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【トビリシに来たニーナ15】カフェ「つる」

2006年02月21日(火)
ギターボーカリスト 兵頭ニーナ
 8月終わりやっとのことでヴィカの店がオープンした。

 日本で20年も働いてスリランカに帰っていたマンジュを呼び寄せキッチンを任せ、フロアーはロシア語、グルジア語、ウズベキスタン語あわせて5カ国語を話すタムリコが担当、私は全般を見ながらキッチンを助け、夜はたまにギターを弾いて唄った。

 ところで開店当日そうそう停電になり困ったが、翌日すぐにジェネレーターを買った。周りを良く見ると半分ぐらいの店がジェネレーターを備えていた。次は水が出なくなる事。これもレストランには致命的である。

 マスチェルのやる事を見てたら何と水道のフィルターからじゃりじゃりと砂が出てきた。半地下のせいなのだろうか? 翌日から1日に2回はキッチンとトイレの水道のフィルターの掃除をした。

 肝心の料理だが、ヴィカのおかげでグルジアにはない調味料が豊富にそろっているので良いメニューが作れた。とんかつ定食、焼肉定食、コロッケ、オムライス、ピラフが良く受けた。マンジュのお得意「白身魚のオリエンタルソース」やカレーも評判がよかった。

 値段もリーズナブルでこれなら来やすいと日本人の方に喜んでもらえた。

 店の前はとても人通りが多いが、奥のキッチンの窓から見る中庭には数十メートルはある杉の林があり表通りとのギャップがおもしろい。 しかしある日、一瞬のすきに窓の鉄格子から手をのばしてきて網を裂き日本からわざわざ持ってきたスケールを盗まれたのは痛かった。

 タムリコのグルジアタイムにもなかなか慣れなかった。なにしろ11時半開店だというのに12時過ぎの出勤はしょっちゅうでそれから掃除をはじめる。

 隣のマガジンに働くナナにコーヒーを誘われたりすると仕事途中で行ってしまう。隣からも毎日誰かコーヒーを飲みにくる。もちろんお金は払わない。1日6ラリ(400円ぐらい)で働く娘に1ラリは高くて払えないのだ。

 ある日とても上品な身なりの老婦人がきてコーヒーはいくら? と聞くので1ラリ(5、60円ぐらい)ですと答えたら「まあ! 高いこと」と憤慨していた。しかし近くのティーハウスやレストランは2〜3ラリしてるけどね。はじめの頃、コーヒーや紅茶を頼んでハチャプリなどを持ち込んで食べる人もあったが今は断ることにしている。

 キッチンが暇になるとマンジュは店の表に出て美人鑑賞を楽しんだ。なにしろ10人のうち9人ぐらいは美人で、その9人のうちの一人は女優かモデルにしたいくらい綺麗だ。女の私でもいくら見ていても飽きない。ついにマンジュは道の向こうに勤める新婚6ヶ月のアンナに恋をした。

 アンナも毎日出勤前にカフェに来てモーニングコーヒーを楽しだりショートメールが行ったり来たり・・・本当か嘘か仕事の無い旦那とさっさと別れたいなどといってマンジュを誘っていた。

 人妻への横恋慕は危険だから気をつけなさいと言っておいたが、ついに旦那が現れ、一言でも妻と口を利いたら殺すぞと言われすっかりしょげていた。

 まわりは良く見てるもので結婚してる彼女が悪い! とみんながマンジュをなぐさめた。いつのまにか前の店からアンナの姿が消えた。でも本当のところ可愛くて働き者で上品でいい娘だった。結婚していなければマンジュとはお似合いだったのにと残念に思う。

 ニーナにメール mailto:nina2173@v7.com

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