Yorozubampo
 
アメリカ地球温暖化戦略−京都議定書離脱
2001年04月15日(日)
萬晩報通信員 園田 義明

□Oh no, Kyoto
□EU warns it will go ahead with Kyoto
□L'UE se battra pour sauver Kyoto

□Bush kills global warming treaty
□The President who bought power and sold the world
□Anger at US climate retreat

 ■合い言葉はkyoto

 海外メディアのサイトでは、「kyoto」の文字がひときわ目立ち始めている。そのきっかけは3月28日にさかのぼる。その日、ブッシュ政権は、地球温暖化防止を目指す京都議定書からの離脱を発表した。その声明をうけて、世界のメディアが一斉に反応し「Kyoto protocol」の文字がネット上を駆けめぐっているのである。

 もう少し記事を見てみよう。

「ブッシュは温暖化条約を葬り去る」
「パワー(=エネルギー業界)を買って、世界を売り渡した大統領」
「米気候変動枠組条約離脱への怒り」

 なにやらかなり感情的である。環境対策を重視するEUは、ブッシュ政権の環境政策に猛然と抗議を始めたのである。そして、その抗議はNGOにも飛び火する。

 ■動き始めた巨大NGO

 4月1日、環境保護団体グリーンピースのメンバー21人がブッシュ政権京都議定書離脱に抗議してスコットランド・インバネス沖30キロに位置する洋上石油掘削装置(リグ)を占拠した。そして5日には最新の米企業ランキング「フォーチュン500」より上位100社に対し、1週間以内に米政府の方針に反対する意思表示をしない限り、企業名を公表して消費者に不買運動を呼び掛けると通告したことを明らかにする。

 グリーンピースはブッシュ大統領の決定の背景には米国の石油、石炭関連企業がいると非難しているが、エクソン・モービル(1位)、エンロン(7位)、JPモルガン・チェース(12位)、テキサコ(16位)、デューク・エナジー(17位)、シェブロン(20位)等を標的にしているようだ。

 そして、地球の友(フレンズ・オブ・ジ・アース)は、ブッシュに抗議メールを送るキャンペーンを開始する。そしてこのキャンペーンには、大手石油資本であるBP(英)とシェル(英蘭)も加わっている。

 ■第一波 「原子力発電」ビーム

 3月31日、米電力大手エクセロン(イリノイ州)は、新型原子炉の米国での建設認可を来年にも原子力規制委員会(NRC)に申請した。ブッシュ政権はエネルギー源多様化の一環として原発見直し始めており、建設が実現すれば、1979年のスリーマイル島事故以来初めての原発の新規建設となる。

 エクセロンはComEd、PECO Energy Company、Gencoなどの持ち株会社で取締役会や株主構成を見ると石油大手ARCO社との関係が深い。現在ARCOは、BP アモコ(英)の傘下にある。

 チェイニー副大統領は、諮問委員会「エネルギー政策開発グループ」を設置しているが、そのメンバーには原子力業界と深いつながりを持つエネルギー省高官のジョー・ケリハーを中心とする原子力ロビイストが参加しており、原発見直しに貢献しているようだ。

 離脱表明直後のこの発表の狙いは、各国の原子力産業界への揺さぶりであろう。世界的に見ても原子力業界には、アメリカが手塩にかけて育ててきた財閥を中心とするエスタブリッシュメントが集結している。また総じて自由化のあおりを受け苦境に立たされている。とりわけこの中で「温暖化解決のための原発」の生みの親である日本とそれにフランス、イギリス、ドイツ、中国、韓国、台湾あたりにはかなりの影響を与えたはずである。

 ■第二波 「風力発電」ビーム

 4月4日、日経連の奥田碩会長は、定例会見で、米国の京都議定書不支持表明について「米の方針によって、力を入れないということはありえない。粛々と努力していく」と語った。さらに「日本の数値目標を下げろと主張することもない」と述べ、産業界はこれまで通り温室効果ガスの削減努力を続けていくべきだとの見解を示した。

 そしてその翌日、日本自然エネルギー(東京電力51%、住友商事、三井物産各10%出資)が、ソニーやトヨタ自動車など20社と風力発電における販売契約を結んだと発表し、時を合わせるかのようにイギリスでもトニー・ブレア首相が再生可能エネルギー政策の一環として18基の風力発電所の計画を打ち出した。

 ■第三波 「新提案」ビーム

 4月6日、リチャード・アーミテージ米国務副長官は、訪米中の荒木清寛・外務副大臣ら政府・与党代表団と会談し、7月の気候変動枠組条約第六回締約国会議(COP6)再開会合までに京都議定書に代わる米政府の新たな提案をまとめ、日本など友好国との協議を開始する考えを明らかにする。

 国務副長官は米政府の新提案について、〈1〉全世界をカバーする〈2〉新しい技術を含む〈3〉米国内の幅広い支持を得られる――内容にする考えを示し「事前に米議会にも根回しして実現可能なものにしたい」と述べた。この記事は、瞬く間に世界に配信される。

 全世界をカバーし、米国内の幅広い支持が得られる新技術。言い換えれば、全世界に導入できる、石油業界やエネルギー業界が歓迎する新技術。それは、おそらくガソリン改質による燃料電池であろう。この3つ目のビ〜ムは強烈な破壊力を見せつけたようだ。

 ■EU+NGOvsオイルマン政権?

 私は、昨年夏から現在のブッシュ政権をオイルマン政権と呼んできた。従って今回の京都議定書離脱もある程度は予測はしていた。しかし、根回しにいささか問題があるように思う。おそらくカリフォルニア電力危機の影響が予想以上に大きく影響しているのかもしれない。そのあせりの原因には、復活を始めたEUとNGOとを結び付ける巨大企業グループの存在がある。

それを解く鍵は・・・。

 ゴルバチョフ旧ソ連大統領や米俳優ハリソン・フォード氏ら著名人10人が、ブッシュ大統領に対する公開書簡で、温室効果ガスの排出削減計画を推進するよう要請した。この10人のなかにあのジョージ ・ソロスも含まれている。それにしても京都議定書の議長国で、この問題が一向に盛り上がらないのはどうしてだろう。(次回へ続く)

参考・引用
ガーディアン、BBC、英エコノミスト、ロイター他海外メディア
日本経済新聞、時事通信、共同通信他日本メディア

□簡単情報収集
http://uk.fc.yahoo.com/g/globalwarming.html
http://dailynews.yahoo.com/fc/World/Global_Warming/
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/science/global_warming
http://www.guardian.co.uk/globalwarming/0,7368,395145,00.html

□Oh no, Kyoto
http://www.economist.com/PrinterFriendly.cfm?Story_ID=561509

□EU warns it will go ahead with Kyoto
http://uk.news.yahoo.com/010405/80/bik42.html

□L'UE se battra pour sauver Kyoto
http://www.lemonde.fr/rech_art/0,5987,169964,00.html

□Bush kills global warming treaty
http://www.guardian.co.uk/globalwarming/story/0,7369,464920,00.html

□The President who bought power and sold the world
http://www.guardian.co.uk/globalwarming/story/0,7369,466580,00.html

□Anger at US climate retreat
http://news.bbc.co.uk/hi/english/sci/tech/newsid_1248000/1248278.stm

□グリーンピース
http://www.greenpeace.org/
http://www.greenpeace.or.jp/

□フォーチュン500(最新版)
http://www.Fortune.com/

□地球の友(フレンズ・オブ・ジ・アース)
http://www.foei.org/
http://www.foejapan.org/news/index.html

 園田さんにメールは mailto:yoshigarden@mx4.ttcn.ne.jp
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