防衛施設庁談合事件等に思うこと(その2)

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2006年02月16日(木)
太田 述正
 政策官庁がやっていることは、これまた単純化すれば、企業や個人の活動の規制や助長です。

 規制手段としては、罰則を伴う法律の策定がありますし、助長手段としては、減税や補助金の交付があるほか、この両者の組み合わせもありえます。

 政策官庁の「OB」は、知識と経験を本当に買われて天下りをするケースが、官需官庁、就中防衛庁に比べれば若干はあります。政策官庁の大部分は経済官庁 ですが、日本は吉田ドクトリンの下、安全保障は蔑ろにしてきたけれど、経済は最優先してきたお国柄だからです。

 とはいえ、政策官庁の大部分の「OB」もまた、仕事をすることを期待されない形で企業に天下っているのです。どこが官需官庁と違うかと言えば、天下った 「OB」に企業(業界団体を含む)が支払う年俸に対して当該企業が官庁側から受け取る対価が、計算式では表しにくいので、はたから見えにくいという点で す。

 もとより、補助金が交付されている企業に天下るような場合は別です。 しかし、個人に補助金が交付される場合は、そのことで裨益する企業(例えば、個人 が太陽電池を設置する場合、補助金が出るが、太陽電池をつくっている会社はそれによって裨益している)に天下りをすれば、対価関係はぼやけます。

 だから、政策官庁では、あまり天下りがらみの不祥事が露見しないのです(注4)。
  (注4)キャリア出身の大学教授をしばしば目にするが、若くして転身した場合はともかくとして、「OB」の場合は、官庁と大学との癒着関係の下での天下り が大部分だ。国公立大学は、(独立行政法人になった現在でも)、大部分が直接間接国費でまかなわれているし、私立大学も、国からの補助金なくしてはやって いけない。だから、財務省(旧大蔵省)や総務庁(旧自治省)のキャリアは容易に天下りできる。それ以外の政策官庁の場合も、審議会が沢山あり、その委員に 大学の教授を任命することで、大学に貸しをつくり、天下りの資とすることができる。なぜ貸しになるかと言うと、委員になれば、その教授も教授の属する大学 も共に箔が付くからだ。(教授については、将来、叙勲の等級が上がる、というメリットもある。) 
 ちなみに、ご存じの方もおられると思うが、中央官庁で課長以上の経歴のある者は、著書や論文が一つもなくても、日本の大学の教官になれることになっている。
 3 防衛施設庁談合事件への取り組み

 このように、天下りシステムは全省庁共通であり、しかも前にも申し上げたようにこれに、自民党がからんでいるわけです。とは言え、これらの問題を一挙に是正するのは、政権交代でもなければ不可能です。

 しかし、防衛庁限りでできることがいくらでもあります。

 第一に、自民党が防衛庁の利権に寄生している構図を建設部事件を手がかりとして、白日の下に晒すことです。

 第二に、防衛庁の天下りシステムの全体像を、建設部事件を手がかりとして白日の下に晒すことです(注5)。
  (注5)施設庁建設部の官製談合・天下りシステム(建設部システム)を用いて、建設部出身以外の施設庁「OB」のほか、内局キャリア「OB」も天下ってい る。このことだけをとっても、防衛庁事務次官・官房長・秘書課長のラインが建設部システムのからくりを熟知していたことは明らかだ。
 第三に、建設部システムに類似するシステムは、官需官庁共通に存在していることを示唆することです。
  (注6)今回理事長(前技術審議官)が逮捕された防衛施設技術協会の職員には、施設庁OB以外に会計検査院や旧建設省のOBがいる。これは、施設庁が建設 部システムを用いて、会計検査院「OB」や建設省「OB」までも天下りさせることで、会計検査院や建設省に恩を売り、その見返りに便宜を図ってもらうとい う関係があることを推測させる。
 第四に、その上で、防衛庁の天下りシステムを完全に撤廃することです。

 具体的には、勧奨退職制度をなくして年金受給開始年齢(65歳)まで全員を防衛庁にとどめることとする一方で、官製談合を止め、民民談合の徹底的な防止 策を講じ、かつ官側から企業への天下りの働きかけを一切行わないこととし、「OB」の再就職にあたっては、厳格にその妥当性を審査することとすべきです。

 その際、望むらくは、防衛庁職員だけを対象とした恩給制度の復活か、防衛庁職員を特別に優遇した年金制度の導入ですが、それが国民によって認められるか どうかは、第一から第四までの上記課題に防衛庁当局がどれだけ真摯に取り組むかにかかっているのではないでしょうか。

 そのためにも、私は、心ある現役の防衛庁キャリア、キャリアたる技官、そして将官及びその「OB」の方々に訴えたいのです。

 役所に入った時、任官した時の初心を思い出してください。
 そして、一人でも二人でも真実を語ってください。

 また、「OB」の方々は、一人でも二人でも天下り先企業から自発的に退職してください。

 建設部の現役と「OB」の一部の人だけが厳しく罰せられるのを座視するような臆病者ばかりだとすれば、あなた方が有事の際に命を賭けて国民のために奉仕をし、戦ってくれるなどと誰が信じることでしょうか。
(完)

(2月11日付、太田述正コラム#1077から転載)

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このページは、伴 武澄が2006年2月16日 13:44に書いたブログ記事です。

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