ケネディーの宇宙構想を対中戦略に

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2006年02月22日(水)
Nakano Associates 中野 有
 ワシントンにジョン・F・ケネディーが通ったカトリックのセイント・マッシュー教会がある。前方には、ケネディーの遺体がアーリントン墓地に向かう前に安置された場所があり、「ケネディーは1963年11月25日、この地より天国に蘇る」と記されている。

 今、その場所でこのコラムを作成している。ずっと熟成してきた平和構想を練るにあたりケネディーの知的直感を分けてもらおうと思ったからだ。静寂な教会の中で考えるコラムも悪くない。

 上院議員であったケネディーは平和戦略を描き、大統領としてそれを実現させた。12の平和戦略構想の基軸は、抑止力としての核、宇宙開発、共産主義封じ 込め政策としての経済協力・平和部隊である。ソビエトの核の脅威に直面する情勢の中、米国民を奮い立たせる夢と理想があった。

 ケネディーは、フルシショフに対抗し核の抑止力を増強するのみならず、米国民が一体となる科学技術の分野、とりわけ宇宙開発の重要性を訴えたのであった。ソビエトより先に月面着陸を成功させ、科学技術の優位が最大の抑止力になると考えたのであった。

 さて、現在の日本にはケネディーが描いたような平和戦略は存在しているのであろうか。なければ描く必要がある。

 筆者は中国脅威論を唱えるのでなく、科学技術・宇宙開発の分野で中国と正当な競争を行うべきであると考える。それがアジアの地位向上につながる。中国と 正常な交渉を将来にわたり継続するためには、少なくとも中国と均衡するハードパワーを持たなければいけないと考える。矛盾するようだが、東洋的なソフトパ ワーを実践するためには、抑止力としての戦略的な優位性を構築しなければいけない。

 日本が直面する最大の脅威(国際テロや自然災害を除く)は、北朝鮮の核と中国の脅威である。最悪のシナリオを想定した場合、北朝鮮の核兵器は、中国、ロ シア、米国、韓国に使用される確率より日本に向けられる確率が高い。中国は核保有国であり、国連常任理事国であり、宇宙開発の重要性を認識している。そし て反日感情を持っている。

 中国や北朝鮮から日本の国体に関わる異常な干渉を核の矛先と共に向けられる可能性はある。現にその兆候は出ている。日本が、怯むことのない毅然とした態度を保つことができるのであろうか。核を超越する抑止力を有しなければ真剣勝負を木刀で臨むようなものである。

 日本は核兵器を持つべきであるか。否である。核を持ったところで世界の普通の国になるだけである。世界で唯一の被爆国としてのユニークな戦略を生み出す べきである。持ってしまうより、数ヶ月で核兵器を保有できる技術力を養うことと、外交交渉に核をちらつかせることに意義があると考える。

 朝鮮半島問題のシナリオは4つに集約できると考えている。経済協力・文化交流を通じたソフトランディング、軍事関与と強硬な経済制裁によるハードランディング、ステータスクオ(現状維持)、核を有する朝鮮半島。

 崩壊すると考えられてきた北朝鮮が存続している主因は、米中が戦略的にステータスクオが得策だと考えているからだと思われる。北朝鮮の脅威が適度に生み 出されるステータスクオで、米国は東アジアの安全保障を有利に展開できるし、基幹産業である軍事産業の追い風となる。中国は富国強兵策に役立つ。

 北朝鮮問題は、勢力均衡とステータスクオの状況の中、日本が唱える拉致問題や経済制裁はナイーブに映る。

 本当に拉致問題を解決するためには、ステータスクオの風穴を開ける技が求められる。それは、北朝鮮の核抑止から中国脅威論に至るまで、日本のナショナリ ズムの高揚により核保有論が出てくることを非公式に伝えることにより、ステータスクオの修正が起こるという見方である。米中は日本の核保有を防ぐ戦略に出 る可能性が高い。

 昨年末、ワシントンでインドの外務大臣の講演に耳を傾けた。会場にはかつてのインドに対する米国の態度でなく、パートナトーとしての尊敬が伴うインドへ の視線があった。インドには哲学に由来する科学技術の力がある。核保有後のインドは、明らかにパワフルになった。核の拡散に反対するアメリカが、対インド に関しては典型的なダブルスタンダードを行っている。

 先週、キャピタルヒルで、ライス長官の公聴会とグリーンスパン元議長の後任のバルナンキ議長の公聴会に出席した。中国問題が重要議題として取り上げられ た。中東の民主化を唱え選挙を実現させた米国の外交が裏目に出て、選挙により選出された政権は反米色の強いものになった。その結果、外交に回された税金が 何の役にも立たなかった反動から、米国が孤立主義に向かう傾向がある。それに対し、国務省は孤立主義を回避するために、中国やインドに対する関与政策を高 めると読むことができる。

ある講演会で、胡錦涛主席の母は、日本兵に殺され、そのことを胡錦涛主席が世界のビジネスリーダーの前で語った話を聴いた。それが真実であるかどうか確認が必要だが、日本に対する恨みは強いと思われる。

 日中の不幸な歴史を払拭するためにも日本は中国に対し、経済・文化交流のソフトパワーを更に深化させることは不可欠である。同時に、日本は、抑止力とし て中国より進んだ科学技術、即ち宇宙空間から抑止力としての防衛網を確立させることが重要である。核を超越した抑止力を有するべきである。

 日本は40年以上前に実践されたケネディーの平和戦略を参考に以下の対中平和戦略を考案する必要があると考える。

 日本は、

1.中国より先に月面着陸を実現させる。

2.宇宙開発という分野でアジアのリーダーになる。

3.日本の叡智を結集し、核の脅威を超越する宇宙の分野での世界最先端の科学技術並びに抑止力としての防衛網を実現させる。

 これが実現されなければ、日本は卑屈になり、中国の干渉に対し偏狭なナショナリズムが高揚し将来不幸な結末を迎えることになると考えられる。科学技術や 宇宙構想の実現のための資金は、勝ち組と負け組みの格差が拡大する日本の社会問題を解決するためにも、勝ち組の資金の効率的な運用が期待される。

 そんな大きな平和戦略の夢と理想をケネディーが好んだ教会で考案してみた。

 中野さんにメール nakanoassociate@yahoo.co.jp

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このページは、伴 武澄が2006年2月22日 13:37に書いたブログ記事です。

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