2006年12月アーカイブ

2006年12月30日(土)
Nakano Associates シンクタンカー 中野 有澄
 サダム・フセインの処刑が、数時間以内で行なわれるとのニュースがワシントンで聴くラジオから流れている。このコラムが配信されるまでにサダム・フセインの運命は決まっているだろう。

 今、イラク、或いは中東は、まさに歴史の分岐点に立っている。フセインが処刑されることで、スンニ、アラブの主流にとってサダム・フセインは永遠に英雄 視されると考えられる。英雄というものは、最後の死にざまによって決定されることがある。そのインパクトが大きい程、精神的、歴史的出来事として受け継が れていく。

 いずれにせよサダム・フセインは、文明・宗教の衝突が起こっている今日、世界に最も大きな影響を及ぼした人物として歴史に刻まれるだろう。サダム・フセ インが今、世界が注目される中で処刑されることにより、サダム・フセインを英雄として祭り上げてしまう。それが問題である。とりわけ、サダム・フセインが 最後に発したメッセージが世界を益々混乱させる。「イラクを攻撃した他国の人々に憎しみを持ってはいけないことを願う」。(I also call on you not to hate the peoples of the other countries that attacked us ・・・)

 スンニとシーアの分離は、1400年近く前の預言者モハメッドの後継者の選定に発する。21世紀の今日、イラクにおいてシーアによるスンニのリーダーの 処刑により再び精神的な分離が深まる。分離を緩和させる魔法は、フセインの最後の手紙にあるように憎しみを憎しみで報復しないことであろう。

 もう時を逸したが、国際社会は、サダム・フセインを精神的な英雄とする道を回避し、中東・世界の平和のためにサダム・フセインを利用する戦略を考察すべ きであった。サダム・フセインを処刑せず、スンニの暴動を緩和させるというサダム・フセインのメッセージをイラク国民に直接伝える場を形成するという戦略 もあった。そして、サダム・フセインを人知れずどこかの国へ亡命させ余生を全うさせる可能性を探ることが、イラクの大量破壊兵器の保有を大儀として先制攻 撃を行なったブッシュ政権の情けになると考えるのは筆者だけだろうか。

 筆者は、25年前のバクダッドで生活し、米国や西側が支持するサダム・フセインの雄姿に接した。イラ・イラ戦争時のバグダッドには、チグリス川のほとり にアベックの幸せそうな姿も見られたし、酒も自由に飲めた。これらは、サダム・フセインの善の部分である。イラク戦争開戦前に比べイラクの生活事情は悪化 している。

 イラクを治めるためには、リンカーンのようなリーダーが理想とされる。リンカーンのような立派な英雄でなくても、強いリーダーが必要だといわれている。 それが、時には、サダム・フセインのような独裁者であっても仕方がない時代背景も必要悪だったかもしれない。

 昨年の年末に作成した萬晩報にサダム・フセインの将来http://www.yorozubp.com/0512/051226.htm を述べた。先 日、ワシントンのシンクタンクでも昨年と同じ質問をした。講演者はリベラルな考えを持つ人であったので、その通りだが、ブッシュ政権にはその余裕がないと の答えであった。

 BBCのホームホームページを見ると世界中から何千というサダム・フセインの処刑に関するメッセージが寄せられている。人権団体の嘆願のみならず、各国 のメッセージもこれから世界を席巻するだろう。2006年の最後にイラクの平和への大きなチャンスを逃すことを非政府個人(NGI)として嘆いている。

 中野さんにメール nakanoassociate@yahoo.co.jp
2006年12月29日(金)
Nakano Associates シンクタンカー 中野 有
  ワシントンでは、クリスマス前に桜が咲くという異常な地球環境問題が起こっている。そこで、京都議定書に反対してきたブッシュ大統領が、来月の一般教書演 説では、地球環境問題を取り上げるとの観測が流れている。イラク戦争の苦境をごまかすために「グリーン」なイメージを強調するとも考えられる。ブッシュ大 統領がテキサス州の知事の時に、風力発電を推進し、テキサスが風力の分野で全米一になっているのも事実だから、こんな戦略でブッシュ大統領は残された2年 の任期をこなす可能性もあろう。

 超党派で構成されたベーカー・ハミルトンのイラク戦争の「魔法の公式」がブッシュ政権を混乱させ、ブッシュ大統領はクリスマス休暇を満喫することができ ないのであろうか。本当に米国は、イラクシンドロームに陥っているのだろうか。

 ウッドロー・ウィルソンセンターで開催された「ソビエト崩壊から15年の回顧」というシンポジウムに出席し、如何に5万発の核兵器が対峙する冷戦が深刻 であったかを考えさせられた。当時の米国の駐モスクワ大使、レニングラードの総領事、CIA、ロシア専門家の講演から、共産主義封じ込め政策を描いた ジョージ・ケナン、NSC68を描いたポール・ニッツがロシアの拡張戦略を分析し、冷戦時代の歴代大統領が忠実に対ソ戦略を実践したかを学ぶことができ た。とりわけレーガン元大統領の葬儀でサッチャー元英国首相が語った「一発の弾丸も使用せず冷戦の勝利を導いたレーガン大統領の功績」には、今更ながら神 業であったと考えられる。

 そのような核の抑止力で勢力が均衡された冷戦の危機と比較すると、現在のイラク戦争やテロ戦争は、それ程、深刻とは感ぜられない。

 ベーカー・ハミルトンのイラク研究グループの報告書で指摘されているようにイラク内部のシーア派とスンニ派と同じイスラム教の内部分裂がイラク戦争の解 決を不可能にしている。とすると、どうしてシーアとスンニが双方のモスクを攻撃しイスラム同士の戦いをエスカレートさせるのだろうか。

 そもそも二つの分裂は、632年に預言者モハメッドの死去に伴う後継者争いに端を発する。スンニ派は、モハメッドのアドバイザーを後継者とし教義の継承 を重んじ、シーア派は、血縁を重視した。656年には、シーア派がスンニ派の継承者を暗殺し、その報復としてスンニ派が継承者アリの息子を暗殺する事件が 起こっている。

 このような不幸な歴史はあるが、1400年もの大昔のことが対立の緒を引くのだろうか。百年以上も前に出版された岡倉天心の「東洋の目覚め」の中に以下の興味深い文章を見つけた。

「ヨーロッパの政策は、支配するために分裂させることをけっして忘れない。彼らは、スンニ派(回教の正統派)とシーア派(分離派)が敵対しあい、スルタン (オスマントルコの皇帝の称号)とシャー(イラン王の称号)が国境紛争と対立的外交にまきこまれるように、つねに気をくばってきたし、日本と中国の戦争を あおりた
てることには、なみなみならぬ熱意を示している」。

 米国の専門家からは、シーアとスンニの紛争をダーウィンの自然淘汰と適者生存の進化論として、イラクにおいては、イラクの65%のシーア派が20%のス ンニ派を打破するだろうし、加えて、イスラム諸国全体の8割は、スンニ派だから、両者の対立がアラブ全体に拡大した場合、スンニ派が制するとの見方も聞か れる。

 ふと9.11の流れで始まったテロ戦争、アフガン戦争、イラク戦争を振り返ると、「漁夫の利」を得ているのは、どの国だろうかと考察してみると、ロシ ア、中国、イスラエル、北朝鮮のような気がしてならない。ロシアは、イラク戦争で石油高騰、イランへの影響力の強化、そして米国の一極支配を拡散するとの 恩恵を受けている。中国は、米国が中東に集中することでアフリカ諸国、南米諸国との米外交の真空をうまく利用し中国の資源外交を活発化させている。イスラ エルは、単純にアラブの分断により700万人のイスラエルが、3億5千万人のアラブ諸国との対立を緩和するのに役立っている。北朝鮮は、米国の外交の真空 をうまく利用し、核実験を実施し、6者協議では、小国ながら有利に外交をこなしているように映る。とりわけ、米国のイラク戦争の失策により恩恵を受けてい るロシア、中国、北朝鮮は、「恩恵の枢軸」と考察される。

 冷戦が第3次世界大戦であるとのすると第4次世界大戦は、米国とイスラエル連合が、イスラムのファシズムとの戦いになるとの予測も聞かれる。本来、米国 を支持するはずのヨーロッパは、トルコなどイスラムの影響が増しユーラビアン(Eurabian)となり、戦争の傍観者となる可能性もある。中東を舞台と するキリスト教、ユダヤ教、イスラム教の衝突は、相対的にロシア、中国、インドの勢力を増強することとなろう。

このような再び米国とロシア・中国の冷戦の対峙を彷彿させるシナリオが予測される中、ベストのシナリオは存在するのであろうか。

 二度の世界大戦を経て生み出されたのが集団的安全保障を構築する国連である。第一次世界大戦後の国際連盟では、米国の孤立主義でファシズムの勢力を勢い づけ、勢力の均衡が崩れ第二次世界大戦に繋がった。戦後の冷戦においては、米国の戦略の成功が平和を醸成した。ポスト冷戦のテロ戦争、アフガンのタリバ ン、イランのシーア、イラクのスンニなどの戦いは、米国の覇権主義の修正を導き出している。

 米軍がイラクから徐々に撤退することで、恐らくNATOの関与や国連の関与、そして、イラクの勢力を均衡するためにサウジを中心とするアラブ諸国の干渉 も考えられる。これらの勢力が関与した場合、内戦から地域戦争に拡大する可能性、或いは、勢力の調和により紛争が解決する潜在性も増す。米国のグランドス トラテジーは、テロの戦争、イラク、アフガンの問題のみならず、ロシア、中国、北朝鮮の「恩恵の枢軸」に対応しなければういけない。勢力の調和 (concert of power)、勢力の共同体(community of power)が重要な安全保障戦略になると読む。これを実践するのは、44代米大統領のHe or Sheになるだろう。

 中野さんにメール nakanoassociate@yahoo.co.jp
2006年10月27日(金)
萬晩報主宰 伴 武澄
 10月26日夜、北海道日本ハムファイターズが日本シリーズを制して日本一になった。巨人ファンばかりと思われていた北海道に本拠地を移して3年である。4万人収容の札幌ドームを常に満員にする力が500万人北海道にあることを証明した。

 日本ハムは大阪の会社である。オーナーの出身地は四国の徳島である。四国の遺伝子を持った企業が大阪で日本有数の食肉会社に成長し、そのプロ野球球団が北海道で日本一になった。

 筆者はもとより東映フライヤーズからの日本ハムファンである。44年ぶりの日本一は嬉しい。若かった張本勲や尾崎行雄が活躍した時代である。町の帽子屋 に東映の野球帽は売っていなかったから、母親にフエルト生地でFのマークを切り抜いて貼り付けてもらった。

 監督は水原茂。ダンディーの名で通っていた巨人軍の往年の名選手だった。しかし選手には暴れん坊が多かった。張本や尾崎を生んだ大阪の浪商高校はそもそ もが警察も手を焼く不良の巣だった。クラスに東映ファンなどいるはずもないし、テレビはおろかラジオ中継もない。そんな東映がパリーグで優勝してその勢い で阪神を制して日本一になったから、ざまあみろという気分にさせられた。

 それでも東映はメジャーチームになることはなかった。なぜか、一つはあまたあった東京のチームの一つだったからで、もう一つはホームグラウンドの後楽園を巨人と共有していたからだった。

 その後、チームは変遷を経て日本ハムファイターズとなったが、この二つの条件は変わらなかった。その間、東京の球団の一つだったロッテは隣の千葉県に引っ越して"地元ファン"を得ることに成功した。

 20年以上前に高松市営球場が改築されるという話があったとき、日本ハムの高松移転話が浮上した。瀬戸大橋もかかるから岡山からも野球を見に来てくれる かもしれないという期待が膨らんだが、結局30万人都市でプロ野球チームは育たないという結論に達した。惜しいことをした。

 ファイターズの札幌移転の時も、マスコミには悲観論が多かった。札幌には巨人ファンが多かったことと、マイナーなパリーグのチームが新天地に根付くはずがないという話ばかりだった。

 3年たってみるとどうだろう。もちろん新庄効果というものもあったが、ファイターズファンのお目当ては新庄剛志ばかりでない。小笠原ファンもいればダル ビッシュも人気だ。稲葉がバッターボックスに立つと札幌ドームは地響きが鳴り響くほどの興奮状態となる。テレビ画面が揺れる現象を初めて見たプロ野球ファ ンもいるだろう。

 監督を含め日本ハムファイターズの選手は道外人である。その道外人が北海道のファンに支えられて日本一になったのである。北海道にとってファイターズは "外資"なのである。外資であろうとなかろうと結果的に北海道を元気にしてくれるのだからありがたいことである。

 北海道の人口は563万人。その人口の3割が集中する道庁のある札幌は158万人。この規模の国家は世界にあまたある。ヨーロッパでは並みの国家規模で ある。北海道日本ハムという一プロ野球球団がなしえたことを北海道の道民ができないはずはない。東京依存から脱却して日本一豊かな大地を蘇生してほしい。

 蛇足かもしれない。日本シリーズをテレビで見ていて新庄のグラブがやけに古いなと思っていたら、18歳の時、阪神タイガースに入団した時に買ったものを 17年間使い続けたということだ。パフォーマンスばかりが目立つ新庄の一面を見た思いがした。これはいい話である。
2006年11月23日(木)
ドイツ在住ジャーナリスト 美濃口坦
  「自分より弱いものに対して一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの。起こった場所は学校の内外を問わないこと とする」というのが日本のいじめの定義である。似たような現象はよその国にもある。70年代のはじめこの現象は北欧の研究者から注目されて「モビング」と いう英語名があたえられた。それ以来、いじめ現象は欧州でドイツを筆頭にこの英語名でよばれる国が多い。いろいろな調査があるが、一番新しい調査ではドイ ツの学校で7人に1人の生徒がこのモビングの被害にあっているといわれる。

 ■ どこが違うか 

 次にドイツではいじめるために何をするのかであるが、からかったり悪口をいったり悪い噂を流したり金銭をゆすったり暴力をふるったりなどで、日本とあま り違わない。おそらくいじめもモビングも、現象だけを眺めている限り、日独の相違がないように思われる。ところがいじめに対する被害者を含めて人々の反応 のしかたとなると日本とドイツの間の大きな違いがある。

 今回いじめでお嬢さんをなくされた父親について、日本の新聞は、《「娘のように自殺する子がいなくなってほしい。いじめに悩んでいる子は一人で抱え込ま ず、周りに相談してほしい」と呼びかけた》と書いている。この日本の父親は自分の娘を失ったことを悲しみ怒るだけでなく、将来いじめにあうかもしれない子 どもたちの運命にまで思いを寄せておられることになる。

 このような発言を読むと私は感動すると同時に、(後で説明するが、)複雑な気持になる。昔いじめで子どもを失われた父親がいじめをなくす運動の先頭に 立っておられるという話を聞いた。とすると引用した発言は例外でなく、日本で同じような境遇に陥った遺族の気持の表現とみなすことできる。

 それでは、同じ境遇に陥ったドイツ人の父親の反応はどうであろうか。彼も子どもを失ったことで悲しみや怒りを覚えるところまで、日本の父親と同じであ る。でもどう考えても、また試しにいろいろなドイツ人にきいた結果いうのだが、このドイツ人の父親は日本人の父親のように他人の子どもの運命まで心配しな い。

 日独の父親の相違をどう理解したらいいのだろうか。そのために別のケース、例えば交通事故で子どもをなくした場合を考えてみる。ドイツ人の父親も日本の 父親も事故責任者に怒りを覚え、子どもの死を悲しむ。でもこの場合は日本の父親も将来交通事故で死ぬ子どもたちの運命にあまり思いを寄せないのではないの か。こう考えると、いじめで子どもを失ったドイツの父親は、いじめと交通事故を同列視していることになる。反対に日本の父親はいじめをそのように考えるこ とができない。

 ■ 私たちの学校観

 フランスの歴史家フィリップ・アリエスは「子供の誕生」

という本の中で、近代になって子供と大人を分ける考え方がはじまり、中世には「子ども」とか「子どもらしさ」といった概念がなかったと指摘する。日本も近 代化とともにこのような子どもについての考え方を受け入れて、私たちは「子どもの世界」を保護されるべきもの、守られなければいけないものと考えるように なった。このことは、私たちが青少年保護関係法を幾つも制定していることに反映する。

 次に「子どもの世界」とか「子どもらしさ」であるが、現実をヒントに私たちが想像しているもので、多くは大人が自分について抱くイメージの反対で、フィ クションに近い。次に重要な点は私たちの学校観である。学校はこの「子ども世界」や「子どもらしさ」が実現される場所と思われている。

 ドイツをはじめヨーロッパ諸国では、モビング(=いじめ)は、学校より企業などの職場で問題にされることのほうが多い。反対に(、少し変わりつつあると 聞くが、)日本では職場のいじめが話題にならない。これは私たちの学校観と関係があるのではないのか。私たちは「おとなの世界」のいじめをしかたがないと 思っているだけに、その分だけ、「おとなの世界」の正反対の学校という「子どもの世界」でいじめがあってはならないと考える。日本で多くの学校がいじめを 隠す傾向があるのはこのためである。

 日本でいじめ犠牲者遺族がいじめを交通事故と同列視できないで将来にいじめにあう他人の子どもについて心配するのは、この学校観にしたがって「子どもの 世界」を大人たちは皆が団結して保護するべきであるとみなしているからである。またいじめがあるたびに、教育・メディア関係者や政治家が発言することも、 けっきょく皆でいっしょになっていじめをなくして「子どもの世界」を守ろうという話になる。

 このような学校観にしたがっていじめを論じると、学校の現実の姿が見失われてしまう危険があるかもしれない。ある新聞は「小さなサインを見逃してはいけ ない」と先生に警告したが、ドイツのモビングでこんな発言がされたら、中学生を小学校低学年生扱いしてはいけないという声があがる。次に、先生は授業だけ で忙しく「小さなサイン」に注意を払うことなど容易でない。そのために、発言が学校教育の現実についての無知な証拠と見なされるかもしれない。

 ■ 自殺にすすみにくい要因

 ドイツの学校では複数の先生が生徒から投票で選ばれて個人的な悩みについての相談にのることになっている。またいじめ(=モビング)については学校の外 にも相談所がある。生徒たちは「小さなサイン」を出すより、このような可能性を活用することが期待されている。それでも、ドイツで現場の先生や心理学者か ら話を聞くと、いじめは厄介な問題といわれる。いじめられた子どもたちがなかなか話してくれない。またいじめが判明しても加害者と被害者を仲介することが むずかしくて、その結果いじめられた生徒の転校で終わることが多いといわれる。

 それでは、ドイツでも子どもがいじめにあって自殺することがあるのであろうか。たくさんのいじめ被害者がいて、思春期にある多数の生徒が自殺する以上、 そのような例があっても不思議でない。ところが、いじめが原因で自殺したというメディアの報道を見つけるのはむずかしい。また学校ならびに心理学関係者に たずねると、多くの自殺でいじめがあってもそれが唯一の原因と考えられないことがその理由として挙げられる。またいじめで自殺したケースが二年前報道され たが、職業学校の生徒で20歳を超えているので日本のいじめ被害者とくらべることができない。

 ドイツの子どもたちが暮らす環境にいじめられてから自殺にまで簡単にすすませないような要因があるのではないのだろうか。誰にでもすぐ思い浮かぶのは、 この国に地域住民(大人も子ども)が参加する団体やコミュニティーがたくさんあることだ。それはサッカーをはじめスポーツやまた音楽などの文化活動のクラ ブだけでない。町の消防団など公的利益を追求するボランタリー団体もある。

 学校は通学生徒にとって重要なコミュニティーである。とはいっても多くの子どもたちはこのような地域の団体やコミュニティーに参加し、そこで他学校の、 また別の年齢層の子どもや、また大人と接触する機会がある。こうして学校が唯一の世界でないために、そこでいじめにあってもその体験を相対化することがで きて、両親やその他の人々に相談しやすいのではないのか。ドイツでもいじめにあった子どもたちは自殺を考えるそうであるが、実行されないのはこのような要 因があるからである。

 ■ 自殺へすすむ土壌

 このようなドイツの子どもたちの環境とくらべると日本ではいじめから自殺へすすむ過程に歯止めがあまりないような印象をうける。私たちの学校観にしたが うと、学校は学習するところであるが、同時に校長を先頭に教員によって指導されて、子どもたちが「子どもらしく」ふるまう場所である。この「子どもの世 界」は「おとなの世界」の正反対のものとみなされている以上、学校は隔絶された自己完結的な閉鎖空間である。

 子どもたちは、ドイツの子どものように地域の集団やコミュニティーに所属しないで、学校でクラブ活動をする。また授業が午前中しかないドイツと異なり、 日本の子どもたちは長時間学校にいる。その結果、学校こそ子どもたちの大多数にとって所属する唯一の世界であり、同時に一番重要世界でもある。学校生活が 生活の大きな部分を占めているという点で、日本の学校は全寮制学校に接近する。親のほうも私たちの学校観にしたがってこの「子どもの世界」で自分の子ども が「子どもらしく」ふるまうことをねがっている。

 このような境遇こそ、いじめから自殺へとすすむ土壌である。子どもたちはこの土壌の上で自分が体験したいじめを相対化すこともできない。その結果誰かに 相談したり、また抵抗したりすることができないまま孤立して、けっきょく学校という「子どもの世界」に自分の居場所をうしなうことになる。

 すでに述べたが、いじめで自殺になるたびに、皆でがんばっていじめをなくして「子どもの世界」を守ろうという合唱になる。でもいじめで自殺する日本の子 どもたちの問題は、「人はなぜ暴力をふるうのか」(梓出版社)という本の中で共著者の哲学者・海老澤善一氏が分析されているように、人間の共同性と関連す る複雑な問題で、「がんばろう」だけではじゅうぶんでないかもしれない。同氏は20年前にいじめで自殺した少年の遺書を引用されている。

《、、、だけどこのままじゃ「生きジゴク」になっちゃうよ。ただ俺が死んだからって他のヤツが犠牲になったんじゃ意味ないじゃないか。だからもう君達もバカな事をするのはやめてくれ、最後のお願いだ》

 この引用を読んで私たちは奇妙なことに気がつかないか。というのは、「子どもの世界」に自分の居場所をうしなったと思っている少年が「バカな事」からこ の「子どもの世界」を守ろうとするために自殺をすることになるからである。ところが、「子どもの世界」といった学校観こそ、この少年にいじめ体験の相対化 を困難にして自殺を容易にした土壌である。この土壌をゆたかにするために、少年は自殺し、残された大人たちも「子どもの世界」を守らなければいけないと合 唱し土壌を耕す。私が複雑な気持になるのはこのためである。

 美濃口さんにメールは mailto:Tan.Minoguchi@munich.netsurf.de
2006年12月14日(木)
萬晩報通信員 成田 好三
  長々とした「前ふり」はいらないでしょう。読者の皆さん、まずは下記の2つの文章を読んでください。1つ目は、女子プロゴルフの民放TV中継番組で「事実 と異なる内容」が放送されたとする、12月9日付の毎日新聞の短い記事です。もう1つは、記事の元になった、総務省近畿総合通信局が配布した「報道資料」 です。

  □<MBS>ゴルフ番組で事実と異なる内容
           総務省が厳重注意(見出し)


 総務省近畿総合通信局は(12月)8日、毎日放送(MBS、大阪市北区)が11月4日に放送した女子プロゴルフ「2006ミズノクラシック」で、事実とは違う内容の放送をしたとして、放送法に基づき厳重注意した。

 同通信局によると、同日午後2時からの放送中、宮里藍選手が16番ホールでバーディーを取ってスコアを8アンダーにした。その時点で首位の上田桃子選手 らは9アンダーで既にホールアウトしており、実際には同スコアではないにもかかわらず、首位タイに並んだとの内容の放送をし、テロップも流した。

 MBSは「真摯(しんし)に反省し、再発防止につとめる」とのコメントを発表した。(毎日新聞)

 □番組問題への対応(報道資料)

 近畿総合通信局(局長 武内信博)は、本日、株式会社毎日放送が平成18年11月4日に放送した同社の番組「2006ミズノクラシック」において、録画 映像の時間と生中継映像の時間が近接しているように番組を編集し、実際にはなかった順位表を放送したことは、放送法(昭和25年法律第132号)第3条の 2第1項第3号「報道は事実をまげないですること」に抵触したものと認められ、放送の公共性と言論報道機関としての社会的責任にかんがみ、誠に遺憾である ことから、同社に対し、今後このようなことがないよう厳重に注意するとともに、放送法及び番組基準等の尊守・徹底等再発防止に向けた体制の確立を要請しま した。(平成18年12月8日、総務省近畿総合通信局)

 ■横行するゲームの切り刻みと詐欺的な「擬似生中継」

 民放TV局は、視聴者を愚ろうしたスポーツ中継番組を製作・放送しています。視聴率さえ稼げれば、犯罪行為以外は何をやっても構わないという姿勢は、いまさら改めて指摘するまでもないほどひどくなってきています。

 世界陸上や世界水泳を独占放送する民放TV局は、ゲームやプレーを細切れになるほど切り刻んでしまいます。陸上100メートルの決勝直前まで、東京のス タジオでのおしゃべりを放送し、スタート数秒前になって現場中継に切り替えられたのでは、視聴者は競技に入り込むことはできないし、競技者に感情移入する ことなど、できるはずもありません。

 民放TV局が放送する国内ゴルフ中継やバレーボールの国際大会のほとんどすべては、録画中継を生中継風に放送する「擬似生中継」です。ゴルフ中継では、 番組終了までに必ず冠スポンサーが優勝者に賞金・商品を手渡す表彰式が放送されます。生中継ではあんな芸当はできるはずもありません。

 国内で開催されるバレーボールの世界大会は、いまや民放TV局の有力なコンテンツになっていますが、これらのバレーボール大会のすべては、1時間程度の タイムラグをつけて放送されています。極端なことを言えば、会場近くに住む視聴者は、会場で見てきたばかりのゲームをもう一度、生中継風に見ることもでき るのです。

 録画中継はいけないとは言いません。番組の時間枠やスポンサーとの関係から、一定の時間内に放送を終了させる必要があることは理解できます。筆者が問題 にするのは、録画中継を生中継風に放送する、いわば「詐欺的行為」です。アナウンサーや解説者は放送が生中継だとも、録画中継だともけして言いません。し かし、大会の開催時間帯を知らない、ほとんどすべての視聴者に対しては、生中継と思わせる「演出」をしています。これらの大会を撮影するカメラマンにとつ ては、会場内の時計を大写しにすることは、最大の「禁じ手」といえるでしょう。

 コラムの本題からははずれますが、最近では、人気タレントを会場に配置したり、番組宣伝に使う「やらせ応援」も常態化しています。スポーツ中継に関する民法TV局の「演出」は、どこまでエスカレートするのでしょう。

 ■あからさまなうそに「厳重注意」と「真摯に反省」だけ

 そう危惧していたとき、先の女子ゴルフ中継に関する、「事実と異なる内容」、つまりうそを放送していたというニュースが飛び込んできました。

 毎日新聞の短い記事では、近畿総合通信局から「実際になかった順位表を放送した」ことを指摘されたとしていますが、同局はもう1つの「うそ」も指摘して います。「録画映像の時間帯と生中継の時間帯が近接しているように番組を編集」したことです。同局の判断によれば、MBS、毎日放送は順位表だけではな く、放送の時間帯についても、放送法に抵触するとされたのです。

 近畿総合通信局は順位表のうそだけでなく、時間帯のうそも放送法に抵触すると指摘しています。ならば、国内ゴルフ中継やバレーボール中継における、視聴者に録画中継だと知らせない、「擬似生中継」も放送法に抵触するのではないでしょうか。

 事実に反する報道をすることは、スポーツ中継だけではなく、すべての番組において行ってはならない最低限のルールです。毎日放送が行ったのは、TVス ポーツ中継の自殺行為と言っていいものです。近畿総合通信局、総務省は「厳重注意」で済ますことができる問題なのでしょうか。MBS、毎日放送は「真摯に 反省し、再発防止に努める」のコメントで済ませることができる問題なのでしょうか。

 ■メディアの無視と無反応

 この問題では、もう1つ不可解なことがあります。この方がより重要でしょう。メディアの無視、あるいは無反応です。この問題を、新聞はベタ記事程度にし か扱いませんでした。NHKを除いて民放TV局は事実関係を知らせるニュースさえ流していないのではないでしょうか。「身内」をかばう姿勢なのでしょう か。問題意識さえないのでしょうか。それとも、問題意識はあっても、問題のさらなる拡大、つまり「延焼」を防ぐためなのでしょうか。

 それらのどちらにしても、ゴルフ中継のうそをほおっかむりする姿勢は、メディア全体にとつても自殺行為に等しいものでしょう。(2006年12月11日記)

 成田さんにメールは mailto:narinari_yoshi@yahoo.co.jp
 スポーツコラム・オフサイド http://blogs.yahoo.co.jp/columnoffside
2006年12月13日(水)
Nakano Associates シンクタンカー 中野 有
  イラク問題を解決する魔法の公式はない(There is no magic formula to solve the problems of Iraq)で始まる「イラク研究グループの報告書」142ページ、79項目の提案・勧告が発表された。上院の軍事委員会(Armed service Committee)で、ベーカー・ハミルトンイラク研究グループの両議長の証言を聴き、報告書を考察してみたい。

 レーガン大統領、ブッシュ大統領の共和党政権で財務長官と国務長官を経験したベーカー氏と民主党の下院議員として34年の経験を持つハミルトン氏を筆頭 に共和党5名、民主党5名の老練な賢者と44人の外交専門家、並びにブッシュ大統領、アル・マリキイラク首相、クリントン元大統領、キッシンジャー元国務 長官、パウエル元国務長官、トーマス・フリードマン(ニューヨークタイムズ)なども参加し、9カ月の歳月をかけ作成されたのがこの報告書である。

 米国はフセイン政権を打倒し、選挙を実施、憲法草案、イラクの新政府樹立に協力した。しかし、2900名の米軍の犠牲と4000億ドル(48兆円)の出 費にも拘らず、8割のイラク人が米国の影響力を否定的に考えている。この泥沼の状況が継続すれば米国の出費は最終的には2兆ドル(240兆円)に上ると予 測される。

 ■宗派の分断

 不安定要因の本質は、スンニ派の暴徒とシーア派の市民軍の内乱にある。加えて、人口の半数以上を占めるシーア派が1300年ぶりにイラク政府を支配する構図となったが、シーア派、スンニ派の内部分裂も起こっている。

 シーア派は、アル・シスタニ(Al-Sistani)、アル・サダー(Al-Sadr)、アル・ハキム(Al-Hakim)の3大勢力に分かれている。 米国はイラク政府と交渉を行なうが、アル・シスタニとアル・サダーと直接対話ができない。アル・シスタニは、最も影響力のあるイラクの指導者であり、シー ア連合を推進している。アル・ハキムは、南部を中心にシーア派の自治区の構築を目指しており、イランと密接な関係にある。アル・サダーは、マリキ政権と連 携し、厚生、農業、輸送分野の政府の地位を確保すると同時に、市民軍を備えている。
!
 スンニ派は、アル・ハシミ(Al-Hashimi)とアル・ダーリ(Al-Dhari)の2大勢力に分かれている。アル・ハシミは、自治区の形成に反対し、石油歳入を人口比で分配することを唱えている。アル・ダーリは、米軍の占領とイラク政府に反対している。

 クルドの政治勢力は、バルザニ(Barzani)と、タラバニ(Talabani)に分かれているが、クルドの独立に向け協力体制にある。

 テロ組織アルカイダはスンニ派であり、イラクのスンニ派の暴徒と結びつき、シーア派は米軍と協力しながらスンニ派の暴徒とアルカイダの勢力に対抗している。

 ■石油

 イラクの油田は、シーアが勢力を持つ南部とクルドが占める北部に集中しており、石油歳入の分配に不満を持つスンニの勢力が暴動を引き起こしている。イラ ク政府の歳入の95%は日量220万バーレルの石油で賄われている。日量50万バーレルは、闇市場に流れており、その収入が暴徒の資金源になっていると考 えられている。シーア、スンニ、クルドの人口比にあわせた石油歳入の平等な分配が重要であるが、その実現は難しい。

 ■復興支援

 米国は340億ドルの復興支援を充当している。支援は、大型社会資本整備から地域社会への小規模なベンチャービジネスに移る傾向にある。反米のアル・サ ダーの勢力が社会資本整備に影響力があることが、米国の復興支援を複雑にしている。米国を除く国際社会の復興支援は、135億ドルが割り当てられているが 実績は40億ドル程度である。

 ■周辺諸国

 イランは、イラクのシーア勢力と結びつき、武器、資金の提供と軍事訓練を行なっている。

 シリアは、イラクのバース党の勢力の避難地となっている。24年振りにイラクと外交関係の復活に同意した。

 サウジアラビアと湾岸諸国は、イラク政府との協力に消極的である。同じスンニ派への資金協力は、民間レベルで行なわれている。イラクのシーア勢力がサウ ジアラビア等に影響した場合、サウジアラビア等のイラクへの関与が進むと考えられる。

 トルコのイラク政策は、クルドのナショナリズムの高揚を抑えることにある。

 ヨルダンとエジプトは、イラク政府並びに米国のイラク政策に協力している。両国ともイラクのスンニ勢力に同情的である。ヨルダンは70万人のイラクの難民を受け入れている。

 国際機関の貢献は限定的なものであるが、国際NGOが宗派を超え重要な役割を演じている。

 ■悪化するイラク情勢

 イラクのスンニとシーアの衝突がアラブ全体に拡大する可能性がある。宗派間のパンドラの箱が開かれることで、イラク、アラブ全体の不安定要因が増すのみ ならず、イラクがアルカイダ等のテロの温床となり、テロがフランチャイズのように世界に広がっていくことが考えられる。安全保障面のみならず、経済面でも 石油の上昇、グローバル経済に悪影響が出るだろう。

 米国内部もイラク問題で分裂現象が出ている。米国がイラク問題で滞ることによりアフガニスタン、北朝鮮問題への影響も出ると考えられる。

 このような差し迫った問題を解決するために、前向きな地域と国際的協力を得た包括的な戦略が求められている。

 上院軍事委員会でヒラリー・クリントン上院議員により、議会と行政府の連携の観点から、イラク研究グループもよいがイラク結果(決定)グループ (Iraq result Group)の設立が大統領の行政機関に必要との意見があった。

 79項目の提案・勧告
  
1.包括的積極外交
2.周辺地域との協力(! B
3.イスラム会議やアラブ同盟との会合
4.イラク国際支援グループによる包括的積極外交
5.イランとシリアの参加並びにエジプト、湾岸諸国、国連、ドイツ、日本、韓国の参加
6.外務大臣レベルの二国間並びに多国間外交
7.国連事務総長の協力と国連の特別特使
8.イラク周辺諸国の特別な関心、展望、貢献
9.イランとシリアへの直接関与
10. イランの核問題
11. イランの協力
12. シリアの協力
13. イスラエル・パレスチナ問題
14. 米国・ロシア・EU、国連のカルテットによるイスラエルとパレスチナ問題
15. シリアとの交渉を通じたハマスとヘズボラ問題
16. シリアの平和交渉の交換条件としてイスラエルによるゴラン高原の返還
17. パレスチナ問題
18. アフガニスタンへの政治、経済、軍事支援
19. イラク指導者への継続的支援
20. イラクの国家的和解の進展が見られた場合の米国の支援強化
21. イラクの進展が見られない場合の米国支援の縮小
22. 永続的米軍軍事基地の否定
23. 米国はイラクの石油支配を求めない
24. 2007年前半の重要な目標設定
25. 目標達成への米国とイラク政府との緊密な協議
26. イラク憲法の再検討と国連の関与
27. バース政党の解体と政治的調和
28. 人口配分による石油歳入の分配
29. 地方選挙の実施
30. 国際調停によるキルクーク問題の解決
31. 敵への恩赦
32. 女性、少数民族の権利
33. 市民社会、非政府組織
34. 反乱軍、市民軍との対話を通じた米軍の駐留
35. 国連を通じたアルカイダを除く市民軍や反乱軍との対話
36. 宗派間のコミュニティーの対話を推進
37. イラク恩赦提案はワシントンによって無効にされてはいけない
38. イラク政府への助言者としての中立的な国際専門家を支持
39. &n! bsp; 市民軍の軍備縮小のための専門家への資金・技術的協力
40. 米軍の大規模な無期限の約束を行なうべきでない
41. &n! bsp; イラク政府の行動を抵当とせず米国の再配置を実行
42. 2008年の春までに軍事訓練と整備の任務を完了
43. 軍事目的の優先を軍事訓練、整備、助言、テロ対応に変更
44. 米国の最高レベルの高官と軍人の任命
45. より高度な軍事整備を提供
46. 米国防長官は文民と軍人の良好な関係を構築
47. ペンタゴンは軍事訓練と教育プログラムを強化
48. 軍事装備の修復への資金
49. イラクの安定と復興への資金提供
50. イラク国家警官隊をイラク国防省の新イラク軍に
51. イラク国境警備隊を国防省に移管
52. イラク警察の犯罪調査の権限を強化
53. イラク内務省の組織転換
54. イラク内務省の身分証明、登録等の活動
55. 米国国防省によるイラク警察やイラク国境警備隊への軍事訓練
56. 米国司法省によるイラク内務省の警察隊への訓練
57. 指導教官
58. FBIの関与
59. イラク政府による通信手段等向上の資金提供
60. 米国司法省によるイラク内務省の指導
61. 裁判、司法等
62. 石油部門への短期的技術的支援、石油インフラの警備等
63. 石油産業の発展のための長期的支援、投資等
64. 米国の経済的支援を年間50億ドルに
65. 国際的レベルによる復興支援
66. 国連難民援助機関や人道援助機関への資金提供
67. イラク経済復興支援上級アドバイザー
68. イラク政府との効率的な協力が見られない場合の資金廃止の権限
69. イラク復興特別検査官
70. より柔軟性のある安全確保のための行政機関間の効率的な協力
71. 米国の資金に加え国際的供与とイラクの参加を合併させる公共事業機関
72. イラク戦争のコストを議会を通じた年間予算とし $F:F8!F$
73. イラクへの任命にあたり言語と文化の訓練
74. 民間ボランティアと民間機関
75. イラク、アフガニスタンの複雑な状況に対応するための省を超えた協力体制
76. 伝統的な大使館の活動に加え外交サービス保留部隊の創設
77. イラクの脅威と暴動の源を把握するための幅広い分析
78. より正確なデータと全体像の提供
79. CIAによるテロ防止諜報機関の設立

 中野さんにメール nakanoassociate@yahoo.co.jp
2006年12月10日(日)
萬晩報通信員 成田 好三
 横浜ベイスターズが、大洋ホエールズと名乗っていた時代の話です。ホエールズの内野手に、ジョン・シピンという変わった名前の外国人(米国人)内野手が在籍していました。ホエールズの中軸を打つ、ライナー性の強い当たりを放つ中距離打者でした。

 TVで見ていただけで、ホエールズのファンでもなかったのですが、今でも強く印象に残っている選手です。その理由ははっきりしています。シピンの強打ばかりではなく、その強烈に個性的な風貌が記憶の奥底に焼き付いてしまったからです。

 当時も「助っ人」と呼ばれた外国人選手は珍しくありませんでしたが、シピンの風貌は極めて個性的でした。長身で足の長い細身の選手でしたが、シピンの特 徴はその顔、正確に言うと顔中を覆うひげにありました。もみあげがそのまま口の両側で口ひげとつながっていました。そんな風貌から、シピンは「ライオン 丸」とあだ名されていました。

 □ひげをそりとしたシピンから威圧感が消えた

 ライオン丸こと、ホエールズの強打者、シピンがある年、読売巨人軍に移籍しました。巨人軍のユニホームを身につけて、試合に臨んだシピンの姿を見たとき の驚きを、いまでもはっきりと覚えています。巨人軍のユニホーム姿のシピンは、顔中を覆っていた黒々としたひげをすっかりそり落としていました。その顔つ きはライオン丸とは似てもにつかぬ優男風でした。

 巨人軍でのシピンは、移籍1、2年目こそそれなりに活躍しましたが、けがをした3年目にはあっさりと解雇され、帰国しました。顔中のひげをそり落としたシピンには、ホエールズ時代の、相手投手を威圧する存在感がなくなっていました。

 □小笠原「お前もそうなのか」

 シピンの話を長々と書いてきましたが、このへんで本題に入ります。日本ハム・ファイターズからFAで読売巨人軍に移籍した小笠原道大の、入団会見の写真を見て、少し驚き、ちょっとだけ落胆しました。その写真を見て、こう思いました。

 「小笠原、お前もそうなのか。トレードマークのひげをそり落としてまで、巨人軍に入団したかったのか。そんな〝謙虚〟な態度で、あの巨人軍に入団して、本当に大丈夫なのか」

 巨人軍には、シピンの時代も今も、ひげは御法度という時代遅れの「不文律」があります。小笠原も、そんな不文律に従って、自宅でひげをそり落として入団会見に臨んだということです。

 ファイターズ時代の小笠原は、2番を打っていたころから気にかけていた、筆者にとっては極めて魅力的な選手でした。パ・リーグで首位打者、本塁打王、打 点王、そのすべてを獲得し、ファイターズが日本一になった今シーズンは、本塁打王、打点王に加えて、リーグMVPに輝きました。小笠原は、パ・リーグを代 表する、いや日本プロ野球を代表する強打者と言っていい選手です。

 □仁王様のような風貌

 小笠原が魅力的な選手であるのは、成績はもちろんですが、バットを高く掲げ、しかもホームベース側に大きく傾ける、一見して理屈に合わない、誰も真似の できない独特の打撃フォームにあります。それに加えて、空振りすると、小笠原は左打者ですから、体勢が一塁側に大きく崩れてしまうほどのフルスイングにあ ります。

 バットが投球のしんにあたらない限りは、体勢が大きく崩れてしまう。しかし、バットのしんにあたれば、強烈なパワーを生み出す打撃です。

 バットを強振する打者は数多くいますが、あれほど強振しても、複数回首位打者を獲得できるような確実性をもつ選手は他にいません。しかも、小笠原の打撃 は強振だけではありません。センターやレフト側に弾き返す柔らかい打撃も身につけています。天性の打撃センスと高度な技術がなければできない「技」だと言 えるでしょう。

 もうひとつの魅力は、あのひげづらです。小笠原は、あのひげづらによって、仁王様のような風貌を手に入れました。実績に加えて、独特の打撃フォームとフルスイング、さらに仁王様のような風貌は、相手投手や相手チームに強烈な威圧感を与えていました。

 ひげをそり落とした入団会見時写真を見ると、小笠原もまた優男風でした。小笠原がひげを生やした理由も、こんな顔では相手に威圧感を与えることはできないと考えたからではないでしょうか。

 □「紳士」に変身した野人、J・デーモン

 MLBでも、今シーズン、ボストン・レッドソックスからニューヨーク・ヤンキースに移籍した、ジョニー・デーモンが、ヤンキースの不文律に従って、顔中 を覆っていたひげをそり落としました。レッドソックス時代に、野人、あるいは原始人と、尊敬と親しみを込めて呼ばれたデーモンは、ニューヨークでは「紳 士」に変身しました。

 さすがに、デーモンです。レギュラーシーズンでは実力通りの成績を残しました。しかし、プレーオフでは、期待を裏切り、地区シリーズ敗退の要因になって しまいました。短期決戦のプレーオフでは、ひげをそり落としたことによる、威圧感の低下が影響したのではないでしょうか。

  □小笠原にはやっぱりひげが似合う

 小笠原のひげづらは、彼のにとってなくてはならない「トレードマーク」になっていました。

 小笠原ほどの強打者ならば、巨人軍の時代遅れの不文律など無視してほしかった。いまからでも遅くはありません。巨人軍への入団会見はセレモニーにすぎま せん。巨人軍での「本番」は、3月末の開幕試合です。トレードマークのひげをすっかりそり落とした小笠原なんか、球場で見たくはありません。小笠原には やっぱり、ひげが似合う。読者の皆さんもそう思いませんか。(2006年12月9日記)

 成田さんにメールは mailto:narinari_yoshi@yahoo.co.jp
 スポーツコラム・オフサイド http://blogs.yahoo.co.jp/columnoffside
2006年12月06日(水)
萬晩報通信員 成田 好三
 今回は、誤解を恐れずに危険な「思想」について語ることにする。

 いじめよる小中学生の自殺が相次ぎ、文部科学大臣あてに、いじめ自殺を予告する手紙が届いたことで、文部科学省と日本中のほとんどすべての主要メディア が、いじめ根絶キャンペーンをはっている。朝日新聞は、小中学生に影響のある有名人を紙面に登場させ、いじめ体験とその克服法を彼らに語らせ、「いじめで 死なないで」と訴えさせている。

 いじめは、悪である。自殺に至らせるような悪質かつ陰湿ないじめは犯罪行為である。

 しかしである。社会が一丸になって、いじめ対策をこうじれば、いじめを根絶できるとする、彼らのキャンペーンは理にかなったものではない。いじめは、人 間社会のどこにでも普遍的に存在する現象である。小中学校だけの存在する現象ではない。会社社会にも、地域社会にも、老人ホームにも存在する現象である。 社会の最小単位である家族社会にだって存在する。

 小中学校からいじめを根絶しようなどという行為は、社会から犯罪を一掃しようという行為と同じく、実現不可能な愚かな行為である。社会から犯罪を一掃することなどできるはずもない。仮にできたとしても、そんな社会は完全な「警察国家」に成り下がってしまうだけである。

 すべての社会に共通する、いじめの構造にはある共通項がある。閉鎖された社会でこそ、いじめの頻度が高まり、いじめが悪質化、陰湿化することである。

 いじめは、軍隊や刑務所、かつての学校の体育界系で頻発化し、悪質化、陰湿化した。これらの社会に共通するのは、閉鎖性の極めて強い社会だということである。

 彼らがキャンペーンをはるとすれば、いじめの根絶ではなく、いじめの頻度と悪質かつ陰湿ないじめの低減を目的とすべきである。そのためには、閉鎖系の社会を開放系の社会の変革すべくキャンペーンをはるべきである。

 小中学校でいじめが頻発し、悪質かつ陰湿化している理由には、小中学生が学校に閉じ込められている現実がある。学校しか彼らが所属できる社会がないからである。

 学校しか、彼らの所属する社会がないならば、学校内の序列が彼らの「価値」のすべてになってしまう。彼らが学校以外の社会に所属しているならば、彼らが学校内でいかに疎外されていようと、他に選択する道がある。

 文部科学省や日本のほとんどすべての主要メディアは、いじめ根絶キャンペーンをはるのではなく、こう「宣言」すべきである。

 いじめは、社会に普遍的に存在する現象である。だから、いじめを根絶することはできない。しかし、いじめの頻度を減らし、自殺に至らせるような悪質かつ陰湿ないじめを抑えることは可能である。

 そのためには、小中学校を外との社会とかかわりをもつ、開放系の社会に変えることである。

 もっと具体的に言えば、校門を閉めるのではなく、校門を開放して他の社会の人間を構内に引き込むことであり、児童生徒を校門の外の社会に放り出すことである。

 学校は文部科学省の決めた学習指導要領の範囲の勉強をするところであり、それ以外の分野であるスポーツや文化活動は学校以外の社会でやればいいのである。

 学校内で疎外されたって、学校以外にもいろいろな道がある。かつてのフォーク少年も、ロック少年もみんなそうだった。学校なんて、児童生徒が所属する複数の社会にひとつにすぎない。

 そう考えれば、いじめを跳ね返せることはできないにしても、自殺などという極めて非生産的な行為に価値を見いだすことは減るはずである。(2006年12月5日記)

 成田さんにメールは mailto:narinari_yoshi@yahoo.co.jp
 スポーツコラム・オフサイド http://blogs.yahoo.co.jp/columnoffside
2006年12月04日(月)
Nakano Associates シンクタンカー 中野 有
 米国の中間選挙の結果が示すように、米国民はイラク戦争の失策を認知すると共に何とかイラクの安定と平和へのシナリオと出口戦略を探求しいる。

 ジェームス・ベーカー(共和党、元国務長官)とリー・ハミルトン(民主党元議員、ウィルソンセンター所長)が中心となり米国の超党派の叡智を結集させた イラク研究グループ(ISG)の会合がウィルソンセンターにて開催された。非公開の会合なので会議室に入ることが出来なかったが、会議室の外から全米が注 視する会合の熱気を感じ取ることができた。

 数日中に報告書が発表されるとのことだが、現時点で新聞等で報道されているイラク研究グループの考察は実にシンプルなものである。

 第1は、共和党も民主党も米軍のイラク撤退を模索しているが、その日程に関しては、戦略上から設定を渋っている。しかし、大統領選に向けた国内政治と外交政策の関連から2008年初頭に向けた米軍撤退の可能性が高い。

 第2は、米軍の軍事目的を攻撃部隊からイラク軍へのアドバイス、トレーニング、後方支援にシフトさせる。

 第3は、イラク研究グループに招かれたキッシンジャー元国務長官がワシントンポストのコラムにて「イラク戦争に関しては、米国の軍事的勝利も軍事的解決もない」と簡潔に述べている。

 第4は、米国はイラク戦争で3000億ドル(36兆円)を既に浪費し、毎月80億ドル(1兆円近く)を費やしている。これは予測を遥かに超える額である。

 第5は、米軍の先制攻撃の責任とイラクの市民戦争を静めるために、治安維持、復興支援のための資金的協力は不可欠である。

 米国の崇高な叡智が結集されてもこの程度の妥協の産物しか生み出されぬ現実に接し、表層的な現実のみならず歴史の潮流の視点で、米外交の変化を考察する必要があると考えられる。

 英国の歴史学者アーノルド・トインビー(1889-1975)の文明の衰退、ロシアの経済学者ニコライ・コンドラチェフ(1892-1938)の景気変 動のコンドラチェフの波、そしてキリスト教とイスラム教の衝突と融合の3つの側面より現在の米国の外交政策を照射してみることとする。

 第1、トインビーは、一つの文明の盛衰は800年周期であり、西洋文明と東洋文明とが相互に交替を繰り返しており、例えば、紀元前4世紀―紀元5世紀に ギリシャ・ローマ文明が興隆し、13-20世紀は大西洋文明の時代、そして21世紀はアジア文明(太平洋文明)の時代が到来すると文明盛衰説を唱えてい る。米国が太平洋を挟み中国、インド、中東に目を向けるのはアジア・太平洋文明への憧れだと読み取れる。

 第2、コンドラチェフの波。1922年、コンドラチェフは、約半世紀のサイクルで戦争、技術革新、通貨供給、エネルギー資源供給のサイクルで景気が変動 するとの仮説を立てている。国家の命運をかけた戦争は、破壊と創造から技術革新への貢献を果たす。エレクトロニクス、プラスチック、原子力開発の技術革新 の主流は、第二次世界大戦の結果生まれた。

 1944年の通貨安定のブレトンウッズ体制は、1971年のスミソニアン体制に取って代わり通貨の安定が失われた。しかし、冷戦後、軍事・経済面での両 方において覇権体制を確保してきた米国は、通貨供給量を調整することで経済成長を維持させてきた。

 イラク戦争の米国の浪費36兆円は、皮肉にも中国、日本、韓国等の国債で賄われている。このようなことが可能なのは、通貨供給量の本質的な調整能力を有する米国のパワーにあると考えられる。

 冷戦で敗退したロシアが石油・天然ガス価格の高騰の恩恵で覇権体制を急速に回復している。ロシア、中東の資源国が、エネルギー安全保障戦略を通じた国際 情勢の変化を導いている。コンドラチェフの長期サイクルがグローバルな規模での地殻変動を演出しているようにも映る。

 第3、キリスト教とイスラム教の対立と融合。キリスト教は、ユダヤのヘブライズムとギリシャ・ローマの西洋的なヘレニズムが融合して生まれたとの見方が 正しければ、2000年前に既に異なる文明の融合が実現されていたことになる。20世紀初頭、アメリカ人がキリスト教の教えを全く知らないインドの奥地を 訪れた時、キリスト教と類似している生活様式をしているインド人を見つけ、明らかにキリスト教の源流は東洋にあるとの見解を示している。

 文明の衝突の論議もあろうが、人間の性(性善、性悪)は、衝突と融合の繰り返しで起こり、最終的にヒューマニティーが調和をもたらすと考察される。イラ ク戦争は、米国のキリスト教とイラクのイスラム教の衝突である。この二つの一神教の調和には時を要しようが、キリスト教自体がヘブライズムとヘレニズムの 融合で生まれたものであるとすると、同じ流れの中にあるキリスト教とイスラム教の調和と融合は確実に実現されると考えられる。
 
  米国が第二次世界大戦に関わった期間は3年8ヶ月である。イラク戦争はそれを超えた。軍事力、経済力、生産能力の面で勝利できるはずの戦争にうろた え、出口戦略さえ見出せない米国は、米外交戦略の修正が問われている。米国の伝統的な外交戦略は孤立主義である。米国の自由、民主、個人主義の価値観を守 るために、米国の外交政策は、孤立主義、現実主義、国際協調主義、覇権主義と国際情勢の変化と地政学的動向により適合されてきた。

 今日、ポスト冷戦、或いはコールド・ピース(冷たい平和)の中で、米国の軍事予算は年間50兆円を超え、これに軍人の年金、イラク戦争、核開発を加える と80兆円と言われている。日本の国家予算に等しい米国の軍事費は、異常であり、米国のハードパワーと世界の警察官としての米国の限界が見えてくる。

 イラク戦争の失策が米国への孤立主義への回帰を呼び起こすことを危惧する。第一次世界大戦後のベルサイユ条約で米国のウィルソン大統領が国際連盟を提唱 しながらも米国の議会がそれを承認しなく、米国の孤立主義の結果としてドイツのファシズムや日本の帝国主義の蔓延に対する勢力均衡が損なわれた。米国の孤 立主義が外交の真空を生み出し、第二次世界大戦につながったとの冷酷な戦争の歴史を忘れてはいけない。

 米軍のイラク撤退は、米国の孤立主義への流れではなく、米国の覇権主義から国際協調主義や勢力の調和(concert of power)につながることが期待される。

 ハドソン研究所で開催されたセミナーで、最小の犠牲で冷戦に勝利したレーガン大統領ならイラク戦争にどのような軍事戦略を描いたかの討論があった。レー ガン大統領なら9.11の報復としてアフガンに侵攻するも、イラク戦争に関しては、ブッシュ大統領とは違った戦略を通じ、イラク戦争を回避した可能性が高 いとの専門家の意見があった。仮にイラク戦争を行なう場合、米軍の人命を尊重し、空爆中心の攻撃に留めるか、地上軍を投入するなら一時的に数倍の米軍を編 成したであろうとの見解があった。最も可能性が高いレーガンの戦略は、イラクの親米勢力への武器供与と資金的援助を通じた戦略に徹底したであろうとの意見 があった。この考えは、イラク研究グループが唱えるイラク軍への後方支援に近いように考えられる。

 イラク研究グループが3年8ヶ月前に開催されていれば、イラクの市民戦争の悲劇と3000名近くの米軍の犠牲は回避できたと思われてならない。当時、日 本テレビのワシントン支局長の呉さんとイラク戦争回避への可能性を熱く議論したことが懐かしく思い出される。日米同盟に基軸を置く日本は、外交のターニン グポイントに立つ米国へ、キリスト教とイスラエル教の一神教同士の戦いで見落としがちな日本的・多神教的なアドバイスを行なうことが肝要であろう。今、日 本がイラクで苦しむ米国に的確なアドバイスと協力を行なわなければ、将来、日本周辺で北朝鮮等の有事が発生した場合の米軍の対応にも影響するように思われ てならない。

 中野さんにメール nakanoassociate@yahoo.co.jp
2006年12月03日(日)
萬晩報主宰 伴 武澄
「プラグイン・ハイブリッドという新発想」から話題を再び電気自動車(EV)に戻そう。

 ■究極のEVはスーパーカー

 日本では数年前に慶応大学が「エリーカ」という8輪駆動の電気自動車を開発したことが話題になった。8輪それぞれにモーターを埋め込みコンピューターで自動制御するこの車の特徴は省エネではない。ポルシェをもしのぐ圧倒的加速力と最高速度である。

 ニュートンが発見した万有引力は物質が落下する加速度を1Gとしているが、エリーカのそれは0.8G。リンゴが落下する加速度つまり引力に限りなく近い加速度を実現したという。

 しかも燃費が半端でない。100円の電気で100キロの走行が可能であるから、東京から大阪まで500円で行けることになる。もっとも1回の充電でまだ500キロは走れない。

 電気自動車を自動車の性能面から売り出す新発想でもある。以前にも書いたが、モーターのエネルギー変換率はガソリンエンジンの2倍もあり、気圧や空気の 濃度など走行環境に影響されにくい。エリーカは環境重視から生まれたというよりスーパーカーとして生まれた。性能を極めたところに環境問題をクリアする技 術に出会ったということになる。

 ■ITの成功者たちが開発したTesla

 カリフォルニアの最近の話題は来秋発売予定の電気自動車Teslaではないだろうか。アメリカ全体で殺してしまったGMのEV1をさらに進化させたのは自動車会社ではなかった。Tesla Motorを立ち上げに参画したのはGoogleやeBay、PayPalの創業者などシリコンバレーを拠点として活躍する人々だった。

 Telsaはリチウムイオン・バッテリーと240馬力に匹敵する182キロワットAC(交流)モーターを装備したこのスポーツカー。約3時間半の充電で 400キロの走行が可能で、時速100キロまでの加速性能は4秒という性能を持ち、電動自動車としては世界初の本格的スポーツカーとなる。

 Teslaはエリーカ同様、実はスーパーカーなのだ。まず価格が10万ドルだから新車のポルシェが買える価格帯である。ポルシェのオーナーはほとんどが ステイタスとしてポルシェを購入する。一部背伸びしている自動車好きもいるが並みの収入でポルシェを維持することは不可能である。

 日本のエリーカも近く市販車としてデビューする予定だが価格は3000万円と予想されている。これは高すぎる。ロールスロイス並みでは公道を走るのは難しそうだ。しかしTeslaの10万ドルは何万台で売れる価格帯だ。

 高額所得者に満足してもらえる性能を電気自動車に求めたのがTeslaなのだ。そう考えると分かりやすい。この発想の転換は興味深い結果をもたらすかもしれない。

 というのも、Teslaは7月20日にモデルを発表。カリフォルニアをアリゾナなど地域限定で予約を受け付けていたが、2007年モデルはすでに "sold out"してしまったからだ。日本からは買えないが、カリフォルニアで購入した業者が日本に持ち込むことは間違いない。運が良ければ来秋、Telsaの雄 姿を日本の公道で目にすることができるかもしれない。

 ちなみにテスラは約150年前に交流を発明した人の名前。電球を発明したのはエジソンだが、発電所から家庭までの送電を可能にしたのは交流のおかげなの である。グーグルの創業者ラリー・ペイジが相当のテスラファンで知られるそうだ。電気自動車の普及をテスラの名前に託したということも記しておきたい。
2006年12月01日(金)
萬晩報通信員 成田 好三
 ある日、新聞記事を読んでいて、久しぶりに思わず笑い転げてしまった。

 本当に面白い笑いは、今どきのお笑い芸人がTVでやっている、いわゆるウケ狙いの笑いではない。当人が至極真剣であるにもかかわらず、いや至極真剣であるがゆえに、社会の実相や現実とずれてしまう。それこそ強烈な笑いを引き起こすものである。

 短い記事なので、筆者が笑い転げてしまった新聞記事をここに書き写す。読売の記事だが、朝日その他の記事もほとんど同じ内容だった。記事に登場する当事者も、執筆した記者も、原稿をチェックしたデスクも、この記事が笑いを引き起こすなんて考えてもみなかったに違いない。

 ■朝青龍の蹴手繰り「よろしくない」...横綱審議委員会

 大相撲九州場所後の横綱審議委員会が27日、両国国技館で開かれ、19度目の賜杯を5度目の15戦全勝で飾った朝青龍について「全勝優勝は高く評価する が、8日目の稀勢の里戦でみせた蹴手繰り(けたぐり)は、品格の問題からもよろしくない。受けて立つ相撲を取ってほしい」と注文をつけた。

 内館牧子委員は、「蹴手繰りなんて、そもそも語感が汚いわね。横綱が、『先場所、負けてるから』なんて言ったそうだけど、横綱の発する言葉じゃない」とピシャリ。

 石橋義夫委員長は、「連敗は困るという気持ちの問題でしょう。横綱本人も自覚しているでしょうけれど」と語った。(2006年11月27日 読売新聞)

 読者の皆さん、この記事を読んでみて、何かおかしいと思いませんか。

 横綱審議委員会(横審)は、朝青龍が稀勢の里戦で放った蹴手繰りを「品格の問題からよろしくない」と批判、内館委員にいたっては、「蹴手繰りなんて、そもそも語感が汚いわね」と酷評しているが、はたしてそうだろうか。

 蹴手繰りは相撲の決まり手として認められている正当な技である。力士が正当な技を駆使して勝利して、文句を言われる筋合いはない。それなのに、大相撲の最高諮問機関から文句を言われたのでは、たまったものではない。

 かつての大相撲では、つりに専心した明武谷など特異な技をもつ異能力士が多くいた。蹴手繰りの名手もいたはずだ。蹴手繰りの名手が自分の得意技で勝ったために、大相撲の最高諮問機関からとがめられたなどという話など聞いたことがない。

 横審は、朝青龍の一人舞台となった九州場所を論評するならば、朝青龍の蹴手繰りに難癖をつけるのではなく、日本相撲協会と大関以下の力士の不甲斐なさを糾弾すべきである。

 朝青龍は、現役力士の中ではケタはずれの実力をもっている。大関以下の有力力士がまっとうに戦っても、まず勝てる可能性がないほどの実力差がある。

 筆者は、朝青龍は、いわゆる名横綱ではなく、たまたま相撲界に足を踏み入れてしまった、稀代の格闘家だと考えている。朝青龍の瞬間的なスピード、技の切 れ、それらを生み出す体の使い方、つまり、重心の置き方と移動の仕方、勝負勘、勝利への執念とも、他の力士とは比較にならないほどのものがある。

 しかしです。実力差が余りにも大きくて、まともに戦っても勝てる可能性が極めて少ない場合、他のスポーツ界ではどうするのか。戦う前から勝利をあきらめてしまうのか。
 
 MLBの場合、ヤンキースと対戦する、万年最下位のデビルレイズは試合を投げてしまうのか。サッカーのスペインリーグで、FCバルセロナと対戦する下位チームは対戦前から戦意を喪失してしまうのか。そんなことはない。

 絶対的に戦力不足の下位チームであっても、強いチームの数少ない弱点を分析し、そこをついて戦い、勝利の可能性を追求する。そのスポーツで認められられたルールの範囲で、あらゆる手練手管、つまり戦略と戦術を駆使して、相手チームを倒そうとする。

 プロレスでは、大勢のレスラーがひとつのリングに上がって戦うという形式の試合がある。プロレスならば、リングに上がった他のレスラー全員がひとりのレスラーを攻撃することもできる。

 大相撲ではそんなことはできない。しかし、朝青龍に対しては、1場所で15人の力士が対戦する。15人がそれぞれ、彼らがもつあらゆる技能と知恵を絞って戦えば、朝青龍を倒すこともできるはずだ。

 横審は、朝青龍の取り口について悪口ではなく、こう言うべきである。朝青龍は確かに強い。朝青龍を倒すことは極めて難しいことはよく分かる。しかし、他 の力士も同じ土俵に立つ格闘家である。ならば、朝青龍を倒すために、ルールで認められた範囲内で、あらゆる手練手管を駆使して、朝青龍に勝利を倒す努力を すべきである。

 稀勢の里に対する蹴手繰りも、「先場所負けている」からだけではなく、対戦相手の強さと勢いを認めたうえでの、天性の勝負勘からでた技だろう。

 朝青龍に比べれば、他の力士は「お坊ちゃん相撲」をしているにすぎない。それでは大相撲は衰退してしまう。横審は、朝青龍の悪口ではなく、朝青龍に対抗 できる力士を育成できない相撲協会と親方衆を批判し、ふがいない取組しかできない他の力士の奮起を促すべきである。(2006年11月30日記)

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