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実数#ュ表は改革の第一歩か

2004年12月02日(木)
萬晩報通信員 成田 好三
 球場入場者数の水増し発表が当たり前だったプロ野球で、「来季からより実数に近い形で発表する」(11月28日付読売)動きがでてきた。

 巨人の桃井恒和・球団社長が11月27日、東京ドームの入場者数の発表をその方向で検討していることを明らかにした。阪神の野崎勝義・球団社長も時期は特定しなかったが、甲子園球場の入場者数の発表を同様の方向で検討していると、その翌々日に語った。

 今季の再編騒動で、球界の情報公開の不備をさんざん批判されたことに加え、水増し発表の数字と実際の入場者数の差が、誰の目にも明らかなほど大きくなったための対応策だといえる。

 東京ドームの巨人戦は、1988年の開場以来、近年は空席が目立ちながらも「満員御礼」の公式発表が続いている。11月28日付読売「巨人、東京ドームの入場者数を実数に近い形で発表」によると、入場者数は「巨人と興行の業務委託を受けている読売新聞東京本社では、従来、チケットの販売数などを勘案しながら、興行上の慣習による入場者発表を行って」いた。記事では「興行上の慣習」の中身についての説明はない。

 プロ野球が抱える病巣は、親会社が球団の赤字を補填する自立しない経営スタイルと、選手の年棒や契約金さえ公表しない閉鎖性にある。あるいは、この2つの病巣が複合的に絡み合ったものである。だから、球場の入場者数をより実数に近い形で発表することは、わずかではあるが球界改革の第一歩であるとみえるかもしれない。

 しかし、本当にそうだろうか。巨人や阪神のやり方は、根本的に間違っている。球場入場者数の発表方法の変更は、より実数に近い形で発表しても「被害」が少ない、有力・人気球団が、それぞれ違ったルールで先行実施し、他の球団がその動きに追随するべきことではない。

 本来ならば、球界のトップである根来泰周コミッショナーが指導力を発揮し、セ・パ両リーグに加盟する全球団の代表者が協議した上で、発表方式の「統一ルール」を決定、一般に公表した上で実施すべきものである。球団ごとに発表方式が違っていては、現状の水増し数字と同様に誰も信用しなくなる。ファンの球界不信をさらに強めるだけである。

 根来氏には、その意思はないだろう。選手会がストを行えば辞任すると公言しながらも、スト実施後も「当分の間」としてコミッショナー職にしがみついている人物である。ならば、球界の「盟主」を自認する巨人と読売新聞は、全球団に発表方式の変更を提案し、実施に向けて動くべきである。

 しかし、巨人と読売新聞にはそうした姿勢はまったくない。彼らは球界改革ではなく、巨人と読売新聞の利益にしか興味はない。彼らは球界の盟主ではない。

 巨人の機関紙的立場にある報知は11月28日付「巨人、来季から観客実数#ュ表へ 東京ドーム主催試合で」で、恥ずかしげもなくこんな一文まで掲載している。

「東京ドームには前売り券、年間シート、当日券、招待券などさまざまな入場方法があり、計算方法も複雑なことから、米大リーグやJリーグのように1ケタ台まで実数で発表するのは難しい。」

 よくもこんな事実誤認を前提にした記事が書けたものである。大リーグやJリーグにも年間シートやスポンサー枠など「さまざまな入場方式」はある。この記事を書いた記者は、大リーグやJリーグには複雑な入場方法はないと確信しているのだろか。それとも、上層部の意向にそって事実誤認の文章を書き加えたのだろうか。

 ちなみに、Jリーグが1993年の発足当時から発表している球場入場数は、「実数に近い数字」でも「実数」でもなく「有料入場者数」である。(2004年12月1日記) 

 成田さんにメールは mailto:narita@mito.ne.jp
 スポーツコラム・オフサイド http://www.mito.ne.jp/~narita/

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