「面と向かって」とはとても言えない首相退陣要求-新聞寸評

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2007年08月09日(木)
萬晩報通信員 成田 好三
  参院選に大敗しても政権をおりない安倍晋三首相に対して、自民党内からようやく首相退陣を迫る動きが出てきました。選挙直後の、あまりの大敗のショックか ら、少しは立ち直ってきたからでしょう。しかし、自民党内の退陣要求は、情けないほどに腰の引けたものです。以下は、8月7日付の日経の記事ですが、「面 と向かって」と表現できるほど勇ましい退陣要求ではありませんでした。退陣要求もまた、国民向けのパフォーマンスに過ぎなかったといえるでしょう。

 □首相退陣論が再燃・自民代議士会で辞任促す声続出

 参院選惨敗後も続投する安倍晋三首相の退陣論が7日、自民党内で再燃した。同日午後の代議士会では谷垣派の中谷元、津島派の小坂憲次両氏が首相に直接、 退陣を迫ったほか、地域別の参院選総括委員会でも首相の辞任を促す声が相次いだ。首相は27日に予定する内閣改造・党役員人事をテコに局面転換を狙うが、 求心力の低下は否めず、政局に不透明感が増す公算もある。

 代議士会で中谷氏は「首相は一度身を引いて根本的にどこが悪かったのか、これからどう進んでいくのかという議論を全党的にしなければ、党運営は極めて難 しい」と発言。小坂氏も「野球に例えるなら国民はホームランを打たれた党首に交代を求めた。政権交代ではなく、ピッチャー交代を求めた」と訴えた。

 首相が答える場面はなかったが、面と向かっての退陣要求は党内の根強い不満を浮き彫りにした。首相は7日夜、記者団に退陣要求について「改革を進めていくことで責任を果たすと強調した。(日経、8月8日付)

 ■退陣要求も国民向けのパフォーマンス

 上記日経の見出しと記事を読むと、安倍首相が出席する自民党代議士会で、複数の衆院議員、それも閣僚経験のある幹部から、威勢のいい安倍首相退陣要求が出たと思えてしまいます。

 しかし、その実態は、日経の記事にある「面と向かっての退陣要求」とはほど遠いものでした。

 8月7日の自民党代議士会での、中谷元氏(元防衛庁長官)、小坂憲次氏(元文部科学相)の退陣要求は、TVカメラの構える中であったものです。ですから、TV各局は、両氏の退陣要求に飛びつき、各局とも両氏の発言をニュース枠、ワイドショー枠で大きく取り上げました。

 だがしかしです。各局の流したTV映像を見ると、両氏の退陣要求は威勢のいいものとは言いがたいものでした。ましてや、「面と向かって」の発言ではありません。

 TV映像で見れば、壇上中央の議長席に野田毅氏が座り、やはり壇上向かって左側に発言者用のマイクが立っていました。さらにその左側の平場に安倍首相ら党役員が居並び、TVには映らない手前側には一般の代議士席が並んでいるという構図でした。

 発言を求めた中谷氏、小坂氏とも、議長席に座る野田氏と党役員席の前列最右端に座る首相との間に立って発言したわけです。

 首相退陣要求をする中谷、小坂両氏と首相との距離は、1、2メートルといったところです。

 しかしです。両氏とも一度も至近距離にある首相の顔を見ていません。首相の視線は発言中の両氏に向けられたことはありましたが、両氏の視線が安倍首相に 向けられることはありませんでした。両氏が本気で首相に退陣要求をするのであれば、すぐ隣に座る首相を見据えてすべきです。

 言葉ではどんなに威勢のいい発言をしたとしても、日経の記事にある「面と向かっての」首相退陣要求ではありませんでした。

 中谷氏は谷垣派、小坂氏は津島派と、ともに安倍政権では冷遇された派閥の幹部です。しかも、両氏は、直近の小泉純一郎首相のもとで、閣僚を経験済みの人 物です。8月末の内閣改造での閣僚候補ではありません。退陣要求する側にとっては、最も安全な人物といえるでしょう。

 安倍首相と自民党は、参院選に向けての国民向けパフォーマンスにすべて失敗して、選挙に大敗するという結果を迎えました。国民が首相や自民党の安っぽい パフォーマンスの底の浅さを見透かしたからです。そうであるならば、中谷、小坂両氏と彼らの背後にいる派閥の親分の意図も、国民から簡単に見透かされるこ とになるでしょう。(2007年8月9日記)

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このページは、伴 武澄が2007年8月 9日 21:27に書いたブログ記事です。

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