台湾のWHOオブザーバー参加申請却下について思う

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2003年05月21日(水)台湾在住 曽根正和

 台湾の国際社会での地位は中国の「一つの中国」政策のため、多くの国や組織に認知を受けていない。今回5月19日のWHO(世界保健機関)へオブザー バー(正式成員ではなく)としての参加申請も、中国の政治力の前に実現しなかった。中国政府の同種の動きは特に新しいことではないが、今回のSARS病の 蔓延を眼前に体験するにつけ、疫病予防と政治は切り離すべきではないかと思い、萬晩報の読者に問題を提起したい。

 初めにお断り申し上げるが、私はここで台湾独立を支持したり、中国政府の「一つの中国」政策についてコメントを述べるものではない。

 SARS病はつい最近まで日本にとってはどちらかというと対岸の火事であり、中国、香港、台湾などとのビジネス関係者を除いては、関心が薄かったとおも う。そこに先日、台湾の医師が西日本を観光し帰国後SARSを発病したニュースが入り、一気にマスコミの注目もあつまり、一般の関心度も高まったようだ。

 中国広東省仏山で発生したとされるSARSは昨年秋の発生後、中国政府当局が故意にその情報をコントロールし発表することも無く、そのために適切な防疫 対策もされず蔓延した。北京でも同様な隠蔽がなされ、結果衛生部張文康部長や新任孟学農北京市長が更迭されたことも記憶に新しい。世界からのこうした隠蔽 工作に対する批判も相次いだ。一方、正しい情報が流されなかったため、広東省では消毒作用があるとされる酢などの民需品が無くなり、パニック状態になっ た。

 台湾でのSARS蔓延は、4月半ばの台北市立和平病院での院内感染がきっかけで、現在も毎日二桁台の新ケースが報告されている。台北地区から南部へも広 がりを見せており、先に流行したシンガポール、香港などが落ち着き始めているのとは対象的である。

 台湾の防疫対策にも問題点がある。上記和平病院などでは、業績への心配から来院患者がSARSの疑いがあるにもかかわらず、適切な報告や対応をしなかったことが指摘されている。一般民衆も感情的な対応をしたり、理想とは程遠い。

 現状説明が長くなったが、SARSはまだ治療方法が確立していない伝染病であり、これを防ぐ方法は情報の公開や伝達、それに基づく迅速かつ確固とした隔 離などの防疫対応である。ウィルスや細菌には国境や人種の隔てなどない。中国でも台湾でも、また世界のどこでも同じように伝染する。要するに国や政治を超 えた存在である。WHOのオブザーバーとして正式に組織内での情報のやりとりは、台湾の人民にプラスになるだけでなく、周辺諸国も正しい情報が伝えられる というメリットもある。中国や台湾に近い日本は、伝染病の蔓延については、正式経路で台湾の疫病最新情報が常にインプットされることは重要なはずである。

 同様な認知は国際医療関係者にもある。たとえばWMA(World Medical Association)は5月16日にも台湾のオブザーバー参加について提言している。要点は今回のSARS蔓延の状況を見るに付け、国際社会の協力が 必要な状況であるにもかかわらず、2000万の人口を有する台湾がWHOから除外されていることは終わりにすべきであると。但し、WMAの立場は台湾の国 際地位についてサポートするもではないと注記をつけている。
http://www.wma.net/e/press/2003_4.htm

 中国政府のオブザーバー参加の拒否理由は、国家という資格がないからという技術問題を前面に出しているが、それでは実際に起こっている病気をどうするの かに対する明確な回答がない。簡単に中国は台湾同朋の健康福祉には関心があり、台湾での情報が十分であるといっている。http://fpj.peopledaily.com.cn/2002/04/09/jp20020409_16052.html

 しかし、このようなコメントは自己矛盾である。もともと中国はWHO人員が台湾に行くことすら渋っていた。http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/2003may/03/K20030503MKH1Z100000012.html

 WHO正式成員でありながら、SARSの隠蔽をして世界的な批判を浴びていることを忘れたのか。次に台湾での現実為政ができない状態で、どうして十分な 情報があるかを判断するのか。一歩進んで防疫対策ができるのか。その昔、20数年前台湾で見た地図には、外蒙古(モンゴル)からチベットまで含んだ、大中 国の版図が中華民国とされていた。中国政府のコメントはこれと大同小異の発想である。

 中国政府の参加拒否行動は、目の前にSARSの脅威を感じている台湾人民の反感を買うだけで、「一つの中国」政策にもマイナスのはずだ。それともハリー ポッターに習い、魔法の棒を一振りして台湾のSARSを消滅すれば、それこそ台湾では大歓迎だろう。

 人道的な観点、またWHOを通じた国際協力を通じて自己を疫病から守るという観点から、日本が台湾のオブザーバー参加を支持するとの表明は正しいと思う し、更なる支持を期待する。また、数は少ないが日本国民をはじめ、諸外国の国民も台湾に暮らしているのであるから、これらの国家は自国民の健康のために も、台湾のWHOオブザーバー参加は支持すべきではないか。ますます狭くなる国際社会ではさらに多くの未知の病気が発生する可能性は非常に大きい。中国の 政治問題でこの狭い世界に疫病のブラックホールを存在させることは、全国際社会にとってもマイナスである。中国も国際社会の一員であることを認識するべき だ。

 曽根さんにメールは mailto:sone.home@msa.hinet.net

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このページは、伴 武澄が2003年5月21日 18:58に書いたブログ記事です。

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