2010年6月アーカイブ

 飛鳥路は折にふれて訪ねることが多い。春はレンゲソウが咲くころのあぜ道がいいし、晩秋、甘樫丘からの眺める二上山に沈む夕日はもっといい。

 飛鳥を初めて訪ねたのは20歳のときだった。奈良大和路とかいう周遊券があって、当時の国鉄だけでなく近鉄も利用できたからありがたかった。もちろんハ イウエイバスも乗れた。奈良を訪ねるときは、宿泊費を浮かせるためなるべく夜、東京を出発して明け方に京都に到着するハイウエイバスを利用した。
 初めての飛鳥旅行には岩波新書の『奈良』を持って行った。奈良の歴史を学べるだけでなく"観光"のための地図までついていた。

 飛鳥を満喫した後、談山神社を訪ねた。桜井の駅からずっと歩いた。途中に聖林寺があって立ち寄った。十一面観音像があるとは知らなかったが、本堂わきの 特別拝観室にあった観音様のなまめかしさに驚いた。驚いたというより、なぜ昔の人たちは観音様のような仏像をつくったのか興味がわいた。

 就職後の初めての勤務地は大津だった。滋賀県の湖北で日本で最も優美な観音様と対面したのはその時だった。渡岸寺の観音様である。その時まで、聖林寺の観音様が自分にとって最も美しい仏像だったのである。(伴 武澄)

 『縮み志向の日本』で有名な李御寧先生の講演「韓日中とジャンケン文化」を聞いた。ジャンケン文化については別途書きたい。面白かったのは「飛鳥」をどうして「アスカ」と読むようになったかという説明だった。

 飛鳥は「明日香」とも書く。この場合、だれでも読めるはずであるが、飛鳥はどうして「あすか」なのかずっと疑問に思っていた。

 李先生の解説は以下の通りだった。

 ハングルで飛ぶは「ナルダ」、 日は「ナル」で同音。
 鳥は「セ」、明けるは「セダ」で同音。
 日が明けるの「ナルセ」と飛ぶ鳥の「ナルセ」が同音なのだ。

 香の発音は「コヒャン」
 実は故郷も発音は「コヒャン」。
 明日の郷つまり明日香は「ナルセコヒャン」
 「ナルセコヒャン」を漢字に変換すると「飛鳥郷」となる。

 それが日本語の明日香→アスカ→飛鳥となるのだ。
 本当かどうか分からないが、なんとなく納得させられた。

 2010年6月14日、産経新聞朝刊1面トップに「全国郵便局長側 国民新に8億円」の見出しが躍っ た。筆者は小泉純一郎内閣が郵政民営化を果たしたときに拍手を送った国民の一人である。郵便局が公営であることに反対しているのではない。まず郵便貯金が 国民の何の了解もなく、そのまま財政投融資の財源となっていることに危機感があった。次いで問題としたかったのは日本道路公団と同様にグループ企業による 随意契約によって郵貯資金が郵政OBらに還流している点だった。もう一つ、公務員であるはずの郵政局長らが別組織をつくって堂々と政治活動をしている実態 についてどうしても合点がいかなかった。
 国民新党は郵政民営化の是非を問うた2005年の総選挙で自民党から離脱して創設された政党だが、現在衆院3 人、参院6人、計9人しか国会銀のいない小世帯。そこに郵便局長らがつくる政治団体「郵政政策研究会」などが3年間に8億円もの資金を流していたというの だから尋常でない。

 よほどの利益還流が約束されないかぎり、そんな小政党に巨額の政治資金を供与するはずがない。「民営化によって地域の郵便局が相次いで廃局になってい る」などという話に誘導されてはならない。国営だった時代でも郵便局の新設・廃止は日常茶飯事だったのである。(伴 武澄)

 -------------------------以下は産経新聞記事-----------------------------

 郵政改革法案の可決を目指す国民新党側に、全国の郵便局長らが過去3年間で総額8億1973万円を資金提供していたことが13日、産経新聞の調べで分 かった。「全国郵便局長会」(旧「全国特定郵便局長会」)の会員やOB、家族らでつくる政治団体「郵政政策研究会」がパーティー券購入や寄付を行い、郵便 局長らは国民新党の職域支部「国民新党憲友会」にも納金していた。国会議員9人の小政党に特定の団体側から8億円もの資金が流れていた事実に、識者からは 「露骨な利益誘導」とする批判の声も出ている。(調査報道班) 国民新党は郵政解散直後の平成17年8月に設立。18〜20年の政治資金収支報告書による と、郵政研はこの間、全国の郵便局長らから個人献金計約7億5738万円を受領。党の衆参両院議員の現職や元職、候補者ら計12人の政治団体にパーティー 券購入や寄付で、計2億5500万円を支出した。

 国民新党への寄付と、国民新党側が年1回開催する政治資金パーティー「国民新党総決起大会」でも、郵政研は計2350万円を支出しており、国民新党側への支出は3年間で総額2億7850万円に上る。

 国民新党側は、全国に12ある郵政研の地方組織「郵政研地方本部」からも3年間で計5750万円を受領した。

 また国民新党の職域支部「国民新党憲友会」は、郵便局長やOB、家族ら約21万3900人が党員登録し、3年間に党費として約6億1559万円、個人献 金として9992万円を集めていた。このうち2億3178万円は郵政研側に環流。憲友会の代表は、日本郵政を監督する総務省の長谷川憲正政務官が務める。

 巨額の資金に基づく利益誘導の有無について、国民新党と郵政研はともに「まったくない。法的にも問題はない」としている。

 独協大法科大学院の右崎正博教授(憲法学)の話「特定の勢力から巨額の資金提供を受け、その勢力の望む政策を実行するのは、露骨な利益誘導といわざるを 得ない。小政党の国民新党は、大政党と比べて資金量も大きく劣ることから、郵便局長会側の資金への依存度は相対的に高く、より露骨だ。郵便局長が中心と なった職域団体の代表が総務政務官というのも、公平性に疑問がある」

 森稔森ビル社長が6月14日付日経新聞のインタビュー「領空侵犯」で「小型ジェット機の利用を増やせ」と提言している。欧米の企業経営者の多くはプライベートジェットで移動しているが、日本の空港にはその受け入れ施設があまりにも貧弱だという話はむかしから聞いている。

 日本的にいえば、お金持ちたちだけが利用する空港整備など必要を認めないことになる。しかし話はそう単純ではない。
 記事によると、プライベートジェットの離発着回数はニューヨークは年間25万回、ロンドン7万回。アジアでは最近発着枠を伸ばしている香港が7000回。対して羽田はわずかに300回、成田700回なのだという。

 そのむかし、フィリップモリスの招待でアメリカの同社の工場を見学させてもらったことがある。驚いたことはたくさんあったが、フィリップモリスがプライ ベートジェットを30機保有していたことである。食品生産の中心地シカゴと、タバコ生産のリッチモンド、そしてニューヨーク間に"定期便"が飛んでいた。 社内の端末からキップの予約ができるだけでなく、エグゼクティブは単独でも全米から海外に向けてそのジェット機を使用することができるのである。

 われわれもシカゴ到着後、アメリカ国内の移動はすべてプライベートジェットになると告げられた。工場見学やインタビューなどが終わると車で空港、といっ ても一般空港に併設されたプライベートジェット用空港がどこの大都市にも整備されている、に向かう。空港ビルは一切なく、車は目的のジェットのタラップに 直接横付けされる。5分後にジェット機は滑走路に走りだしている。到着後もまた同じだ。迎えの車がタラップ横で待っている。極めて効率的に移動ができる仕 組みが20年前にすでにアメリカにはあった。

 同社の日本人幹部がこぼしていたことがある。当時、日本はバブルの真っ最中。羽田は国際便の離発着を許していなかったし、成田も離発着枠の余裕がほとん どなかったため、アメリカから幹部を乗せたプライベートジェットが日本にやってくると、羽田で断られ成田で断られ、空きがある名古屋空港に着陸せざるを得 ない。名古屋空港に到着してから、東京の日本法人にたどりつくのに4時間ちかくかかる。アメリカの幹部のこの理由がまったく理解できないというのだ。東京 に到着した時点でその幹部の憤まんは爆発寸前。日本とのビジネスがうまくいくはずがない。(伴 武澄)

 セルジュ・ミッシェル、ミッシェル・ブーレ共著の「アフリカを食い荒らす中国」という刺激的なタイトルの本を読んだ。フランス語では「シノフリーク」、「中華アフリカ」とでもいうらしい。一時いわれたジャパメリカみたいな表現だ。

 中国勢のアフリカ進出については、断片的な知識はあったが、この本を読んで、その規模の大きさ、ダイナミズムに圧倒された。

 アフリカでの中国は豊かさと貧しさをともに持つがゆえの強さが、遺憾なく発揮されている。豊かさが持つ資金力、そして食うためには地球の果てまでも出稼ぎにゆくという貧しさである。
 現在、中国はアフリカの資源開発の見返りとして、多くの巨大プロジェクトへの協力を実行している。すざましい のは、労働力さえも中国から輸出する様である。アフリカの労働者と変わらない賃金で何万人もの中国人労働者が海を渡っている。1世紀以上も前に、アフリカ 人奴隷に変わって中国人クーリーがアメリカの鉄道工事に、オーストラリアの金鉱にと世界中に売られていった。世界中の華僑社会はその子孫たちによって築か れている。

 クーリー時代に次ぐ第二世代目の大量移動が始まったとみていいのかもしれない。アフリカにはすでに80万人の中国人がいるのだというからすごい。むかし からある南アフリカの華僑社会が20ー30万人というから、差し引いて50万人もの中国人が産業もなにもなかったアフリカに渡っているのだ。在日中国人は 50万人といわれるが、日本は巨大な産業立国なのである。

 その50万人の中国人たちがまさに今もアフリカで生業を創造しているのだと考えるとそれだけで大きなインパクトであるはずだ。欧米人もアフリカに権益を 求めてきたが、少数の欧米人がアフリカ人の上に君臨するかたちで「統治」してきた。中国人の場合は売春婦までもが数百人単位で各都市に進出しているのだか ら、その存在感は目を見張るものがある。

 中国人たちはすでにアフリカの環境を破壊しつつあることも事実である。コンゴーの国立公園内で樹齢100年以上の熱帯雨林が伐採され続けている。しかし数十年前に日本人がボルネオの熱帯樹林を裸にしてきたという歴史がある。

 アフリカに進出した中国企業が現地労働者を人間扱いしないことから、さまざまな問題を起こし、反中国感情の高まりも相当でてきているという。しかし数十年前、東南アジアで反日暴動が起きた事実も思い起こしてほしい。

 日本は環境破壊も現地の反発も乗り越えた。アジアの経済的発展は結局、製造業の進出による技術伝播、労働者の生活向上、多くの要素がスパイラル状に影響しあってもたらされたことは間違いない。

 日本の経済進出がアジアに豊かさをもたらしたのだが、それはあくまで結果論でしかない。日本企業はアジアを豊かにしようとして進出したのではない。安い労働力を求めたにすぎない。だから恩を売るような言い方をしてはいけない。

 しかし、受け入れ国側もまた、中国に反発するあまり中国資本の撤退を招いたのでは元も子もない。成長の波に乗るまでは我慢が不可欠であろう。(伴 武澄)

2010年06月01日(火)
ドイツ在住ジャーナリスト 美濃口 坦

 2010年 5月7日ユーロ圏首脳会談で欧州が5000億ユーロ(60兆円)、国際通貨基金が2500億ユーロ(30兆円)を負担する総額7500億ユーロ(=90兆 円)に及ぶユーロ防衛のための融資の大枠が合意された。これは、その一週間前に決定された1100億ユーロ(14兆円)の対ギリシャ融資によってソブリン 債危機がポルトガル、スペインなどの他の加盟諸国に波及することを阻止することができなかったからである。

 ユーロ安定化・緊急融資制度の予想外の設立決定も、また欧州中央銀行の財政破綻加盟国・国債の購入が、(予想されていた通り、しかし)露骨に政治主導で 開始したことも、欧州連合の性格を根底から変えるといわれる。その意味で5月7日のユーロ圏首脳会談は後世の歴史教科書のなかで特筆される事件になるよう に思われる。

 抵抗できなかったドイツ

 ヨーロッパ統合となると、「会議は踊る」で、仕切り直しが繰り返され、その後も利害調整で決定するまで何年もかかることが多かった。ところが、今回5月 7日の首脳会談では夕方の6時から晩餐会で、会議の開始は9時、終了は深夜の12時半。3時間半でこれまでの欧州統合の条約を骨抜きにするような決定がさ れた。

 会談終了後の記者会見でサルコジ仏大統領はフランスの要求の95%を通すことができたと上機嫌であった。反対に、メルケル独首相のほうは記者会見なしで 消えてしまう。これも当然のことで、自国記者団に対して財政危機に陥った隣国のために1480億ユーロ(約18兆円)を払う約束をさせられたなどと告白で きなかったからである。

 ベルルスコーニ伊首相も、5月17日付けの「シュピーゲル」誌によると上機嫌で、記者に対して「火事になって家が燃えているときに、どこから水が来るか など重要でない。私は今晩の会談の結果に満足している。フランスといっしょにイタリアは要求を通すことができた」と話したという。

 5月7日ユーロ圏首脳会談では本来一週間前に決定された対ギリシャ融資がテーマであったので、到着した加盟国首脳は議題が急遽「ユーロ防衛」に変わって しまったことに驚いたといわれる。そうなったのは、サルコジ仏大統領をはじめ、多くの人々が「国際的投機家がユーロを攻撃している」といいだしたからであ る。

 その一週間前に1100億ユーロ(14兆円)の対ギリシャ融資決定後も、マーケットにはこの国が借金を全額返済すると思えないので、売れるうちに売ろう ということになって利回り上昇。買い手がいないので取引きが不成立、今度は売れなくなったギリシャの代わりにポルトガル、スペイン、イタリア、アイルラン ド、ベルギーが、そのうちにフランスの国債まで売りだされて週末に近づくにつれてその利回りも上昇した。

 それだけでない。前日の5月6日ニューヨーク市場でS&P株価指数に採用されている約30銘柄が5分間で10%以上と過去最大の下げ幅を記録した。株価 はすぐ回復したが、市場は何か破局的なことが起こるのではないかと疑心暗鬼になる。当時ギリシャ問題も原因とされて、オバマ大統領から欧州主要国首脳に不 吉な兆候をとりのぞくように依頼の電話がかかっていた。

 そのうちに銀行間の取引がへったといわれる。こうなると、政治家の脳裏に浮かぶのは「リーマン・ブラザーズ」で、世界中を奈落の底に突き落とす役割を運 悪くも引き受けさせられた気がしてくる。生憎なことに5月7日は金曜日、怖気づいた出席者に思い浮かぶの「ブラック・マンデー」、首脳会談の席上でユーロ 防衛の大筋を決めて、「月曜日欧州発の世界大恐慌」を何が何でも阻止しなければいけないという雰囲気になる。

 このような事情こそ、(スペイン紙「パイス」が伝えるように、)サルコジ仏大統領が「独仏枢軸を解消する」とか「ユーロ圏から離脱する」とか怒鳴って机 をたたき、ドイツ首相が孤立し、Piigs諸国を率いる仏大統領・クーデターが成功した背景である。

 ユーロの低空飛行

 5月8日深夜の記者会見でサルコジ仏大統領は95%しか満足しなかった。それは、ユーロ圏加盟国のユーロ債共同発行の夢が実現しなかったからである。フ ランスの意見によれば、諸悪の根源はユーロ圏内の「経済的不均衡」で、このために各国別に発行される国債の利回り格差が発生し、ギリシャやポルトガルのよ うな高金利負担国とドイツやオランダのような低金利負担国に分かれてしまう。全加盟国が仲よくユーロ圏債を発行すればギリシャ問題もユーロ危機も起こりよ うがない、ということになる。

 ドイツはユーロ債共同発行に反対する。それはユーロ圏が財政赤字・無責任国家の集団になることを心配するからだ。またドイツの考えでは加盟国は財政主権 を発揮し自国の財政に責任をもたなければいけないし、だからこそリスボン条約に加盟国間に財政的救済を禁じる条項がある。ドイツがこの立場をとるのは、 EUが、少なくと現状では,主権国家の集まりにとどまるべきだと考えているからである。

 反対に、中央集権志向が強いフランスがめざす欧州統合とは、 米や中国に対抗できるに「超大国・欧州」をつくることである。5月7日の首脳会談でこれま での欧州統合の条約を空洞化してブリュッセルに中央政府を置く「欧州合衆国」の方向に一挙に前進した。でもユーロ防衛のための欧州版「護送船団方式」は、 全部の船を縄で結びつけて、一隻が沈んだら船団全体が沈没する危険がある。ユーロは低空飛行を続ける決意をしたようだ。

 その大枠が決まった5月7日の首脳会談の後、週末の財務相会談でユーロ防衛案の細部について交渉が継続する。月曜日深夜2時半ブリュッセルでオリ・レー ン通貨担当欧州委員が記者団に交渉結果を報告し、欧州中央銀行がギリシャなどの国債を購入する決定をしたことに言及する。これは欧州中央銀行がまだ発表し ていなかったことで、こんなことを欧州委員会側がいうのは中央銀行の独立性欠如を吹聴しているに等しく、少し前まで考えられないことであった。

 金融機関に返済金額をへらさせたり、返済期限をのばさせたりする債権再編がない限り、ギリシャがどんな過酷な歳出削減と増税を実施しても、本当の財政再 建など不可能だといわれる。そうだというのに、加盟国から1100億ユーロ(14兆円)が融資されるが、これは、ギリシャ国債を購入した金融機関に対する 元金の返済や利子の支払いにあてられる。こうなると、加盟国政府はギリシャ国民というより自国の銀行を救済していることにならないか。

 またフランスの銀行はギリシャ国債をどこの国より大量に抱えているといわれるので、サルコジ仏大統領声が特に大声で欧州連帯を訴えたのも当然なのかもしれない。

 美濃口さんにメール mailto:tan.minoguchi@netsurf.de

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