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民放TVの詐欺%Iスポーツ中継
2003年12月03日(水)
萬晩報通信員 成田 好三

 日本テレビのプロデューサーによる視聴率不正操作問題は、番組評価を視聴率だけに依存する日本のTV界の根幹を揺るがす大事件≠ノ発展した。このプロデューサーは、1000万円もの番組製作費を流用して工作資金に充てていたことも明らかになった。それでも日本テレビは、不正操作はあくまでプロデューサー個人の行為だとして、早期の幕引きを図ろうとしている。

 日本テレビは、氏家斉一郎会長、間部耕苹副会長、萩原敏雄社長の最高経営幹部3人が経営責任ではなく道義的責任を取るとしてスライド降格$l事を発表した。会長のCEO(最高経営責任者)辞任と副会長の社長降格、社長の副社長降格という内容だ。CEO制度は会長の辞任と併せて廃止するというのだから、何の意味もない。副会長から社長への降格は、世間の常識では昇格≠ナある。しかも、最高経営幹部3人が日本テレビを統治する「体制」には、何の変化もない。

 こんな人事は降格でも処分でもない。広告スポンサー向けに世間体を取り繕っただけだ。最も大事なはずの、視聴者へのメッセージは伝わってはこない。彼らは視聴率不正操作問題から何一つとして教訓を学ぼうとはしていない。

 本題に入る。日本のTV界は、ちょっと見方を変えれば視聴率不正操作以上に悪質な行為を日常的に行っている。民放キー局が独占放送するスポーツ中継だ。録画映像をあたかも生中継のように扱っている。詐欺%I行為にも等しいこのスタイルは、いまや民放キー局の常套手段にさえなっている。

 その例を挙げる。日本で11月に開催されたW杯バレーボールは、フジテレビが独占放送した。女子が1日―15日、男子は16日―30日と、1か月にわたって開催される長丁場の大会である。女子、男子各11試合、計22試合をゴールデンタイムである夜7時―9時の時間帯に放送した。新聞のTV欄には、最大延長9時24分と表記された。

 番組中にも事前の紹介番組でも、放送は録画だとも、生中継とも言わない。番組中の画面にも、「ライブ」「録画」の表示はない。バレーボール関係者やマニア的なファン以外は、放送が生中継だと「錯覚」してしまう。

 しかし、フジテレビの独占放送はすべて録画放送だった。大会主催者の日程によると、日本戦はすべて夜6時の試合開始だ。放送は夜7時から始まるから、フジテレビはすべての日本戦を1時間のタイムラグ≠つけて放送していた。

 スポーツ観戦において生中継に勝るものはない。選手やチーム、会場と一体になったと感じられるからだ。海外で開催される五輪やW杯サッカーを生中継で見るため、夜更かししたり、早起きしたりするのは、リアルタイムの臨場感と一体感を味わうためだ。だから、プロ野球の大相撲も生中継される。そうでない場合は録画だと告知される。

 フジテレビは何故、1時間もの時間差をつけて放送したのか。6時台にはニュース枠があるためか。7時台からのゴールデンタイムの放送の方が視聴率を稼げるためか。フジテレビはスポーツ専門チャンネルではない。全国ネットの民放キー局だ。長丁場のW杯バレーボール大会を生中継できない理由は、それなりにあるだろう。スポーツは何が何でも生中継すべきとはいわない。問題なのは、理由を説明せずに生中継もどきの放送を続けたことだ。

 バレーボール関係者や熱心なファンにとっては、生中継もどきの放送は折り込み済みのことだろう。しかし、一般のファンや視聴者に対しては、何の説明もない。フジテレビが意図的に視聴者を「錯覚」させることを狙っていたとしか理解できないやり方だ。時差のない国内での大会を、タイムラグ≠つけて放送する理由は、素人には分からない。

 フジテレビは9月に大阪で開かれた世界柔道(12―14日)も独占放送した。田村亮子、井上康生ら日本選手が大活躍した大会だ。W杯バレーボールのような長丁場の大会ではない。しかし、世界柔道でも同じ手法を取った。あたかも生中継であるかのように録画映像を流していた。

 フジテレビに限らず、TV局はこうした詐欺%Iな、生中継もどきの放送を即刻止めるべきだ。あるいは録画放送するなら、その理由を放送中にきちんと説明すべきだ。そうしないなら、TV局は広告主よりもっと大事な「顧客」である視聴者の信頼を、近い将来において失うだろう。

 今年、フジテレビ以外にも民放キー局は、北島康介が100、200メートル平泳ぎで金メダルを獲得した世界水泳をテレビ朝日が、末続慎吾が200メートルで銅メダリストになった世界陸上をTBSが独占放送した。テレビ朝日とTBSは水泳と陸上の国際大会をバレエティー番組化した。国際映像を切り刻んだ。現地に放送本部を置かなかった。東京から、しかも素人をキャスターに起用して中継した。しかし、フジテレビの生中継まがい、あるいは詐欺%I中継に比べれば、まだましな行為だ。

 フジテレビは自動車レースの最高峰、F1グランプリ(GP)を長く独占放送している。世界各地で開催されるGPを放送している。しかし、鈴鹿サーキットで行われる日本GPは、夜に録画で放送する。何故か。日本GPは日曜日の午後に決勝が行われる。日曜日の午後に放送する競馬中継と重なるからだ。フジテレビにとって、毎週日曜午後に放送する競馬中継は、年に1度だけ国内で開催されるFIの日本GPより、はるかに優先度の高い番組なのだ。

 自国で年に1度開催されるF1GPを録画で放送するTV局など世界中を探しても見つからないだろう。(2003年12月1日記)

 成田さんにメールは mailto:narita@mito.ne.jp
 スポーツコラム・オフサイド http://www.mito.ne.jp/~narita/


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