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偽装列島−日本

2007年11月28日(水)
萬晩報主宰 伴 武澄

 マクドナルドまで期限切れのサラダなどを売っていた。昨日のニュースである。

 マックはつくり置きで調理後、5分以上経つとその商品は捨てられる。かつてそう聞いたことがある。もったいなと思ったが、「つくりたて」を食べさせるのがマックの戦略だった。そんなマック店が一連の食品偽装に手を染めるとは思ってもみなかった。

 明日、11月29日は「肉の日」なのだそうだ。「いいにく」の語呂合わせである。吉兆にとってどこの牛肉であっても、「三田」「但馬」で通っていたのだから、何をかいわんやである。

 しかし一方で、なぜ食品偽装がこうも連発するのか消費者としても考え直さなければならない。われわれは必要以上の「品質」をつくり手に求めてはい ないか。そんな消費者の嗜好に迎合するかのように、つくり手は品質や産地について過剰なまでのこだわりをみせる。そんな図式は考えられないだろうか。

 その結果、たった1日ぐらいの消費期限のごまかしで社会的鉄槌を受けてしまうのだ。

 松阪牛がうまいと、誰が言い出したのだろうか。うまい肉が松阪育ちで、口伝てに牛肉といえば「松阪」の名が有名になったはずである。最初に松阪牛 の名があったのではない。今は誰もうまいと言っていなのに「阿波牛」だとか「高知牛」という“産地ブランド”が勝手につけられている。

 子どものころ、コメに名はなかった。戦後が終わっているのに、農水省は食管法を維持していた。米穀通帳がまだ存在していた。米屋に行って「おコメ5升ください」といえば、夕方には家にコメが届いていた。

 そんな時代でも「うまいコメ」はあった。階下に住む結城さんは山形県出身で、いつも山形からコメが届いていた。結城さんのところで食べるご飯は米 粒がきらきら光っていて飛びぬけておいしかった。農林何号だとかのコメの品種は学校で習っていたが、ササニシキとかコシヒカリの名はまだなかった。 1960年代に自主流通米という制度がつくられて、コメに名がつくようになったのである。

 10年以上前、ファン・ウォルフレンという人が『偽りのリアリティー』という本を書いて評判を呼んだ。ファン・ウォルフレンは、日本社会が偽りだらけであるにもかかわらず、日本人たちは我関せずとばかりにやり過ごし、その偽りを疑わないことに警告を鳴らした。

 筆者はその時分、「コメブレンド事件」というコラムを書いたことがある。それから10年、消費者は自国内でおきていることに眼をつぶって「輸入農産品は危ない」という国家的宣伝に乗せられている。偽装列島はますます偽りの迷路に入り込んでいる。



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