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小沢一郎氏の「みかん箱」とワイドショー

2006年04月25日(火)
萬晩報通信員 成田 好三
 かなり以前は、選挙(政治)に最も影響を与えるメディアは新聞でした。佐藤栄作元首相が退任にあたって新聞記者を退席させ、TVカメラの前で会見したことは、その象徴的な出来事でした。

 近ごろは新聞に代わってTVが主役になりました。そして、TV内の主役も代わってきました。ニュースからニュースショー、そして最近はワイドショーが主役に躍り出てきました。昨年9月の自民党が圧勝した衆院選は、「ホリエモン」フィーバーや「刺客」騒動など、まさにワイドショーが最も影響を与えた選挙になりました。

 民主党公認候補が1000票弱の僅差で自民党公認候補を下した衆院千葉7区補選(4月23日投開票)で、最も印象的なTV映像は何だったでしょうか。自民党・民主党の候補者ではありませんでした。最も印象的な映像は、告示日における自民党の小泉純一郎総裁(首相)と民主党の小沢一郎代表の街頭演説でした。

 告示日の街頭演説で、小泉氏と小沢氏は極めて対照的なパフォーマンスを見せました。小泉氏は人の集まりやすい繁華街で演説しました。選挙で小泉氏が演説すれば、黙っていても人が集まります。

 一方の小沢氏は、あえて(意図的に)人の集まりにくい場所を選びました。田舎のどうといった特徴のない場所で、少数の人の前で「みかん箱」(正確にいうとビールケースか農業用のコンテナ箱だったでしょう)の上に乗って演説しました。

 新聞は、こうした「情緒的」な情景をもはや克明には模写しなくなりました。当事者が意図的に設定した状況にのせられないためです。しかし、TVにはどうしても映像が必要になります。TVはニュース枠でも、ニュースショー枠でも、そしてワイドショー枠でも頻繁に小泉氏と小沢氏の街頭演説の映像を流しました。

 ニュース枠、ニュースショー枠、ワイドショー枠と、映像が繰り返される頻度は拡大します。しかし、政治側からの「偏向」批判を受けて、扱う時間はほぼ公平になりました。しかし、よりインパクトのある映像はどちらだったでしょうか。その答えは明らかです。小泉氏の街頭演説に多くの人が集まるのは、もはや当たり前です。「ニュース性」はありません。

 しかしです。小沢氏が人の集まらない場所で「みかん箱」の上に乗って街頭演説したことは、「サプライズ」です。田中角栄元首相の直系で「こわもて」政治家と評価される小沢氏が「みかん箱」の上に乗ること自体がニュースになります。

 TVが時間枠や扱い方で公平を期したとしても、小沢氏の「みかん箱」はTVにとっては大きなインパクトになりました。TV制作者側のサプライズは無意識のうちにも映像に反映されていきました。

 TVが、小沢氏と小泉氏の映像を繰り返し流さなかったとしたら、2人の演説の影響力には大きな差がでてきます。動員力が明らかに違うからです。しかし、TV映像の影響力は現場の動員力とは基本的に関係ありません。どちらの演説がよりインパクトがあり、よりニュース性があるかで、影響力の違いがでてきます。

 TVのワイドショーは、耐震偽造問題では圧倒的に民主党の味方になりました。メール問題ではまったく逆の立場になりました。国会の本会議で民主党の前原誠司元代表が小泉首相からポンと肩を叩かれる映像は決定的でした。

 TV、特にワイドショーが、対立する政治勢力のどちら側により多くのインパクトのある情報と「好感度」のベクトルを示すかで、選挙の結果が大きく左右される時代になりました。小沢氏の「みかん箱」は、そのことを端的に示す現象になったといえるでしょう。(2006年4月25日記)

 成田さんにメールは mailto:narinari_yoshi@yahoo.co.jp
 スポーツコラム・オフサイド http://blogs.yahoo.co.jp/columnoffside

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