慈善事業ベンチャーキャピタル

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2006年07月06日(木)
Nakano Associates 中野 有
 21世紀の今日、あえて世界のトレンドを3つ挙げるとすると、グローバリゼーション、地球温暖化、そして個人の影響力であると思う。

 ニューヨークタイムズのコラムニスト、トーマス・フリードマン氏は、グローバリゼーションを「ザ・ワールド・イズ・フラット」、地球温暖化を「ザ・ワールド・イズ・ホット」と巧みに表現している。

 その週の潮流を端的に表しているのが「The Economist」の表紙である。今週号は、ビル・ゲーツ氏の慈善事業を「Billanthropy」として採り上げている。世界第二の大富豪、ウォー レン・バフェット氏が財産(440億ドル)の85%をビル・ゲーツ夫妻が運営するビル&ミリンダ・ゲーツ財団等に寄付した。

 世界1と2位の大富豪の協力で生まれる慈善事業の規模は、600億ドルになり日本円に換算すると約6兆6千億円である。この額は、国連の今年の通常予算 の約35倍となる。ロックフェラー財団やカーネギー財団があるが、設立時の寄付を現在の価値で換算するとそれぞれ、76億ドル、41億ドルであり、今回の バフェット氏の寄付は370億ドルであり.桁違いの規模である。途上国40カ国のGDPの合計を超えるスケールである。大富豪の協力は世界を変えるパワー があると言っても過言でない。

 昨日、ワシントンのハドソン研究所で「ゲーツ・バフェット慈善事業が意味するもの」というテーマでシンポジウムが開催された。専門家の分析に傾聴し、開 発援助のパラダイムがシフトしていることと、改めて米国のバイタリティーは、民間とりわけ個人の理想が源泉となっていると考えさせられた。

 ハドソン研究所の「The Index of Global Philanthropy 2006」によると、

  • 米国の政府開発援助(ODA)は2000年から2004年の間に99億ドルから197億ドルの約2倍に上昇した。
  • アメリカのODAは世界1である。
  • 米国の民間セクターやNGO等を含む途上国への支援は710億ドルで、米国のODAの約3・5倍となる。
  • OECD の開発援助委員会は、GNI(Gross National Income)の0・7%を政府開発援助に拠出する目標を立てている。ノルウェー、デンマーク、スウェーデン等の北欧は、この基準を満たしているが米国 は、0・17%であり、先進国の中でイタリアについで最下位から2番目である。日本は0・19%である。
  • 米国の途上国への援助の特徴は、政府間の援助より財団、企業、大学、宗教団体、個人の送金や寄付などの民間セクターが中心である。
  • 政府開発援助の分野だけで途上国支援を評価する見方には偏見がある。
 ゲーツ氏が2年後にマイクロソフトの事業から退くことを表明し慈善事業を本格的に推進したりバフェット氏が全財産の大部分を寄付したりする目的はどこに在るのだろうか。

 ハドソン研究所のシンポジウムで以下の考えが専門家から述べられた。
  • 中途半端な額でなくものすごく大きな富を築いた人物は、地球、人類全体という大きなスケールで共生の理想を考察するものである。
  • 市場システムは途上国の貧困層には機能していなく貧富の格差を埋めるために途上国支援が必要となる。貧富の格差は、グローバリゼーションの影であり、紛争の種であり、天然資源の無駄使い、自然破壊につながる。
  • 政府開発援助は重要であるが、効率的、透明性のあるプロフェッショナルな運営を行うためには民間やNGOの活力が不可欠である。
  • 途上国を支援するために求められているのは、開発援助のための新思考である。保守的な考えや行動でなく失敗を恐れず実行するチャレンジ精神が求められる。それを実現させるのが新しいタイプの慈善事業である。
  • 財団や慈善事業には寄付をした人物の理念がある。公共性も重要であるが個人の明確な理念やビジョンが開発援助のあり方、ひいては世界を変える潜在性を秘めている。
  • 資本主義のマイナス面の溝を埋めるのが宗教や哲学である。プロテスタントやカトリックは、弱者を救う精神、それが米国のキャピタリズムの魅力であり慈善事業として機能している。
  • 技術革新や投資で才能を発揮し大富豪となったゲーツ氏ややバフェット氏には先見の明がある。今後、慈善事業がビジネスとして発展する可能性がある。
  • ゲーツ・バフェットの例が起爆剤となり事業に成功した富豪は、慈善事業に取り組む例が増えると予測される。20年後には、ゲーツ財団よりもっと大きな財団がたくさん存在すると考えられる。
  • ゲーツ財団が、マラリア、エイズ等の健康問題、教育、マイクロファイナンスに特化しているように財団の専門化が進む。
  • 税金問題を含め、企業、NGO、慈善事業のあり方に社会意識が高まる。
  以上、ハドソン研究所のシンポジウムで学んだことであるが、ゲーツ氏などの先見性のある人物の考えに接し、グローバリゼーション、地球温暖化の問題に対処 するためには、国家や組織というフレームのみならず国家を超えた共生や博愛が重要となると考えられる。それは個人の感性や理念で生み出されるものであろ う。

 地球や人類を抱える問題を解決するための慈善事業が、ベンチャーキャピタルとして生まれる予感がしてならない。

 中野さんにメール nakanoassociate@yahoo.co.jp

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このページは、伴 武澄が2006年7月 6日 12:19に書いたブログ記事です。

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