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  IT=情報技術の次は単純に「IS」だ

  2001年02月01日(木)
  北東アジアビジネス協力センター事務局長 中野 有

 ITという言葉がやたらに目につく。それではITの次に来るものは何なのであろうか。単純にIT(イット)に続くのは、IS(イズ)と思うのだが。

 ITという情報技術で欲する情報が瞬時に得られ、そしてその情報はEメールを通じ双方向の意見交換ができる。年功序列や縦割り行政を越え、自由に意見が述べられる。一個人が総理に対し意見を述べたり、インターネットの新聞等を通じ数万人の会ったこともない人にビジョンを提示できる。これこそ情報通信革命である。

 今日のITを思うときアインシュタインの言葉に含蓄を覚える。「私は日々、一匹狼のように暮らしていますが、事実、美、正義を求めてやまない人々が形成する目に見えない共同体の一員であるという自覚があるため、寂しいとは感じません」。

 インターネット上に不特定多数の人々にコラムを書いたとき、読者からの声として反応があるのは、まるで、アインシュタインが指摘する「目に見えない共同体」からの声であるように感ぜられる。現代社会では、仕事に追われ社会にどのように貢献しているか定かでなく孤独感が漂うときがある。

 そんなときインターネット上の声はまさにどこからともなく聞こえる同志の声である。アインシュタインが生きた時代には、目に見えない共同体の一員としての自覚を得るためには相当な時間が必要であったであろう。でも今は瞬時にして多くの共同体や同志のアドバイスを受けることが可能である。

 この実感をより身近に感ずるために「IS」即ち「インフォメーションソサエティー」か「インターナショナルソサエティー」の充実が必要とされるのではないだろうか。やはりIT ISと続くことによって次なる明確なビジョンが描かれるのでは。

 インターネット上での不特定多数への情報発信は、まさに見えない共同体の連帯感形成に役だつが、同時にバーチャルである。やはり画面を通した交流から、顔が見える交流が恋しくなってくる。IT(情報技術)を通じIS(情報社会、国際社会)が形成されることによって最も信頼できる人的なネットーワークが構築される。目に見えない共同体から興味や目的が合い通じる仲間が集まって顔の見える共同体ISへと発展するのが正常であろう。

 話は変わるが、米国の東海岸には政策型のシンクタンクがたくさんある。世の中の発展への青写真を描くとき政策型シンクタンクも重要だが、人材育成型のシンクタンクも重要な役割を果たすと考えられる。ホノルルの東西センターは40年前に、ケネディー大統領が設立に関与したアジア・太平洋地域の人材育成型のシンクタンクである。

 5万人近くのアジアや米国本土からの留学生や研究生を受け入れてきた。東西センターで学んだ多くの研究生たちは自国に戻り中枢として国の発展に貢献している。東西センターのネットワークを通じ、政策の相違でぎくしゃくする問題に出くわしたときも、人的なネットワークが有効に機能する。ものごとが動くときは、理詰めの理論より人と人とのつながりであるのは世の常である。

 ITの功績は、アインシュタインのいう目に見えない共同体が身近にかつ一瞬につながることを可能にしたことであろう。それにISが融合すれば大きな活力が生み出されると思われる。米国国防総省の情報技術であるインターネットが冷戦後の米国の世界戦略の一翼を担っているとするなら、情報社会としてのISは人と人との連帯感から考えると日本の得意とする分野ではないだろうか。


 中野さんにメールは mailto:nakanot@tottori-torc.or.jp
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