。

 NHKが31日の記者会見を生中継しなかった理由は、分かりすぎるほど分かる。事前取材で、会見に新味がないことは承知のことである。しかも、前日には、日曜日の夕方、1時間にもわたって、首相のいわば弁明に貴重な全国枠を提供している。

 しかもである。NHKだけでなく、今年の3月31日は、日本のTV局にとっては新年度のスタートの日である。週単位で番組を編成するTV局にとっては、この日は新番組がスタートする日である。中身の期待できない首相会見になど付き合ってはいられない。

 NHKが31日の会見を生中継しなかったことには、もうひとつ重要な伏線がある。安倍晋三首相時代に政府から送り込まれた、古森重隆経営委員長が3月11日の委員会で、NHKにとっては許し難い圧力をかけていたのである。

 NHKのホームページに掲載されている経営委員会の議事録によると、古森氏はこの日、NHKに対して、国際放送に関して「国益放送」をしろと強い圧力をかけている。

 この議事録はとても面白い。特に古森氏と今井義典副会長、多賀谷一照委員長職務代行者とのやりとりは、一読の価値がる。興味のある方はぜひとも読んでください。以下が、NHK経営委員会のこの日の議事録が掲載されているNHKホームページのアドレスです。

 http://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/giji/giji_new.html
 
 NHKは総務省の監督下にある特殊法人だが、国が金を出して運営する「国営放送」ではない。古森氏は国営放送と公共放送をごっちゃにして考えている御仁のようである。

 一連の不祥事により国民の信頼を著しく失墜させたNHKはその後、政府・自民党の圧力に屈し、平身低頭の様を余儀なくされてきた。しかし、古森氏の理不 尽な圧力は、NHKの報道機関としてのプライドをズタズタに引き裂きさいただけでなく、NHKの我慢の限度を超えるものだった。

 NHKがお手本とする英国の公共放送・BBCならば、直ちにこの件に関する検証番組の制作に立ち上がるところだろうが、それができないのもNHKの現実である。

 福田政権は、もはや風前の灯である。自民・公明の連立政権もこの先どうなるか分からない。政府から送り込まれた経営委員長は、理不尽な要求をする。NHKが首相と官邸、自民党とある一定の距離を取ろうと考えるのは、組織防衛反応としてみれば、当然のことであろう。

 福田首相はとうとうNHKにさえ見捨てられてしまった。(2008年4月1日記)

 成田さんにメールは mailto:narinari_yoshi@yahoo.co.jp
 スポーツコラム・オフサイド http://blogs.yahoo.co.jp/columnoffside

このアーカイブについて

このページには、2008年4月以降に書かれたブログ記事のうち民主主義カテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブは民主主義: 2008年3月です。

次のアーカイブは民主主義: 2008年5月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

ウェブページ