2002年5月アーカイブ

2002年05月18日(土)萬晩報主宰 伴 武澄

 萬晩報の事務局長の岩間孝夫氏が2カ月ほど前、中国の寧波から一時帰国していた時、高校の同窓だという甲斐美都里さんを紹介してくれた。というより甲斐 さんの家に逗留していた岩間氏を深夜訪ねた。なにやら機嫌がいいので聞くと「4月から学生に戻るんで、スカイメイトも使えるのよ」ということだ。

 さらに聞くと合格したのは東京芸大大学院。記者とはいいながら、つかさつかさでサラリーマンをやっているわが身を振り返り「学生」と聞いただけで、うら やましく思った。だがよくよく考えれば並外れて一芸に秀でていないと入れない世界である。美都里さんが機嫌がよかったのは多分「古今東西 陶磁器の修理う けおいます」(中央公論新社)という自著の発行が間近だったこともあったに違いない。この本を読んで僕は観念した。

 美都里さんの専攻は「文化財保存修復学科」。自身の説明では、芸大にこういう学科ができたのは世界遺産がらみ。画家の平山郁夫氏がこのプロジェクトにえ らくご執心で、その計画を推進する傍ら、保存修復を専攻する学科が先進国の中で日本にだけないのでは格好がつかないということで、自分が学長をしていた東 京芸大に創設した。その後、保存修復学科は新設大学で設立ブームになっているようだが、陶磁器修復を専攻したいと受験してきたのは彼女が初めてだったらし い。

 最近まで外国新聞社の記者だった。趣味は学生時代からずっと「骨董」。記者や秘書の仕事をこなしながら心はずっと陶磁器の世界を漂っていた。この間、イ ギリスで陶磁器の修復技術を修得、京都の蒔絵職人に和洋修復技術である「金継ぎ」「銀継ぎ」を学んだ。その甲斐あって一部「骨董業界」では「修理のプロ」 で通うほどの腕前になり、ついに自宅で「陶磁器修理業」を開くまでにいたった。

 陶磁器修復の彼我の違いは、西洋が「鑑賞用として修復の跡を残さない」ことにこだわるのに対して、日本は「使えてなんぼの世界」。骨董品に対する哲学が海と山ほどに違うのだという。

 接着剤にしてもイギリスでは「米がゆと卵白と粉」「桑の木の汁」「グロスターチーズと石灰」などで日本では漆が主流。イギリスの修復した陶磁器に熱いお茶を入れると接着面が簡単にはがれてしまうが、日本の「漆」はそんなことはない。漆は史上最強の接着剤なのだそうだ。

 昨年、中国青磁のふるさと浙江省「龍泉窯跡」を訪れ、その規模の大きさに圧倒された。「700年前から500年前にかけて商品にならならず廃棄された磁 器が山になっているぐらいだからけたが違う」。美都里さんは鎌倉の由比ガ浜で宋の難破船から流れ着いた古龍泉の破片を採取して宝物のように大切にしてきた が、「そんなもんごみにもならへん」とばかにされた。

 国外持ち出し禁止とは知りながら、盗掘小屋も訪れた。養蚕のカイコ棚の下からそれこそ国宝クラスとも思える古龍泉が次々と現れた。「もうよだれがでそうだった」。しかしこっそり持ち帰るには大きすぎる。法律を犯すのもはばかられ、後ろ髪がひかれる思いで小屋を離れた。

 「古今東西 陶磁器の修理うけおいます」は陶磁器修復論としてもおもしろいし、骨董大好き少女の趣味が講じて「陶磁器修復師」になるまでの読み物としてもわくわくした気分にさせてくれる。

 美都里さんは芸大の保存修復学科ではその腕をさらにみがくのだが、きっと新たな境地を開いてくれるのだと期待している。

 美都里さんのホームページ http://homepage2.nifty.com/justa-rufina/
2002年05月12日(日)コーエイ総合研究所主任研究員 中野有

 予測は往々にしてはずれるものであるが、これからの世界はどのように変化するのだろうかと長期的なトレンドを考えることもたまには大切である。国際情勢 を読み取るにあたり、どんな本にも載っていなく、かつ考えてもいなかった「世界観」に接した時の感動は大きい。柔軟な発想は、旅を通じ生み出される。「世 界方程式」を創られた福地崇生先生(京都大学経済研究所、元所長)と、2週間のドイツの旅をされた次の日に会った。のんびりドイツの田園風景を見ながら、 汽車の中で考察された「世界観」にはスケールの大きい新鮮な発想が感ぜられた。

 冷戦が終わり、イデオロギーの対立から宗教や民族に関連した「文明の衝突」が顕著に現われ予測できない突発性の出来事が発生するのが現代の世相である。 ユダヤとアラブの根深い対立等、その解決策は存在しているのであろうか。そのヒントとして福地先生は、世界には4つのパターンを持つ国家群が存在すると指 摘される。1つは、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教等の一神教を信仰する国。2つ目は、インドに見られるような混沌とした掴み所のない宗教を持つ国。3 つ目は中国のような基本的には、宗教を持たない国。そして4つ目は、日本の仏教と神道等いくつかの宗教を同時にを持つ国。概して、これら4つのパターンで 世界観が展望できる。

 なぜ、中東の問題は解決できないのか。この答えは一神教が持つマイナス面にあり、イスラエル、アラブの問題にアメリカが関与しても一神教故に最後の一線 でどうしても妥協できないことが生ずる所以だと分析できる。また一神教である欧米、アラブ諸国が、インド、中国、日本を本質的に理解するのは、困難である ということが考えられる。

 人口の観点から洞察すると「世界のへそ」は中国とインドにあり、この2大国が21世紀の成長の原動力となるだろう。IT分野でインド、中国の優秀な人材 が活躍していることからも、中国とインドといかに関わっていくかによって、その国の命運も変わっていくと考えられる。欧米中心でない新たな勢力がアジアに 生まれつつあるのである。欧米の一神教の国々にとっては、混沌とした宗教を持つインドと、宗教では計れない価値観を持つ中国を理解することは容易ではな い。一方、宗教に対し、世界で最も柔軟な対応が可能である日本は、中国やインドとの交流を比較的進めやすいと考えられる。従って、日本が今後、今まで以上 に中国とインドとの交流を重要視することにより、日本の新たなる発展を導き出すことが可能となるのではないだろうか。

 先進国は、キリスト教を中心とした一神教で構成されており、また世界の基軸通貨であるドルやユーロもキリスト教が中心である。しかし、中長期的に中国や インドが豊かになることにより、一神教支配が変化してくると考えられる。一神教も理解し、他の宗教や宗教という枠に納まりきれない国々の動向を把握すると いう柔軟性を有した国が有利になってくると考えられる。

 そこで日本という国は、4つのパターンからすると世界でも希なる柔軟な吸収力を備えた国といえる。西洋・東洋の思想をも吸収する柔軟性と包容力を持った 日本は世界の潮流に対応するに相応しい国といえる。こんな「世界観」を持つと同時に日本の本質を見抜くことにより「世界の中の日本」という新たな発想が芽 生えてくるのではないだろうか。

 mailto:nakano@csr.gr.jp
2002年05月08日(水)萬晩報通信員 園田 義明

Political Science

No one likes us-I don't know why
We may not be perfect, but heaven knows we try
But all around, even our old friends put us down
Let's drop the big one and see what happens

We give them money-but are they grateful?
No, they're spiteful and they're hateful
They don't respect us-so let's surprise them
We'll drop the big one and pulverize them

Asia's crowded and Europe's too old
Africa is far too hot
And Canada's too cold
And South America stole our name
Let's drop the big one
There'll be no one left to blame us

We'll save Australia
Don't wanna hurt no kangaroo
We'll build an All American amusement park there
They got surfin', too

Boom goes London and boom Paree
More room for you and more room for me
And every city the whole world round
Will just be another American town
Oh, how peaceful it will be
We'll set everybody free
You'll wear a Japanese kimono
And there'll be Italian shoes for me

They all hate us anyhow
So let's drop the big one now
Let's drop the big one now

誰も僕らをよく思っていない 僕らはその理由がわからない
僕らは完璧ではないかもしれないが 
僕らが努力していることを神様は知っている
でも古い友達までもみんな僕らをやりこめる
でかいのを一発落としてやろう どうなるか見てやろう

僕らは彼らにお金をあげたのに ありがたく思うどころか
彼らは悪意を持っている そして彼らは憎しみに満ちている
彼らは僕らを敬わない それなら彼らをびっくりさせてやろう
でかいのを一発落として こっぱみじんにしてやろう

アジアは人で溢れている ヨーロッパはあまりにも古くさい
アフリカは熱すぎる カナダは寒すぎる
南アメリカは勝手に僕らの名前を語っている
でかいのを一発落としてやろうか
僕らに文句を言うやつらを黙らせてやる

オーストラリアは救ってやろう
カンガルーを傷つけたくない
僕らはそこにオール・アメリカン・アミューズメント・パークを建ててやろう
サーフィンだってできるように

ブームはロンドンに上陸しパリに広がる
あなた達にも僕らにもまだまだ余裕がある
世界中のすべての都市が
もうひとつのアメリカの街になるだろう
なんて幸せなことだろう
僕らはすべての人を解放してやろう
あなた達は日本のキモノを着るだろう
僕にはイタリア製の靴がある

とにかく彼らはみんな僕らを嫌っている
だから今 でかいのを一発落としてやろうか
今 でかいのを一発落としてやろう

(ランディ・ニューマン ポリティカル・サイエンスより)



■ランディ・ニューマン


 ランディ・ニューマンは、2002年アカデミー賞で16回目にしてようやく最優秀主題歌賞を受賞した。(作品「モンスターズ・インク」)

 ランディ・ニューマンは、最近でこそ華やかな映画の世界で知られるようになったが、ライター&シンガーとして数多くのオリジナル・アルバムを残してき た。独特のメロディ・ラインとあくの強い作品は、華やかなヒット・チャートの世界では決して目立つことはなかった。しかし、ミュージシャンズ・ミュージ シャンとして知る人ぞ知る存在であった。

 彼の残したアルバムの最高傑作のひとつが「セイル・アウェイ」である。このアルバムに「ポリティカル・サイエンス」が収録されている。リリースは、今からちょうど30年前の1972年である。

 ■1972年 

 今年2月28日、米国立公文書館は約500時間に及ぶ電話録音テープを公開した。この中でニクソン大統領が北ベトナムに対する核爆弾の使用を検討、キッシンジャー大統領補佐官がこれに強く反対していたことが明らかになった。

 1972年4月25日の電話で、まず大統領がキッシンジャー補佐官に対して「私は核爆弾を使用したい」と提案すると、キッシンジャーは「それはやりすぎ だと思います」と反論。ニクソンは「君は核爆弾は嫌かね? もっとでっかく考えようや」と語っている。

 また同年5月の会話で、ニクソン大統領はキッシンジャー補佐官に「君は民間人の犠牲を懸念し過ぎる」と述べ、キッシンジャーは「私が民間人の犠牲を恐れるのは、世界中の人々があなたを殺し屋だと言うことを望まないからです」と答えている。
      
 結局ベトナムで核爆弾を使用することはなかったが、この会話から数週間後にニクソン大統領は北ベトナムのすべての港湾の機雷封鎖など、軍事的な強硬措置を実施した。 

 ランディ・ニューマンが、強烈な皮肉を込めて描いた世界が、30年後になってようやく、それが現実のものであったことが明らかになる。

 そしてなによりも恐ろしいのは、今またこの曲が30年の時を越えて再び蘇ろうとしていることだ。

 ■1972+30 

 3月9日付の米ロサンゼルス・タイムズ紙は、ブッシュ米政権は軍部に対し、ロシアや中国など少なくとも7カ国を対象にした核攻撃のシナリオ策定を検討す るよう指示したと報じた。戦場などを想定した限定核攻撃用の小型の戦術核兵器の開発も検討すべきだと命じている。

 また翌10日付けのニューヨーク・タイムズは、国防総省が機密文書「核戦略の見直し計画」(NPR)の中で、生物化学兵器の貯蔵施設を標的にした核攻撃 シナリオを策定するよう求めていると報じた。イラクなど「ならずもの国家」の同兵器の脅威に対し、先制核攻撃も辞さないとするブッシュ政権の姿勢が明らか になる。

 2月12日付けスコット・マコーネルのアンチ・ウォー・ドット・コムでの「Have the Yanks Gone Mad?(アメリカ人は気が狂ったのか?)」、マイケル・ジャンセンのアル・アーラム誌3月28日号での「Dropping the big one(でかいのを一発落とす)」などでランディ・ニューマンのポリティカル・サイエンスを大きく取り上げている。共にブッシュ政権のユニラテラリズム(アメリカ単独主導主義)を強く批判した内容である。

 30年前を思わせる強硬姿勢に対して、30年前の曲を使って30年前の手法で応戦する不思議な光景が目の前にある。


 ■「我々は戦争を始めるのは得意だが、出口を探すのは苦手のようだ」

 少なくとも現在のユニラテラリズムの担い手達は、「モンスターズ・インク」ではなく「ジュラシックパーク」でる。しかも彼らの頭にはネオが付けられている。

 即ちネオコン(neo-conservative)と呼ばれる方々である。彼らは学者集団であり、徹底的な理論武装を好む。そして素早い行動力も兼ね備 えている。非常に手強い相手である。そしてブッシュ政権内部で彼らの勢力が増殖を続けており、ついにあのパウエル国務長官でさえも辞任の噂が飛び交うよう になった。

 彼らは伝統的孤立主義と一線を画し、単独行動を辞さず、力による秩序、そして強力な同盟関係を重視する。その勢力範囲は民主党にも及んでいる。
 
 つい最近も日本から来た昔ながらのキモノ(平和の象徴)を羽織った与党3党の幹事長が、イージス艦派遣要請とアップグレードされた最大5億7800万ドル相当のイージス・システムの売り込みの前にあっさり撃沈されたばかりである。

 今後もウルフォウィッツ国防副長官と「ショー・ザ・フラッグ」のアーミテージ国務副長官と日本国内の協力者とのアンサンブルによるイージス艦派遣問題は、イラク攻撃に向けて連日鳴り響くだろう。

 果たしてネオコンを止めることができるのだろうか?

 民主党のロバート・バード上院歳出委員長は2月に行われた公聴会でウォルフォウィッツ国防副長官に対し、「我々は戦争を始めるのは得意だが、出口を探す のは苦手のようだ」と批判した。しかし、残念ながら彼らは決して出口など考えてはいない。これが30年前との決定的な違いである。

 欧州勢が彼らを肉食恐竜と呼んだ本当の恐ろしさがここにある。

■Randy Newman - Political Science
Reprise Records 2064-2, released May 1972
Written, composed and arranged by Randy Newman.
Produced by Lenny Waronker and Russ Titelmann
http://www.randynewman.com/sail_away.html

■HAVE THE YANKS GONE MAD?
http://www.antiwar.com/mcconnell/mc021202.html

■Dropping the big one
http://web1.ahram.org.eg/weekly/2002/579/in6.htm


 園田さんにメール maito:yoshigarden@mx4.ttcn.ne.jp

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