中野有さんが書いた『国際フリーター世界を翔る』

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2003年06月30日(月)萬晩報主宰 伴 武澄

 萬晩報の常任ライターの一人、ブルッキンズ研究所の中野有さんの著書『国際フリーター世界を翔る』(太陽企画出版)がきょう発売となった。今年1月、日 本経済経論社から出版された『北東アジアのグランドデザイン』のまとめ役は中野さんだったから、実質的に2冊目の著書といっていい。

 萬晩報に縁のある著書の第一号は『マレーシア凛凛』(伴美喜子、2002年5月)。中野さんの本は第二号となった。常任ライターのもう一人のSさんから 「大手出版社から秋にも出版します。鋭意、執筆中です」と報告もある。萬晩報界隈で出版ラッシュが起きていることは嬉しいことである。

 『北東アジアのグランドデザイン-発展と共生へのシナリオ』は中野さんが、10年間暖めてきた構想を総合研究開発機構(NIRA、塩谷隆英理事長)に持 ち込んで実現したプロジェクトである。単なる北東アジア開発構想ではない。9・11以降のブッシュ大統領による「悪の枢軸」(Axes of Evil)に対抗、「平和の枢軸」(Axes of Peace)を旗頭にした極東の安全保障への提言でもある。

 国際政治に軍事力のプレゼンスを再び持ち出したブッシュ大統領に対して、国際社会が手をこまねいているこの時期に、本来ならば、英語で出版されるべき日 本からの提言であった。小生はそう信じている。イラク戦争や緊張を増す朝鮮半島情勢に無批判に加担したり、声高に反戦を叫ぶだけでは平和はもたらされな い。

 軍事力によるアメリカの国際平和維持政策に対して、説得力のある、しかも具体的なオルターナティブがなければ、アメリカの独走を許すことになる。中野さ んがワシントンを中心に昨年から注目されているのはこの『北東アジアのグランドデザイン』という構想がバックボーンにあるからでもあろう。

 『国際フリーター世界を翔る』は日本という狭いキャンパスを抜け出し、5大陸をまたにかけて、学び、働き、そして再び学ぶ、という繰り返しの中から人的 ネットワークを作り上げてきた中野さんの半生をつづった作品である。ゲラ刷りを読んで、そのむかし、日本の若者を熱狂させた一冊の本を思い出した。小田実 氏の『何でも見てやろう』(1961年、河出書房新社)である。まだ外国に行こうにも外貨がなかった時代にリュックひとつで世界を渡り歩いた体験記だっ た。1960年代には多くの日本青年が日本を飛び立ち、小田実氏の後を追った。

 筆者はこの本が売れていたころ、南アフリカのプレトリアにいた。1966年、高校一年生にして、ローデシア、ザンビア、ウガンダ、ケニヤ、エチオピア、 エジプトと東アフリカを南から縦断し、イラク、イラン、インドとアジアを東に旅行して帰国するという経験をした。小田実氏のこの本は帰国してから読んだ。 思想的には相容れない部分も相当あったが、世界を駆け巡った小田実氏を羨み、「俺も続くぞ」と希望を膨らませた。

 国際フリーターとしての中野さんの起点は鉄工メーカーに入社してすぐ訪れたバグダッド駐在での経験である。会社生活に飽き足らず、数年でこのメーカーを 辞めて、オーストラリアに語学留学、南アフリカのケープタウン大学大学院に学んだ。地球の反対側を選んだ理由は「日本人がいないところ」ということであっ た。「アパルトヘイト(人種隔離政策)に挑み、民間外交に努めた」のだそうだ。筆者と中野さんが出会う運命の接点はその時すでにあったのだ。

 その後、リベリアに移り「ターザンのような生活をしながら開発援助に携わり」、オーストリアのウィーンでは「芸術の街を肌身で楽しみながら国連工業開発 機関(UNIDO)でアジア太平洋開発の仕事」をした。その中に北朝鮮も含まれていた。ハワイのシンクタンク、東西センターでは北東アジア経済の世界的権 威である趙利済氏と出会う幸運に恵まれ、新潟の環日本会経済研究所、とっとり総研などを経て、いまやワシントンに在る。

 中野さんの半生の軌跡の特徴は、生まれも大学もそうだが、ワシントン、ロンドン、東京といった世界政治の中心にないということである。外周から世界の政 治や経済を眺めてきた。逆にそのことが強みとなっている。ワシントンやロンドン、東京にいる政治家や研究者たちのほとんど知り得ない世界を経験してきたが ゆえに、そうした人々とのディベートで優位に立てるという逆説が成り立っているのである。

 中野さんの文章はひどく直裁的である。起承転結の「承」や「転」が抜けていたりする。分かりやすいのだが、学会では「乱暴だ」との批判を受けることが少 なくない。あるいはほとんど無視されるケースが多いに違いない。そのくせ日本の学会では起承転結の「結」がない論文があまりにも多い。断定的にものを言う のは研究者の沽券に関わるとでも思っているのだろうか。日本の学者の書いた論文が面白くないのは多分、「説明」や「分析」が多くて、最後まで読んでも結局 何がいいたいのか分からないということではないかと思う。

 日本では景気の長期低迷で学生の就職さえ難しいといわれる時代に入っている。だが世界に目を転じれば、いくらでも働く場所はある。勇気を持って国境を越 えよ。国境を越えれば世界に貢献する道はそこらに転がっている。中野さんが日本の若者にいいたいことがこの本にはたくさん詰まっている。

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 中野有著『国際フリーター世界を翔る』(太陽企画出版)は30日きょう発売
http://www.taiyoo.com/book/freeter.html

 【取り扱い書店】紀伊国屋書店丸善、学生生協、三省堂
           八重洲ブックセンター
アマゾンなど

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 中野有氏の『国際フリーター世界を翔る』出版記念会開催のお知らせ
 日時:7月28日(月)午後6時半から(受付は6時から)
 場所:アルカディア市ヶ谷私学会館 http://www.arcadia-jp.org/
 (千代田区九段北4-2-25、JR中央線市ヶ谷駅から徒歩2分、03-3261-9921)
 会費:8000円
 定員:100人(先着順)
 共催:萬晩報、財団法人国際平和協会(責任者:伴 武澄)
    http://www.yorozubp.com/ http://www.jaip.org/
 申込:お名前と所属、メールアドレスを添えて
    先着順に受け付けますのでお早めに!
     mailto:nakano@yorozubp.com まで


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