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大統領選にみるアメリカ社会の潮目

2000年02月06日(日)
萬晩報主宰 伴 武澄



 史上最長の好景気と株高に沸くアメリカに疲れがみれてきたのではないか。アメリカの有権者は、マケイン上院議員に古きよきアメリカの復活をだぶらせ始めているようだ。

 大統領選を日本からながめていてそんなおもいに到った。まだ序盤とはいえ共和党のマケイン氏の健闘ぶりはブッシュ圧勝という当初の予想をまったく覆す展開となっている。有権者の考え方の変化がそのまま予備選の投票行動に現れるアメリカという国がうらやましく思われた。

 2日のニューハンプシャーでの予備選でマケインがブッシュに圧倒的差をつけた映像を子供たちとみていた。マケイン氏が勝利宣言でにっこり笑った時、中学生になる二男が言った。

 ●こういう笑顔っていいね

 「こういう笑顔っていいね」
 「うん、お父さんが少年のころみていたアメリカのテレビドラマにはこんなお父さんがいたんだ」
 「このマケインって人はどんな人なの」
 「おじいさんも、お父さんもアメリカ海軍の偉い人で、本人も海軍に入ってベトナム戦争で戦ったんだ。ベトナムでは5年間も捕虜になって苦労して、帰国したときは英雄として迎えられたんだ」

 そうなのだ。われわれが少年時代からみてきたアメリカのテレビドラマに出てくる優しくて大きなお父さんのイメージがそこにあったのだ。

 アメリカの有権者たちもまた、この笑顔をみて同じことを考えていたに違いない。マケイン陣営の発表によると「ニューハンプシャーでの大勝利のあと、48時間で100万ドルもの献金があった」というのだ。また次の予備選の行われるサウスカロライナでの世論調査でも支持率でブッシュ氏に20%以上引き離されていたマケイン氏がついに逆転した。

 アメリカ大統領選の潮目は完全に変わったといったら早すぎるだろうか。マケイン氏は共和党のブッシュの対立候補とはいえ数カ月前までほとんど無印だった。それがどうだろう。ブッシュや民主党のゴアを出し抜いてがぜんマスコミの寵児となっている。

 ●リアルタイムで支持率を左右するインターネット

 アメリカの選挙の透明性の高さのひとつなのだが、候補者のホームページを訪れると選挙資金の資金繰りや献金状況がガラス張りになっている。インターネットによってその情報伝達力がいよいよパワフルになっている。インターネットの選挙活動への活用の是非をまだ問うているどこかの国と違って、候補者の毎日の言動がそのままリアルタイムで支持率の動向を左右し始めているから恐ろしい。

 そもそもアメリカの大統領選挙は事前の予想はあまり当てにならない。予備選挙から本選挙まで10カ月という長丁場であることも影響しているが、選挙戦の最中に風向きがどんどん変わるのが普通である。

 8年前のクリントンの登場もまた突然だった。知名度の低かったアーカンソー州知事がホワイトハウスの主になったことだけでない。有権者の多くは相棒のゴア副大統領が提唱した情報ハイウエーの意味すら十分に分かっていなかったはすだ。

 そのクリントン氏がグローバルスタンダードとIT革命を引っさげ、世界経済の中心を再びアメリカに引き戻した。軍事的にも世界の警察官としての地位を不動のものにした。はじめは誰もがアメリカの復活に目を見張った。

 ●競争とスピードに疲れたアメリカ

 その一方で、自己中心的な人権外交への不満が噴出し、IMF・財務省と一体化したアメリカの金融資本がもたらす弊害も指摘されようとしている。多様性な価値観が認められるはずのこの地球で、突き進むグローバルスタンダードの道はもはや後戻りができないものであるかもしれない。

 だがアメリカの有権者が今回の大統領選挙に求め始めたのは、どうもそんな競争とスピード経営の継続とは無関係の価値観のようだ。マケイン候補は人生の重要な30代前半の5年間を俘虜として悪名高き「ハノイ・ヒルトン」で過ごしたのである。

 今年は3月のロシア大統領選、11月のアメリカ大統領選があり、日本もまた10月に衆議院が4年間の満期を迎える。アメリカの有権者が突き進むグローバルスタンダードに疲れたとしても、残念ながら日本ではまだその入り口でしかない。日本にはまだまだ競争と改革のスピードアップが不可欠である。


 マケイン候補の公式ページはhttp://maccain2000.com/

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