2005年4月アーカイブ

2005年04月20日(水)アメリカン大学客員研究員 中野 有
 中国の反日デモが拡大している。「政冷経熱」と表現される日中関係も、反日デモの沈静化が見られない状況の中、株式をはじめ経済にも悪影響が出始めている。政治と経済の相互作用を改めて認識させられた。

 日中の歴史観の違いに端を発し、中国では、日本の歴史教科書、総理の靖国参拝、慰安婦問題、南京大虐殺、南沙諸島の領土問題、日本のナショナリズム、憲 法問題など、日本への一連の不満が爆発している。これらの政治的現象は以前から噴出してきたが、今回は、念願の日本の国連常任理事国入りが重なり、この戦 後60年の節目を簡単に先送りできない状況にある。

 1972年の日中国交正常化以来最大の困難に直面しており、また恐らく戦後、日本が経験したことのないターニングポイントを迎えていると考えられる。打 開策はあるのか。日本海を挟む日中の温度差は、歴史的認識の相違や謝罪といった表層的な問題だけでは決着がつかず、互恵の精神に基づく本質的な日中に共通 する「アジアの意思」を探求する必要がある。日中の共通の利益の合致点を見いだすためには、2国間の視点を超越した世界観の中で明確なビジョンを確立しな ければいけない。また歴史的認識の違いを克服することにより発展の機運を生み出すことも不可能ではない。

 今回の反日デモの特徴を考えてみたい。子供の頃から徹底した愛国教育を受けてきた20-30代の中国の若者が反日デモの中心である。いつの世も革命の中 心は、若者である。インターネットを通じて日本製品の不買運動を訴えることで反日運動に拍車がかかっている。このようにインターネットを介し見えない個人 と個人から連鎖する輪が瞬く間に広がったデモは、新しいタイプのデモであり、個人が国を動かす革命的要素を含んでいると考えられる。

 ニューヨークタイムズの外交コラムニスト、トーマス・フリードマンは、「The World is Flat」という4月に出版された新刊の中で、グローバリゼーションには、3段階あると語っている。第1段階は、コロンブスが新世界を求めた1492年に 始まり、1800年までの国やナショナリズムを中心としたグローバリゼーション。第2段階は、2000年までの経済統合や多国籍企業を中心としたグローバ リゼーションの時代。そして第3段階は、2000年以降の個人を中心としたグローバリゼーションで、これはインターネットのパワーで世界が狭くなり個人が 世界に影響を与える時代である。

 このフリードマンの考え方を中国の反日デモに当てはめてみると、中国のグローバリゼーションは、第1段階の国家から、第2段階の企業、そして第3段階の 個人が、同時に進行しかつ綿密に絡んでいるように考えられる。インターネットに精通した個人が反日感情と愛国心を醸成し、日本製品の不買運動を通じ、日本 企業にダメージを与えている。それで中国共産党が望む反日感情を通じ中国の求心力を強化すると同時に、日本の自己主張、保守化傾向を改め日中の歴史的精算 を実現させるという戦略だとすると非常にやっかいな問題である。

 また、このような個人のパワーによるグローバリゼーションの拡張は、中国政府も容易に収拾することができないと考えられる。竹島問題で韓国から中国に拡張したように、周辺諸国にも容易に飛び火する恐ろしさを秘めている。

 仮にこのような戦略が地政学的に優位な中国により練られているとすると、今回の日中関係の悪化は、2国間で解決することは困難であり、多国間の舞台で打 開策を打ち出す方が賢明であると考えられる。現実に日本は、幾度も日本の侵略に関し正式な謝罪を行ってきた。その事実を踏まえると、隣国同士のいがみ合い は、2国間より多国間のグローバルな舞台での謝罪がより効果的だと考えられる。

 筆者は2002年9月から2003年7月までワシントンのブルッキングス研究所の客員研究員として北東アジアの活動に関与した。その間、ブルッキングス 研究所が招聘した北東アジア諸国の研究員とチームを組み平和構想を練った。ハーバード出身の中国人、防衛長官を経験された韓国人、大学教授など豊富な人材 が揃っていた。

 ワシントンに留まることなくニューヨークやロサンジェルスまで遠征し、道場破りのようなシンクタンクの討論会も行った。ブルッキングス研究所の北東アジ ア出身の研究員とタッグを組むことでアジアの中の日本も世界の中の日本も鳥瞰することができた。北東アジア諸国との共通項や日本の弱点を多国間の枠内で研 究することができたのは、大きな成果であった。

 また、ブルッキングス研究所の立場で、アメリカの国営放送である「ボイス・オブ・アメリカ」の中国向けの1時間のライブテレビに出演した。ニュース解説 の後、中国の視聴者からの電話に答えるもので、靖国問題、歴史教科書問題、日本の侵略行為など想像以上に厳しい質問を受けた。

 600万人の視聴者があるとのことを後から聞いたが、ほとんど打ち合わせなしで自由に話をさせてくれる米国の国営放送の寛大さに驚いた。日中問題を米国 のシンクタンクや放送局を通じて述べれば、国益、アジア観、世界観を持って、日本の反省すべき点も正当化すべき点も伝えることができるように思えた。

 日本の世論に傾注すれば、中国の傲慢さが見えてくる。例えば、台湾海峡の問題、中国の経済成長に伴うエネルギー問題、中国の覇権主義、共産主義体制、貧 富の格差、人権問題、そして近代の歴史を語れば毛沢東の文化大革命による3000万人の犠牲、ベトナム侵攻と、限りなき中国の悪の側面が見えてくる。

 しかし、冷静に日中の関係を考察すると、日本にも多くの短所と長所があると思われる。日本は大陸に侵略し、多くの中国人を殺害した。一方、中国人は日本 人をそれ程、殺害していない。明治維新に端を発するアジアの独立への機運や日露戦争でロシアを敗った日本が生みだしたアジアの高揚は、アジアのみならず多 くの国から賞賛された。日本は、富国強兵から、戦争、被爆、敗戦、世界一のODA大国まで、幅広い経験をした。

 敗戦国である日本は、アメリカの共産主義封じ込め政策のお陰で世界第2の経済大国となった。中国は第2次世界大戦の戦勝国であり、日本が敗戦国でありな がらも、日中の経済格差は、雲泥の差であった。この経済的格差が、日本人を傲慢にし、中国人を卑屈にさせ両国の温度差が深まったと考えられる。中学の歴史 教科書問題等は、表層的な問題であり、本質的問題は、経済的格差からくる差別意識にあると思われてならない。その日本の隣国へのいい意味での「お互い様」 という思いやりが重要であろう。

 経済開放政策を進めた鄧小平は、日本の経済発展を賞賛するとともに日本の隣りに世界でも最も貧しい国があることを忘れないで欲しいと歴史の諦観を述べ た。それから30年近くを経て、日中の経済格差は縮小した。そして、すでに地政学的に優位である中国は、10年後には経済力でも日本を追い抜く。中国が 困っている時期にアジアの同胞としての援助、並びに相互補完的な経済協力や文化交流を推進することで、日中の信頼醸成の構築に役立った。しかし、対中 ODAには、様々な側面があり、反日運動から察すると本質的な経済・文化交流の役割が果たされたとは考えられない。

 日本・米国・中国の三角関係において、日本は日米同盟を基軸とした二等辺三角形を理想としている。米国は、日米の安全保障の強化のみならず、開発の分野 においても日米戦略開発同盟を推進し、日本の国連常任理事国加盟を支持し、日本が国際舞台における活発なプレーヤーになることを期待している。同時に、米 国は、日中韓の排他的な連携を警戒している。日本と協議することなしにキッシンジャーと周恩来は、米中接近を実現させ、台湾の国連常任理事国の立場を追い やり、中国の国連常任理事国入りを実現させたことは忘れてはいけない。現在でも米中は日本が考える以上に接近する可能性があると読める。

 日中の2国間外交が手詰まりになる状況において日本は、多国間外交における地位を向上させることが肝要である。日本は、国連常任理事国の地位を確保する ことが非常に重要である。5月9日にモスクワで対ドイツ戦勝60周年式典が開催される。第2次世界大戦の関係国の首脳が一堂に会する。日本は、この多国間 の舞台において、戦前の侵略行為の謝罪を正々堂々と行い、日本・アジアの意思を世界に伝えるべきである。また、終戦記念日までの多国間外交の舞台におい て、周辺諸国が納得する軍事力に頼らぬ平和国家理念を発表すべきである。

 中江兆民の息子、中江丑吉は、戦前の北京で30年間生活し、中国古代政治思想史に精通し、満州事変勃発後、いち早く日本のヒューマニティーに欠ける軍国 主義の欠点を見ぬき敗戦の運命を見抜いた。中江丑吉が誰も見向きもしない古代政治思想史を熟読したのは、中国人が中国の歴史を忘れているからであった。

 米国に留学する中国人やアジア人に会って感じるのは、アジアの歴史観並びにアジアの意思が満たされてないことである。日本の役割は、アジアのみならず世 界が忘れかけている多神教的世界観や調和を重んじるアジアの意思を提唱することであろう。そのような行動が、日中の共通の利益となり、ひいては日中の政治 的温度差を解消することとなろう。絶好の好機を逃すべきでない。

 中野さんにメールは mailto:tomokontomoko@msn.com
2005年04月19日(火)萬晩報通信員 成田 好三
  教育には、国家による国民に対する「宣伝」という機能がある。冷戦時代、東西両陣営は、互いに相手陣営を理解するのではなく、相手陣営を批判(非難)する 教育を行っていた。その結果、教育を受ければ受けるほど、両陣営の国民は相手陣営の国民に対し、嫌悪感と悪感情を抱くようになる。教育はまた、残念ながら 「洗脳」という機能ももっている。

 週末ごとに中国の各都市で頻発する反日デモ(暴動)のTV映像を見ていて、NHK・BSで4月に放送された海外ドキュメンタリー番組の一場面を思い出した。中国のある幼稚園に1年以上もカメラを据え付けて、園児を観察し続けた番組だ。

 この番組では、園児の日常生活を切り取る本筋とは別に、時折、子どもたちへのインタビューの場面を挿入していた。その中で、中国人の日本人に対する感情を浮かび上がらせたものがあった。

 インタビュアーの、「日本人は嫌いなの?」「何故きらいなの?」といった質問に、園児は「嫌い」「日本人は中国人を殴るから」「日本人は中国人に悪いこ とをしたから」などと答えていた。「日本人を見たことはある?」「日本人に殴られた場面を見たことはある?」などの質問への答えは、いずれも「ない」だっ た。

 NHKのホームページで確認したところ、このドキュメンタリー番組は、「中国 幼稚園の子どもたち」(2003年、中国制作)だった。広州国際ドキュメンタリーフェスティバルでグランプリを受賞した秀作だ。

 中国人の反日感情の背景には、中国共産党が体制維持のために行ってきた愛国教育がある。中国の愛国教育は、まだ公式な教育を受けていない幼稚園児にも刷 り込まれている現実を、この番組は如実に示していた。まだ3、4歳の子どもたちは、家庭や隣近所との交流の中で、まるで空気のように反日感情を育んでい る。

 日本でもいま、文部科学省と自民党の文教族議員が中心となって、日本流の愛国教育を推し進めようとしている。互いに偏狭なナショナリズムを鼓舞する中国と日本の愛国教育がぶつかり合う。韓国でも、「竹島(独島)問題」を契機に反日感情が急激に高まってきている。

 現代文明の中心軸は、欧州から米国へ、そして東アジア(インドなど南アジアも)へ移行しようとしている。そうした潮流の中で、愛国教育によって日本、中 国、韓国の国民が反目し合う。そうなれば、利益を得るのは米国と欧州だ。彼らは植民地主義時代から一貫して、その国の国民を「分断統治」することによっ て、アジアやアフリカの国々を支配してきた。

 最も成功したとされるイギリスのインド統治もそうだった。イラクの混乱も、根本原因はイギリスとフランスが多数派であるシーア派ではなく少数派であるスンニ派をイラクの支配階級に仕立て上げたことにある。

 21世紀文明の中心軸になるはずの東アジアを構成する主要3カ国がそれぞれの愛国教育によって互いに反目し合うことは、大きな危険性をはらんでいる。米 国や欧州が、自らの手を汚さずに巨大な可能性をもつこの地域を分断統治できることにつながるからだ。(2004年4月19日記)

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2005年04月16日(土)メディアケーション 平岩 優
 本屋で平積みされていた佐藤優著『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社刊)を手に取った。奥付をみると、発行されてからわずか10日しか経っていないのにすでに2刷である。

 著者はマスコミから「鈴木宗男の意向を受けて外務省を陰で操るラスプーチン」として疑惑報道の集中砲火を浴びせられ、その後逮捕された元外務省国際情報 局主任分析官といえば思い出す人も多いだろう。小渕政権下で2000年までに日ロ平和条約を締結するために発足した「ロシア情報収集・分析チーム」のリー ダーを務め、「鈴木氏と行動を共にする機会が少なからずあった」という。
 著者はこの2月17日、東京地裁で背任・偽計業務妨害罪により懲役2年6ヶ月執行猶予4年の判決が言いわたされ、即日控訴している。

 当時のことを思い出して欲しい。「自民党をぶっ壊す」と息巻いた小泉政権が誕生して田中眞紀子氏が外務大臣に就任。2人の人気はマスコミに煽られて最高 潮に達していた。一方、鈴木宗男議員は橋本・エリツィンの平和条約締結に向けた流れを引き継いだ小渕、森政権下で、対ロシア外交の先兵を務め、外務省に強 い影響力をもつていた。

 その外交族の鈴木宗男氏と田中外相に軋轢が生じると、当然のごとく鈴木宗男議員は悪役を割り振られる格好となる。しかし結局、外務省は田中眞紀子氏を放 逐するために鈴木宗男の政治的影響力を最大限に活用し、「用済み」となった鈴木氏を整理。この過程で鈴木宗男と親しかった著者も整理された。

 権力を巡る争いとしては、なるほどさもありなんという話である。しかし、重要なのは著者が指摘する、この争いの結果として生じた外務省の大きな変化である。

 著者によれば、冷戦構造の崩壊後、反共イデオロギーに基づく親米路線は存在基盤を失い、外務省内部では異なった3つの潮流が形成された。第1の潮流は今 後、長期間にわたってアメリカの一人勝ちの時代が続くので、これまで以上にアメリカとの同盟関係を強化しようという考え方。第2の潮流は日本がアジア国家 であることをもう一度見直し、中国との安定した関係を構築し、その上でアジアにおいて安定した地位を得ようという考え方。第3は日本がアジア・太平洋地域 に位置するという地政学を重視し、日・米・中・ロ のパワーゲーム時代の中で、もっとも距離のある日ロ関係を接近させることで、両国および地域全体にとってプラス効果を狙うという考え方である。

 そして、これらの外交潮流は田中眞紀子氏が外相をつとめた9ヶ月の間に、「田中女史の、鈴木宗男氏、東郷氏(外務省欧亜局長)、私に対する敵愾心から、 まず「地政学論」が葬り去られた。それにより「ロシアスクール」が幹部から排除された。次に田中女史の失脚により、「アジア主義」が後退した。「チャイナ スクール」の影響力も限定的になった。そして、「親米主義」が唯一の路線として残った」という事実に帰着する。

 一方、「ロシア情報収集・分析チーム」をめぐる捜査の方は著者を含めた2名の外務官僚、斡旋収賄容疑の鈴木宗男議員、偽計業務妨害容疑で3名の三井物産 社員が逮捕されたことで、唐突に終了する。いわば、トカゲのしっぽ切りである。鈴木宗男議員と「ロシア情報収集・分析チーム」のロシア工作は森前首相の官 邸主導で行われていたからだ。

 著者は当時の検察庁の捜査を「国策捜査」と呼んでいる。国策捜査とは何か。著者と検事のやりとりをちょっと長いが引用する(じゃっかん省略させていただきました)。
 
 「あなたが捕まった理由は簡単。あなたと鈴木宗男をつなげる事件を作るため。国策捜  査は『時代のけじめ』をつけるために必要なんです。時代を転換す るために、何か象  徴的な事件を作りだして、それを断罪するのです」

 「今まで、普通に行われてきた、否、それよりも評価、奨励されてきた価値が、ある時  点から逆転するわけか」

 「評価の基準が変わるんだ。何かハードルが下がるんだ。............
一昔前ならば、鈴木さんが貰った数百万円程度なんか誰も問題にしなかった。しかし、特捜の僕たちも驚くほどのスピードで、ハードルが下がって行くんだ」

 「あなたたち(検索)が恣意的に適用基準を下げて事件を作り出しているのではないだ  ろうか」

 「僕たちは適用基準を決められない。時々の一般国民の基準で適用基準は決めなくては  ならない。............ 外務省の人たちと話して感じるのは、外務省の人たちの基準が  一般国民から乖離しすぎているということだ。鈴木さんとあなたの関係についても、  一般 国民の感覚からは大きくズレている。それを断罪するのが僕たちの仕事だ」

 「一般国民の目線で判断するならば、それは結局、ワイドショーと週刊誌の論調で事件  ができていくことになるよ」

 「それが今の日本の現実なんだよ」

 「それじゃ外交はできない。ましてや日本のために特殊情報を活用することなどできや  しない」

 「そいうことはできない国なんだよ。日本は。あなたはやりすぎたんだ。仕事のために  いつのまにか線を越えていた。仕事は与えられた条件の範囲でやればいいんだよ。成  果がでなくても。............ 」

 現在、日本は中国、ロシア、韓国に対して、近年まれにみるほどにぎくしゃくした外交に始終している。もちろん、その要因には相手国の国内事情なども反映 しているに違いない。しかし、もし本書で書かれているように、小泉政権が発足してから外務省の外交潮流が「親米主義」に一本化されたのが事実とすれば、こ れらの諸国との外交上の軋轢もそのことが影を投げかけているとはいえないだろうか。

 冷戦構造の崩壊後、極東地域でも各国のパワーゲームが繰り広げられている。そうした中で、日本にも当然、アメリカには中国カードをきり、中国には米ロと 結んだルールで臨むなど、多角的な外交戦略が求められているのではないか。かって貿易によって多額の富を蓄えたベネチアが、その後没落することになるスペ インに肩入れして、どうなったか。歴史の知るところである。

 日本はユーラシア大陸の果て南北に長く横たわっている。日本人は戦後、平和憲法の下で隣国と友好的関係を建設してきたと信じ、他国から内政問題に対し、 あーだこーだいわれる筋合いはないと感じている。しかし、大陸側の諸国からみれば、太平洋の出入り口に長くシーレーンを延ばす日本は、やっかい存在でもあ る。まして、米軍の第一軍団司令部が移転する計画があるときけば、余計に警戒感がつのるだろう。

 本書は田中外相と鈴木議員の闘い、著者と検察庁のやりとり、また拘置所の暮らしぶり(食事やゴミの分別収集等)などもリアルに再現され、そうした行間から外務省の変質が浮かび出てくる、興味をもった方には一読を勧める。

2005年04月11日(月)萬晩報主宰 伴 武澄
 中国で反日デモが拡大している。9日の土曜日の北京で始まり、翌10日は南部の広州や深センに広がった。デモの規模は初日の1万人から2万人に増えた。多くのプラカードや横断幕を掲げているが「日本製品ボイコット」への呼び掛けが中心だ。

 この動きが大陸全土に広がるのかどうか、予断は許さないが、共産党独裁が続くこの国で大規模なデモが許される背景にも気を配らなくてはならない。鬱積し た人民の不満が「反日」という形である種のはけ口になっていることは間違いないが、政権内部で政治路線を巡って奪権闘争が起きている可能性も否定できな い。

 天安門事件を見るまでもなく、共産党中枢部にとってデモの暴走ほど恐いものはない。常に政治的抑圧状態にある中国では、大衆行動が起きる背景には必ずといっていいほど「体制批判」のマグマが存在しているからだ。

 日本人にとっては「寝耳に水」であるこのデモの扇動者は見えない。発信源は分からないが大量のチェーンメールが人々を街に繰り出させる引き金となっている。

 そのチェーンメールの日本語訳が萬晩報にも届いたので、読者のみなさまに紹介したい。ご意見お待ちしています。



皆様。インターネットで流される「反日メール」をそのまま翻訳してお見せします。今まで 中国側の6人からこのメールを送られてきました。この6人は、僕と同じ世代で中国のマスコミ関係者です。地位は、テレビ局のPと新聞社の編集長、そして会 社の重役です。彼ら(女性もいる)はデモに参加しないが、メールに賛成しているようです。これは、中国の現状です。

 ■全国人民への提案書

5月1日から6月1日までの間、日本商品を買わないよう、すべての中国人に願いたい。なぜ、時期を一ヵ月後に定めるかというと、この通告を気骨あるもっと 多くの中国人に知らせたいから。国産商品に興味なく、日本商品に愛着強い人々に対しても、5月の間にだけ、そのような愛着を抑えて、「抵日連盟」(※ 日 本商品抵抗連盟)の日本商品抵抗運動に協力するよう強烈にお願いしたい。

今現在の現実状況からみれば、すべての人々に徹底的に日本商品をボイコットしてもらうことは無理だろう。しかし、ある程度の期間中に、すべての中国人が完 全に、かつ徹底的に日本商品を拒絶することが実現可能だと思われる。だからこそ、今に行動をして、まわりの更に多くの親戚、友人、同学、同僚にこの知らせ をしよう。全世界の中国人のパワーを集合させて、醜い日本に対する厳しい一撃を与えよう。

日本商品ボイコットが一つの戦争だと思えば、5月は一つの戦役となるだろう。行動に移せば勝利は収められる。

日本の松下という会社のある重役が、「我々が靖国神社へ行かなくても、韓国人は我々の商品を買ってくれない。しかし、我々が如何に靖国神社を参拝しても、 中国人は我々の商品を買ってくれる」と言っていた。これはまさに、中国人たちを淋しくさせる一言である。

100元の日本商品を買ったら、日本政府に5元の利益を提供することになり、日本の自衛隊に10個の銃弾を多く製造させ、反中の教科書を8ページ、より多く印刷させることになる。
・・・(数行、文字化け 削除)

この通告を20人に送って頂こう。中国を支持し、日本商品をボイコットしよう。利益が戻らなくても、これは貴方の義務でもあるじゃないか!

中国人であれば、この通告を次ぎの人に知らせておくれ!感謝している。
2005年04月09日(土)萬晩報通信員 土屋 直
  中国では日本の国連安全保障理事会や教科書検定の問題をめぐり、北京で9日に1-2万人規模の反日デモが実施されるなど、反日活動は激しさを日に日に高 まってきている。一方の韓国では島根県の「竹島の日」条例制定に反発し、ソウルの日本大使館前で抗議活動をおこない警官隊と衝突するという事件が起こっ た。

 近年になってとみに民族のフラストレーションが急激に高まってきたのは何故であろうか。識者はナショナリズムの暴発の背景に中韓両国の愛国主義教育があ ると語るが果たして要因はそれだけであろうか。私はグロ-バリーゼーションによる、国家の液状化、民族意識の液状化現象をもう一つの要因としてあげたい。

 グローバリゼーションという現象は肉体的な脅威ではなく、貨幣や資本といった抽象的な象徴によって、国家から活力を奪う。グローバル経済の中に巻き込ま れた国家は、ディズニーランドやマクドナルドのハンバーガーのように均質化され、民族的な個性や文化的な伝統は衰退してゆく。人々は民族の潜在的な危機を 肌で感じとるようになり、民族意識の高揚に躍起となる。ここに右傾化の要因がある。

 中国は外国資本の導入によって、共産党の一党独裁体制のもと資本主義経済と共産主義経済の共存して存立する矛盾が破綻をきたし国家の液状化現象の危機に見舞われている。
 一方の韓国も通貨危機により1997年12月にIMFの管理下に入り、韓国社会の基盤であった儒教文化が瓦解し民族意識の液状化現象に襲われている。
日本は金融ビックバン以来、外国資本が雪崩れこみグローバリゼーションの波にあらわれることとなり、右傾化した若者が増加している。

 国家による統治機能が低下し、国民のフラストレーションがたまると、指導者は国家の結束を固め、国民の不満を解消するためのはけ口をどこかに求める。過去に戦争による侵略をおこなった日本は中韓ナショナリズムの格好のターゲットとされてはいないか。

 国家間の争いによってこの液状化現象は解消しない。グローバリゼーションという現象に伴って発生するマグマのような民族のフラストレーションとどう向き合ってゆくかが唯一の解決の道ではないのだろうか。

 土屋さんにメールは mailto:habermas@mx2.nisiq.net
2005年04月04日(月)萬晩報通信員 成田 好三
 野球は本来、危険なスポーツでです。使用するボールは石のように硬く、かつかなりの重さがあります。野球は投手が捕手めがけて投げ込むボールを、ボールの軌道のすぐ側に立つ打者が、木製(金属製)のバットで打つことによって成り立ちます。

 マウンドと本塁ベース間の距離は18・44メートル。投手の指先から放たれた速球は、プロ野球ならば、時速140キロ前後(初速)のスピードがあります。放たれたボールは捕手のミットに吸い込まれるか、打者のバットによって打ち返されるか、どちらかの運命をたどります。

 投手が投げ込むボールは大きな危険性をはらんでいます。打者に当たれば、当たりどころが悪ければ選手生命はもちろん、生命そのものにかかわる大けがを負 う恐れがあります。だから、打者はヘルメットで頭部を保護し、ひじ当てやすね当てなどの防具で体を守ります。投球を受ける捕手もマスク(フェイスガード) やさまざまなプロテクターに身を包みます。

 打者が打ち返す打球にもかなりの威力があります。素手で捕球することはあまりに危険なので、野手はグラブを手に装着するわけです。

 ■野球の危険性は観客にも及ぶ

 野球の危険性はグラウンド内の選手だけにあるのではありません。ファールボールが内野スタンドに飛び込めば、観客にも危険が及びます。打球ばかりか、時には打者の手をすり抜けてバットまでスタンドに飛び込みます。

 メジャーリーグでは、ボールを追いかけて選手がスタンドに飛び込むことさえあります。昨シーズンは、ヤンキースの松井秀喜やデレク・ジーターがスタンドにダイブしました。日本のTVで放送された以外のゲームでも、多くの選手がスタンドにダイブしたことでしょう。

 野球はこうした危険性とともにあるスポーツです。逆に言えば、こうした危険性もまた、野球の魅力を構成する重要な要素になります。

 プロ野球の球場は、戦後長い間、観客の危険性を排除することを優先順位の上位に掲げてきました。投手と打者・捕手との延長線上にバックネットがあるの は、危険防止のため誰もが納得する至極当然の設備ですが、内野席にまで高いネットが張り巡らされています。観客をファールボールから守るためです。しか し、高く張り巡らされた内野のネットは、野球の魅力をそぐことにもつながっています。

 ■ボールから目を離さないことを強いるスポーツ

 野球は本来、観客にとっても危険伴うスポーツであるという、魅力が失われるからです。いつ自分のいる席にボールが飛んでくるか分からない。野球は、ボー ルから目を離してビールを飲んだり、弁当を食べたり、隣席の友人と冗談を飛ばしたりし、あるいはグラウンドに背を向けたりしながら観戦できるスポーツでは ありません。

 インプレー中、特に投球後、ボールが捕手のミットに納まるか、打者が打ち返したボールが野手のグラブに納まるまでの数秒間は、観客にもボールから目を離さないことを強いるスポーツです。

 今シーズンからネットで保護されない、内野のファールグラウンドにせり出した観戦空間が一部の球場で設けられました。新規参入球団である楽天の本拠地・フルキャストスタジアム宮城の「フィールドシート」や、東京ドームの「エキサイトシート」です。

 局外者として安全を保障された席で野球を観戦するのではなく、いつボールが飛んでくるか分からない、いや、ボールだけでなくバットや選手まで飛び込んで くる可能性のある臨場感の中で野球を楽しむ機会が生まれます。いまのところはわずかばかりの空間ですが、この空間が拡大すれば、野球観戦のあり方を変える 力になるのではないでしょうか。

 ■球界再編騒動後、何も変わらなかった球界

 昨年、社会的な一大関心事になったプロ野球再編騒動の結果、プロ野球界は変わったのでしょうか。結論から先に言うと、本質的な問題については、何も変 わってはいません。球界の病巣である、ドラフトの名に値しないドラフト制度の改革も、新人選手獲得をめぐる裏金問題も、親会社の赤字補填に依存する不透明 で前近代的な経営システムの改革も、ほとんどすべての本質的な問題を先送りしたまま、今シーズンの公式戦が開幕してしまいました。

 球界再編騒動を経て変わったことといえば。交流試合の実施と、「実数に近い」入場者数の発表と「飛ばないボール」の導入程度です。しかし、日本プロ野球 組織(NPB)とセ・パ両リーグの統一ルールに基づいて実施されるのは交流試合だけです。「飛ばないボール」は球団ごとに選定されます。主催球団によって 使用するボールが異なるという現状に変化はありません。

 球場入場者数は、主催球団の経営状況や人気度を指し示す最も確かな物差しになります。現場に観客を集められない球団が、TVの視聴率を稼げるはずはあり ません。ですから、球場入場者数は「実数に近い」数字ではなく、Jリーグと同様に有料入場者数としてカウントすべきです。

 ■「デッドゾーン」が利益を生み出す

 プロ野球界が本質的問題を先送りし続ける中で、楽天などが試みたネットに保護されない、グラウンドの選手と観客が危険性を共有する新たな観戦空間の誕生は、一筋の光明ともいえるものではないでしょうか。

 球団経営者にとっても利益の得られる改革です。球団経営にとって、球場のファールゾーンは利益を生み出すことのない「デッドゾーン」でした。しかし、 ファールゾーンに観客席を設ければ収容人員を増やすことができます。しかも、相当高額な料金を設定できます。東京ドームの「エキサイトシート」は、一、三 塁側合わせて228席という、何とも情けない規模ですが、料金は1席55000円と聞きます。かなりの高額チケットになります。「デッドゾーン」が「宝の 山」に変わることになります。

 日本の野球観戦文化を変えるなどという抽象的な概念ではなく、経営者にとっていますぐでも現実的な利益になる改革です。彼らが球場のファールゾーンを改造する意思がないなどということは、まったく理解できません。(2005年4月4日記)

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