税負担増に不可欠な希望持たせる一項目

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2002年01月18日(金)萬晩報主宰 伴 武澄

 長い役人の冬休みが終わり、政府税制調査会が始動した。1989年の消費税導入に次ぐ大規模な税制改革の議論が始まる。税制改革は当初の小泉改革にはな かった課題である。ふつう、不況時には国民の負担増につながりかねない税制改革は難しいものとされてきたが、小泉内閣はそれにあえて挑もうというのだ。や るからには旧来の既得権益の奪い合いではなく、国民の希望に火を灯すような項目をつくってほしいと願望している。

 萬晩報が提案したいのは、公平な寄付税制の確立とサラリーマンの源泉徴収の廃止である。また企業のまっとうな連結納税も不可欠であり、地方分権に合わせ た税源の地方委譲も不可欠だと考える。その上で消費税の増税なり、所得税の課税最低限の引き下げ、並びに租税特別措置法の大幅縮小という財源面からみた措 置を検討すべきであろう。

 ●育む住民参加の創造力

 公平な寄付税制をまっさきに挙げたのは、いくつかの理由がある。現在、企業も個人も寄付行為で所得控除が可能なのは政府や自治体が認定した団体の限られ ている。せっかくNPO(非営利団体)という概念を法整備しておきながら、多くのNPOは財政面での恩典が与えられていない。欧米の多くのNPOの存立は NPOへの寄付が所得控除の対象となっていることが前提になっているはずだ。

 卑近な話になるが、地域の掃除を仕事とするNPOがあったとして、仕事を持たない高齢者や主婦が掃除の代わりに寄付を求めたとしても不思議ではない。これまで行政がやってきた仕事を代わりにやるのだから多少の報酬があったとしてもおかしくない。

 「税金-役所-仕事」という流れを「寄付-NPO-仕事」という形に切り替えれば世の中は確実に変わる。顔の見える住民サービスの民営化が進み、行政は 単に仕事の区域や分担を決めるだけとなれば業者選定にまつわる不正も少なくなるだろう。「寄付-NPO-仕事」という流れが定着すれば、住民が直接その サービスの用不要を決定できる。

 かつて萬晩報でアメリカでの高校の卒業式の風景を取り上げたことがある。大学進学者への奨学金が公的な育英会のようなものではなく、町のピザ屋さんまでが競って奨学金の出し手となっているさまに感動した読者の一人が報告してくれたものである。

 1998年06月11日 奨学金を30も受給したことが誇りとなるアメリカの高校生

 そこには所得税における寄付控除の日米の考え方の差異が浮き彫りにされていた。もちろん住民意識の違いにも大きな隔たりがあるのだろうが、豊かな社会づ くりに不可欠なのは、行政による画一的なサービスではなく、住民参加による創造力であるような気がしてならない。そこに必要な資金の確保を「税金」という 旧来の発想ではなく「寄付」という新たな行為で賄ったとしても決しておかしな話にはならないだろうというのが萬晩報の考え方である。

 公平な寄付税制が確立されれば、介護という福祉サービスだって違った形になるし、教育のあり方もも大きく変貌する。すべての行政行為を寄付で賄おうとい うのではない。一部分から始めてその領域を広げていけばいい。別に寄付は地域活動に限定されるものではない。地震による復興事業や難民救済といった海外協 力もある。ただ多くの国民に払いやすくする仕組みをつくればよりよい社会の形成に役立つというものではないか。

 ●源泉徴収廃止は簡素化の一歩

 サラリーマンの源泉徴収が戦争目的につくられたことはけっこう知られるようになっている。そのため戦後のシャウプ税制が廃止を求めたが、今もって国民の 大きな議論になっていないのは残念なことだといわざるを得ない。自己申告の一番重要なのはまず年度末に自分で所得を申告するようになって初めて税の痛みを 知り、その使い道に関心を持つようになるという点だ。

 さらに複雑な税制だと計算の負担が大きいため、簡素な税制に戻るという効果もありそうだ。一番重要なのは寄付など所得控除だ。現在の税制では基礎控除と 扶養者控除、住宅取得控除が大きな部分を占める。それはそれでいいのだが複雑極まりない。しかも本来、独身であろうと子どもを3人持とうと個人のかってな のに税制面では大きな差別がある。

 萬晩報が考える控除とは、基礎控除を基本に教育、医療保健、住宅(金利)、寄付の5本建てである。それぞれかかった費用を収入から差し引いて所得申告す ることにすればそれほど難しいことにはならない。特に寄付税制が実現すれば、年度末に自らの社会貢献度を実感できるようになる。中期的にサラリーマンの税 負担が多少増えたとしても中身が変われば意識は確実に変わるのだ。

 1998年05月02日 脱法行為の積み重ねでしか成り立たない日本のボランティア
 1998年04月07日 納税者にとって気持ちのいい税率
 1998年03月15日 3月15日をサラリーマンの税金の日にしよう
 1998年02月11日 租税特別措置法で2倍払わされているガソリン税

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