2007年9月アーカイブ

 長崎新聞を読んでいて「オッ」と思わせる記事に出会った。見出しは「省エネタンカー進水式 佐世保・前畑造船所」。読んでいくと「電気機関」という見慣れない言葉が出てきた。ひょっとして「モーターで推進する船ではないか」と考えた。

 早速、製造した前畑造船に電話を入れた。
「電気機関っていうのはモーターのことですか」
「そうです。400KWの二つのモーターでスクリューを回します」
「電気はどうするのですか」
「タービンエンジンで発電します」
「船の中でわざわざ発電してモーターを回すメリットはなんですか」
「まずモーターの方が効率がいいので10%の省エネになります」

 ははーん。これは"ハイブリッド船"なのだと合点した。大型の船舶にまで大きな変革がもたらされているのだという感慨があった。

 前畑造船によると、メリットは省エネのほかにも多くあるのだという。まずエンジンルームが格段に小さくてすむため、その分多くの貨物を積むことができ る。国内の海を運航する内航船の場合、799トンを超えて999トンまではさらに2人の船員を乗船させなければならないという規定があるため、運航費が年 間2000万円程度軽減される。海運業界にとっては大きなメリットとなる。もちろん省エネによる二酸化炭素の排出量も大幅に減少する。

 船価は現時点では2割程度高くなるが、同規模の補助金が出るため船主の負担は増えない。技術革新でコストダウンが実現すれば造船コストも格段に低下する可能性がある。「これは一石三鳥ではないですか」と問うたら「まさにそうです」と弾んだ声が電話越しに返ってきた。

 実は国交省を中心に数年前から「スーパーエコシップ(次世代内航船)の研究開発プロジェクト」が始まり、スーパーエコシップ技術研究組合(理事長 矢吹 捷一 三井造船常務取締役)による実海域実証実験が始まっていた。前畑造船で11日進水したタンカーはその第一号だったのだ。

 それなら、メディア各社ももっと大きく報道してもよかったのにと考えさせられた。造船会社側の広報がへたなのか、それとも中小造船会社のニュースという ことで、メディア側が「たいしたことはない」と軽視したのか。どちらとも当たっているのではないかと思っている。それにしても「電気機関」という表現は ニュースリリースに書いてあったとしても、果たして読者の目を引くのでしょうか。(紫竹庵人)

 自民党総裁選で福田さんも麻生さんも「地方重視」を打ち出している。たぶんマスコミが喧伝する「改革によって 生じた格差」という問題を意識しているに違いない。安倍首相が小泉さんの改革路線を継承したため、参院選で大敗したのだと信じているとしたら大きな間違い であろうと思う。

 小泉さんは改革を唱えて5年近くの政権を維持したという事実を忘れてはならない。郵政民営化の必要性を訴えた昨年の総選挙でも「改革」を前面に押し出し大勝した。問題は安倍首相が同じことを唱えても国民の心に訴えるものがなかったということなのだ。

 この間、野党もメディアも「地方と都市との格差」を「小泉改革」に結びつけて批判した。安倍政権は「美しい日本」と「戦後レジームからの脱却」を掲げたが、改革政策の主張は中身のない空虚な響きしか伝わらなかった。

 改革とは官僚支配からの脱却である。小泉さんがうまかったのは官僚と自民党の古い体質との対立を際立たせることで国民の圧倒的支持を受けた。一方の安倍 首相も官僚を「敵」に回そうとしたがあまりに非力で対立軸を明確にできなかった。安倍首相は前政権の官房副長官時代、拉致華族問題を重視し、北朝鮮を"挑 発"することで人気を得た。しかし、いったん首相になると全方位に目配せが必要となり、あれだけ固執していた靖国参拝もあっさりやめてしまった。筆者は首 相の靖国参拝について是々非々の立場だが、言行不一致はまずい。

 参院惨敗後の安倍首相は「反省すべきは反省し」などと政権維持に固執した。自民党内でもほとんど不協和音は聞かれなかった。筆者は「何を具体的に反省するのか」分からなかった。おぼろげながら見えてきたのは"地方軽視政策"を反省しているらしいことだった。

 さて「地方格差」は何によって生まれたのだろうか。そもそも地方と都市部の格差はなかったのか。格差はもともとあったのだ。その格差を少しでも埋めようと日本国がとってきた政策が「公共事業」による財政出動だった。

 バブル崩壊で大打撃を受けたのは地方ではなく、金融不安に陥った大手銀行を中心とする大都市経済だった。政府は大都市が地価下落で打撃を受けたにもかか わらず、公共事業の大盤振る舞いで地方に巨額の資金を流し続けた。その挙句が財政の破綻をもたらし、経済のマイナススパイラルに陥った。

 小泉さんが偉かったのは、古い体質の自民とが強く要求した財政出動という打ち出の小槌を振らなかったことだと思っている。というよりこれ以上の財政出動 をしたら金利の上昇をもたらし、経済成長どころでなくなる、つまり日本の財政がこれ以上借金をできない限界点に達していたということなのだろうと信じてい る。

 大企業を中心として経済はここ数年、史上最高の利益を上げるなど"絶好調"だが、財政は過去の大盤振る舞いがたたり機動力を失っている。福田さんや麻生 さんが「地方重視」といったからといって、10年前のような財政出動を期待したら大きな勘違いである。国庫はもとより地方財政ももはや打つ出の小槌をふる ような状況にないことだけは肝に銘じるべきである。(紫竹庵人)
 国土交通省は19日、今年7月1日時点の都道府県地価(基準地価)調査の結果を発表した。商業地の全国平均が前年比プラス1・0%と、1991年のバブル経済崩壊以来16年ぶりに上昇に転じたそうだ。

 47ニュースで地価上昇した都道府県を検索すると、半数近くが上昇に転じている。地価が上がることがいいことなのかどうか分からない。元々、世界的に日 本の地価は高すぎると評価されてきた。地価が高いことが人件費の高さとともに産業の空洞化につながった経緯があるからだ。しかし16、7年も下がり続けれ ばもう上昇に転じてもいい時期なのかもしれない。

 ただ東京などは住宅地も含めて上がりすぎて、またもや普通のサラリーマンが住まいを買える水準を超えている。地価は上昇率で見るのではなく、絶対値で見る方がたぶん分かりやすいのだと思う。

 多くの地方紙のサイトを読んでみておもしろいのは、例えば津市の住宅地の一番高い津市大谷町の地価が1平方mあたり8万円台であるのには驚かされるというようなことである。わが故郷の高知市はたいした経済力もないのに、10万円以上もするのである。

 津市では一等地で100坪の土地が2000万円強で買えるのだから、たぶん県庁所在地では日本一安い部類に入るのだろうと思う。

 西日本新聞によると、福岡市の土地は「投資ファンドによる投資が活発」なのだそうだ。金余りの国際的な資金が大都市部の土地を買いあさっている情景はあ まり美しくない。北海道新聞はオーストラリア人に人気のスキー場の町、倶知安町では地価が37・5%上昇も上昇したそうだ。元々の値段がそう高くないから 上昇幅が大きく表示されたのだと考えている。
 安倍首相が突然辞意を表明したのが12日。政治的関心でいえば、自民党総裁選はあっという間に福田さんに傾いた。東京で見るかぎり昨日まで「後継は麻生氏軸」とかいった13日の見出しが「福田」一色に変わるのに24時間を要しなかった。すでに現場記者ではないので、取材する時間もないため、もどかしい。

 高知新聞のコラム「小社会」の表現を借りれば次のようになる。

img_news.aspx.jpg「現代の一夜城が現れたのが福田さん、麻生さんの一騎打ちとなった自民党総裁選。福田さんが出馬に意欲を示すやいなや、それこそ一夜にして城主に迎え入れる城ができた。材料は派閥という、いささか古ぼけた板。九枚の板のうち八枚もが集まり、福田さんは余裕たっぷりに入城した。」

 国会議員間での支持では圧倒的に福田さんが強かった。152票しかない地方票など風前のともし火だ思った。ところが、土曜日も出勤して入力したが、オヤッと気づいた。

 麻生さんの地元の福岡県では県連執行部内で予備選を実施するべきか議論が二つに分かれた。いったん麻生支持で固まったかのように見えた。さすがに地元だと思ったが、古賀・山崎両氏の巻き返しで党員による予備選をやることに傾いたという。(その後再び予備選はやらないことになった)

 地方紙の記事を読んでいくと地方では必ずしも「福田一辺倒でない」ことが分かった。広島では「両氏は拮抗」、富山県の県議も「支持でも拮抗」、茨城県では「麻生支持に3票」なのだ。

街の声は福田・麻生氏拮抗【中国新聞】
福田・麻生氏がきっ抗 総裁選で県議支持動向【北日本新聞】
自民党県連代表3人決定 麻生氏支持の方向【茨城新聞】
「地方票意味ない」 自民党総裁選で自民県連【長崎新聞】

 週末の福田・麻生の各地での遊説のテレビを見ていて、レベルが高いとはいわないが、訴える力は麻生さんが福田さんを圧倒しているなと思った。たぶん街頭演説を聴いていた市民も同じ感想を抱いたのではないだろうか。われわれは小泉前首相のおかげで「政治家は訴える力が大切」ということを学んでしまっている。

 総裁選は23日に決着するが、万が一にも地方の票で麻生さんが過半数をとったら、どうなるのだろう。これは国会議員といえども無視しえなくなるのではないか。戦う前に勝負が決着していたのでは観客としておもしろくない。ここはぜひとも地方での予備選に期待を寄せたい。(紫竹庵人)

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