Yorozubampo Since1998
無料配信します
北海道独立論 金融・財政 わくわく話 環境と生活 日本的経営 日本人と日本

サイト内検索


TopPage

BBS

よろずリンク

ご意見

 
東アジア・シックス・スーパー・フォーラム

2003年09月03日(水)
ジョージワシントン大学客員研究員 中野 有

 朝鮮半島の38度線を境に、中、露、北朝鮮と、米、韓、日が勢力均衡型で対峙している状況の中で、北朝鮮問題が、多国間で協議された。国益が異なる北東アジア諸国に米国を加え、同じテーブルにつき、北朝鮮の核開発を封じ込めるという、イデオロギーを超越した協議がなされたのだから、国際協調主義の視点で見ると大きな成果だといえる。

 加えて、北朝鮮が米国との2国間交渉を求めたにも関わらず、米国が多国間協議を唱え、中国が束ねたのだから、北東アジアの多国間協調のスタートとしては理想的だと考えられる。

 北朝鮮の核開発の包囲網が中国、ロシアを加え構築されたことは、自動的に国連のP5が承認したことに等しい。北朝鮮の核の瀬戸際外交について、本来なら国連の場で協議されるべきであったが、それが実現されなかった理由は、北朝鮮の孤立化と経済制裁を懸念する中国とロシアの意向と、北東アジアの主役である日本と韓国が15カ国で構成される国連安保理事会のメンバーでなかったことが大きな要因であろう。シックススーパーフォーラムが実現されたことで、日本と韓国の意志が朝鮮半島の平和に反映されることから、国連の場でも同時並行的に協議を進めるべきであろう。

 マスコミの予測通り、六者が集まったにも関わらず、表面的には北朝鮮と国際社会とのギャップを埋めることはできなかった。北朝鮮が米国に働きかけたのは、米朝の不可侵条約であり、米国が北朝鮮に求めたのは、大量破壊兵器の放棄である。結果的には、両者平行線をたどり、北朝鮮は核実験を通じ抑止力を高めることを表明したのだから、不安定要因は高まった。日本のタカ派からは、米朝の不可侵条約は、北東アジアの有事の際に日米同盟が機能しなくなることが指摘され、米国のタカ派にエールを送った。

 ワシントンからロングショットで北東アジアの問題を展望すると、北東アジアの一員としてクローズアップで見る北東アジアと全く違った角度で見えてくる。極端な見方であるが、北朝鮮は大量破壊兵器の開発途上で、仮に現時点で朝鮮半島で紛争が発生しても、米国本土にとっては最小のダメージでくい止められるとの考えである。

 また、世界でも突出した軍事力と軍需産業を抱える米国にとっては、東アジアで米国の覇権を高める意味で、北朝鮮の瀬戸際外交による不安定要因は、米国の国益に逆行するものではないとの考えもある。

 平和を探求しない国家はない。平和を達成するにあたり、タカ派もハト派も、インテリジェンス機能をフルに活用し国際情勢を巧みに利用しようとするフクロウ派も存在している。米国では、一般的に民主党に多く見られるウィルソンの国際協調主義と、共和党に多く見られる軍事に頼る現実主義、そして理想主義と現実主義のバランスがとれた中道主義があると考えられる。米国のみならず北東アジアのすべての国でも多かれ少なかれこのような分け方が成り立つだろう。

 シックススーパーフォーラムの国々がそれぞれ第一に考える外交政策は異なっている。

 米国が望むところは、北朝鮮の大量破棄兵器の撲滅、並びに米軍の最新鋭兵器と効率的な10万の米軍の再編であろう。韓国は、通常兵器問題に加え、宥和政策による朝鮮半島の安定と統一であろう。日本は、日米同盟を基軸に平和を維持し、拉致問題を早急に解決することであろう。中国は、米国との軍事的競争を避け、経済に特化することで結果的に経済的にも軍事的にも中国の覇権を高めるとの戦略であろう。ロシアは、アジア太平洋の一員として地位を確保するにあたり、エネルギー外交など実利的外交を実践することであろう。北朝鮮は一にも二にも金体制の存続と繁栄であろう。

 これらスーパーフォーラム構成国の共通項を考慮すれば、米国と北朝鮮を除く中国、ロシア、韓国、日本の4カ国は、北東アジア経済圏構築を推進する勢力である。しかし、米国のタカ派の一部が唱える北朝鮮の不安定要因は、米国による軍事的覇権に好都合であるとの考えでは、北朝鮮と米国の利益は一致する。結果的には、ステータスクオ(現状維持)が理想的だとする考えは、複雑な国益の交錯による。北朝鮮が米国の読みを誤り、レッドラインを超えたときには、悪の枢軸の一環としてイラクのように犠牲になると考えられる。

 このような流動的な北東アジアの地政学的情勢の中で、日本に求められているのは、米国追随型から、国際協調主義による、北東アジア経済圏や共生圏構築への舵をきることであろう。

 イラク戦争直前に、日本には大きなチャンスがあった。日本は米国に追随し、イラク戦を肯定するのでなく、「待てば海路の日和あり」と国連の場で唱え、フランス、ロシア、ドイツの「平和の枢軸」と米国の間の仲裁に入り、少なくともフランスとロシアが参戦するまで時間を稼ぐべきであった。そうすることにより、アラブ気質を無視したブッシュ政権の近視眼的単独主義によるイラクへのスクラップ&ビルド戦略による混沌を回避することができたであろう。日米同盟とは、米国の傲慢さを修正することにより米国から信頼されるものでもあろう。日本は北東アジアの一員であり、日清戦争から始まるこの110年の日本の大陸への関与の歴史を振り返れば、北東アジアにおいては、日本は国際協調主義を貫くべきであろう。特に、ブッシュ大統領が再選される保証がない状況においては。

 中野さんにメールは mailto:tnakano@gwu.edu

 トップへ

(C) 1998-2003 HAB Research & Brothers and/or its suppliers.
All rights reserved.