善意の人のステーション-師走の交番 服部巌

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koban.jpg 皆さんは師走の交番を覗いたことがありますか? 僕は昨日お世話になって来ました。

 雑踏の中、そこには悲喜こもごもの物語がありました。
 
 家内に頼まれ行ったお使い。駅前で用事を済ませ帰ろうとしたその時、脇に抱えていた小袋がない。中には結構な額の現金、通帳、カード一式。泣きたい気分で飛び込んだのです。

 既に先客がいて初老の駐在さんと婦警さんが、甲斐甲斐しく動き廻っていました。その旨を伝えると「現金かぁ!出て来るかなぁ?まぁこの届けを書いて下さいね」。婦警さんに言われるままに書いていると、そこへ小父さんが現れて「あのぉ、拾得物です」。そっと差し出す手には、僕が落としたあの小袋が! 

 なんでも、ATMの脇に置かれた物がありますと通報してくれた人がいたらしい。この世知辛い世の中で、日本もまだ捨てたものではないと安堵したのもつかの間。

 小父さんは拾得物の届け、僕は先程からの遺失物届けを仕上げねばならない。しかも二人は話し合わないようにと念入りなことだが、法の番人としては致し方ない。人の好さそうな駐在さんがペコペコ「これもルールでして」と仕切りに言い訳する。向こう側では寒さに耐え切れなくて入って来たお婆さんに、婦警さんが「これから帰れます?」と世話を焼いている。僕が困ったのは、家内の話を適当に聞いて出てきたもので現金が幾ら入ってるかが書けない。銀行小父さんはお札数えて書いているというのに。おまけに「通帳の名義とご本人が違いますね?」、「いや、ですからね、家内がね!」。ここで完全に膠着状態。

 そこへ気の弱そうな少年が小さな声で「あのぉ、○○高校どこですか?」と闖入。駐在さんと婦警さんはそれどころでなくて。本署にTELして「名義違いの通帳はどうなりますか・・」と聞いてみたり「お婆ちゃん、身内の人はいるの?」と掛かり切り。見かねた銀行の小父さんが「○○高校はね、ここ真っ直ぐ行って左、右・・」と助け舟。分かったのかどうか、少年は追い出されるように出て行った。

 でも5分も経たぬうち返って来た。今度は「ケータイでお父さんと話して」と半泣き。婦警さん、さすがにイラッと来て「お父さん何処なのよ!」。少年が小さな声で「日本語よく分かんない」と呟くのにピンと来るものあった。

 僕が代わりに出ると、お父さんは平謝りで「先月フィリピンから来たばかりで、高校受験の下見に一人で行かせたんです」。僕がこの機を見逃す筈もない!「実は、僕警官じゃないんです。でも今日いいことがあったんで、ご恩返しに息子さん学校まで送ります!」。ちょっと見え見えのあざとさに、心がチクチクしたが局面突破はこれしかないと「悪い人でなさそう作戦」を展開。「オジサンいま終わるからね。外で少し待ってて!」。たちまち二人の人の善い警官たちは「え?いいんですか?スミマセンねぇ。」と、ここで立場逆転。

 書類の方は「失くした者も拾った者もまぁ適当に調子合わせて書いていいでしょう」ということになり、「それより受験生!道をちゃんと覚えてね」との応援をバックに、僕はフィリピン・ハーフの保証人よろしく、チャッカリ落とし物もゲットして交番を後にしたのであります。さながら師走の交番は、善意のひとのステーションのようでありました。

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このページは、伴 武澄が2012年12月29日 22:59に書いたブログ記事です。

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