2001年5月アーカイブ

2001年05月23日(水)萬晩報主宰 伴 武澄

 Good job! We Are proud of you, Prime Minister!

 小泉純一郎首相がまた日本の常識を覆し、ハンセン病に関する熊本地裁裁判の控訴断念を決断した。共同通信の編集局でスピーカーから流れる「控訴断念」の 速報を聞きながら、久々に体内の血が沸き立つ思いがした。ふつうの言葉で語りかける政治をこの国に取り戻した小泉首相が、今度は冷徹だったこの国の政治に 暖かい血流を取り戻した瞬間だった。

 信州南相木村の色平医師が2週間前に送ってくれたコラムを読みながら、読者のみなさんと歴史的なこの1日の残りを静かに過ごしたい。

●ハンセン病-予防法は廃止すれども

骨になっても まあだだよ......。

回復した人でさえ、病名を明かせない病気――それがハンセン病だ。

15年前、京都で学生だったころ、医学部の友人たちと瀬戸内海の島を訪れた。
高松市から小さな船で大島に渡り、そこの療養所、
青松(せいしょう)園の「元」患者さん方から、さまざまな若いころのお話を伺った。

かつて「らい病」とよばれ、(事実と異って)死に至る不治の病とされた。
手足や顔に変形が目立つ症状から、患者は「かったい」「くされ」などと蔑称された。

1931年制定の「らい予防法」によって、全患者が隔離対象とされ、
36年には地域から病者を一掃する「無らい県運動」が広がって、
警察力まで使って発症者全員が療養所に強制収容されたという。
「天刑病」「業(ごう)病」とまでいわれた元凶のひとつは、
差別意識を助長する隔離法、つまり当時の国家政策にあった。

敗戦により、全国の療養所には患者自治会が再建された。

74歳の「語り部」平沢保治(やすじ)さんにお会いした。
国立ハンセン病療養所・多摩全生(ぜんしょう)園の入所者自治会長だ。

13歳の時発病を宣告され、診察した東大病院の医師に
「軽症だから一年もすれば帰れる」とだまされて全生園に送り込まれた。
戦後、薬物療法によって病気が完治するようになっても、世間からの偏見は続いた。
「座っていた椅子を消毒されたり、全生園の人間だとわかると、タクシーを下ろされたり......」

「苦しみの中にある幸せを自分自身で感じられれば、人生に希望を持つことができる」
「歴史は歴史として正しく伝えなければ、その教訓は後世に生かされない」
「公教育の中で障害者と交流できる仕組みをつくれば、そこから信頼関係を育てていく
ことができる」
......「人生に絶望はない」と語る平沢さんの信念である。

94年、大谷藤郎氏(現高松宮記念ハンセン病資料館館長)が
「医学的、人権的に強制隔離は許されない。
らい予防法の隔離条項も削除する必要がある」
と日本らい学会で発言した。
この発言がきっかけとなって、
日本でもやっと96年4月1日にらい予防法は廃止された。
ハンセン病は完治するようになり、らい予防法もなくなった。

しかし血のつながりはあっても、肉親はいない。
「終わり」があっても、帰るところがない。
昔は「火葬場の煙になって出るよりほか、ここから外に出る方法はない」
といわれた強制隔離政策だった。
今はそうではないはずなのだが、死んでもまだふるさとに帰れない。
その思いを、ある入所者が川柳によんでいる。

「もういいかい」
もういいかい?
骨になっても
まあだだよ

いわれ無き偏見に対し、患者自治会は闘い続けた。
しかし、人間の業を見せつけられ、奪われてしまったものはいまだ取り戻せてはいない。
現在、全国15カ所の療養所には「元」患者さん約4500人が入所、
入所者の平均年齢は74歳になろうとしている。

偏見は無知の産物であり、無知は情報隠匿の結末であるという。

いつの時代にあっても、改めて再認識させられる。

医療者が「最前線で、患者とともにあること」の難しさを
色平さんにメールは mailto:DZR06160@nifty.ne.jp

2001年05月20日(日)萬晩報通信員 園田 義明

 ■持続可能な発展のための世界経済人会議
  ─World Business Council for Sustainable Development─WBCSD─

 ほとんど日本では報道されなかったが、昨年11月に東京で「持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)」の第6回総会が開催された。 WBCSDは持続可能な成長への産業界の貢献を目的に95年に発足し、現在世界各国の約150社の企業トップで構成されている。現在デュポンのチャール ズ・ホリデイCEOが会長を務め、3人の副議長の一人にはトヨタ自動車の豊田章一郎名誉会長が就いている。

 日本企業では旭硝子、デンソー、日立化成、日本原子力発電、鹿島建設、関西電力、キッコーマン、三菱グループ、三井物産、三井化学、NTT、日産自動車、セイコー、ソニー、太平洋セメント、帝人、東京電力、東レ、トヨタ自動車、安田火災が参加している。

 現在GMとトヨタは、このWBCSDの賛助のもとで持続的モビリティのための民間プロジェクトに着手している。このプロジェクトは、燃料電池自動車推進 システムの開発、燃料電池用燃料およびインフラの開発、燃料改質技術の開発、燃料電池の研究開発、水素吸蔵材の研究開発が含まれている。特に最近では、短 中期的燃料としてガソリンに似た属性を持つクリーン・ハイドロカーボン・フュエルに着目し共同開発に取り組んでいる。

 このWBCSDには、エンジニアリング大手ABB(アセア・ブラウン・ボベリ)、ダイヤモンドのデ・ビアスを買収したゴールド、「プラチナ」を支配しす るアングロ・アメリカン、銅・石炭・ウランのリオ・ティント、ドイツ化学大手BASF、バイエル等エネルギー企業が集結しているところに特徴がある。

 この欧米側メンバー企業を見ると、ロックフェラーグループ企業が極めて少なく、ロスチャイルド、モルガン系企業が多くを占めている。J・P・モルガン・ チェース誕生によりモルガン系企業が今後離散していくことも十分予測される。なぜなら異なる文化を有した金融資本と産業資本の融合には、過去失敗例が数多 く残されており、アメリカ内部での産業界の分裂にも繋がる要因ともなりえる。

 特に一部NGOからWBCSDも攻撃対象にされることもあるが、相互依存関係からグリーンピースやWWFは、WBCSDとの衝突は回避するだろう。彼ら のスポンサーが集結しているからである。これは、グリーンピースが上位100社からオイルカンパニーに絞ったことにも関連している。そして重要な点は、巨 大メディアもこの戦列に加わる可能性も無視できない。

 ■小泉政権の所信表明演説

 小泉純一郎首相の5月7日に行われた所信表明演説を振り返ってみよう。マスコミ各社がどういうわけか低公害車ばかりを報道していたが、まったくセンスを疑いたくなる。

 ─(以下所信表明演説)─

 私は、21世紀に生きる子孫へ、恵み豊かな環境を確実に引き継ぎ、自然との共生が可能となる社会を実現したいと思います。

 おいしい水、きれいな空気、安全な食べ物、心休まる住居、美しい自然の姿などは、我々が望む生活です。自然と共生するための努力を、新たな成長要因に転 換し、質の高い経済社会を実現してまいります。このため、『環境の制約を克服する科学技術を、開発・普及したい』と思います。

 環境問題への取組は、まず身近なことから始めるという姿勢が大事です。政府は、原則として全ての公用車を低公害車に切り替えてまいります。

『地球温暖化問題については、2002年までの京都議定書発効を目指して、最大限努力します。』また、循環型社会の構築に向け、廃棄物の発生抑制、再生利 用の促進、不法投棄の防止等に取り組みます。さらに、廃棄物を大幅に低減するために、私は、ゴミゼロ作戦を提唱します。例えば、大量のゴミの廃棄で処理の 限界に至っている大都市圏を、新しいゴミゼロ型の都市に再構築する構想について、具体的検討を行います。

 ■実行─ソニーの挑戦

 米世論調査会社ハリス・インタラクティブが、5月3日にまとめた企業の人気ブランド調査で、フォード(2位)、GE(3位)、トヨタ(4位)、GM(5位)をおさえてソニーが2年連続で1位となった。

 ソニーは、今年2月のビベンディ・ユニバーサルとのインターネットでの音楽著作権サービス「デュエット」の合弁事業設立に続いて、世界3位のシェアをもつエリクソン(スウェーデン)と携帯電話事業での統合を発表する。

 このソニーの欧州戦略は、日本企業の中でも際だっている。この戦略立案を支える部隊は、世界的にも数少ないトップエリートの社外取締役に支えられた取締 役会である。出井伸之会長自身もエレクトロラックス(スウェーデン)、GMに続いて食品・飲料大手ネスレ(スイス)の取締役会に新たに就任する。また、森 尾稔副会長も世界最大の米半導体製造装置メーカー、アプライド・マテリアルズと沖電気工業の社外取締役に就任する。

 そして4月27日の取締役会で、スイスのエンジニアリング大手、アセア・ブラウン・ボベリ(ABB)の前社長兼最高経営責任者(CEO)のヨーラン・リンダール氏(56)を社外取締役に起用することを決める。

 このヨーラン・リンダール元CEOもデュポンとそしてエリクソンの社外取締役であり、ソロモン・スミス・バーニー・インターナショナル(米)の国際諮問 委員会のメンバーである。今回のソニー・エリクソン事業統合の背景には、この取締役兼任のネットワークが有効に機能したようだ。なおABBの取締役会に は、昨年までラムズフェルド現国防長官(ギリアド・サイエンス会長、アミリン製薬社外取締役、サロモン・スミス・バーニー・インターナショナル顧問会議議 長兼任)やピーター・サザーランドWTO元事務局長(現ゴールドマン・サックス・インターナショナル会長、BPアモコ元会長)も就任していたが、サザーラ ンドWTO元事務局長もエリクソンの社外取締役であった。

 さてこのアセア・ブラウン・ボベリ(ABB)は、卓越した組織戦略を行うグローバル企業としても有名であるが、世界約140ヶ国に1,000社のグルー プ会社と約22万人の従業員を擁しており、スイス本社は135人だけで運営されている。主な業務分野は、発電所、電力転送、電力配布、輸送、環境および産 業分野の制御である。昨年、原子力部門を英核燃料会社(BNFL)に売却し、現在は、風力、マイクロガスタービン、燃料電池等の代替エネルギー開発に取り 組んでおり、小規模分散型電源への移行を進めている。

 また環境分野での欧州内のリーダー的存在であり、「持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)」の中核を担っている。

 さて5月13日付け日経新聞によれば、ソニーは2001年度中にアメリカでリサイクル事業に着手するようだ。パソコン販売が減速、製品価格や性能、サー ビス面で各社の差が縮小する中、海外でも環境関連の規制強化をにらんで下取り・再生利用まで一貫した事業基盤を構築し、買い替え需要を取り込むのが狙いで ある。

 大量生産、大量廃棄社会の象徴であったアメリカン・ウェイ・オブ・ライフが、永遠に続くはずがないことは世界共通の認識である。

 小泉政権の所信表明演説にある『環境の制約を克服する科学技術を、開発・普及し』21世紀の主役を担うべく行動を開始した、したたかなる企業の姿がここにある。(つづく)

参考・引用
ガーディアン、BBC、英エコノミスト、ロイター他海外メディア、
日本経済新聞、時事通信、共同通信、産経新聞、毎日新聞、朝日新
聞、読売新聞、NHK他日本メディア

World Business Council for Sustainable Development -WBCSDment
http://www.wbcsd.ch/
List of Members
http://www.wbcsd.ch/memlist.htm#top

 園田 義明さんにメールはyoshigarden@mx4.ttcn.ne.jp

2001年05月18日(金)萬晩報通信員 園田 義明

 ■米京都議定書離脱の波紋=米国連人権委員会落選

 5月3日、国連経済社会理事会(54理事国)による国連人権委員会のメンバー国改選が行われ、アメリカは1947年の同委員会創設以来初めて落選し、少 なくとも来年はメンバー国としての資格を失うことが確定した。また7日には、国際麻薬統制委員会(INCB)の委員改選でもアメリカは、落選しており、国 連内のアメリカの不人気ぶりが際立ってきたようだ。

 ブッシュ米政権による温暖化防止のための京都議定書からの離脱表明や、ミサイル防衛システムの早期配備構想などの政策が、EU諸国や途上国などの反発を呼んだ結果と見られており、ブッシュ政権に厳しい洗礼を浴びせかける内容となった。

 これに対してアメリカは、国連アナン事務総長の再三にわたる自制呼びかけにもかかわらず、5月10日、下院にて2億4400万ドルにのぼる国連分担金の滞納分を支払わないようとする予算関連法案の修正案を可決した。

 国連人権委員会の米国落選について、世界各紙が大きく取り上げるが、とりわけ中国側の反応が興味深い。中国メディアは、一斉に各国世論を紹介したうえ で、中国人権研究会の朱穆之名誉会長のコメントを掲載する。アメリカが長期にわたり人権を掲げて覇権主義的行為を行っていることについて、朱名誉会長は、 「正義感を持つ人々は早くから不満や反対を表明してきた」と指摘し、アメリカが落選したことにより、「人権の名を借りて覇権を推進する米国のやり方を支持 する人はいないことが十分に証明された」と述べた。天安門事件以後の鬱積した反米感情が一気に爆発したようだ。

 ■結束強めるEU-エシュロンとアンブレラグループ

 アメリカの衛星通信傍受システム「エシュロン」による情報傍受・分析で民間企業の動きなども対象としているとの疑惑を調査するため訪米していた欧州議会の「エシュロン問題特別委員会」は、5月10日、予定を早めて急遽帰国することになる。

 当初予定していた米国務、商務両省関係者との会談が直前になってキャンセルされ、中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA)との会談も拒否されたためだ。

 EU側は、ブッシュ政権が、ミサイル防衛構想推進の一環としてエシュロンの強化を図っているとみており、今回のアメリカ側の「門前払い」がEU独自の対エシュロンシステム構築の動きを加速させることになろう。

 EU側は、エシュロンの実際の能力は限定されているとしつつも、国益が絡む分野では、政府の情報機関が意識的に高度な経済関連情報を提供しているとし、産業目的に使われていることがあるとの認識を示している。

 エシュロンは、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国で編成されている。

 京都議定書問題における、非EUグループ=アンブレラグループの構成は、日本、アイスランド、アメリカ、ウクライナ、オーストラリア、カナダ、ニュー ジーランド、ノルウェー、ロシアの9カ国(オブザーバーとしてカザフスタンが参加)で形成されていることに注目すべきであろう。

 さてこのアンブレラグループに参加する日本は、エシュロンについては極めて不透明な存在になっている。EUからは、日本政府が何らかの形でエシュロンに 関与している疑いを持たれており、一方では青森県の米軍三沢基地内に1980年代以降に相次いで建設された衛星通信傍受用施設により、日本の外交関連や企 業の通信が傍受・分析対象となっているともみられている。

 5月7日から欧州各国の社会民主主義政党首脳らが出席する第5回欧州社会党大会がベルリンで開幕し、シュレーダー独首相、ジョスパン仏首相、ペーショ ン・スウェーデン首相ら20政党の幹部約300人が参加したが、イギリスのブレア英首相は総選挙の準備を優先し大会を欠席した。この欠席は、EUの限界を みせつけるものかもしれない。

 ■動き始めたEU外交

 EU議長国であるスウェーデンのペーション首相らEU首脳代表団は5月2、3の両日、北朝鮮を訪問し金正日総書記と会談を行う。日米欧の西側首脳としては初の訪問となる。帰国後にスウェーデンで開いた非公式外相会議で、北朝鮮へ技術支援を実施することを確認した。

 その第一弾として国際通貨基金(IMF)・世界銀行への加盟手続きなど金融経済分野の助言とエネルギー復興への技術支援の2分野を対象に月内にも専門家を派遣する。

 また3月にストックホルムで行われたEU首脳会議でも、ロシアに対して環境プロジェクトの資金として最大1億ユーロを融資することで原則合意している。

 地球温暖化防止会議のプロンク議長(オランダ環境相)は京都議定書の運用ルール作りを急ぐため、主要各国との個別会談に乗り出すことを表明しているが、 特に対象は、欧州連合(EU)、日本、アメリカ、ロシア、オーストラリア、中国、イラン(途上国グループ代表)などとみられており、特にアンブレラグルー プへの対応が焦点となりそうだ。

 特に日本に対する交渉を強化しており、金総書記がEU代表団に表明した2003年までのミサイル発射凍結方針は、日本に対する駆け引きに使われそうだ。

 ■火花散るグリーンピースと米オイルカンパニー

 4月5日、環境保護団体グリーンピースが最新の米企業ランキング「フォーチュン500」の上位100社に対し、1週間以内に米政府の方針に反対する意思 表示をしない限り、企業名を公表して消費者に不買運動を呼び掛けると通告したが、4月26日に「GREENPEACE TO TARGET US OIL COMPANIES(グリーンピースは米オイルカンパニーをターゲットに)」を掲載し、100社の実名と回答内容を公表する。

 このリストには、米国最大のロビー団体であるUSCIB(The US Council for International Business)との関係も明記されているが、なかなか鋭いところをついているようだ。

 事実USCIBは、4月11日にブッシュ支持を表明しておりグリーンピースのターゲットがここに絞られたようである。このブッシュ大統領に宛てた親書の 中では、アンブレラグループとの密接に協調していくことが明記されており、日本企業に対しても相当な圧力がかかっているようだ。

 さて回答した企業の中にも態度を明確にしていない企業も存在する。特に注目されるのは、USCIBの主力メンバーでもあるフォードとデュポンの動向であろう。

 フォードは、5月3日、ウィリアム・クレイ・フォード・ジュニア会長自らが、地球温暖化に対して積極的に取り組む姿勢を示した。ブッシュ政権へのコメン トは避けたが、米産業界すべてがブッシュ政権を支持しているわけではない。またデュポンもグリーンピースに対してこれまでの温暖化問題への取り組みと実績 を回答している。

 このデュポンのチャールズ・ホリデイCEOが会長を務める国際的な評議会がある。ここに環境分野に積極的に挑みながら、21世紀の主役を担う企業が集結している。(つづく)

参考・引用
ガーディアン、BBC、英エコノミスト、ロイター他海外メディア、
日本経済新聞、時事通信、共同通信、産経新聞、毎日新聞、朝日新聞、読売新聞、NHK他日本メディア

GREENPEACE TO TARGET US OIL COMPANIES
http://www.greenpeace.org/pressreleases/climate/2001apr26.html
Climate Change and the US Corporate 100
http://cybercentre.greenpeace.org/climate/summarizeCorporate100

United States Council for International Business
http://www.uscib.org/index.html

 園田 義明さんにメールはyoshigarden@mx4.ttcn.ne.jp

2001年05月14日(月)
  中国寧波通信員 岩間 孝夫

 中国では5月1日から7日までの7日間、官公庁と多くの国有企業や民間企業が労働節休暇を実施した。この7日間の連続休暇は春節(旧正月・1月か2月) 休暇、国慶節(建国記念日・10月1日)休暇と共に昨年から中央政府の奨励により大型化が始まったもので、休暇を利用したレジャー活動による消費の活性化 が大きな狙いであるが、中でも季節の良い労働節休暇は政府の狙い通り多くの人が活発に移動し、今年は約6000万人の人々が出かけ各地の観光収入は約 200億元(約3000億円)、海外への旅行者も20万人程あったとみられている。

 ●成都と九寨溝

 私も今回この休暇を利用しパンダの故郷としてや麻婆豆腐など辛い料理で日本でも知られる四川省へ出かけ、成都や特異な生態系と世界でも稀な自然景観を有することから世界自然遺産に登録されている九寨溝を見学した。

 成都は四川省の省都で、三国時代(三世紀)には蜀の都として栄え劉備玄徳や諸葛孔明、杜甫などにゆかりの深い古都であり、古くから「天府の国(自然に恵 まれた土地)」と呼ばれている。海抜500mにあり、人口は約1100万人。上海や広州など開発の進んだ沿海地区の大都市とは違った古都らしい落ち着いた 雰囲気が漂っている。麻婆豆腐発祥の地でもあり初めて麻婆豆腐を人々に提供した店は今でも地元市民でにぎわっている。

 九寨溝は成都から約400km離れた四川省西北部の高原に位置し、海抜2000mから3100mの間に地球が300万年かけて作り上げた6万ヘクタール の幻想的な空間が広がっている。成都からは車で約10時間かかるが川沿いに走る途中の景色も大変素晴らしく、まるで車で三峡下りをしているような気分にな れる。また行く道の所々で高山病対策のスプレー式缶入り酸素が売られており、いかにも奥地に入っていく感じがしてわくわくする。

 九寨溝には広大な原始林と一年中雪をいただいた高山を背景にエメラルドグリーンやコバルトブルーに輝く澄みきった水をたたえた大小さまざまな108の湖 が点在し、色と景観が実に見事だ。四季折々の変化に併せそれを映し出す湖面の色は見る人を魅了してやまない。1100mの高度差の中で河岸段丘になってい るため湖と湖の間には多くの瀑布が形成されており、最大の瀑布は幅270m高さ25mある。これらの瀑布から流れ落ちた水は全長753kmの岷江となり、 その岷江は支流中随一の水量を誇りながらやがて揚子江に流れ込む。つまり九寨溝は揚子江の源流なのだ。

 九寨溝が景勝地として世に知られ出した歴史は新しく、中国でも70年代の後半からなので日本ではまだあまり広く知られていないが、九寨溝の近くにある黄 龍と共に1992年に世界自然遺産登録されており、少し遠いのが難であるが機会があれば是非その素晴らしい景観をご覧になることをお勧めしたい。2年後に は成都から飛行機で行けるようになるそうだ。

 九寨溝が紹介されているホームページ http://urawa.cool.ne.jp/kanpoya/newpage310.htm

 ●中国的な出来事

 今回私は成都までは個人で行き、成都から現地までは成都の旅行会社がセットする3泊4日のツアーに参加した。私以外は中国各地から集まった親子連れの家 族や数組の男女カップルなど20人ほどの中国人であったのだが、現地に着いてホテルにチェックインする時、まことに中国らしい出来事があった。

 参加者は各自の地元旅行会社でツアーの申し込みをしており、その際ホテルはバス・トイレ付き2人一部屋の標準室と聞かされまた契約書面にもそう書いてあ るのだが、一泊目は三人一室、移動後の2泊目は四人一室しかもバス・トイレのない一般室に泊まるよう一方的に変更されたのだ。

 ホテル側がかき入れ時により多く稼ぐため無理やり客をぎゅうぎゅうに詰め込んだのだ。なにぶん限られたなかで6000万人が移動するのだから恐らく全国 各地で同じようなことが起こっていたに違いない。当然客は大騒ぎし、毎晩他のツアー客も交えあちらこちらで客とツアーガイド、ツアーガイドとホテル、客と ホテルなどの間で激しい罵り合いや交渉や条件闘争が続けられさまざまな形で収まっていったが、この国では声の大きさと押しの強さと一歩も引かぬという断固 とした態度が有利な結果を導き出すことを再確認した。

 このようなことは商売上でも往々にしてあり、あらかじめ契約しているにもかかわらず品薄とみると売り手が急に値上げを要求してきたり、商品がだぶつき気 味だったり相場が下がり気味だと買い手が値下げを要求し、要求を飲まなければ平気で契約をキャンセルしてくる。まあこれも中国の一面である。

 ●都江堰

 さて、九寨溝に源を発した水が岷江に流れ込み、大きな川となって四川盆地の入り口にたどり着くあたり、海抜700mで成都から約60kmの所に今から約2200年前に作られ今でも人々に大きな恩恵をもたらせている都江堰がある。

 成都平野に住む人々は古来1000年以上の間、岷江の増水期の洪水と地理的要因による渇水に悩まされ続けてきた。その成都平野を今日のような天府の地に 変えたのは戦国時代(紀元前三世紀)の蜀の郡守であった李氷親子である。二人は民衆を率いて水量が多く流れの急な岷江の中に小山があったり曲がりくねった りする当地の自然の地形を巧みに利用した堰を作り、岷江にそのまま流れ込む外江、成都平野に流れ込む内江の二つの流れに分けた。

 堰は一つだけでなく補助的なものがまだあり、いったん内江に入って余った水が再度岷江に排出されるよう、更には曲がりこむ水流を利用し内江に洪水の原因 となる砂礫が滞積しないようにも設計されている。これらの結果、岷江の水は増水期には4割、渇水期には6割が安定して内江を流れるようになり、それ以来成 都平野は洪水や渇水のない肥沃の土地として2000年以上人々に恵みを与え続けるようになった。都江堰の完成により当時の蜀の人口は2倍になったといい、 人々は堰のほとりの高台に廟を作り李氷親子を神のように祭った。

 このように書くと都江堰の建設は簡単なことのような感じがするかもしれないし、また現在の技術であれば簡単に出来る事であるが、現地に立ち岷江の水量の 多さと流れの早さを目の当たりにすると、2,000年以上も前によくぞここまで完璧に成し遂げたものと心から感心してしまうし、更に何より感心するのは見 事なまでに自然と調和していることである。全く自然を痛めつけることなく、自然とその原理を活かし、自然と調和する中で人々に福をもたらしている。都江堰 の一角に鄧小平の書になる「造福万代」という言葉が掲げられていたが、誠に言い得て妙なる言葉だと思う。

 都江堰が紹介されているホームページ http://www.kofucci.or.jp/cci/keizai/seito/tokoen.htm

   ●八田與一と李氷親子

 たまたま2年続けて5月の連休に先人の築いた偉大な水利事業を見た。去年は日本人技師八田與一が心血を注いで作り上げた台湾南部台南県にある烏山頭ダムに行き、その時のことは「台湾で最も愛される日本人―八田與一(続編)」http://yorozubp.com/0005/000509.htmで書いた。

 両者に共通するのは、事業の全体構想が極めて自然の理にかなっており自然を痛めていないこと、将来も含めた人々の生活を向上さすため当時としては技術的 に大変困難だと思われたことを不退転の決意でやり遂げたこと、結果に於いて全ての人々に恵みを与え建設の指導者であった彼らがいつまでも土地の人々から神 様のように慕われている事などだ。

 ひるがえって長良川河口堰、諌早干拓事業、中海・宍道湖淡水化事業など、日本の現代の水利事業は余りにも自然を破壊する部分が多いように思う。公共事業という名の建設事業が多くの地域で「産業化」してしまっている一例であろう。

 ●平成は後世に何を残すのか

 64年間の昭和が終わり平成も12年が過ぎた。昭和の時代に私達は「造福万代」として長く後世から感謝されるものを果たしてどれだけ残したのだろうか。 むしろバブルに向かって突き進んだ最後の10年間は後世に顔向け出来ない「造災万代」とも言える事柄が加速して増えたのではないだろうか。

 インターネット上のホームページ「リアルタイム財政赤字カウンター」http://home.att.ne.jp/wind/polisc/politics/fin/で は普通国債残高と日本全体の長期債務残高の総額及びそれぞれ国民一人当り金額がデジタル表示されており、日本という国の借金が毎秒約70万円刻々と増えて おり、総額が既に647兆円を超えていることが一目でわかる。これも昭和からの引継ぎだ。まだご覧になってない方は是非ご覧頂きたい。

 世論調査では今回発足した小泉内閣の支持率が圧倒的に高い。構造改革、財政再建など公約通り大いに取り組んでもらいたいと思う。

 それと同時に重要なことは国のありようを政治家まかせにすることなく、国民の一人一人が我がこととしてあらゆる機会を見つけて参加し見守ることであり、 自分達の快楽や一時凌ぎのつけを子孫につけ回すのではなく、我が身が血を流してでも後世により良い社会を引き継ごうとする視点からものごとを判断し実行し ていくことであろう。

 今からでも決して遅くはない。国や地球の歴史はまだまだ続くのだから。

 岩間さんにメールは koyoyj@mail.nbptt.zj.cn

2001年05月10日(木)
米東西センター北東アジア経済フォーラム上級研究員 中野 有

新潟から2時間強のフライトでハルピンに行ける。ごく最近までハルピンは、日本の近くに位置しているにもかかわらず直行便がなく北京経由など迂回を強いら れ、遠い最果ての存在であった。それが、新潟・ハルピンの直行便のおかげで、ローカルtoローカルの醍醐味が味わえる。日本海を挟み数字上では世界で最も 豊かな国から、中国でも比較的遅れた地域への旅である。恐らく、これほどの短時間で、10分の1の所得格差がある地域は、世界広しといえども稀であろう。

これ程の経済格差があるから、さぞかし中国は貧しいだろうと考えてしまうが、実はそうではない。毎年、中国を訪問する度に中国の進歩に脱帽させられる。

ハルピンの中心街は、ロシア風の重厚な建造物と石畳がマッチし、ヨーロッパに来たかと思うほど異国情緒が漂っている。また、戦前の日本の大和ホテル等の歴 史的な建物が街に調和している。ハルピンから長春への3時間の列車の旅も大陸のおおらかな空気が感ぜられ悪くない。長春の関東軍の建物は大阪城を彷彿させ る。

これらの立派な建物を見る限り戦前の日本は壮大な国家プロジェクトとして、本格的に旧満州の開発に取り組んだと考えられる。20世紀前半の日本の歴史の真 実を学ぶ機会がなかっただけに、戦前の日本の立派な建物に接したときのインパクトは想像以上である。当時の日本人の壮大な夢が伝わってくると同時に、大東 亜共栄圏が旧満州地域に与えた社会的影響と太平洋戦争への道を考えさせられる。

長春にある吉林大学は4つの大学が合併したことで、中国最大の7万人規模のマンモス大学になった。広大なキャンパスには如何にも教育に投資を惜しまないと いう近代的建物や歴史的な建物が並び、学生も生き生きしている。長春は文化・学術都市として着々と進歩している。吉林大学の北東アジアの研究を担う王勝今 院長は、日本で学んだ大変な親日派である。

細菌兵器の開発で有名なハルピンの731部隊の跡地を訪れた。悲惨な戦争の傷跡に触れ考えさせられるものがあった。また当時の弱肉強食の冷酷な国際情勢の 中で、日本が人権を無視した限られた選択を強いられることになった背景に興味がわいた。現地の観光ガイドさんは、「百聞は一見にしかず」の如く戦前の日本 の行為に、できる限りバイアスを通さず見ることの重要性を指摘した。文章で表現された歴史の記述でなく現場でその臨場感を味わって欲しいと訴えた。

歴史は未来を照らす鏡である。明確なビジョンを描くためには、歴史を学ばなければいけない。その学び方であるが受験勉強のための学習でなく、歴史的建造物や戦争の傷跡に触れ、そこで考えることが歴史を学ぶきっかけになるのではないだろうか。

米国の「フォーリンアフェアーズ」に掲載された戦前の論文には、戦争回避のために書かれた、まさに「ペンは剣よりも強し」の気概が込められたアメリカ人の みなら日本人の優れた数多くの論文がある。混沌とする国際情勢の中で論じられたビジョンを検証することで多くのことが学べ、長期的ビジョンの構築に役立つ と思われる。

教科書問題で周辺諸国との温度差が表面化している。こんなときこそ、歴史を学び考えるにあたり、旧満州に旅し、見聞することが重要であるだろう。

今回、新潟―ハルピンのローカルtoローカルの旅をし、所得10倍の日本が本当に豊かだろうかと考えさせられた。子供のころにイメージした貧しい中国と現在の中国は違う。欧米に旅するのもいいが今回のローカルtoローカルの旅は実に有意義であった。是非お勧めしたい。

中野 有さんにメールは mailto:a5719@n-koei.co.jp

      国本が脅かされても真相を究明したい
2001年05月08日(火)中国情報局  文 彬 

 2000年5月、国民党を破り新進党政権が発足してから、廉潔と情報公開を前面に掲げる陳水扁総統は、真相を追究する世論が高まるなか、自らの肝いりで 最高検察署内に特別調査チームを編成させた。また、軍や政界に妨害されないよう、特別調査チームに様々な特権を与えた。7月31日の特別調査チーム発足式 で陳水扁は「たとえ国本が脅かされても真相を究明する」とメディアの前で約束した。

 そして4ヶ月後、特別調査チームは中間報告書を提出し、収賄、公文書偽造、軍機密漏洩、汚職などの疑いで前海軍総司令官を含め、大物海軍将校13名を台 北地方検察署に書類送検した。中間報告によれば、海軍購買室が行なってきたほとんどの武器購入には、毎回必ず何らかの形で不正があった。多額の不正利益に 政界、軍部、時にはマフィアまでもが群がり、軍需ブローカーと結託したり、相手勢力を牽制したりのし烈な戦いも日常茶飯事だった。そこでは軍の秘密も、政 界の動きも取引のために使われていた。

 この間、さらにショッキングな情報がマスコミに大きく取り上げられた。前総統の李登輝やその側近もフリゲート艦事件に手を染めたことがあり、億台湾ドル 以上の資金が側近の銀行口座から李登輝の娘が経営しているアメリカンスクールに流入していたということだった。李登輝側はこれを全面否定したが、「火のな いところに煙は立たぬ」が目下の真実のようだと、メディアはそれを裏付ける証拠を取ろうとしている。

 だが、特別捜査チームが尹清楓暗殺事件とフリゲート艦事件について手に入れた確実な情報はあまりにも少なく、この2大事件は依然として五里霧中の状態にあり、世論の批判も厳しさを増すばかりである。

 最近になって袋小路に入りこんだ特別調査チームは、パリの裁判に期待するようになった。パリの裁判でデュマやシルパン被告らが何らかの新しい事実を告白 するのではないかと期待しているのである。そして、法務部顧問の謝聰敏はフランスやドイツに赴き関係者と直接会って情報を集めたりしており、また、外交 ルートを通してフランス政府に働きかけ、ジュンクール夫人が言及したリベートを受けた人々のリストを入手するようと政府に呼びかけている。だが、現在はど れも難航している。

 ▼薬なき腐敗体質

 香港の有力誌《亜洲週刊》(URL)は、今年の9月号で軍用自動車の購入に絡む軍、政界および軍需ブローカーの癒着の新しい構図を指摘した。

 台湾の軍に使われている約6,400台の自動車を間もなく更新することになり、すでに10億台湾ドルの予算が組まれている。表面では外車を買うか、それ とも国産車を買うかについて議論されているようだが、水面下ではすでに激しい攻防戦が繰り広げられ始めている。外国企業と癒着している勢力と国内企業に幅 をきかせる勢力がいるからである。そして、いままで主導権を牛耳ていた国民党系の政治家が民進党の政治家に取って変わったのだ。

 軍需購買に関する不正行為を見てきた軍の関係者は、暴利をむさぼる政治家の心理は同じだ。「青」(国民党)であろうと、「緑」(民進党)であろうと変わ らないと冷めた口調で言ったという。陳水扁政権が直面しているのは決して歴史の問題のみではないことだけは確かである。(了)

【主な登場人物の整理】

■ローランド・デュマ:元フランス外相、フランソワ・ミッテラン元フランス大統領側近
■クリスティン・ジュンクール夫人:デュマの元愛人、「共和国の娼婦」と「オペレーション・ブラボー」の著者
■アルフレド・シルパン:エルフ・アキテーヌ社元ナンバー2
■汪傳浦(アンドリュー・ワォン):トムソンと台湾の海軍に太いパイプを持つ兵器ブローカー
■リーリー・リュウ:自称香港在住の女性実業家、北京工作に携わった工作員
■エドモンド・クアン:香港出身のカナダ籍ビジネスマン、台北工作に携わった工作員
■謝聰敏:台北総統府国策顧問、法務部顧問
■尹清楓:フリゲート艦の購入実務を担当する海軍購買室の大佐。1993年10月暗殺されたが、事件の深層が今も解明されていない。
■郭力恒:フリゲート艦の購入実務を担当する海軍購買室の大佐。機密漏洩の罪で服役中。尹清楓暗殺事件に参加した疑いが深かったが、本人はあくまでも否認。

文さんにメールは mailto:bun@searchina.ne.jp

2001年05月06日(日)萬晩報コナクリ通信員 斉藤 清

◆ポルトゥドゥナミュール駅

ベルギー・ブリュッセルの、地下鉄ポルトゥドゥナミュール駅の地上出口そばにあるファーストフードの店「クウィック」の前。春とは名のみの小寒い夕暮れ。 夕方6時の約束を5分ほど過ぎて、坂道の向こうから手を振る長い黒髪の若い女性アンヌの姿。急ぎ足で距離を縮め、「だいぶ待ちましたか」の問いに、「いい や、5分前に着いたばかり」と応える男。3カ月ぶりの再会ということであれば、単なる知人ではあっても、当然のように互いの頬を合わせる挨拶をして、ある いは抱き合ってもいいくらいのものだけれど、照れくささから、その習慣にはいまだになじめず、アンヌのタイミングをかわしたまま、簡単にごぶさたの言葉を 交わして握手をする日焼けした東洋の男。

彼女の黒いコートの肩には異様に大きなスポーツバッグ。しっかりとした体つきとはいえ、そのかしげ具合からすればかなりの重量にみえるものの、男がおずお ずと差し出した手を、ただ一言、「いつものことですから」とにっこり微笑んで軽くいなし、ゆるい坂道を先だって歩いていくアンヌ。彼女の後を追い、あるい は肩を並べ、暮れかかった街の石畳を歩く中年の男。

◆アフリカンダンス教室

古い建物の2階のドアを開けると、そこでは15人ほどの白人女性たちが、それぞれのいでたちで軽い準備運動をしていて、アンヌが紹介するその男の方へ顔を向け、さりげない会釈。男は一世一代の笑みを浮かべて、とまどいながらも「はじめまして」と声をかける。

アンヌが、「飽きてしまったら、そのあたりを散歩してきてもいいのよ」と男に話している間に、縮れ髪をていねいに編んだ恰幅のいい黒人男性が入ってきて、 彼女がかついできたバッグから取り出したタムタム(太鼓)を受け取り、そして東洋の男を一瞥。アンヌが、「このひとは今朝ギニアから着いたばかりで、今日 はみんなのダンスを見学に来たの」と紹介すれば、「マリのシディキ・カマラです」と、右手を差し出して男の手を握る。男は、彼の手の厚みと、手のひらの一 部にできている厚く盛り上がったタコに触れて、思わず「すごいですねぇ」とうなる。

パーカッショニストのカマラ師と助っ人の黒人が、タムタムをズンタカタと叩くと、踊り手の女性たちが部屋の中央に集まり、まずはギニアのマリンケ族伝来の カサのリズムで舞い始める。黒い紗のドレスのアンヌは、低音を受け持つ中太鼓をバチで叩いてリズムを刻む。流れが盛り上がりピッチがあがってくると、白い 歯を見せて笑顔を浮かべ、踊り手たちの動きを追いながら嬉しそうに身体を揺らす。踊り手たちが縦横に飛び、はじける。

男は、ギニア人女性の踊る伝統舞踊は、アフリカンミュージックの源流地帯といわれる高地ギニアの村々で何度も見、その動きの激しさと鋭さ、そしてあふれる エネルギーにはいつも驚かされているけれど、白人女性の踊るアフリカンダンスはまったく初めてのことで、多分に昇華されたなまめかしさを感じつつ、女性た ちのやわらかな動きに目をうばわれている。ステップを踏む衝撃、跳躍、腕の投げ出し方、腰の動き、すべてがしなやかで繊細。高地ギニアの村の広場で、砂埃 を舞い上げて踊る黒人女性たちのダンスとは、その迫力に圧倒的な相違があるものの、それでも郷愁を誘う目の前の踊りに、男は狭くなった地球を感じ、乾季の 枯れ野原を吹きすぎる灼熱の風を身近に想いおこしている。

◆バマコの空港喫茶室

昨年の暮れのこと、男はパリからコナクリへ向かう飛行機の中にいた。午前中にパリを出て、明るいうちにコナクリへ着けるはずの便だったものの、都心のホテ ルからシャルルドゴール空港に着いてみれば、出発時刻案内の表示さえまだ出ていず、日をまちがえたかと男は首をひねる。カウンターで確認すれば、出発時刻 がすでに午後へと変更されていて、その時点ですでに4時間程度の遅れ。もっとも、それはよくあることで、今日のうちに飛んでくれるといいな、と呟きながら 男はカフェへ向かう。そして、充分に待ちくたびれた後で、男の乗ったエールフランス機はバマコ、コナクリへ向けて離陸。

この日、この便の経由地点となっているマリ共和国の首都バマコでは、ギニアとリベリア、シエラレオネ3国の国境問題について、西アフリカ諸国経済共同体 (ECOWAS)のサミットが開かれていて、各国の首長クラスを乗せた飛行機の出入りのために、一般機の離着陸が制限されていた。

日が沈みかけた時刻、男の乗った便はとりあえずバマコへ着陸したものの、機体の移動が許されずに長時間の待機。バマコで降りるマリ人、異邦人もしびれを切 らしきった頃、首長を乗せた隣国の飛行機が飛び立ち、乗客たちは、空港ターミナルからはかなり遠い場所で解放される。離陸時刻が決まるまで、喫茶室で待て との指示。

他の機のジェット噴射を避けながら、空港ターミナルへ向かって歩く途中、男の近くにいた白いTシャツの女性と視線があう。長い黒髪をかきあげながら、目で 挨拶を返す落ち着いたその女性は、顔の表情、たおやかさから、あるいは日本人かもしれないという感じはしたものの、それはきわめて稀なことなので、男はと りあえず英語で、「コナクリへ行かれるのですか」と尋ねてみる。きれいな英語で「そうです、初めてなのです」という答え。これは日本人の反応ではない。

空港の喫茶室で、支給されたビールを飲みながら、男のかなり破綻のあるフランス語を気遣って、「英語にしましょうか」というその女性は、ベルギー人。その 名はアンヌ。 韓国人の両親から生まれた後ベルギーで育てられ、出生地ソウルのことは何も覚えていないという。「いやフランス語で続けましょう」と、男はそれが相手に対 する義務ででもあるかのように繕ってはみたものの、その実、英語よりはふだん使いなれたフランス語のほうが、まだ会話がしやすいことを彼自身がよく知って いるだけのこと。

アンヌは、擦り切れたセーファーフラン札を1枚見せて、去年このバマコに滞在した時の残りだという。アフリカン太鼓(Djembe)の国際的な指導者と目 されているギニア出身のママディ・ケイタ師のブリュッセルの教室に、彼女はいる。去年は、マリのバンバラ文化圏で太鼓の修行をしていた同窓の日本人パー カッショニストを訪ねたものらしい。今年は、その彼がコナクリにいるという。(めるまが「Gold News from Guinea」から=つづく)
斉藤さんにメールは mailto:BXZ00155@nifty.com
Gold News from Guineaのバックナンバーはhttp://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000005790


2001年05月04日(金)萬晩報主宰 伴 武澄

 福島県郡山市のARU・安積ライスファーマーユニオン代表の安藤嘉雄さんからメールが届いた。安積と書いて「あさか」と読む。筆者はここからときどきコ メを送ってもらっている。コメの宅配便にはいつも安藤さんが書いた「産直だより」が入っている。季節ごとの農作業や国が抱える問題などをワープロで打ち込 んだものだが、平易な文章ながら核心をついた読み物となっている。きょう届いた産直だより「安積野」72号を転載したい。

 ●産直だより「安積野」平成13年5月号=第72号

 今年の冬は何十年ぶりの大雪で、3月末日まで雪が降っていましたが、4月になると一転して雨(雪)が降らなくなってしまいました。3月20日過ぎに一時 畑が乾き、ジャガイモの種を蒔ける時期があったのですが、時期を逸してしまい雨と雪に降られてしまいました。4月に入るとイネの苗作りに忙しく私たちを当 てにせず、母が2、3日一人でジャガイモの種まきをしてくれました。

 3月末の降雨(と雪)前に播種した種芋は順調に発芽しましたが、4月になって蒔いた種芋は、生育が遅れています。十分に根が伸びる前に日照りにあってし まったようです。まだ正式な発表はありませんが、この辺では、4月は観測史上最低の降水量になってしまいそうです。大雪を喜びつつも苦しみ、春先の雪に困 惑し、今度は日照りに困っています。

 幸い安積野は、猪苗代湖の豊富な水に恵まれ田んぼの水には困りませんが、同じ郡山市でも、東部の阿武隈山系は水不足で、田んぼの代掻きが出来そうもあり ません。5月になって早々にある程度の雨が降らないと困る地域が出てきます。天候の振れが大きすぎて、農家は大変困っています。今後の天候に期待するしか ありません。

 ●セーフガード

 ところで、3月号で取り上げたセーフガードがいよいよ発動される運びになりました。ネギ、シイタケ、イ草の3品です。私は同じ農業者として喜んでやりたいところですが、疑問でなりません。セーフガード(緊急輸入制限)は3年間までは許されるようですが、今回はとりあえず200日だそうです。

 一定量を超える部分に高い関税をかけるだけですので、市場価格をどれだけ引き上げられるのか疑問に思いますし、200日で(3年でも)経営改善できるのならとっくに出来ているはずです。まあ、わずかな時間チョット一息といった程度のことです。輸入農産物を減らして食糧自給率を高めるには、抜本的な対策が講じられなくてはなりません。

 一度離農したり、なくなった産業を復活させるのは容易なことではありません。もっと危機感を持って真剣に取り組んでいかないと、国民の食糧にも不安を持 つ国になってしまいます。いや、現に危機的な状況なのに気付かないしのか無視しているのか・・・、とりあえずこれ以上さらに自給率を低下させない方策をと らなければならないことが望まれます。

 ●自民党総裁選

 さて、今月号では小泉内閣の誕生について、私なりの感想等を述べてみたいと思います。今回の自民党総裁選では、最初の頃はほとんどの人が橋本元総理大臣 が勝つのではないかと思っていたのではないでしょうか。もちろん橋本さんが勝つことを望むからではなく、望まないが数の論理から橋本さんが勝つという見方 が大半でした。しかし結果的には、地方の票が予想を遙かに超えて小泉さんに集まりました。

 自民党員だけの選挙ですが、政治家よりも一般大衆の方が良識があることを裏付けたように思いました。小泉氏に対する支持の理由は二つあると思います。一 つは、橋本派(=経世会)支配に対する嫌悪です。小泉氏の言う派閥に左右されない政治に対する期待というところでしょうか。二つ目は、財政再建だと思いま す。景気回復最優先で赤字国債を乱発し続ける姿勢に国民が「ノー」という答えを出したのではないかと思います。

 多くの経済評論家が景気が良くなりさえすれば国の財政は良くなると言っていますが、赤字国債を乱発しなくとも景気は良くなると思います。国も企業も財務 体質を良い状態に保って堅実な経営に心がけたら、好景気は早くやってきますが、赤字国債で支えられる見せかけの景気保持作を続けていては、いつまで経っても企業の体質強化が図れないですし、国の財政赤字が景気の足を引っ張ってしまいます。景気など所詮バブルに過ぎません。

 伸びそうな国に世界中の投機資本が集まって、株が上がり見かけの資産が増加し利益が生まれ、所得が増えたり新たな投資が行われたりと、経済が良い方に回 転するだけです。世界の投機資本(現在は海外に投資されている日本の資本も含め)に無視されている間は、悪あがきせず、質素倹約に勤め体質改善を進めて じっと耐えている方が早く景気の流れを呼び戻すことになるはずです。

 一般国民の感性は、鋭くそのことを見抜いています。だからこそただ一人財政再建を訴えた小泉氏に人気が集まったのだと思います。小泉氏の人気にはその他 にも様々な理由があるでしょうが、細川政権の時と同じく、期待されただけで無惨に砕けてしまうようなことにならないことを祈りたいものです。

 小泉氏の党三役や閣僚人事には、選挙の時の主張が見られますが、最初にどんなことを言うのかと思っていたら、憲法九条を変えるのには期が熟していないから、総理大臣を直接選挙で選ぶように憲法改正をやりたいなどと言っていました。

 確かに、現在のように自民党内での多数派工作で選出されるのはほとんどの国民が納得していませんが、ヒトラーや横山ノックのような人物が選ばれてしまう 危険性は否めません。そこまでいかなくとも、減税など、目先の人気取り政策を公約にする候補者が乱立することでしょう。政治家の人間的本質ではなく、演技力やタレント性で選ばれる可能性も高くなってしまいます。

 そこで今回の自民党の総裁選を参考に、日本独自の選挙制度を考えてみてはどうでしょうか。

 (1) 立候補できるのは国会議員と各県知事のみとする。
 (2) 国会議員と各県知事は各一票の投票権を持つ。
 (3) 全選挙民の投票により、国会議員と各県知事の総数と同じ数を比例分配する。

 というような方法はどうでしょうか。

 どこかの段階で上位二~三人に絞り込むことも必要でしょうが、こんな方法なら民意も反映できますし、衆愚に対する危惧も取り除かれるのではないでしょう か。この「安積野」紙上で叫んでいても何とも致し方のないことですので、インターネットでも使ってどこかに投書でもしてみようかと思います。まあ、私ごと きが考えることなどとっくに議論されているのかも知れませんが、お金もさしたる手間もかかりませんのでやってみることにします。

 いよいよ田植えの季節です。忙しさに拍車がかかりますが、秋の豊作を夢見て頑張ります。消費者会員さんからのご意見やご感想などお待ちしています。お気軽にお寄せ下さい。(産直だより「安積野」平成13年5月号=第72号)



 おいしい福島の産直米は安積ライスファーマーユニオンから

 〒963-0126 福島県郡山市三穂田町山口字前芦ノ口98
 安積ライスファーマーユニオン代表  安藤嘉雄
 申し込みはメールまたはTEL 024-953-2780 FAX 024-953-2781

 安藤さんにメールはmailto:aru@oregano.ocn.ne.jp

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