安倍総理のモンゴル訪問に想う 中野 有

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                                                                  龍谷大学 社会学部 教授 中野 有

国際フリーターとしてグローバルに動いていると「Life is funny」とときめく偶然に出くわすことがある。2003年、ワシントンのシンクタンク(ブルッキングス研究所)で勤務している時、ランチのセミナーで同じテーブルについたモンゴル人と話しが弾んだ。当時の僕は、国連機関のモンゴルの地域担当官も経験し、日本の地方政府が主役となるフォーラムをモンゴルで開催した経緯もありモンゴルへの想いは強かった。また、「北東アジアグランドデザイン」を作成するに安全保障の観点からモンゴルの役割は重要だと認識していた。

同じテーブルについたモンゴル人は、ハーバード大学に留学し、国連のプロジェクトに関わっているということ、更に驚いたことにモンゴルの首相も経験したという。相手が前首相でも僕の方が年上だったのでイージーゴーイングな付き合いがスタートした。その後、交流を深める内に冗談で「貴方が再びモンゴルのトップになったら安全保障に関わるプロジェクトを一緒に推進したく思うのでその節は宜しく」と約束を交わしたのが10年近く前。

驚くことに再びこのモンゴル人は首相に帰り咲いたのである。モンゴルに行こうと思っているうちに何と、彼は再び首相の座を追われたのである。タイミングを逸したのでそれ以来、モンゴルの動向から疎くなっていた。

先日、テレビを観ていたら安倍総理が今月の末にモンゴルを訪問されるというニュースが流れていた。テレビに映る安部総理のカウンターパートであるモンゴルの大統領は、驚くことにワシントンで会ったエルベグドルジ氏であった。急ぎインターネットで検索してみると何と数年前に大統領に就任されていたのである。

前置きが長くなってしまったが、安全保障の観点から北東アジアの協調的安全保障、とりわけ北朝鮮問題に大いなる貢献を担う潜在的可能性を秘めているのがモンゴルである。安倍総理がワシントンの次にウランバートル訪問を急に決断され経緯からもモンゴルの重要性を解読できる。袋小路にある日朝関係や拉致問題への解決にモンゴルのカードは有効に機能すると分析する。

第一、朝鮮半島の38度線を境に北朝鮮・中国・ロシアVS韓国・日本・米国の勢力均衡で分断されてきた。しかし、北朝鮮が核と長距離弾道ミサイルを保有することによりステータス・クオ(現状維持)の戦略に変化がみられる。北朝鮮との関係が緊密で北東アジアの一角をなすモンゴルが中露或いは日米と関係を強化するかで北東アジアの地政学的変化が起こる。

第二、モンゴルと中国の内モンゴルとの関係などからモンゴル人は嫌中意識が強く、反対に相撲、ODA等のソフトパワーの側面から日本とモンゴルの関係は極めて良好である。司馬遼太郎の「街道を行く・モンゴル編」にあるように蒙古斑を有する日本人はモンゴルに親しみを感いている人が多いと思う。北東アジアの勢力均衡に影響力を持っているのがモンゴルである。

第三、北朝鮮とモンゴルの産業構造や政治システムに共通項がある。レアメタルを有する両国は緊密に連携する必要があり、モンゴル国と内モンゴルとの関係は北朝鮮と韓国の関係に似ており、冷戦崩壊後のモンゴルの推移は北朝鮮への参考となる。

第四、米ソの冷戦構造が終焉した背景には、中国と米国の接近にあった。両国に外交のパイプが存在してない時に両国を結びつけたのはパキスタンであったとキッシンジャー氏は語っている。日朝の国交がない現在、パキスタンのような役割を演じることができるのはモンゴルである。拉致問題解決に必ずモンゴル・カードが切り札になると考えられる。

以上の考察から、時は今、日本とモンゴルの関係を天然資源や経済連携協定と言った視点だけで捉えるのでなく、東アジアの安全保障の観点からプラグマティズムで外交、ソフトパワーで推進する。ひいては、モンゴルとの戦略的な協力が北朝鮮の拉致問題解決につながると読む。

安倍総理が世界190カ国の中から米国に次ぐ訪問国としてモンゴルを選択された先見性に敬意を払いたく思う。同時に、国連やブルッキングス研究所等での経験が、「Life is funny」というグローバル・ネットワークの奇遇に直結することを喜ばしく思う。

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このページは、伴 武澄が2013年3月28日 20:44に書いたブログ記事です。

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