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外形標準課税から始まる日本の地方自治

2000年02月15日(火)
萬晩報主宰 伴 武澄



 石原東京都知事が決意した銀行への外形標準課税適用は地方自治という観点からみて画期的である。また「地方政府(自治体)にも課税権がある」という忘れかけていた自治の原点を思い起こさせてくれた点でも重要な問題提起である。

 地方税法に認められたことをこれまでどこの地方政府も実施しなかった。ただそれだけのことである。

 ●納税は国民の義務である

 この点が最も重要で、マスコミや政府が論じる「なぜ銀行だけ」「ほかの自治体との均衡」などといった問題は枝葉末節である。まして「貸し渋りにつながる」との識者の指摘は完全に的外れである。そもそも課税といったところで貸し渋りにつながるような金額ではない。

 今回の課税は東京都に本店を置く資金量5兆円以上の大きい銀行30行が対象で、課税額は計約1100億円。5年間の時限立法である。納付額は過去15年間の法人事業税の徴税実績で決めるとしているが、バブル期に主力19行だけで2100億円も納めていた法人事業税は今年度はたった34億円しかない。

 地方税法は法人税の課税標準課税について、電気、ガス、生保、損保は収入額、その他の事業は所得と定めている。(72条の12)。その上で電気など4事業以外は、事業の状況に応じ、資本金、売り上げ、家屋や土地の面積、価格、従業員数などを課税標準にてきるとした特例を定めた(72条の19)。石原知事は死文化していたこの特例に目を付けた。

 そもそも法人税は企業に利益があることが前提で課税されるもので、その対価として行政サービスを受けている。そうだとしたら何年にもわたってサービスの「ただ乗り」というわけにもいくまい。銀行が不良債権を抱えているといったところで、行政側だって職員の給料ぐらいは支払わなければならない。

 納税は国民の義務なのだ。

 1100億円といわれる税収額は約30の金融機関が負担することになるが、1行当たりにすれば平均30数億円でしかない。不良債権の処理を理由にここ数年間、課税を逃れていることを考えれば大した金額ではない。

 大手都銀の経営者にはそろそろ税金が払えるぐらい真面目に経営しろといいたい。

 ●「1国2制度」こそが地方自治の原則

 外形標準課税は前々から地方政府が財政難を理由に徴税を検討していたものである。これに合わせて政府税制調査会は昨年7月、「事業活動価値」「給与総額」「物的基準と人的基準の組み合わせ」「資本などの金額」の4類型を課税基準として示した報告書をまとめたが、導入時期の合意には到っていない。

 だがよく考えてみれば、導入するかどうかは中央政府の決めることではない。すでに地方税法の定めがあるのだから、憲法にあるように「法律の定めた範囲内で」地方政府が淡々と決めればいいことなのである。そして導入の論争は地方対中央ではなく、地方政府対住民の間で行われる筋合いの問題である。

 石原知事の問題提起が国勢レベルで論議されているのは、単にこれまでどこの地方政府も独自の課税方針を打ち出してこなかったからだけのことである。本当に議論すべきことは法律を超えた課税、すなわち税制改正の地方からの問題提起である。

 3年前、沖縄県が自由貿易区を設置したいと要望し、独自の法人税軽減を求めたとき、中央政府は「1国2制度になる」と許さなかった。沖縄を支持した都道府県はなかった。マスコミもまた訳知り顔に同調したことは反省しなければならない。おかげで台湾経済界が提案していた「1000億円の沖縄への投資」をみすみす見逃す結果となった。

 いまごろになって普天間基地の名護市移転の見返りに1000億円の公共投資をするといったところで遅いのである。1国2制度を認めなければ地方自治は成り立たない。これが自治の原則である。

 地方が中央政府の意のままに行動したのでは地方自治もへったくれもない。知事選挙で「中央との太いパイプ」を訴える候補者が少なくないが、これからは中央との違いを鮮明にする候補者が首長として選ばれるべきなのだ。

 がんばれ石原慎太郎。


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