余計なお世話の最近のブログ記事

萬晩報主宰 伴 武澄

 東日本大震災のための第三次補正予算が国会を通過し、復興債の償還期間を25年とすることで与野党合意した。TPP参加は曲折を経たが野田佳彦首相が大勢の慎重論を押し切ってハワイでのAPECで参加表明した。

 この1週間、相次いで国家の重要政策が決まっていった。野田首相の手腕ではない。官僚の手際である。政治の社会に再び財務省ペースが復活した感がある。このまま行くと、12月の予算編成に向けて消費税増税を含めた税制改正の過密スケジュールになだれ込んで行くような雲行きにたってきた。恐ろしいことだ。

 思い出すのは11月から年末にかけての次年度予算の編成である。新政策を検討する各種審議会の報告が次々と出され、省庁はそれを「大綱」という形で政策化する。圧巻は自民党税調と政府税調のハーモニーである。これも相次いで発表となる。次年度の税制大綱が決まると、予算編成が本格化する。

 本格化といっても財務省が原案を発表した後、復活折衝(局長級、次官級、閣僚級)が3日ほどあって政府原案の発表とあいなる。その間、経済部の記者はそれこそ寝る間がない。というより考える間がない。

 意図的かどうか分からないが、日替わりに次から次へと重要ニュース、つまり一面トップの記事書いた経験からすると、当時の大蔵省の陰謀としか思えないスケジュールなのだ。

 霞ヶ関の官僚はこの予算編成というゴールに向け大蔵省が書いたスケジュールに乗って、4月からベルトコンベア的作業を強いられる。マスコミもその被害者だし、考えようによっては政治かも被害者なのかもしれない。

 このベルトコンベアを動かす潤滑油の役割を果たすのが官僚による「ご説明」である。主に政治家に向けたものだが、大物記者にも「ご説明」部隊はやってくる。だいたいが課長クラスである。よもやま話から始まって、なぜこの政策が必要かということをてきぱきと説明する。

 大方の政治家や新聞記者はまず霞ヶ関の幹部がわざわざ自分一人だけのために足を運んでくれることに感動する。背景説明の中に公表されていない情報でもあれば、なにやら仲間になったような気にさせられる。ここらの心のくすぐり方が巧妙である。

筆者はこれを官僚によるフォーマットと呼んで来た。一度思考パターンが財務省的になるとなかなかこれから抜け出せない。そもそも多くの政治家や記者は系統的に政策を考えるなどということには慣れていないから、ご説明を受けると自分が異次元にワープしたような気になる。つまり頭がよくなった気分にさせられるのだ。

  誰が考えたのか。いつのまにか「タスポ」カードの導入が決まった。自動販売機でタバコを買うのに特別のカードがないと買えないことになるのだ。余計なお世 話である。青少年の喫煙防止が理由なのだが、タバコを買うのにどうして顔写真が必要になるのかも分からない。タスポカードの普及が遅れると免許証で代替可 能な自販機も登場した。

 財務省には14年前、酒類販売でも同じことをしようとした前科がある。「未成年飲酒防止を名目に酒の安売り阻止を図ろうとした国税庁」でそのむかし報告した。
 そもそも日本では自販機が多すぎる。最近までニューヨークにいた編集仲間に言わせると、アメリカには自販機というものが少ないのだそうだ。野外に現金が詰め込まれた大きな箱があれば、盗難や破壊の恐れがあるからだという。

 日本はよっぽど治安がいいのだろうが、アメリカでは子どもの分かる相手には絶対にタバコや酒を売ってくれない。何十年も前から販売店側にもそれなりにモ ラルが確立している。日本でもそれなりにモラルができてきて、今ごろ子どもにタバコや酒を売る店は少なくなってきている。

 タスポを発行するのは日本たばこ協会という民間団体である。一民間団体がタバコ喫煙者の個人情報を集められること自体がおかしい。それを許しているのは監督官庁の財務省である。

 このところ役人のどうしようもなさが目立つ。2年前、特定マークのついていない中古家電製品の販売が突然"禁止"されたことがある。あまりのばかばかし さに1年後には「制度」が廃止となった。いわゆる「メタボ検診」は要らぬお世話だし、自転車の三人乗り禁止なんてのは情けないとしかいいようがない。

 筆者は、することがなくなった霞ヶ関の役人がどうせ寝不足で考えたに違いないと考えている。

 タスポの普及が遅れて、すでに制度を先行導入しているいくつかの自治体では自販機の売り上げは減少してコンビニの売り上げが急増しているのだそうだ。 ローソンは「3月に先行運用した鹿児島県、宮崎県では六割ほど増えた」という。自販機の改造費だってけっこうなものだ。タスポ導入を期にタバコ屋を廃業す る動きも出ている。石川県ではこの6年間に25%も廃業したのだという。【石川県で消えゆく「町のたばこ屋さん」 北國新聞】

 筆者自身、タスポをつくろうとな思っていない。余計なお世話だと思っている。家の真ん前にローソンがあるし、通勤途上にキオスクのたぐいがいくらでもある。それでなくとも財布の中は磁気カードだらけである。タバコぐらい対面販売で買おうと思っている。
 5月1日からの首都圏のスタンドの80%がガソリン価格1リットル当たり約30円引き上げ、160円前後にしたのだそうだ。全国石油商業組合連合会の調査である。

 やっぱり。
 この1カ月間、スタンドは"被害者役"に徹した。4月30日まではそう装った。夜が明けるとほくそ笑んだ。多分そうだろうと考えている。値下げが徹底されるのに1週間近くかかったのに、値上げは翌日からだから笑いが止まらないはずだ。

 一つの持論がある。経営者はもうかっているときはだんまりを決め込み、損しそうになると大げさに"悲鳴"を上げる。マスコミはそれをあおる。そんなパターンを何度も見てきた。景気後退局面や円高ではいつもそうだった。

 ガソリン税騒動もそうだった。4月1日からの値下げの時、スタンド業者たちは「高い税率のガソリンでの値下げせざるを得ない。何千万円の損だ」と騒いだ。政府は緊急融資策まで打ち出した。

 ガソリン税騒動はなんだったのか。

 おかげで福田首相の内閣支持率は20%(朝日、読売)まで下がった。共同通信の調査では19%である。福田さんはここまで低下するとは考えなかっただろ う。それでも政府・与党は13日にガソリン税などを08年度から10年間、道路整備に充てるとした道路整備財源特例法改正案を衆院で再議決させる方針を決 めた。

 もう一度「衆院での再議決」を決行すれば、福田さんの政治生命は終わりだろう。連休の中国の胡錦濤総書記の訪日が花道となるのか。

 【関連コラム】
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 27日投開票の衆院山口2区補欠選挙で、自民党は民主党候補に敗れたが、福田政権は30日、揮発油税の暫定税率維持を盛り込んだ税制改正法案を衆院で再議決する方針を撤回していない。

 なぜか民主党は腰が引けている。27日のサンデープロジェクトに出席した鳩山幹事長はほとんどガソリン税問題に言及しなかった。メディアも福田政権に対 して"好意的"論調を崩していない。国民だけがはしごを外されたように1日からのガソリン再値上げの打撃を食らうことになる。

 昨夜の敗北後の福田首相と伊吹幹事長とのやりとりが、この政権の不真面目さを象徴している。

 福田「なかなかうまくいかないようですな」
 伊吹「福田さんのせいではないから気にしないでよいです」
 選挙に敗北したことがまるで他人事のような首相発言に対して、「あんたのせいでない」と幹事長。これまでのパターンなら補選敗北のとたんに、自民党内から福田首相に対する不満が噴出するものが、いまのところ党内は静かだ。

 本来なら選挙の審判を受けた直後に、ガソリン税値上げの再決議などできないはず。国民が自民党に衆院の3分の2の議席を与えたのは、郵貯民営化を断行しようとした小泉さんに対する信任ではないのか。

 衆院の再決議は、昨年11月インド洋に自衛隊艦船を派遣する「テロ対策特別措置法」が失効して、「新テロ特措法」が成立したとき以来である。そのときは日本の国際信義という大義名分があった。

 日本は憲法上、二院制をとっている。参院で否決されるたびに何でも衆院で再議決するのなら、参院はいらない。廃止すればいい。衆院での再議決はそれぐら い重みがあるはず。ガソリン税は国内問題である。軽々に再議決できる問題ではないと思うのに、福田政権は二度も三度も挑戦しようとしている。
 ガソリン税が問題なのは「道路特定財源」となっていたり、「暫定税率」が長期化していることばかりではない。そもそもガソリン税は"贅沢税"の一つとして、軽油より高い税率が設定された。ガソリン税と軽油取引税の区別も先の二つに劣らず問題なのである。

 ガソリンがリットル当たり53.8円なのに、なぜ軽油は31.1円と安いのか。またガソリン税が基本的に国税で軽油取引税が地方税なのはどうしてなのか。同じ燃料税であるのにこれほどちがっていいのか。だれもこうした疑問に応えてくれない。

 ガソリン税は1949年に創設され、53年に特定財源化された後の56年に軽油取引税が初めて課税された経緯がある。56年といえば、高度成長の入り口にあたる時期。軽油はディーゼルエンジン向けの燃料だったため、ガソリンより低く抑えられた。

 それから50年以上が経ち、日本経済は産業中心から消費者中心に軸足を移したはずである。そうであるのに、税の哲学が50年前のままではどうしようもない。

 特定財源の問題をどうすればいいか。まずはガソリン税と軽油取引税を同じ水準に置くべきだと考えるがどうだろうか。1リットル当たり税率を軽油の 31.1円にまずあわせるのが第一。次いで暫定税率を廃止してそれぞれの税法の「本則」部分を改定するのが第二。税率つまり税収の予想が確定したところ で、特定財源の指定を廃止すればいい。

 自民党は4月から値下げが始まったガソリンの暫定税率について、30日に衆院で再可決する方針を決めた。

 一カ月前、筆者は思った。ガソリン税を再値上げするために自民党が衆院で再可決を強行すれば、世論が騒ぎ出すだろうし、メディアも黙っていない。自民党内でも若手を中心に造反グループが生まれる。そうなれば福田政権は火だるまとなる。
 各種の世論調査では、過半数がガソリンの再値上げに反対の結果が出ているが、いまのところどこからも火の手が上がらない。

 民主党も「再可決」なら首相に対する問責決議案の提出について、意見が分かれているなど腰が定まらない。特に大手メディアでは"混乱回避"的論調が目立つようだ。

 福田首相は、道路特定財源問題に関しては来年度からの一般財源化を目指して与野党で議論すると明言しているが、肝心の税率については"暫定"上乗せ分を維持する方針だし、向こう10年間、59兆円とする道路整備事業費が見直される保証はない。

 ガソリン税の問題はあまりにも多くある。もちろん道路特定財源は大きな問題だが、道路整備計画で将来の予算まで担保してきた制度も「初めに予算ありき」で無駄な公共事業の温床となってきた。

 暫定税率の長期化は税制の基本的部分で非常識が続いてきたのに、これまで国会で争点になったことはなかった。暫定に関連して租税特別措置法で「日切れ法案」扱いとしてきたことも決して小さい問題ではない。

 そもそも、バス・トラック向けの軽油と乗用車向けのガソリンとで税率が大きく違うのも、消費者中心の社会に転換しているはずの今日において許されるべきことではない。

 とりあえず今年度の税収だけは確保してから議論しようというのでは、本格的税議論はできない。燃料税はどうあるべきなのかというところからスタートして、国民に可能な負担を求める議論を始めるべきだと考えるのだが・・・。
 紀伊田辺の友人のブログがおもしろい。以前に1回紹介した「ほんまかい通信」。

 一昨日、「七福神の没落」とタイトルして4月から始まった「メタボ検診」をおちょくっている。「よけいなお世話」とコメントしたら、返事があり、二度ほどの応答となった。その応答がおもしろかったのでコピー&ペーストしたい。


紫竹庵人 :

そうなんだ。
これは「よけいなお世話」ということ。
余計なお世話だけならまだいいが、
検診にはお金がかかる。
目的は医療費削減だが、
確実に医療費(検診費を含めると)増大の原因になるはずだ。

最近、多いのよね、この余計なお世話。
たばこカードもそうだし、
自転車の3人乗り禁止もそうだ。
2008年4月22日 10:41

エビノキユウイチ :

「よけいなお世話」多いなあ。
買い物をするたび、「ポイントカードをお持ちですか?」と訊かれる。
持ってません、と答えると「お作りしますか?」
いらないから持ってないっちゅーの。
本屋さんで本を買うたび、頼みもしないブックカバーをかけてくれる。
文庫本にまでかけてくれる。
ブックカバーのかかった本を本棚に並べて、
自分の読みたい本をどうやって見つけるのだろう?
他の人は邪魔にならないのだろうか?
『どん兵衛天そば』を食べようとして、
ふたを開けてびっくりしました。
麺の中央にくぼみがあって、
名前が「たまごポケット」
このくぼみに「生卵をそっとのせ、スープを入れ、
熱湯を白身に回しかけながら内側の線まで注ぐ」のだそうだ。
ほとんど感動しました。
「よけいなお世話」と「至れり尽くせり」は紙一重かも知れません。
税金でこれをやろうとするから、
財政が破綻するのでしょうね、きっと。
2008年4月22日 17:40

紫竹庵人 :

はい。
たまごポケットは知りませんでした。
まさにこれです。
日本製品は緻密で使う人への配慮はすごいのですが、
みんな本質的な性能・機能ではないのです。
そんなところにばかり、開発の力が注がれているのです。

ビールなんて、毎年なんであんな数の新製品を作り出すのか。
新製品はコンビニに置いてくれるけど、
売れなくなったらおしまい。
そんなことの繰り返しはあほです。
エネルギーとお金の無駄です。
バドワイザーを見なさい。
何も変わらずずっと同じです。
2008年4月22日 20:36

エビノキユウイチ :

たしかにビールの種類は多すぎます。
消費者の選択能力を超えている。
本来ビールの売り上げを伸ばすはずだった努力が、
逆にビールの陳腐化に貢献し、
消費者のビールに対するロイヤリティを低下させたりする。バカです。

たばこカードの問題もそう。
未成年者に煙草を吸わせたくないのなら、
未成年者が煙草を吸う滑稽さをコンテンツにして見せてあげることが一番有効です。
かれらはかっこいいと信じて煙草を口にするのですから。
健康被害をいくら教えても無駄。
磁気カードの読取装置に数百億円も使うなど論外です。

自転車の三人乗り禁止も情けない。
なぜ安全な三人乗り自転車を開発しようとしないのだろう?

最近一番気になるのは、原子力発電の再評価です。
まるでCO2削減の切り札みたいに扱われたりする。
これ議論のすり替えですよね。
発電所を増やす前にやるべきことがいくらでもあるだろーがと言いたい。
日本人は頭が悪くなったのでしょうか?
2008年4月23日 02:46
2008年01月14日(月)
萬晩報主宰 伴 武澄
  18日からの通常国会の争点はガソリンなどにかかっている暫定税率である。3月31日までに租税特別措置法改正案(租特法)が国会を通らないと、5年間と 区切って延長されていた高い税率が3月末で日切れとなり、翌4月1日から揮発油税法などで決められた"本則"の税率に自動的に戻ることになっている。

 これまでこの「日切れ法案」は「国民の生活に密接にかかわる」として与野党の政策論争になったことはほとんどなかったが、今回は民主党が暫定税率に焦点を絞って論戦を挑むことを表明しているからである。

 具体的にいうと揮発油税法で定められたガソリン税(揮発油税+地方道路税)は1リットルあたり28.7円。それが租特法によって「当分の間」53.8円 になっている。民主党が「四月からガソリンが25円安くなります」といっているのはその差額のことである。法案成立がただの1日でも4月にずれ込むと、そ の日は本則の税金しかとれない。

 通常国会での一番の仕事は2008年度予算の成立。これも3月末までに成立しないと別途暫定予算を組まなければならないからけっこう大変なことになる。 しかし租特法が通らないと世の中もっとややこしいことになる。期限切れが来るのはガソリン税だけではない。住宅取得のかかわる多くの減税措置なども「租特 法」改正として一括法案になっているからである。

 萬晩報は発足当初からこの「暫定」という概念や「租税特別措置法」そのものに対して問題を提起してきた。この暫定税率がなぜいかがわしいか。いくつか例を上げたい。

 第一に暫定の期間が長すぎる。最初にガソリン税などに暫定税率が導入されたのは昭和49年。1974年のことである。石油ショックにより道路財源が確保 できないことから当初2年だけ多く負担してくださいというのが趣旨だった。それが3年、5年の延長、延長でここまでやってきた。

 筆者が就職したのが77年であるから、暫定期間が34年にも及んだことになる。30年以上にもわたり"暫定"はないないだろう。

 この問題は筆者が記者だった時代から記事を書いてきたが、当時でさえ「15年もの暫定はないだろう」と問題提起した。しかし"暫定"問題に関心を示して いたのは石油業界だけであった。本当に必要な税率だとするならば本則を改正すればいいことである。そんなに難しいこととも思えない。

 第二に暫定税率が高すぎることがある。ここ数年ガソリンそのものが高騰しているが、長い間、製品価格に対して100%以上の課税が続いていたのである。こんな税率はタバコしかない。

 第三は自動車関連だけに暫定税率がかけられていることである。ガソリン税、軽油取引税、自動車重量税などである。30年前なら自動車は"贅沢品"の一つ として重課税があってもおかしくない。だが、自動車を持つことが富の象徴でもなんでもなくなった時代になっても自動車に重課税することは税の公平性からみ ておかしい。国際的にみて自動車オーナーにこんなに税負担がある国はないはずだ。本則を改正しようとすると必ずこういった議論が起きるから政府はなんとか 暫定措置の延長で税収減をかわしたいのだと考えざるを得ない。

 第四におかしいのは自動車関連の税金が道路特定財源となっていることである。自動車に乗る人たちが道路建設の負担をするのは当然のことと思われた時代も あった。しかし、発想は昭和20年代のものである。田中角栄議員が同29年に議員立法で成立させた法律である。当時は、高速道路などはなく、国道1号線で さえ、十分に舗装されていなかったのだから悪くない発想だったに違いない。ちなみに高速道路を有料にしたのも田中角栄氏だった。

 全国に道路を整備することはまさに地方への公共事業予算の確保にほかならなかった。連想ゲームのように「暫定税率」は「道路特定財源」という自民党の政 権維持のための資金源へとつながる。これを断ち切るのが改革でなくてなんであろう。

 政府・与党にとって暫定税率が日切れとなるのは悪夢であろう。しかし、たとえ1日であってもガソリン税が本則に戻ることは国民にとって大きなショック療 法となる。暫定税率といういかがわしい制度がこれほどまで続いてきた意味について考えるきっかけになるだろうからだ。

 筆者のかねてからの主張は、国の施策から「臨時」「暫定」「特定」をなくそうというものである。きょうの日本経済新聞に旧特定郵便局長で構成する「全国 特定郵便局長会」(全特)の組織名から「特定」の文字を外すことが決まったと報じていた。
 経産省が「洗濯機、テレビ、エアコン、扇風機、換気扇の家電5品目について、安全に使える目安となる標準使用期間(耐用年数)や注意事項を製品本体に表示するようメーカーに義務付ける方針を固めた。
 このほど成立した改正消費生活用製品安全法(消安法)に制度概要を盛り込み、政省令で5品目を指定する。周知期間を経て2009年春の施行を目指すのだという。

 まずはよけいなお世話だといいたい。

 まず発想が賞味期限の表示を定めた食品安全法と酷似している。期限を定めるのは企業なのに、万一、期限内に事故があった場合は企業の責任を問えるように なる。消費者と安全という誰もが否定できないキーワードをちりばめれば民主党だって反対できない。

 耐用年数は利用に耐える年数で、本来税法上の減価償却の概念である。企業が持っている資産の価値の減価を法律で定めた期間に配分する場合の計算の基礎と するものにすぎない。本来、製品の安全性とはまったく違う概念なのだ。

 どれだけ長く使うかは消費者の心がけ次第なのである。我が家の冷蔵庫は20年"酷使"された後、昨年更新された。修理すればと思ったが年数を考え断念した。ちなみに税法上の耐用年数は4年である。

 日本の乗用車は10年もすると大方、廃棄処分となるが、多くはロシアや途上国で二度目の人生を送っている。まだまだ乗れる自動車を次々と墓場に送っているのが日本の実態なのである。

 三重にいたとき、100年も前のドイツ製の発電機がまだ現役で動いていることにいたく感動した。100年前の技術がハイテク時代でも生きていける証拠でもあった。

 メーカーはすでに自身で保証期間を定めている。期間内に故障した場合、無料で修理したり製品交換をしてくれる。製品保証に加えて"賞味期限"的な耐用年数を上乗せしようというのである。

 たぶん、家電製品が火を噴く事故を防ぐ意味で官僚たちが考えた"新制度"なのだろう。人間が完全でないと同様、機械類も完全であるはずがない。何年も使えば、何十万台のうち1台や2台故障したところで不思議はない。

 昨年3月、「PSEマーク」なしで中古家電が販売できないことが分かり、大騒ぎになった。2001年4月1日に施行された電気用品安全法(PSE法)が 元凶だった。1年経って、この法律は改正されることになった。本来は廃止すべき法律である。霞が関の官僚たちは反省することなく、意味の分からない法律を つくり続けているということなのだ。

 加工食品の「表示」が「製造年月日」から「賞味期限(消費期限)」に変わってから12年になる。よく聞かれる質問は「賞味期限って誰が決めるの?」というものである。

 編集仲間との会話である。

「名古屋で単身赴任だったとき、よく自炊もしたんだけど、消費期限をすぎた牛乳はよく飲んだ。多少期限をすぎたところで問題ない。食あたりになったなんて聞いたことないもんね」
「そうなんだよ。先日も日曜日にかみさんがいなくて冷蔵庫をあけたら期限が2週間前の焼きそばがあって、子どもに相談したら食べちゃえということで、食ったけどどうもなかった」
「やばいのは豆腐かもしれない。俺腹こわしたことあるんだよね」

 多分、津々浦々でこんな会話は日常的に行われているのだろうと思う。
 消費期限なんてものはせいぜいスーパーの店舗での話で、いったん消費者が購入してしまえば、あとは「野となれ山となれ」。自己責任の世界なのだ。

 実は食品衛生法にもJAS法にも「賞味期限の」規定はない。食品衛生法施行規則の「食品の表示」という項目に「表示しなければならない」項目のひ とつとして、添加物や原産地などと並んでいるにすぎない。つまり"一定"の加工食品には「賞味期限を表示しなければならず、期限の短いものは消費期限とし て表示する」ことになっている。

 細かいことで申し訳ないが。賞味期限は製造者が決めることになっている。「この加工食品の味について表示している期限内なら我社は品質を保証する」といった程度の話なのである。スーパーやコンビニでぜひ食品の表示を見比べると非常におもしろい。

 輸入品であるプリングルのポテトチップスなどは1年後の日時が刻字されてある。缶詰なら数年後ということもある。国産のお菓子類は1、2カ月と いったところ。先差万別なのである。「白い恋人」も「赤福」も賞味期限を偽装したことでメディアの批判の対象になっているが、おもしろいことにまだ実害の 報告はないのである。

 ここらへんをどう理解したらいいのか。判断がむつかしいところである。

 そもそも食品衛生法が生まれたのは昭和22年。戦後の食うや食わずの時代、口に入ればなんでもよかった。衛生観念はゼロといってよかった時代。 「食品の安全性確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止・・・・・・すること を目的とする」(第一条)ため、占領軍の指令で施行された。当時は「賞味期限」などという概念すらなかったのである。

 食品衛生法

 食品衛生法施行規則

 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)

 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律施行規則

 「白い恋人」の賞味期限日"改ざん"から、食品衛生法とJAS法の「賞味期限」を調べてきた。12年前、農水省を担当していたときに、日本は長年使用してきた加工食品の表示方法を「製造年月日」から「賞味期限」に変更した経緯がある。

 当時、日米間の経済摩擦の中でアメリカ側が要求していたもので、コメ市場の開放に遅れること7カ月で施行となった。当時、いろいろな議論があった。おもしろかったのはパン屋さんの問題提起だった。

「朝パンを買うお客さんはどうしてもその日につくられたパンだと信じている。だから午前零時を期してパンの包装に製造年月日を刻字するんです。これ は従業員に大きな負担になります。賞味期限なら数日後の日時が刻字されるのでたとえ製造日が店頭に並ぶ日でなくても不満はでにくいし売りやすい」

 なるほど、業界にとって製造年月日というのは"包装した出荷日時"と同じ意味なのだと合点した。パン屋さんにとって賞味期限の導入は歓迎すべきも のだったのである。牛乳はまさか早朝に搾乳した牛乳が朝、店頭に並ぶとはだれも信じていないが、業界としては「何日まで"安全"です」の方が売りやすい。

 赤福でも同じことが行われていた。

 東京や筆者が住む神奈川県で、「北海道牛乳」と命名された牛乳が多く売られている。裏には神奈川県内の業者名が印刷されてあり、北海道で搾乳され た牛乳が神奈川県の業者によってパックされたことが分かる。消費者は「北海道なら」というイメージで北海道牛乳を手にするのだろうが、はたして正しいのだ ろうか。

 問題は、搾乳された牛乳が北海道から届くまで何日かかるかということである。たぶん短くて2日間。そうなると鮮度という意味合いにおいては、神奈川県で搾乳された牛乳と比べて大きなハンデがある。

 かつて雪印乳業が売れ残りの牛乳を新たに売り出す商品に混ぜて売っていたことが問題となった。多くの消費者は雪印=北海道というイメージを抱いて いたのではないかと思う。発祥地は北海道だが、大企業となったいまでは、東京の会社であり、全国に工場をもつオペレーションとなっている。

 雪印は興味ある「毎日骨太」という"牛乳"を売っている。「毎日骨太」は簡単に言えば、搾乳した牛乳をいったんバターと脱脂粉乳に分離、再び加工して商品化して いるのである。北海道と本州との距離感を生めるため、こんな商品が生まれるのだろうが、ここまでくるとはたして「牛乳」といってよいのか分からなくなる。

 だから雪印は「毎日骨太」を「乳飲料」と表示しているのである。


2006年03月21日(火)
萬晩報主宰 伴 武澄
  8年前の1998年3月に「生きていたSGマークという亡霊」というコラムを書いたことがある。PL法(製造物責任法)が生まれて3年も経っているのにま だ通産省認定のSGマーク製品が存在しているだけでなく、対象商品を増やしているのはけしからんという内容のコラムだった。「PL法の施行により、消費者 は製品事故に対して直接メーカーを訴えられるようになり、政府の庇護はもはや必要ない」と喝破したつもりだった。

 中古家電製品が4月から流通できなくなるという「PSE法」の導入騒動でそのコラムを思い出し、PSE法もまた経産省の策謀ではないかと考えた。

 SGマークはsafty goodsの略。通産大臣の承認事項だったものが、2000年からは検査機関である財団法人製品安全協会の独自の安全基準となっている。この点ではいくら か進歩があったのだろうが、PSE騒動では、安全を国が守るという旧来の発想に逆行したのではないかと考え始めている。

 安心、安全という概念は21世紀の政治の新たなキーワードとなった。大地震への不安や大津波といった自然災害だけでなく、JR西日本の列車事故、マン ションの耐震基準問題など身近に国民の安心、安全を揺るがす事件事故が相次いでいる。金融機関の破たんもまた国民生活を不安にさせる原因ともなっていた。

 人間が安心、安全で暮らせる環境は当然ながら国民が望むものではあるが、国や自治体はどこまで市民の安心、安全に対して責任があるのか。どこまでコストをかけたらいいのかという点では国民的合意があるとは思えない。

 住んでいるマンションに対して「震度5の地震で崩壊の危険がある」といわれたら誰だってぞっとする。民間が建てるマンションやビルに対してある程度の耐 震基準を設けるのは当然と思うかもしれない。高額商品であるだけに一度建てたらなかなか建て直しなどできるものではないからなおさらである。

 しかし、小泉内閣が目指すものは自己責任だったのではないか。何から何まで国や自治体に依存する高コスト社会を改善しようとするのが自己責任だったはず だ。都市計画や防災といった公的なものならいざしらず、個々の家電製品の安全性にまでいちいち国家の責任は問われないのではないかと思う。

 電気用品安全法(PSE法)などというものが2001年4月1日に施行されていたことは筆者も知らなかった。「漏電・火災・感電などの事故防止と 粗悪品を排除してきちんとした電源部品で運用管理する」という目的で制定された。いわば家電製品の「車検」のようなものである。車検のように2年ごとの検査はないが、PSEマークのない家電製品は出荷できないのである。

 笑ってしまうのは、この法律が規制するのは「電源コード「ヒューズ」「ソケット」「スイッチ」「変圧器」「電熱器」の類が安全であるかどうかという点である。決して家電製品の品質保証ではないのである。

 考えれば考えるほどPSE法は時代錯誤の法律である。

 メディア業界にいてこの法律の施行を覚えていないのは何とも情けない話であるが、家電業界がこの法律の導入にどれほど抵抗したのだろうか。これも記憶に ない。家電製品が火を噴くなど不安を持つ消費者がいま時どれほどあろうか。日本の家電製品への信頼性は世界一であることは誰もが求めるところであろう。そ の日本の家電製品を官僚が「検査」して「合格」のシールを貼るなどということはほとんどパロディーである。

 仮にどうしても「検査」したいというのであれば、経産省自らが検査すればいい。外郭団体に検査を委託するなら、SGマークのように「任意」の安全基準に するべきであろう。ちなみに車検は民間車検場もないことはないが、国交省が車検場を各県に設けている。

 PSE法の認定機関は経産省の外郭団体である財団法人電気安全環境研究所(JET)である。1997年にJETと改称した。元々は1963年に設立され た財団法人日本電気協会電気用品試験所としてスタートした。通産省工業技術院の電気試験所から安全試験の業務が移管された。電気用品取締法に基づく指定試 験機関だった。

 まだ日本の家電製品は安かろう悪かろうの時代を脱し切れていなかった。ということで同電気用品試験所の試験に合格した製品に〒マークが表示された。その後、この〒マークは政府の許可が必要な「甲種 」と企業が安全性を自己確認すればいい「乙種 」に分けられ、1995年にはほとんどの家電製品が「乙種」になり、乙種マークも廃止となったという経緯があった。(代わりにSマークが登場したが任意の制度)

 PSE法がいかがわしいのは、この法律が導入される際の説明として「さまざまな経緯をたどりながら、平成13年4月の法改正で、規制の哲学も事前規制か ら事後規制に変わり、法律の名称も「電気用品取締法」から「電気用品安全法」に改称された」としながら、再び「甲種」と「乙種」マークの義務づけを復活さ せたことだ。甲種は◇の中にPSE,乙種は○の中にPSFの文字が表示されている。

 現在、PSE法は「4月から中古家電製品が店舗販売できなくなる」と問題が矮小化されている。そもそも過去の日本の家電製品には「電気用品取締法」に基 づいた「甲種」「乙種」マークが付いているのである。家にある家電製品の裏をご覧になるといい。乙種であっても一応、国家の認証を経ているのである。その 過去の認証を否定するような法律はどう考えてもおかしい。

 マンションやビルの建築基準は年を経るごとにハードルが高くなっているが、古い基準のマンションやビルの販売を禁止する法律はない。いかがわしいPSE法は即刻廃止すべきだ。
2003年11月19日(水)萬晩報主宰 伴 武澄

 世の中合点がいかないことだらけだ。18日、日本テレビ放送網が視聴率操作問題の責任を取る「降格」人事を発表したが、どこでどう責任を取ったのか分からない人事だった。

 代表取締役CEO会長  氏家斉一 → 代表取締役会長
 代表取締役EO副会長 間部耕苹 → 代表取締役社長
 代表取締役COO社長 萩原敏雄 → 代表取締役副社長

 トップ3人の「代表権」はそのまま、しかも序列も変わらない。同時にグループ経営としてCEOとかCOOを廃止したというのだから、氏家氏の社内的ス テータスは一切変わらない。間部氏は「社長に就任」したのだから世間体からいえば「めでたい」ことになる。だから19日付朝刊はそろって間部社長就任を経 歴付きで別稿で報じた。本当に降格となったのは社長の萩原氏だけである。

 こんな人事を「降格」と発表したら、社会的に笑われるが、日テレは臆面もなく「降格人事」と広報した。視聴率を操作するために制作費を不正流用したこと を不問に付せよというのではない。こういう人事を平気で公表できる会社の体質こそが問題なのだ。

 18日にはもう一つおかしな発表があった。首都高のETC搭載車向け通行料を夜間に最大42%割り引くというニュースだ。普通車の700円の通行料が 400円になるというのだから朗報のたぐいかもしれないが、これは5万円の通行料を前払いするという前提だ。5万円もの前払い料を支払う個人ユーザーなど はそうざらにいるものではない。だからETCだけを搭載しても400円とはならず、支払いは462円となる。

 462円でも負担が減ると喜ぶ向きもあるかもしれないが、よく考えれば、午前1時から同4時に首都高を利用するのはトラックかタクシーぐらいのもの。一 般の人たちは寝ている時間帯なのである。だから「400円で走れる」と錯覚させるのは二重に意味で誇大広告である。

 ETCはドライバー自身の負担によって機器を取りつけるものであることを忘れては困る。ETC導入によって料金徴収コストが大幅に軽減されることを考えれば、無料で配ってもいいものかもしれない。YahooBBなら疑いもなくそうしただろう。

 だから当てずッポにいえば、ETC搭載車には時間帯に関係なく2割から3割程度の通行料の割引があってしかるべきである。そうでなければ個人ユーザーが 高価な機器を購入する動機付けはない。さらに同じ前払い制の回数券(100枚)がすでに18%引きで販売されていることを考慮すれば、5万円もの前払いで はさらに2割程度値引きが行われて当然ということになる。

 だからETC搭載プラス前払いで4-5割の割引など当たり前すぎて朗報でもなんでもない。さらに本来、通行料を割り引くべき時間帯は高速道路が「高速」でなくなるラッシュアワーだろうと思う。みなさんどう考えますか。
2002年12月11日(水)萬晩報主宰 伴 武澄


 「ビールも発泡酒も同じだから」という理由で発泡酒の税金を上げようとしている。政治化もマスコミもたった8年前のことを忘れようとしている。ここでもういちど発泡酒が日本に登場した背景をおさらいしておきたい。

 1994年暮れ、発泡酒を「ホップス」の名で最初に世に出したのは、サントリーである。背景には輸入ビールの急増があった。おかげで世間は原料の麦芽の比率をほんの少しだけ落とすことで、世界一高い日本のビール税を免れることを知った。

 ホップスの希望小売価格は350ミリリットル缶で普通のビールの225円に対して180円だった。主原料の麦芽の割合を65%に押さえたため、ビール税 の適用を外れ、大幅値下げが可能になった。サッポロビールはさらに麦芽の比率を25%まで下げて150円という価格を実現した。いまでは小売り価格120 円台が常識。自販機の清涼飲料とほとんど変わらない。

 それまでほとんど酒屋で「定価」で販売していたビール類が値崩れを起こしたのはディスカウント店のおかげである。ディスカウント店は洋酒やビールを手始めに化粧品などの値引き販売に参入。結果として安価な輸入ブランドが街にあふれ、大手企業を震え上がらせた。

 ビール業界では海外の安いビールが日本市場になだれ込み、スーパーのダイエーまでがベルギーのビール会社と提携、小売価格128円などという缶ビールが 市場に出回った。当時のビール業界の人々は128円ビールの登場に泡を食った。「350ミリ缶でビール税が90円近くを占めている。赤字販売だ」と流通業 界をなじった。

 調べてみると、ビールの輸入価格は、当時、24本入り缶ケース1箱の価格が「6ドル」とか「7ドル」程度で、国内メーカーの工場出荷の半分以下で、輸入ビールの価格圧力は相当なものだったに違いない。

 サントリーが考えたのは、国内製造でのコストを大胆に切り下げられない以上、酒税の方でなんとかしなければならないということだった。幸い日本の酒税でビールの定義は「原料の麦芽比率が全体の3分の1以上でなければならない」という規定があった。

 そこで「麦芽料が3分の1以下ならば酒税が各段安い"発泡酒"という分野でビールと同じ品質のものを売り出せる」という目からうろこの逆転の発想にたど り着いた。そもそも当時、ドイツ以外にビールの品質規定で「麦芽比率」を設けているところはなく、麦芽比率60%以下のビールも多くあったから、ビールと いう名前さえ気にしなければ安い"ビール"を世に出すアイデアはいくらでもあった。発泡酒はそんな時代背景から生まれた。

 背景には急速に進む円高があった。消費者は円高にもかかわらず物価が一向に下がらないことに不満を募らせていた。その2年前に自民党内閣が崩壊して、細川内閣が誕生したのも実は「変わらない日本」に対する国民の意思表示だった。

 発泡酒増税は単に1缶当たり20円増税するとか10円に圧縮するべきだと論ずるような問題ではない。円高が国内の流通に規制を揺さぶり、酒税のあり方を あざわらう「発泡酒」が誕生した。その結果かどうか分からないが、キリンの牙城が切り崩され、アサヒビールが国内生産のトップに立った。業界ランキングが 逆転した唯一の業界がビール業界ということができる。発泡酒は規制緩和の
寵児なのである。

 政府はまもなくネットで1・5兆円減税を決めることになっているが、所得税が減税になるわけではない。お年寄りの金を子どもたちに差し出す生前相続の非 課税枠拡大などは姑息な住宅産業支援策にすぎない。多くの国民が求めているのはそんな減税策ではない。小泉首相の人気を支えてきたのは無駄な財政カットで あり、そのためならば多少のデフレは我慢しようというまっとうな考え方だったのではないだろうか。

 多くの国民が望んでもいない減税の見返りにたばこや発泡酒を増税するのは小泉内閣の足を引っ張る愚策である。

2002年12月04日(水)萬晩報主宰 伴 武澄


  四国新聞論説委員の明石安哲氏がコラム「一日一言」で「たばこ税を上げ続ければ、たばこの密輸が増え、新たな暴力団の資金源になるかもしれない」というこ と書いている。明石氏によると、たばこの税負担率が84・6%まで引き上げられたイギリスでは消費量の3分の1が密輸なのだそうだ。

 以前チェコを訪れた時に同じことを聞いたことを思い出した。ドイツとチェコとのたばこ税が大きく違うのでチェコで製造したマルボロが国境を越えて大量に ドイツに流れていたのだった。陸地で国境を接していない日本では暴力団が手を染めてもいい商売になるかもしれない。一概に荒唐無稽と聞き流すわけにはいか ないと思った。

 「12月から590億円得したたばこ屋さん」と題してたばこ増税に反対するコラムを書いたことがあるが、いただいた反響のメールのほとんどは「社会に害毒を撒き散らすものだからどんどん税金を上げればいい」というコラムの趣旨をはきちがえた非喫煙者と思える読者からの批判だった。

 http://www.yorozubp.com/9812/981209.htm

 今回は違う側面からたばこ問題を考えたい。ひとつはたばこ価格が財務省による認可価格であるということである。たばこ価格を値上げするにも値下げするに もいちいち財務省にお伺いをたてなければならない。その結果、財務省が認めた価格以外で売ってはいけないこととなり、小売り店がたばこを値引き販売すると 法律に触れるのである。

 街角の自動販売機で買っても、銀座の高級バーやクラブにいってもマイルドセブンが250円であるのはそういうことが背景にあるからなのだ。

 大方の商品は「定価」を定めると「価格拘束」という名の独占禁止法に抵触することになるのに、たばこだけは財務省の管轄ということもあっていまだに旧制 度が生き延びている。ほとんど旧社会主義国並みである。ちなみに書籍や新聞も独禁法の対象外となっていて「定価」をうたうことが許されている。

 この際、国家財政のためにどうしてもたばこ増税をしたいのだったら、たばこのこの「定価」という旧弊を廃止するべきである。財務省も譲るから国民にも我慢を、ということならば多少の増税はいたしかたない。

 というのもたばこの定価制が廃止されれば、たちどころにたばこの乱売合戦が始まることが期待できるからだ。増税分をまるまる国民が負担しなくていいとなれば、愛煙家の理解も得られるというものだ。

 定価がなくなる効果のもう一つの側面はコスト競争力のあるたばこ会社が売り上げを伸ばし、その逆も起こりうるということだ。日本では日本たばこ産業 (JT)がダントツだが、フィリップモリス社の輸入たばこシェアは15・2%(このほかJTに委託生産するマルボロがある)。外資全体では26・6%シェ アとなっていて、その比率は年々アップしている。

 それでなくとも高コストでシェアを落としているJTの未来はおぼつかない。

 現在、250円のマイルドセブンにかかるたばこ税は141円44銭、これに消費税11円90銭を上乗せして、税金は合計153円34銭である。価格に占める税金の割合は61・3%。小売り価格に占める税金の比率が50%を超えているのはたばことガソリンである。

 財務省のお役人も自民党税調のお偉方もよーく考えてたばこ増税を判断するべきだ。
1999年02月17日(水)
萬晩報主宰 伴 武澄


 1999年02月15日付萬晩報「特定という名の不特定--臨時暫定特定国家」に興味ある2通のメールが届いたので紹介したい。ひとつは使命を失ったまま存続を続ける通産省の外郭団体の実態であり、片や飲料用に転用できるからと医療用アルコールに酒税相当分が"課税"されているというとんでもない話である。

 中央官庁や地方政府の外郭団体にはほとんど世間から忘れ去られた団体が多い。OBたち の定年後の格好の天下り先であるというだけでひどい話なのに、時代錯誤の国の基準認証の隠れ蓑になっている場合が少なくない。医療用アルコールを飲んでい たのは終戦直後のモノ不足の時代である。今どき、飲酒目的で薬局でアルコールを購入する人がいるとは考えられない。こんな時代錯誤は即時、廃止すべきであ る。【伴 武澄】


 ●国産OSシグマを死滅させたまま存続するIPA
 米国カリフォルニアにて、ソフト関係の仕事をしております。職場は5名だけのスタートアップベンチャーです。「特定という名の不特定--臨時暫定特定国 家 」を読ませていただきました。日本において、ソフトウェア産業もまた通産省が"仕切って"いるわけですが、やはり官僚丸出しの体制だと実感しております。

 1980年代後半に「西暦2000年にはソフトウェア開発者が30万人不足する」とか いうキャッチフレーズを掲げ、IPAなる団体を立ち上げたのは通産省です。そのIPA主導で開発された国産OSシグマは、2000年問題を待つまでもなく 絶滅した模様です。仮に存続していたとしても、2000年問題はクリアできなかったことでしょう。仕組みとしては、どうしようもない代物でしたから。

 10年ちょっと先の技術動向など読めるはずもない連中が2000年には何人の技術者が 不足するなどと豪語して特殊法人を立ち上げる。そして、そのIPAは実質上、ソフトウェア技術者があぶれて、今も立派に存続しています。いつの間にやらそ の役目はコンピューターウィルスの情報収集などに変わったようですが、セキュリティーに関する情報なら米国のCERTなどをウォッチしている方がよっぽど 迅速・確実な情報が入手できます。

 つまりは、IPAなどという団体に存在価値はないわけです。シグマOSが存続していない以上、彼らは収入源を持ってないはずです。逆にその団体が存在するということによって、納税者からのお金が流れているということが容易に推定できます。

 あるいは、情報処理技術者試験なども、同様の位置づけですよね。昭和40年代に「情報 処理に従事する技術者を育成するため」という目的で一種、二種情報処理試験からスタートしたわけですが、今や特種・ネットワーク・アプリケーション・シス テム監査などのメニューが追加されています。

 つまり、当初の目的だった情報処理技術者の育成などという理由はすでに達成されている わけです。あとは、その仕組みの維持そのものが目的となるだけです。そして、その情報処理技術者試験に合格するためには、開発現場ではまず使われることの ない知識の習得が強制されます。Microsoftのやっている試験のほうがはるかに実用になります。

 ソフトウェアに限らず「一旦たちあげた以上はなにがなんでも外郭団体は存続させよう」という連中が産業を仕切っているわけですから、私は日本の将来には悲観的です。「身内の首を切らない」ために、全員が危機にさらされる仕組みの縮図がそこにあるからです。

 だからこそ、競争原理が存在し、元気のあるカリフォルニアにて働くことを決心した次第 です。実際、こちらは面白い。自分の実力を向上させ続けないと生き残れない社会というと大袈裟かもしれませんが、会議ばかりで何も生産しない日本の会社に いた頃よりは、毎日がはるかに充実しています。(パロアルトにて 匿名希望)


 ●酒税相当分が課税されている医療用アルコール
いつも萬晩報を興味深く拝見しております。最近、2月15日号と同じような経験をしましたのでメールいたしました。消毒に用いるエタノールに酒税がかかっ ているという話を聞きまして、河野太郎衆議院議員にメールしてお尋ねしたところ、大蔵省いわく「そのような事実はない」との返答が来たそうです。

 再度調べてみたところ、エタノールは通産省の外郭団体「日本アルコール販売」が専売し ており、医療用途に用いられるものは酒税相当分の上乗せがされていました、確かに大蔵の言うとおり酒税ではないのですが、同じ税率のものがかかっておりま す。大蔵が知らないはずはないのですが、酒税がかかっているかと聞かれたのでそういうことはないと答えたまでだとのことでした。

 エタノールの販売価格には一般価格と特別価格の二通りがあります。一般価格は医療用などの価格、特別価格は工業用として酒税相当額の上乗せがないもので、 両者には大きな価格差があります。

95度のエタノールの場合、医療業者は1リットルあたり966円で買っており、工業用途で使う場合は146円です。この差額820円が酒税相当分になります。本体価格を100とすると酒税相当額は84.8% 税率にすると560%以上に相当します。

 一般に使われている消毒用のエタノールは若干濃度が低いものの酒税相当額が81.5% を占めていると聞いております。先に述べた特別価格は法令で定められた物品の製造用途に使用するアルコールに適用される価格で、残念ながら消毒用エタノー ルは飲料用に転用可能との趣旨で適用除外されております。

 液体消毒剤であるアルコールにはエタノールの他にイソプロパノールがあり、前者の方が 広範囲に作用します、後者の酒税相当分の上乗せはありませんが、毒性があるため口腔内では使えません。致死量が定められ、消毒に用いられる薬剤にほとんど の医療従事者が知らずのうちにこんな酒税まがいのものを取られているのは納得がいかないものであります。またアルコールは多くの医薬品の製造に用いられま すが、一部を除き一般価格で納入されていると聞いており、価格に上乗せされております。

 消毒用のアルコールは飲料用として転用できるから酒税相当分をかける、しかも文句の出ないように大蔵ではなく通産が価格上乗せをすると言う構図です。215号をみていて根は同じだなと思ったのでメールさせていただきました。(東京都小金井市、医師)


1998年10月11日(日)萬晩報主宰 伴 武澄


 窮余の景気対策のとして商品券を国民に配る構想が浮上し、是々非々の論争が始まっている。筆者の職場では約1カ月前から話題になっていた。もちろん景気 対策などというちんけな発想ではない。ことのおこりは香川県引田町の商工会に勤務する友人からファックスしてきた京都新聞のコピーだった。

 「伴ちゃん、ひさしぶりやね。ぼく前の職場辞めて引田町の商工会におるねん。いまファックスした件なんやけんどな、うちの町でもやりたいんや。なんぞ情報あったら教えてほしいねん」

 ●京都府園部町で始まった商品券販売
 京都新聞のコピーは、京都府園部町で町内だけで使える商品券を発行した経緯が書いてあった。園部町は野中官房長官のお膝元で、実弟が町長を長年やってい る。町主宰のお祝い事の引き出物に商品券を送ることをことを昨年から始めた。あまり役に立たない引き出物よりは、商品券の方が実質的だし、商店街の振興に もなるというのが発行の背景にある。町民の結婚式や葬儀などでも活用してもらおうと、ことしからは商品券を一般にも販売する。9月町議会で正式決定した。 京都に住みながら不覚にしてこの記事を読んでいなかった。

 「使用地域を町に限定しているけど、これって町の通貨になるんじゃないの」
 「だけど、そんなことよく大蔵省が許したな」
 「新聞に書いてあるけど、官房長官を通じて大蔵省にご意向を聞いたら、無理ですといわれたらしいよ」
 「それでもやるってところが、けっこう骨っぽい」
 「やっぱり身内に官房長官がいたからやれたんじゃないか」

 そんな議論をしていたら、タイミング良く山口支局から「敬老慰労金の代わりに商品券」という原稿が「敬老の日」向けに届いた。記事を書いた記者は「東京 都の港区や台東区でもやっているそうなのですが・・」と電話してきたが、当方は盛り上がっていたから、「いや、これはおもしろいから全国流しだ」というこ とになった。結果はけっこう多くの地方紙の紙面を飾ることになる。

 ●商品券は金券(有価証券)である
 園部町では、町が商品券を販売する動きで、山口県での敬老慰労金は自治体が贈与する金券(有価証券)である。どちらにしても地域限定の使用となっている が、他の地域の業者が受け取りを歓迎したらどうなるのだろう。中国では香港ドルの流通を認めていないが、広東省を中心にホテルでも商店でも受け取りを拒否 しない。拒否しない返還後の情勢は知らないが、返還前までは、中国元による支払いより歓迎された。

 おかげで、香港ドルの3分の1は中国で流通するという事態が起きていた。現代の通貨(紙幣)は、金や銀の兌換性がない。あるのは発行体である国家や政府 への信用だけである。いまの日本でそんな信用がある自治体があるのだろうかという議論もあろうかと思うが、国によって発行する国債の金利が違うのは、信用 度の格付けが違うということである。自治体の信用度が同じでいいはずはない。

 借金の多い少ないや、返済能力の高い低いは当然あるはずだから、自治体の発行する地方債だって金利が違うのが当然である。商品券発行という園部町での小さな出来事からいろいろなことを考えた。結論がある話でないことはいうまでもない。

 ●小渕政権は日本に二つ目の紙幣を流通させるのか
 月が変わると、今度は国が商品券を発行するという風向きとなったから驚いた。だが、萬晩報は「自治体が発行するのとはちょっと違うのではないか」と考え る。「減税をしても貯金に回ってしまう」という議論は数年前からあった。そんなことから公明は「商品券」というアイデアを持ち出した。

 国家にはれっきとした通貨がある。以前09月05日「ドル紙幣はアメリカ政府に対するニューヨーク連銀の借金証書」 で説明したように「紙幣(notes)」は国家の信用をもとに流通する疑似通貨である。国家が商品券を発行する行為は、二つ目の「紙幣」を発行するに等し い。景気のためとはいえ、「日本銀行券」という紙幣を持ちながら、商品券の発行をするのは自ら政府の権威を自ら否定するようなものである。

 国家は、百貨店やスーパーと違うのだ。園部町が商品券を発行するのと訳が違うのだ。

 先週、大阪で乗ったタクシーの運転手さんに「どう思うか」聞いたところ、即座に「町の金券ショップが繁盛するのとちがいまっか」ときた。そういうことですよ。小渕恵三総理大臣閣下、商品券配布の効果は知れている。金券ショップをもうけさせるだけである。

 それより、やがて金券ショップで売られることになるだろう。「平成商品券」の値段が「伊勢丹」の商品券より安かったら小渕恵三首相はどう申し開きをするのだろうか。


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