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グリーンスパン米FRB議長とその仲間たち

2000年02月16日(水)
萬晩報通信員 園田 義明



今世界の政治家や金融関係者の視線が一人の人間に注がれている。
アラン・グリーンスパンFRB議長、その人である。

1987年レーガン政権下で就任して以来3期12年、そして4期目の続投も決定した。クリントン大統領同様サックスプレーヤーとしても知られるが、ジュリアード音楽大学院出で2年間の演奏旅行を続けた実力は大統領の比ではないようだ。

ステージでスポットライトを浴びているかのように芸術的な演奏が続いている。

アラン・グリ−ンスパン氏はニューヨーク大学に学び、エコノミック・コンサルティング会社タウンゼント−グリーンスパンの会長となる。政府経済政策諮問委員会を歴任し次第に実力を認められる。また外部取締役としてアルコア、オートマチック・データ・プロセシング、キャピタル・シティーズ/ABC、ゼネラル・フーズそしてJ・P・モルガンの経営に参画していた。またシンクタンクとして名高いランド・コ−ポレーションの理事や国際経済研究所のディレクターとしても名を列ねた。

最近その手腕ばかりに目を奪われて不安視する論調も目立ってきているが、彼を支えるサポートメンバーに気付いていないようだ。スポットライトを浴びることなく裏方に徹している人物を忘れてはいけない。

ポール・ボルカー前FRB議長。チェース・マンハッタン銀行副社長(1965〜68)、政府財務省通貨担当事務次官(69〜74)、FRBニューヨーク議長(75〜79)を経て79年から87年までFRB議長を務めた。就任中は石油危機後のインフレに積極果敢に立ち向かった。辞任後も現世界銀行総裁ジェイムス・ウォルフェンゾーン氏に代わってウォルフェンゾーン商会の会長に就任し、外部取締役としてネッスル、アメリカ証券取引所、UAL等の経営に携わっている。また日米欧三極委員会の北米議長や外交問題評議会、アスペン研究所の理事も務めている。

新長銀の外部取締役としても内定しており、ネッスルとの関係から日米欧にまたがるネットワークの中心人物である。ネッスルはヨーロッパ財界団体であるヨーロピアン・ラウンドテーブルの会長を送りだしている。

特に注目すべきはグループ・オブ・サーティ(The Group of Thirty)の議長に就任している点であろう。先進国中央銀行総裁クラスを中心とした国際経済・国際金融における絶大なる影響力を持つ組織の事実上の最高幹部として強力なサポートを実現している。

このグループ・オブ・サーティの1999年時点のメンバーにはアジア金融危機を予言したマサチューセッツ工科大学のポール・クルーグマン教授も含まれている。時に「トリックスター」的演技でステージを盛り上げる米国屈指の若手経済学者である。

そしてもうひとりがピーター・G・ピーターソン氏である。商務長官(71〜72)、リーマン・ブラザース・クーン・ロブ商会CEO(73〜84)を経て現在はブラックストーングループの会長である。外部取締役としてロックフェラー・センター・プロパティーズ、ソニー、トランスター等に就任している。また外交問題で再大規模を誇る外交問題評議会の議長を務めている。そしてFRBニューヨークの副会長としてサポートにあたっている。

外交問題評議会発行の「フォーリン・アフェアーズ」1999年11/12月号で掲載された『国際金融構造の将来』ではピーター・G・ピーターソン氏自らがカーラ・ヒルズ元通商代表部代表と共同議長を務めた。このタスクフォースにはボルカー氏もクルーグマン氏も揃って参加している。他にフレッド・バ−グステン氏、ジョージ・ソロス氏等もそのメンバーである。

グリーンスパンFRB議長を含め先に挙げたの人物に共通しているのはインナー・サークルに属しているという点である。この制度的背景下記の通りである。

インナー・サークルとは実業界全体の利害を代弁するビジネスリーダーの小集団であり政治的にもリーダーシップを発揮する権力中枢である。この「インナー・サークル」という名前は大企業トップとのインタビューの際に、ほかならぬ彼等自身が使用していた言葉であり、米国の社会科学者マイケル・ユシームにより1984年に始めて概念化された。

ユシームはインナー・サークルの形成時期を1970年代前半から1980年代初頭としている。企業収益率の急激な低下や環境政策をめぐる政府規制の強化などが財界にとってかってない危機意識を呼び起こし、財界結集の形で形成された。

形成時期については学界でも意見が分かれているが、経営者主体での結集として限定すればある程度正しい見方と言える。ロックフェラー家やモルガン家などの創業者一族による極めて排他的なパワーエリート集団の形成は1930年代に既に存在していたことも事実ではあるが・・・。

インナー・サークルは大企業を中心とする経済力の集中と、広範にまたがる大企業間の取締役兼任制度(重役兼任制度)により、エンドレス・チェーンのネットワークの頂点に位置するものであり、この背景には資本主義の発展段階である「家族資本主義」、「経営者資本主義」そして「制度資本主義」にいたるコーポレイト・ガバナンスの流れを理解する必要がある。

インナー・サークルになるためには

1 社内での昇進   大企業の上級経営幹部に昇進する。

2 外部取締役就任  他のいくつかの大企業の取締役会に外部取締役として名を連
           ねさまざまな業種の経営問題に関与しグローバルな観点を身
           につける。またそのことで社外的にも一定の評価を獲得する。

3 最高経営幹部昇進 大企業の最高経営責任者(CEO)かそれに次ぐ地位に昇進
           する。
         
4 経済団体の指導部 ビジネス・ラウンドテーブルやビジネス・カウンシルなどの
           主要経済団体(日本では経団連や経済同友会に相当)に参画
           する。また慈善団体や大学やシンクタンクなどの理事会にも
           参加する。

5 政府活動     政府機関の諮問委員会のメンバーになることで経済政策に関
           与する政府高官と親密な関係を築く。また多くの場合自らが
           政府高官として就任するケースが最近目立っている。
ボルカー氏に見られるように最近は取締役兼任制度が国境を超えて拡がりつつある。グローバル資本主義の管理機構として包括的な集団の形成が進められているようだ。
引用    「インナー・サークルー世界を動かす陰のエリート群像」
      (THE INNER CIRCLE :Large Corporations and the Rise of
        Business Political Activity in the U.S. and U.K.     )
       著者 マイケル・ユシーム(Michael Useem  1984)
       監訳 岩城博司/松井和夫(東洋経済新報社)
タイトルだけを見ると怪しい感じがしますが、非常に難解な研究書です。マイケル・ユシームは国際的にも著名な社会科学者(社会学者、経済学者)でカリフォルニア大学、ハーバード大学、ボストン大学、シカゴ大学、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学などで教鞭をとっています。この研究書も全米科学財団、ボストン大学、カリフォルニア大学、インペリアルカレッジなどの援助を受けて完成しました。また研究に際し『アメリカとイギリスの大企業トップ150名以上とのインタビュー』からその実体を明らかにしています。(そのだ・よしあき)

グリーンスパン
http://www.bog.frb.fed.us/bios/Greenspan.htm
ボルカー
http://www.ert.be/pe/peb/eneb04.htm
http://www.crossover.com/reus/bio20.html
http://www.trilateral.org/membship/bios/pv.htm
ピーターソン
http://www.group30.org/members.htm
http://www.mmjp.or.jp/foreignaffairs/globalfinancial.htm#member


 園田さんは東京在住のサラリーマン。国際戦略コラムでもコラムを書いています。
 園田さんにメールはyoshigarden@mx4.ttcn.ne.jp
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